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2004.12.07
さぁ来やがった、来やがった ──文化庁「音楽レコードの還流防止措置について」ガイドライン公開
エンタメ議連経由で流れてた情報では 12月6日に 公開予定と言われていたのだが、文化庁ウェブサイトへの掲載は1日遅れだった(ちなみに文化庁から関係各位に出された通知は6日付だったから、エンタメ議連の情報は間違ってなかった──って、当たり前か)。
http://www.bunka.go.jp/1tyosaku/kanryuuboushi.html
「音楽レコードの還流防止措置について」(文化庁)
http://blog.melma.com/00089025/20041207101728
「melma!blog [The Trembling of a Leaf]」
▲ 見出し「税関ガイドライン公表」。
ネタ元。
文化庁での「音楽レコードの還流防止について」ページからは多数のリンクが張られていて面食らってしまった。文書の題名だけ見ても中身が判らない(特に「留意事項等について」“3兄弟”は内容が重複しない。ガイドラインを読みたい我々にしてみれば実は“長男”だけ読めば済む話で、“次男”“三男”では“長男”を参照するように書かれている。くじ引きじゃないっての)。まずガイドラインを頭に掲載して、他の資料を付属としておけば判りやすいものを、文化庁めワザとやってるな。
「音楽レコードの還流防止について」ページでのリンクを上から順に説明していくと、還流防止措置の解説図、還流防止措置を規定した条文(著作権法)、還流防止措置の対象期間「4年」を決めた“言い訳”、その決定を規定した法令条文。そうそう、「還流防止措置って何?」って人は 『Music Watchdogs』 サイトの解説を読んでくださいまし(当該ページでは、還流防止措置のことを、実態はこうなるのではと危惧される「輸入権」の名でで呼んでいますが)。で、あとは運用に関わるガイドライン“3兄弟”に「関連リンク」。そんな感じだ。
これだけあるリンクの中で注目すべきは3つ。
http://www.bunka.go.jp/1tyosaku/kanryuu_ryuuijikou.html
「還流防止措置を行使するに当たっての
実務上の留意事項等について(通知)」
(文化庁)
http://www.riaj.or.jp/issue/ris/pdf/ris_kanryu.pdf
「還流防止措置に係る
国外頒布目的商業用レコードの表示に関する運用基準」
(日本レコード協会・ PDF書類)
http://www.customs.go.jp/mizugiwa/chiteki/index.htm
「知的財産権ホームページ」(税関)
上から、いわゆる税関ガイドライン、表示要件に係る運用基準(日本レコード協会作成)、税関のウェブページだ。このうち最後の税関については、実際の「輸入差止申立て」の手続を調べたくなったら必要になるページだろう。ただし今回の私の記事では採り上げない(少し落ち着いてから じっくり読むつもりである)。
今まで「税関ガイドライン」と呼ばれていたものに相当するのが一番上の「実務上の留意事項等について」である。これは文化庁から日本レコード協会に宛てた通知で、同日付に税関へ送った通知の中でも「日本レコード協会会長あて通知(中略)のとおり取りまとめましたので、十分に御了知の上、各税関に対して、その内容の周知徹底を図られるよう」などと書いている。つまりレコ協あて文書を流用して税関に送ったという‥‥どうして税関あてに書面を書きおこさなかったのだろう。これでは、「税関ガイドライン」と呼んでは間違いなのかも知れない。“レコ協ガイドライン”と呼ぶべきではないか。
また、真ん中のリンクはレコード協会が制定した表示基準だ。これもまた表示要件を知る上で重要な文書ではあるが、レコ協の会員社はこれで行くとしても、それ以外の権利者(海外の者も含む)がこれに従う訳がない。その時に税関はどのような判断を示すのか、また裁判になってしまった場合に裁判所がどのような判断を示すのか。著作権法条文には表示要件のことは書かれていない上に、ガイドラインと表示基準との間には見過ごせない差異があるのだから(当然と言えば当然だが、レコ協の表示基準の方が若干厳しく作られている)。
