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2004.12.06

権原なき利権化が目論まれる書籍・雑誌貸与権 ──「どうも出版社、文化庁はまともに議論する気はないようで」

 来年の元旦をもって、書籍・雑誌の著作権者にも貸与権が付与される(正確には、書籍・雑誌については貸与権の対象外とされていたところ、その例外規定が廃止される)わけなのだが、権利管理団体(貸与権管理センター)と利用者団体 (CDVJ :日本コンパクトディスク・ビデオレンタル商業組合)との協議が決裂しており、運用について先が見えない状態であった。
 で、最近になって見過ごせない動きがあった。

http://www.arts.or.jp/cgi-bin/
bbs_listmessage.cgi?PARAM=2&ID=9041

「ARTS - Association of Retailers of TV-game Software
 (communication bbs_listmessage)」
▲ 見出し「書籍貸与の使用料の70%は管理に使われる。 」。
  CDVJ 赤田理事による文章。
  引用はこちらから。

http://whatsmyscene.blogspot.com/2004/12/70.html
「what's my scene? ver.6.1」
▲ 見出し「書籍貸与の使用料の70%は管理に使われる」。
  ネタ元。


10月の貸与権交渉決裂後、貸与権管理センターから交渉再開の打診があり、12月1日理事会でCDVJ案を提示した旨の報告がありました。

貸与権管理センターは口頭で「3週間禁止、使用料280円」提示してきました。(中略)

どうも出版社、文化庁はまともに論議する気ないようで、使用料は最終的にユーザー負担になるものですから、提示したCDVJ案を公表することにしました。CDVJからの対案は次のページです。http://www.cdvnet.jp/date/cdvjnews/041119cimicteiansyo.pdf

 協議再開かと思いきや、果たしてそうなるのか否か。使用料の提示が「口頭で」あったというのが凄い。どうしてこんな大事な提案を文書にしないのか。
 そして驚くのが その使用料の中身。使用料は仕入れ時に課金されるのだが、(1冊 400円定価のコミックを例にとると)作家に 80円、 出版社・取次店・貸与権センターに 200円 だというのだ。「貸与管理センターの管理手数料 71%」。比較対象として判りやすい JASRAC (日本音楽著作権協会)の手数料が 10% 〜 15%。そう考えると、管理センター側の主張は無茶苦茶だ。
 貸与権管理センターは「いえ、うちの取り分はこの中の**%なんです、だから決して多くないんです」と弁明しそうではある。しかしそんなものに耳を貸す必要など無い。そもそも出版社・取次店に使用料を取る権利など無いからだ。
 『benli』 の小倉弁護士は、その提案をこう評している──

http://benli.cocolog-nifty.com/benli/2004/12/post_4.html
「benli: 出版物貸与権管理センター」


書籍について出版社には貸与権または報酬請求はありませんから、何故、貸本業者が出版社に貸与についてのライセンス料を支払わなければならないのか理解に苦しみます。まして、取次店なんて、音楽CDの貸与についてだって何の報酬の支払いも受けていないのに、なぜ書籍については突然貸与に関する報酬を受けようなんて考えたのか、全く不可思議としかいいようがありません。
 また、貸与権管理センターの管理手数料をいくらとする予定なのか分かりませんが、権利者に支払われるべき金額と同程度またはそれ以上の管理手数料を徴収する管理事業者だなんて、有害といわざるを得ません

 異常事態だ。
 この貸与権管理センターからの提案を受けての CDVJ 理事会での声が前掲のリンク先でも掲載されている。その中でも この一言は状況を言い尽くしているのではないか。曰く、「これでは貸与権は作家の権利ではなく、出版社と取次店、管理センターの利権じゃないか」。

 ちょっと思い出してみよう。著作権法で貸与権は(禁止権・報酬請求権のいずれも)著作者にしか認められていないのは前述の通りだが、そもそも書籍・雑誌に貸与権が及ぶこととなった今年の著作権法改悪に関しても、その立法趣旨は次のように説明された。文部科学大臣の名で記された「提案理由説明」から抜粋──

平成十六年第百五十九回国会
『著作権法の一部を改正する法律案資料』(文化庁)
「著作権法の一部を改正する法律案提案理由説明」より


 著作権等に貸与権が認められた昭和五十九年の著作権法の改正においては、貸本業が長年自由に行われていた経緯等に鑑み、所要の経過措置を設け、書籍又は雑誌の貸与による場合には、当分の間、貸与権の規定は適用しないこととしておりました。ところが、近年、事業を大規模に展開する貸本業が出現しつつあり、漫画家、小説家などの著作者の経済的利益に大きな影響を与えるという事態が生じております。
 このため、この経過措置を廃止し、書籍又は雑誌の貸与による公衆への提供について貸与権が及ぶこととするものであります。

 あの法改定においてさえも、著作者の話しか出ていないのである(当たり前だ)。間違っても、出版社や取次店に「使用料」を渡す話ではない。
 管理センター側の言い分に対し、 CDVJ の対応は──

