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2004.12.19

書籍・雑誌貸与権に関する雑感 ──川内博史議員『正々堂々 blog』 から

 ここのところ、うちでも書籍・雑誌貸与権に関する話題を採り上げている。来年元旦の施行を目前にしながら、権利者側(貸与権管理センター)と利用者側 (CDVJ) とでの協議が平行線のまま(そして管理団体の運営に必要な管理委託契約約款と使用料規程が未だ出来ていない)──という異常事態が気になって仕方ないのが理由だが、正直な話、今年の著作権法改悪の時点でもっと騒いでおけばと後悔しているという理由もある。
 確かに、私は著作権法改悪に関して声を挙げてはいた(と言っても、主に個人ブログの中でだが)。しかしこれは還流防止措置についてが主であり、書籍貸与権については敢えて触れていなかった。権利者側の“話は着いた”との説明を迂闊にも鵜呑みにしてしまったのは否めない(それでも貸与権対象など、残された問題も小さくなかったのだが)。私個人のことを言えば、去年 12月 に提出したパブリックコメントで、禁止権ではなく報酬請求権とすべきとの旨を送った程度の意見表明だった(なお この文章は、まだ著作権法などの資料にあたる前に書いた最初期のものなので、用語・考え方において不適切な部分も散見される。我ながら ちと恥ずかしい)。その後の私の発言を考えても、ブログ等での採り上げられ方を考えても(まぁ私が音楽関連ブログばかり呼んでる所為もあるかも)、やはり還流防止措置との温度差があった。
 ところが。ここへ来て貸与権への関心が集まってはいないだろうか。もともと著作権関連の話題を採り上げているブログはともかくとして、それ以外のニュース型サイトでも採り上げられている。うちの記事も一部のサイトに採り上げられて、当該記事だけアクセス数が跳ね上がるという事態になった(まぁうちのような弱小ブログだから たかが知れてるのだが、それで新たな読者を得たわけではなく笑うに笑えない‥‥)。その出来事を目の当たりにして思ったものだ──なぜ あの時にこれだけの関心を得られなかったのだろう? 私自身をも含めて。

 さて。前の記事で川内博史議員(文化庁著作権課関連の質問主意書を連発し問題点を明らかにしてくれる、ありがたい国会議員のひとり)のブログでの文章に“ツッコミ”を入れた。あの時は時間が取れなかったのでサラッと書くしかなかったが、今回は少し落ち着いて考えてみたい。また、私が川内議員の文章を若干読み違えている部分も見受けられるので それについての補足も踏まえつつ‥‥(なお先の文章はそのまま残しておく。読み違えが論旨にさほど影響しないと思えるためだ)。

http://blog.goo.ne.jp/kawauchi-sori/e/6ccec201f98a63da1274c6a81270e998
「正々堂々blog:貸与権第2弾!」


さすがに、貸与権の問題はみんな興味があるようなので、もう1発!

出版社側と行司役の文化庁著作権課が考えている落しどころをぼくなりに予想してみました。
先日の5項目を思い出してください。
キーポイントは、手数料率は使用料の50%以内が妥当な範囲ではないか、いう点。
もうひとつは、作家は出版社の皆さんを大変に信頼し、結束が堅い、という点。
以上2点が、重要です。
あくまでも、出来上がりの使用料で管理センターのコストをまかなう事が、お金を取る側にとっては重要なのです。 そうすると、あちらさんは『結束』をしているのですから、今巷間言われている、出来上がりの使用料が280円だとすると、280円のうち、作家の取り分を140円。しかし、作家の取り分のうち60円を作家は管理センターに自主的に寄付する。そうすると、センターの取り分は、出版社側の思惑通り200円になる、というわけです。

 ──リンクおよび引用を再掲。

 川内議員が述べているのは「出版者側と行司役の文化庁著作権課が考えている落しどころ」であり、まぁ言ってみれば出版社・文化庁が結託した末の“目論見”のこと。もちろん川内議員による「予想」ではあるのだけど。その「予想」と、現実の交渉を照らし合わせて考えてみたい。
 400円 のコミック1冊を例にとり、レンタルコミック店は入荷時に 280円 の使用料を上乗せで払うとする(これに決まったのではなく、仮定での話であることに注意)。そのうち著作権者へ 140円、 管理センターへ 140円 とする内容の提案が話し合いで出ていれば、「使用料高すぎる、もっとまけろ」という単純な話になっていたのかも知れない(それでも管理センターの取り分は多いと思うけれど)。もし その後で、川内議員の言うように、著作権者が 60円分 センターへ寄付するという合意があったとしても、それ自体は外野がとやかく言うものでもない(本当に合意しているのなら、だけど)。交渉する側としては「使用料まけろ」で済んだ話だ。
 そう、もし管理センターと文化庁側が本当にこれを考えていたのなら、対外的には「著作権者には 140円、 管理センターに 140円」 と言っておけば良かったのだ。しかし管理センターは馬鹿正直(もし上の「落しどころ」が事実なら)にも言ってしまった。そりゃそうだ、訊かれたんだもん。利用者側からすれば1円でもまけて欲しいし、どうせ払うなら きちんと著作権者へ渡っているのかも確認したい。センター側から提案された使用料の根拠と内訳を利用者側が尋ねるのは当然だ。で、センター側は答えちゃった訳。「著作権者に 80円、 センター・出版社・取次に 200円」。
 これで仮定の話として出た「落しどころ」は否定される。川内議員が「予想」した通りに連中が考えていたとしても、この回答で全て“おじゃん”だ。