それぞれ論じていったら長くなりそうだ。
切りの良いところで休みを入れて、続き記事にするかも知れない。
さて。
まずはガイドラインだ。全体を見渡してみよう。
還流防止措置を行使するに当たっての
実務上の留意事項等について(通知)
第1 還流防止措置の要件
第2 各要件に係る実務上の留意事項
1 要件1関係
(1)国内頒布目的商業用レコードと
国外頒布目的商業用レコードの発行の前後関係
(2)同一の商業用レコード
2 要件2関係
3 要件3関係
4 要件4関係
(1)不当の基準の運用
(2)実演家がレコード製作者に権利譲渡している場合の取扱い
(3)レコード製作者が自ら発行している場合の取扱い
(4)為替レートの取扱い
第3 権利者が本措置を行使するに当たっての実務上の留意事項
1 輸入差止申立制度の活用
(1)輸入差止申立ての活用
(2)輸入差止申立ての取下げ
2 対象リストの運用
(1)対象リストの公開
(2)対象リストからの削除
3 要件2に係る表示の運用
4 他の権利者への配慮
5 日本レコード協会の協力
※ ガイドラインから項目名のみを抜粋。
丸数字を数字に置き換えてあります。
このガイドラインの構成を見ると、最初に要件をざっと流して、次にそれぞれの要件について細かく説明している。で、その後は税関に対する手続(この文書の中では説明せず、税関に委ねる形)と対象リスト・表示要件の話へと続く。あとはおまけみたいなものだ(「他の権利者への配慮」を求める文章なんて、ヌルいとしか言いようがない‥‥こんなもので効果が望めるものか)。
──以下、細かく見ていきながらツッコミ。
【1.還流防止措置の要件】
要件として示されているのは5つ。
これらを全て満たしたものが還流防止措置の対象としたいらしい(あくまでも文化庁の方針であり、裁判所が著作権法との兼ね合いでどう解釈するかは未だ不明確である。ここの要件の一部が無効なんて判断が示される可能性もある)。
要件1 国内において先又は同時に発行されている国内頒布目的商業用レコード(国内において頒布することを目的とする商業用レコードをいう。以下同じ。)と同一の国外頒布目的商業用レコードであること。
要件2 「情」(要件1の事実)を知りながら、輸入する行為等であること。
要件3 国内において頒布する目的での、輸入行為又は所持行為であること。
要件4 国外頒布目的商業用レコードが国内で頒布されることによって、それと同一の国内頒布目的商業用レコードの発行により権利者の得ることが見込まれる利益が不当に害されることとなる場合であること。
要件5 国内頒布目的商業用レコードが国内において最初に発行された日(国内において最初に発行された日が、改正法の施行日より前である場合にあっては、一律改正法の施行日)から起算して4年以内であること。
※ ガイドラインより引用。丸数字は数字に置換。
なお「国外頒布目的商業用レコード」については
文書の冒頭で「専ら国外において頒布することを目的とする
商業用レコード」と定義されている。
ここでの5つの要件は、おおむね改悪著作権法の条文に基づいたものである。これ以上の細かい話については後の節で示されている。まぁ、今までの文化庁の説明との整合性を示すには妥当な構成かも知れない。
要件1での「国内において先又は同時に発行されている」の部分だけが、ガイドラインで新たに追加された。海外権利者による“還流防止措置”を抑止するための(それでいてベルヌ条約の内国民待遇に反しないギリギリの)方法として国会審議の過程で出てきたものだが、これを「安定性」がどうのと突っぱねた文化庁がガイドラインに盛り込むのが片腹痛い(単純に改悪案を原案で可決したかっただけだろう)。こんな、著作権法に書かれていない基準を裁判所が認めるかは甚だ疑問。
と言うか、文化庁め この基準で本当にやってもらおうじゃねーか、ってのが私の本音。税関もこの基準を満たさない海外権利者は突っぱねろよ。裁判も受けて立て。裁判に負けたら この基準に沿った条文に法改正しろ。