許しがたい話なので、文化庁と貸与権管理センターに対して、2年間の準備期間はブランケットでCDVJが徴収し、貸与権管理センターに支払う具体案を再度提示することになりました。



※ リンク前掲の赤田理事による文章より。

 この「具体案」の詳しい内容は、最初の引用にある URL から PDF 書類を入手してお読み下さい。要するに、書籍貸与権の運用準備期間として2年間を設定し、その間は月額固定の使用料(作家への還元が1冊あたり 80 〜 100円 となるように設定) を CDVJ が徴収するというもの。そして「物流・利用管理システム等の構築」が済んだ3年目以降から本来の使用料徴収に移行してはどうかという。

 さて、今年中に決着するのか。




 決着? いやそれは、あくまでも貸与権管理センターが CDVJ ときちんと話し合おうとしていたらの話だ。管理センター側が自らの案を強行し、貸与権(禁止権)を行使することで混乱をきたす可能性だってある。出版社や取次店も(不当に)使用料を要求するとなると訴訟沙汰になってもおかしくない。
 どうして私が「強行」を心配するのかというと、貸与権管理センターが 12月2日付で 著作権等管理事業者として正式登録されたことが明らかになったからだ(前掲 『benli』 記事より)。

 遅い。遅すぎる。しかし この 12月2日という日付は、来年元旦から管理センターが動き出せるギリギリの期日なのである。なぜなら管理事業者は使用料規程を届け出、それから 30日 を経ないと、この規程をもって業務ができないからだ。つまり 12月2日 を過ぎると、使用料規程が来年の元旦に間に合わなくなる。
 ん? 待てよ。 12月2日 に決まったのは、管理事業者としての登録だよな? しかし来年から業務を始めるには使用料規程の届出もこの日に済ませるしかない。──まさか既に使用料規程を届け出たとでもいうのか、協議が終わってないうちに?

 最初に引用した CDVJ 赤田理事の文章を読んだ限りでは、協議はまだ決着していない印象である。少なくとも これが書かれた 12月3日 の段階では。しかし この時すでに貸与権管理センターによって使用料規程が届け出されていたら?
 著作権等管理事業者は、使用料規程を定めるとき(それと改訂するとき)に利用者から意見を聴取するように定められている(管業法第13条2項)。しかしそれは努力義務だ。この規定を恣意的に使えば、管理センター側は自らの案で押し切ることもできる。論理的には可能なのだ。
 どうなんだ。貸与権管理センターは使用料規程を出したのか、出さなかったのか。

 もし既に管理センターが使用料を決定事項と考えているのなら、今年のうちに CDVJ 側から協議を求めていかねばならない。下手をすると、あの酷い案は“既成事実”化される。

 ──どんどんと混乱の極みに填りつつある感じだ(貸与権管理センター側に聞く耳があれば まだしも‥‥出版社・取次店の取り分なんて言ってる時点で望み薄か)。




【追記:2004.12.7】

 文化庁の「著作権等管理事業者検索」にも貸与権管理センターの登録情報が反映されているとのこと。

http://www.bunka.go.jp/ejigyou/script/ipkensakuframe.asp
「検索処理」
▲ 見出し「著作権等管理事業者検索」。

http://copyright.jugem.cc/?eid=361
「Copy & Copyright Diary@JUGEM |
 出版物貸与権管理センター」
▲ ネタ元。

 そうか。慌てて文章を書かずにデータベースを当たれば良かったんだな‥‥反省。
 ここでの登録内容を見てみると、管理センターの正式名称は「有限責任中間法人出版物貸与権管理センター」。何かいい略称を考えなきゃな。当面は、文章で最初に出すときは「出版物貸与権管理センター」、その後は「貸与権管理センター」「管理センター」を使い分けるような感じかな。 JASRAC みたいな略称を公式に設定するか、レコ協みたいな略称が定着する(でもこれは「レコード協会」みたいな独特の名前だからできるんだよなぁ‥‥)まで こんな感じで行きます。
 そうそう、登録の中身の方。役員の名前が8名登録されているのだが、代表理事に藤子不二雄Aが就任している。ああ、祭り上げられちまったな‥‥今の混乱状況をどこまで理解してるのか知らないけど、レコ協(および前会長の依田巽氏)の二の舞にならないことを祈るよ、昔 作品を読ませて貰った者として(もっとも私が好きだったのはFの方だったがね)。監事として ちばてつやの名前もあるなぁ‥‥。

 本記事(この追加分の上まで)では、貸与権管理センターが使用料規程を既に提出してるんじゃないかと心配になって捲し立てたのだが、実際このデータベースでの情報を見ると、未提出であるようだ(管理委託契約約款も未提出)。まずは一安心。
 しかしながら、 12月6日 現在で未提出ということは、来年の元旦はおろか仕事始めでも管理センターは業務を開始できないということになる。 CDVJ の「ブランケット方式」で話がまとまらない限り、貸与権行使可能になってから(実質的に)許諾を出せるようになるまでの空白期間が出来てしまう。
 どうする気よ >藤子不二雄A?

投稿:by 谷分 章優 12:09 午後 [著作権行政 watch] | 固定リンク

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