 件の回答は、ツッコミを入れる絶好のポイントを利用者側へ与えてしまった。まず出版・取次という名前を出してしまったこと。これが不当利得であることは誰の目にも明らかであり、この分を削らせるという正当な要求が可能となる。そして それ以上に大きかったのは、著作権者の取り分が 80円 で充分なのだとバレてしまった点だ。これが今後の話し合いの基準になることは間違いない。管理センターの手数料を、この 80円に どれほど上乗せするかが話の中心となるだろう。
 10月12日に 交渉が決裂したときには、 利用者側 (CDVJ) は1冊あたり 60円 を主張していたという。貸与権センター側の定価相当額ってのは論外としても、交渉時には互いに吹っ掛け合うわけだから、協議再開時に「著作権者に 140円」 という主張だって センター側にしてみれば当然あり得たわけだ。それを 「80円」 とやってしまった(まぁ最後の妥協としたつもりなのかも知れないけど)。だから見なさい、 その後で CDVJ が出した提案 (PDF 参照)では きちんと 「80円」 が基準にされている。ディベート上ではセンター側の完敗だ。後は“撤退戦”しか残されていない。もちろん著作権を楯に押し切る方法があるが、こんなもので消費者の支持を得られよう筈もない。何せ不当利得の塊だから。
 私は協議の当事者ではないから (つまり CDVJ 側の人間ではない)、あくまでも一消費者の立場でしか物を言えないわけで、センター側と CDVJ 側との妥協点がどこになるのか予想することは出来ない。しかし使用料が安ければ安いほど利用者側が助かるし、 CDVJ が 「280円」 案を呑むようには全く思えない訳だ。あれだけのツッコミどころがあるのに CDVJ が呑んでしまえば、それはそれで大問題である。

 ところで、自身の予想した「落しどころ」について、川内議員はどの様な見解を持っているのだろう。もちろん考えとしては否定的な立場ではいるのだと思うけれど、例の文章の中では直接的評価をしていない。これが私の読み違えの原因だったのではないか──川内議員が件の 「280円」 案に好意的ではないかと受け取ってしまった(もちろん私の“慌てんぼ”が最大の原因であり、この考察が責任転嫁であるとの誹りは免れ得ない)。

コミックレンタル店は、全国にまだ300店舗しかないのですから、作家はそこからの収入等には、期待していない、ということなのでしょうかね?それとも、使用料は、コミックレンタル市場を抑制するためのものなのでしょうか?
(中略)コミックレンタル市場がブレークしてコミックファンの数が増えることが出版社にも利益になると思うのですが、現状の枠組みの中でしか数字の計算が出来ないようでは、経営の感覚として如何なものかと思います。
レンタルけしからん、という発想から抜け出し、新しいビジネスモデルを作り出すチャンスが来てるというのにね。