──それはそうと、この基準に逆らって並行輸入盤を止めたくなった海外権利者が最初に訴えるのは税関ってことになるのかね? 輸入差止申立てを認めろ、って感じで(後日注:その後 調べてみたら、どうも税関の判断・認定とは無関係に、権利者が輸入者を訴えられるようだ。ここでガイドラインと食い違う司法判断が示される可能性もあるわけで、やはり輸入者には“危ない橋”ってことになるか? 改めて文化庁の罪深さを感じてしまう。いざとなったら国家賠償でも要求したれ! 2004年12月9日)。
【2.各要件に係る実務上の留意事項】
1.要件1関係
(1)国内頒布目的商業用レコードと国外頒布目的商業用レコードの発行の前後関係
件の追加要件。国内盤が先または同時に発行されたものでなければ同一内容の輸入盤を止めることはできない。また還流防止措置対象の輸入盤であっても、国内盤が廃盤になれば措置対象外となる。これらは文化庁が「著作権法施行令の改正に関するパブリックコメント(意見提出手続)の結果について」で予告した内容と同じである。高橋健太郎氏らの要望が一応受け入れられた形だ。
ちなみに この文書では廃盤の日を「レコード会社から小売店に対して発した当該国内頒布目的商業用レコードの回収に係る通知に記載された受付開始日」と定義している。これって、実質生産中止になってても「回収に係る通知」を出さないでおけば廃盤扱いにならないって事じゃねーの? 下手すると小売店イジメにもなりかねない。ただでさえ廃盤情報って公にされにくいのに、こんなんで大丈夫かよ。レコード会社から生産カタログを積極的に公表するよう指導すべきだろう >文化庁。
また、「最初の発行」から起算する措置対象期間と違い、ここでの「発行」には「最初の」が無い。これでは再発盤などの扱いが曖昧ではないか。「同一レコード」であれば何度再発されても最初の発行日を基準に考えると明確にすべきだろう。そこが曖昧なままだと、国内盤を発売した後に、要件を満たすような形で海外盤を再発すれば差止め可能となりはしないか(私は法律の素人だから、その辺りは詳しい方に吟味いただきたいのだが‥‥論理的には そういう危険が考えられると思う)。
(2)同一の商業用レコード
ここもまた、「レコード輸入権」反対運動をやってた人は皆 注目するところだろう。
まず「商業用レコード」の定義を示し、レコード盤・音楽用CD(たぶん SACD はここに含むのだろう)・ DVD オーディオ・カセットテープ等を含むとしている。まぁ順当なところか。携帯電話・パソコン・カーナビは「その音を市販することを主たる目的としているわけではない」として除外。
音楽配信については触れていないが、「物に音を固定したもの」(レコードの定義)ではないし、仮に「固定したもの」とみなされても携帯電話・パソコンが除外されているから大丈夫か。ま、ここは余談だが。
問題の「同一要件を満たすもの」だが、ジャケットや歌詞カードなどの付属品が異なる場合、媒体が異なる場合、国内盤の収録曲数が 12曲以上であって ボーナストラックが1曲のみ付加されている場合は ことごとく「同一」とみなされる。高橋健太郎氏らの要望は却下されてしまったわけだ。これによって引き起こされる問題は多々あると思われる。
なおリミックスやリマスタリングについては触れられていない。文化庁め、判断を避けたな。現場の混乱と裁判が目に見えるようである(判例で運用状況が決まっていくフェアユース規定創設を拒否したのと同じ著作権課の判断だというのが笑わせる。これこそ、先に判断基準を示しておかねば、裁判所に判断を委ねることになる事例ではないのか?)。判例が出るまでは、「これは同一盤です」などと、権利者の“言った者勝ち”ではないか。あるいは曲名でリミックスの旨が書かれている場合(例えば「ココログ mix」とか)、同一でないと税関は判断するのだろうか。同一盤かどうか、誰が証明し、誰が判断するというのだ(いや見方を変えれば、我々 Watchdog の側で同一盤ではない証明を行なったりする必要があるだろう‥‥輸入盤が手に入ればの話だが)。
逆に、収録曲が同じであっても「同一」とはみなされない場合もある。曲順が異なる時だ。どうしてこれだけが同一要件から外されるのかが解せない(勿論ここで論じているケース全てが「同一でない」とみなされることが私の希望だったし、曲順違い盤が「同一でない」とされるのは歓迎するのだが)。例えばボーナストラックがアルバムの途中に追加されている場合には、曲順が異なるということにならないか? (後日注:曲順が変われば従来のものと「同一」とみなされなくなる事で、旧譜の扱いが益々混乱すると思われる。下手をすると、曲順並べ替え盤が新譜扱いされる可能性すらある。曲順だけ わざわざ同一要件から除外したということは、文化庁の側にそうした意図があるのかもしれないな‥‥権利者におもねるという、連中の態度からすれば一貫してはいる。 2004年12月9日。)
2 要件2関係
税関に輸入差止めを申立てる際に、要件1を満たす旨の表示があることを示す資料を提出しなければならない。表示があって初めて、輸入業者が「情」を知るという扱い。
ここでは「情」についてのガイドラインを示すのみで、表示要件そのものについては後の節で定められている。
3 要件3関係
輸入者等の業種や物品の数量などを参考に、購入者個々に輸入目的等事情を確認した上で頒布目的かどうか判断する。税関の仕事になるわけだが、判断するまでに えらく時間がかかりそうだな。まぁ対象リストに無い盤はスルーなんだろうが。
個人輸入は措置の対象としない旨も記載している。しかし業者が代行する個人輸入はどうなのだ? 相変わらず文化庁は判断を避けている(ここまで裁判所に委ねるなら、さっさとフェアユース規定を創ったらどうだ)。
4 要件4関係
(1)不当の基準の運用
権利者の「得ることが見込まれる利益」は1枚あたりのライセンス料で計算、国内盤に比べ海外盤が6割以下だった場合に「不当」の基準を満たすとされる。当初 言われていた「9割」より緩くなった感じか。
ライセンス料が著作権者のものなのか、著作隣接権者のものなのかで議論となったが、文化庁のガイドラインでは なし崩しに「著作権者+著作隣接権者」合算のライセンス料を比較することになっている。
(2)実演家がレコード製作者に権利譲渡している場合の取扱い
通常はこういう形らしいが、実演家はレコード製作者の原盤印税から配分を受け取ることになるから、著作隣接権者の利益は「レコード製作者+実演家」の合算で比較するということらしい(ちなみにレコード製作者も実演家も著作隣接権者)。
(3)レコード製作者が自ら発行している場合の取扱い
この場合はライセンス料率を同じとみなし、国内盤・海外盤それぞれの卸売価格で比較する。
(4)為替レートの取扱い
海外盤発行日のレートで換算。
【3.権利者が本措置を行使するに当たっての実務上の留意事項】
1 輸入差止申立制度の活用
(1)輸入差止申立ての活用
還流防止措置を行なうには、税関での「輸入差止申立制度」を活用する。詳細は私も知らないから、後で税関サイトで調べてみることにする。
(2)輸入差止申立ての取下げ
措置対象の輸入盤について、国内盤が廃盤予定の時は事前に税関へ情報提供すること。そして廃盤などで措置対象から外れたものは、申し立てを速やかに取下げること。
ところで、一度は差止めていたものを、措置対象から外れる事情なしに(要は権利者の意志だけで)申立てを取下げることは可能なのかねぇ?
2 対象リストの運用
(1)対象リストの公開
還流防止措置下にある海外盤を網羅したリストを作成し、ウェブサイトで公開すること。高橋健太郎氏らの要望では文化庁や税関のウェブサイトで公開するというものだったが、文化庁はレコ協に押しつけたようだ(尤も言い出しっぺはレコ協なんだから、それくらいは やれ、って感じだけどね)。リストに掲載すべき項目も定められている。
(2)対象リストからの削除
当該国内盤が廃盤になったりして措置の申立てを取下げた場合、あるいは措置の期限が過ぎた場合には速やかにリストから削除すること。当たり前のことやね。
この辺りがきちんと運用されるか、我々は監視しなければならない。
なおリストからの削除は、申立取下げの表示をしてから 30日後以降に行なうよう決められている。取下げた旨もきちんと表示させようってことだな。
3 要件2に係る表示の運用
さぁ来ましたぞ、表示要件の話が。
まず日本レコード協会は「表示に関する運用基準」を作成・公表しなければならない。勿論これは会員各社に守らせる、と。必要に応じて見直しもするようになっているが、その際には事前に文化庁と協議することとされる。
ま、元々レコ協は文化庁所管の団体だから当然か?