※ 『正々堂々 blog』 (リンク前掲)より引用

 川内議員の例の記事、その後半を引用してみたが、ここでの趣旨には私も同意するところである。
 まず、著作権者側(正確には出版社の連中)はコミックレンタル産業を育てようと考えているようには思えないという点。ここまで本が売れない時代になっても、まだコミックレンタルを潰せば本を買って貰えるのではないかという甘い考えを抱いているようにしか見えない。だから使用料の話でもきちんと話し合いをしない。貸与権付与(正確には適用除外の撤廃)の話が出た当時から、消費者からは「コミックレンタル潰し」「出版社保護」としか認識されていなかった。マンガ喫茶が対象になるんじゃないかと勘違いしている人が今でもいるようだが、その文脈においてもやはり、出版社が利益保護のために流通の一形態を潰そうとしているというのが一致する見方なのである。「使用料は、コミックレンタル市場を抑制するためのものなのでしょうか?」との川内議員の疑問は、我々の問題意識と近いところにある。
 川内議員は、「現状の枠組みの中でしか数字の計算が出来ないようでは、経営の感覚として如何なものかと思います」との批判(穏やかにではあるが)を出版社に投げかけている。これもその通りだと思う。現状の枠組みですら満足に利益を上げられない中で、レンタルコミック市場は新たな利益創出の機会である(出版社は使用料を取る権利は無いが、店舗が増えればその分 売れる本が増える)。映画業界におけるビデオレンタル、レコード業界におけるCDレンタルの例で一目瞭然なように、レンタルコミック市場は出版業界を支える可能性を秘めている。また価格の制約が緩くなるため、顧客の志向がそのまま反映されるようになる。マーケティングとしての価値だって無視は出来ないはずだ。新しい企画への反映や、新品販売における価格付けの参考、新品としての付加価値の創造など、レンタルコミックを前提として初めて可能となる世界が開けてくる。それをみすみす潰してしまえばどうなるのか考えたことは無いのだろうか。ただでさえ売れない本、それでレンタルコミック店まで本を買わなくなったとしたら‥‥?
 このまま交渉が決裂したままだったり、管理センター側の不当な要求のまま押し切られた場合には、明らかに著作権法改悪時の附帯決議に反することになろう。その場合の責任ある対応を国会には取ってもらいたいし、そのためにはエンタメ議連が率先して動いていくことを願ってやまない。




 川内議員のブログ(文化庁との話の方)について、 CDVJ 赤田理事も採り上げていた。

http://www.arts.or.jp/cgi-bin/bbs_listmessage.cgi?PARAM=2&ID=9047
「ARTS - Association of Retailers of TV-game Software
 (communication bbs_listmessage)」
▲ 見出し「川内先生の文化庁ヒヤリング」。


ヒアリングの内容は秘書の方からも電話をいただいています。以下私の感想です。

(中略)第4点の手数料率について文化庁はレコードレンタルの例から見ると「50%以下」とのことですが、どこから出た数値でしょう。JASRACで15%ですから、間違いじゃないだろうか。
なおCDVJへ管理センターが提示した70%の手数料は、川内先生との話しでは文化庁が否定したようで、伝えたらCDVJの交渉担当者は怒ってました。

 この他、第1点・第3点について言及があるのでリンク先でお読み下さい。
 文化庁の 「50%以下」 との見解には私も疑問を感じていたのだけど、こういうことは当事者の口から指摘した方が効果的かな。 「70% の手数料は、川内先生との話では文化庁が否定した」との話には呆れてしまう。 「CDVJ の交渉担当者は怒ってました」ということだから、今後の交渉の行方から益々 目が話せなくなった。
 ──また決裂か? それにしても、文化庁(著作権課)って文化活動の足を引っ張るだけの組織なんじゃないかと思えてくる。こういうのは「行司役」とは言わない。




【追記:2004.12.23】

 川内博史議員のブログで本人の見解が示された。

http://blog.goo.ne.jp/kawauchi-sori/e/482a1a61722d79452eddd5f154d6ad55
「正々堂々blog:独占禁止法改正案」


貸与権の第2弾で落としどころの予測をしたけれども、これはあくまでも出版社側と行司役の文化庁が探っている落としどころを、こんな感じだろうとぼくが予想しただけの話で、ぼくの考えは全く別なので念のため。

あのJASRACでさえ、手数料15%なのですから、作家の取り分が80円だとすると、できあがりの使用料はどんなに多くても100円くらいが適当なのでしょう。コミックレンタル店が現状300店しかなくて、それでは管理センターが運営できないというのであればコミックレンタル店をふやして収入増をはかるべきでしょう。作家の使用料が80円で合意できるのに、手数料で対立するのは、本末転倒です。管理センターの手数料を削ることができないのであれば、CDVJ案にのらざるを得ないのでは?

 そう、これが聞きたかったのだ。
 せっかくのブログなのだ、川内議員自身の考えを明らかにしてほしかった。文化庁・管理センター側の「落しどころ」をどう考えているのかも含めて。必ずしも私のこの記事への反応とは限らないけれど、フォローを御礼申し上げる次第。

 川内議員の見解に同意する。
 また、今後 管理センターがどう主張してくるかが要注目であろうと思う。「作家の使用料が 80円 で合意できる」事実を認めようとしない可能性があるし(現に管理料 200円 の件は否定したそう)、勿論 CDVJ 側はこれを許してはならない。議論としては既に勝負が着いているのだ。
 文化庁が不当な肩入れをしてこないか、監視も必要だろう。

 “レンタルコミック潰し”を阻止しなければならない。

投稿:by 谷分 章優 06:53 午後 [著作権行政 watch] | 固定リンク

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