ともあれ以下、表示要件。
ア ジャケット、バックインレイ、キャップなど
外部から見える場所のほか、
相対的に簡易な記載内容でも差し支えないので、
盤面にも表示すること。
イ 特段の理由がない限り、
シールの貼付等ではなく印刷によること。
ウ 日本語又は英語を含む、2種類の言語で併記すること。
エ 当該国外頒布目的商業用レコードに係る本措置の
対象期限についても記載すること。
オ 本措置を行使するために必要な他の要件のうち、
表示を付する時点で判断可能なもの
(1、4(可能な場合)及び5)については、
各要件を充足することを確認した上で、
表示を付すること。
カ 旧譜より後又は同時に発行された、
それと同一の国外頒布目的商業用レコードについても、
当該運用基準は同様に適用すること。
※ 「実務上の留意事項等について」より抜粋。
丸数字は数字に置換し、
レイアウトも掲載用に整形してあります。
レコ協の表示運用基準も確かにこれに準拠した内容だった。
ただ文化庁側のガイドラインで気になるのは、ウの「日本語又は英語を含む、2種類の言語」という点。これは、必ずしも日本語・英語の併記でなくとも良いってことだな。何故「必ず日本語で表記」としなかったのか。例えば英語・仏語だったらどうだ。かえって海外の権利者が輸入差止めを申立てやすくしてないか、この基準は?
4 他の権利者への配慮
努力義務。レコード製作者だけで突っ走るなということだろうが、こんな基準にどれほどの実効性があるものやら‥‥。還流防止措置を望まない権利者だっている筈で、その反対を押し切ってレコード会社が申立てに踏み切る蓋然性は高いと思うぞ。あの 「CCCD」 が格好の例だ。
著作権者や実演家よりも、レコード製作者の意向の方が優先されることは ままある。と言うか、レコード業界ってそればっかりじゃないか。製作者の意向に合わないことは、どんなり創造的なアイディアでも却下されてしまう(権力のある一部の音楽家ならいざ知らず)。レコード業界保護が却って音楽家の創造を阻害する現状。
ホント、真剣に「配慮」を考えないと死に絶えるぞ >音楽業界。
5 日本レコード協会の協力
文化庁の求めに応じて、調査研究・情報提供などの、還流防止措置に関わる協力をすることになっている。
【追記: 2004年12月10日】
お次。
レコ協による「表示に関する運用基準」について。
還流防止措置に係る国外頒布目的
商業用レコードの表示に関する運用基準
1.目的
2.適用範囲
3.引用規格
4.表示事項、内容及び方法
1)パッケージ表示
2)本体表示
3)還流防止期限表示
4)還流防止説明表示
5.表示言語
6.表示の方法
7.表示の場所
(以下略)
※ 「表示に関する運用基準」より項目名を抜粋。
このうちから大事なトコだけピックアップしよう。
【5.表示言語】
日本語と英語で併記することとされている。
文化庁のガイドラインでは「日本語又は英語を含む、2種類の言語」とされており、必ずしも日本語と英語の併記ではなくても良いのだが、まぁ日本の会社が日本向けに表示するものであるから日本語・英語の併記とするのは自然なことだろう(むしろ問題は文化庁のガイドラインの方にある)。
【6.表示の方法】
印刷によって行なうこととされる。法案審議の頃にはシールでの表示も予想されていたが、これについては「特段の理由」があるときに限られているように読める(この方法が否定されている訳ではないのだ)。
こうした“抜け道”が確保されている以上、シールで表示されるものが遅からず出てくると思って間違いない。こうしたとき、表示をもって「情」を知るとしたガイドラインはどう扱われるのだろうか(改悪著作権法での「情を知って」では、必ずしも表示だけがその方法とは考えられないため、裁判の上で別の方法が「情」を知るものとして認定される可能性がある。文化庁が改定案で表示要件を入れなかったのは、シールを剥がされたりした場合も「情を知って」いたと認定されることを想定したものだ。その「情を知って」とする場面を問われても、文化庁は頑なに答えなかったのだが)。
表示言語・表示方法を併せて考えると、現在流通している盤まで無差別に輸入差止めとなる危険性を極力抑えるようになっている。もちろん税関が“レコ協ガイドライン”に沿って手続をし、レコ協会員各社もこれに従っているという前提での見通しだけど。
【4.表示事項、内容及び方法】
項目が前後するけど、ここが本運用基準の肝である。
まずパッケージ表示。文字の大きさを7ポイント以上とし、「裏カード又はキャップ等外から見える場所に表示する」こととしている。
そして、適切な例を3つ示してある。
例1.日本国外頒布専用
For Distribution Outside Japn ONLY
例2.日本国内頒布禁止
NOT For Distribution In Japan
例3.中国国内頒布専用
For Distribution In China ONLY
※ 「表示に関する運用基準」より引用。
表示用に、日本語部分から囲みを除いている。
まぁ妥当な線か。問題は、「不適当な例」として示された3つである。
例1.China Only
(何が中国だけなのか分からない。)
例2.China Version
(中国版であることは分かるが、
国外頒布目的商業用レコードであると
いうことが分からない。)
例3.並行輸入禁止
(専門的かつ多義的な用語であり、
必ずしも当該商業用レコードが
国外頒布目的商業用レコードであることを
意味するとは限らない。)
※ 「表示に関する運用基準」より引用。
表示用に、日本語部分から囲みを除き、
整形をしています。
これらの「不適当な例」‥‥裁判所はどう判断するのだろうか?
レコ協外の権利者が使いそうな文面であり、文化庁としての見解を間接的に示しているものとも思える(この基準を制定する際に文化庁と相談している筈だから)。牽制の意味合いを含んでもいるのだろうが果たして効果があるものか否か。
本体表示(盤面への表示のこと)は、パッケージ表示に準ずる形。文化庁ガイドラインでは「簡易な記載内容でも差し支えない」としているが、本運用基準では同じものを例示している(ポイントの指定が無いだけか)。
還流防止期限表示も定められている。「国外頒布専用」表示の「近傍に記載する」こととされる。時限再販の表示(カッコ書きで期限が書かれてるやつね)を想像すると解りやすいだろう。これと違うのは英語での併記も要求されること。
さらに、還流防止説明表示なるものもすることになっている。パッケージ表示と同様に7ポイント以上、「外から見える場所に表示」する。これは非常に野暮ったい文章であり、正直レコ協が自虐的になってるんじゃないかと思うほど。
例1.このCDは、日本で頒布されているCDと同一で、専ら日本国外で頒布することを条件に権利者から許諾を受けています。
This CD is identicial to a CD distributed earlier in Japan and has been authorized by the licensor to be distributed outside Japan only.
※ 「表示に関する運用基準」より引用。
例2と例3は引用省略。
運用基準 PDF の終わりにある「付属書(参考)」での図を見れば判るのだが、上に紹介した表示を全て行なうと ひどく無粋な外見のパッケージが出来上がる。こいつは 「CCCD」 の表示より失笑ものだ。
ここまでコテコテに説明書きをしたのは、レコード協会としても文化庁ガイドラインだけでは不充分と考えたからではないか。裁判になっても確実に「国外頒布目的」と認定される方法をとった、と(あくまでも私の憶測でしかない訳だが)。
──どんなものだろうか。
レコ協(および加盟各社)はこうしたガイドライン内でおとなしくしているだろうか。「洋楽を止めることはない」とした言葉を守り続けるだろうか。ちなみに表示運用基準を検討した「ワーキングチーム」に委員を送り込んだ会員社は、東芝 EMI ・ビクター・ユニバーサル・ソニー・ポニーキャニオン・ワーナー・ BMG ・エイベックスである。ここいらは還流防止措置を利用する気ありアリと見て良いのだろう。
表示運用基準全体を見ると(野暮ったさを揶揄できるとしても)酷い内容ではない。この基準が守られれば、たいした混乱が見られないのではないかという期待は持てる。
しかし安心するのは早い。これはあくまで日本レコード協会に加盟している会社が従う運用基準であって、加盟していない会社とか、海外の権利者までを拘束するものではないからだ。だから税関での輸入差止申立てを巡って いざこざが起こる可能性はある(むしろ高いと見るべきか?)。税関での判断とは関係なく裁判が起こされ得るから、その結果がどう転ぶかも全く判らない。何しろ改悪著作権法の曖昧さは今まで再三指摘してきた通りだし、この法律にない基準で運用していこうってんだからね。
投稿:by 谷分 章優 10:45 午後 [「輸入権」問題, 著作権行政 watch, 音楽業界の愚行] | 固定リンク
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