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2005.06.22

私的録音録画補償金 ──6.30 決戦に向けて

http://www.bunka.go.jp/1osirase/
bunkasingi_chosaku_housei5_200506.html

「文化審議会著作権分科会
 法制問題小委員会(第5回)の開催について」
(文化庁)

 6月30日の 法制問題小委員会(第5回)の傍聴受付が 21日に 始まったのだが、あっという間に締め切られてしまった。私が気付いたのは 22日夜のことだが、 実際に締め切られたのは もっと早かったも知れない (CHOBI での Tonton さんの書き込みによると、「昨日の17時位迄は受け付けていた気がした」とのこと)。
 今期の文化審議会 著作権分科会の中でも、特に法制小委は重要議案が目白押しとなっている。その中でも最も注目度が高いのは 第5回で予定されている私的録音録画補償金制度の見直しに関する審議だ。これが前に話し合われた第3回の注目のされ方と来たら、私も苦笑いしたくなるほど(やはり ITmedia が記事にすると伝播力が大きいのよね)。第5回でも同様の、いやそれ以上の目が向けられていることは想像に難くない。

 ちなみに今期の法制小委の予定が如何ほどかというと、小委員会での配付資料も参照して欲しいのだが、ワーキングチームでの検討内容をも踏まえた審議が第6回以降に行なわれる。この回から議題に加わるのが「デジタル化時代に対応した権利制限の見直し」「技術的保護手段の規定の見直し」「契約規定全般の見直し」「間接侵害」だ。そして今まで議題に上がったのは特許・薬事・図書館・教育・障碍者に係る権利制限と件の私的録音録画補償金。これらを8月の中間まとめ(これに対して意見募集が行なわれる予定)、 11月の 法制小委報告書へとまとめていかなくてはならない。はっきり言って1ヶ月に1度の審議では捌ききれない議題数だ。
 そうした訳で、それなりの時間を割いて私的録音録画補償金を議論できるのは第5回が最後だとも考えられる。 『The Casuarina Tree』 の謎工氏が「補償金決戦迫る」と表現しているのは決して大げさではない。

http://00089025.blog8.fc2.com/blog-entry-61.html
「補償金決戦迫る」
(The Casuarina Tree)



 特に、今回は文化庁(≒JASRAC)と経産省(≒JEITA)がそれぞれ浮沈を賭けた総力戦であり、当日は前々回の審議以上に緊迫した議論が予想される。最終的に補償金を払わされるかも知れない立場の利用者が現時点で可能なことは、この時点から議論の動向を注視し最悪「唯一の意見表明機会」になってしまう恐れすら有るパブリックコメントに臨む準備を整えることである。

 こう言っちゃ何だが、今から非常に楽しみなのである。上に引用した謎工氏の表現(前段)を見て さらに楽しみになった。かつてないほどマトモな討論が見られるかも知れないのでね。私は傍聴レポートや記事・議事録を通してでしか様子を知り得ないけれども。
 で、パブコメだ。もちろん出しますよ。ブログ休んででも書く(笑)。




 私的録音録画補償金とは何ぞや? という方には、以下のリンクを読んでおいて戴きたい。その制度の概要と問題点が理解できる筈である。あえてここで解説はしない。

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/013/04122401/001/003.htm
「私的録音録画補償金制度の概要」
(文部科学省)
▲ 法制小委 平成16年 第5回において配布された資料。事務局作成。

http://www.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0505/16/news020.html
「私的録音・録画補償金制度では誰も幸せになれない」
(ITmedia ライフスタイル)

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/013/05050301/007.pdf
「私的録音録画補償金の見直しについて」
(電子情報技術産業協会・ PDF)
▲ 法制小委#3配付資料。

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/013/05050301/008.htm
「私的録音録画補償金の見直しについて」
(社団法人日本記録メディア工業会)
▲ 法制小委#3配付資料

 で、ここで何をやりたいかと言うと、私自身の考えを整理しておきたいなと。もちろん法律の素人によるものだから、確固たる根拠などない私論な訳だが。

http://ch.kitaguni.tv/u/1829/%B2%BB%B3%DA/%B2%E6%BB%D7%A4%A6%B8%CE%A4%CB%B2%E6%A4%A2%A4%EA/0000022111.html
「CD-R 焼いてふと考えた」
(試される。 -北国tv)

 これは、(恥ずかしながら)まだ私が「レコード輸入権」問題に首を突っ込む前の文章である。一部に認識違いとも思われる部分が見られるが、考えの基本線は今も変わっていない。これを基にして整理したい。

 まず、単純に私的録音録画補償金をどう考えるか。これは縮小すべきだと思う(廃止──とまでは言わない)。 iPod を対象にすべきとか、汎用機器・汎用媒体を対象にすべきとか、そんなことを言っている場合ではなく、制度そのものを根本的に見直すべきである。
 何故そう考えるかというのが上の 「CD-R 焼いてふと考えた」である。私的複製すべてを一括りには出来ず、そのコピー元となる音盤(あるいは映像記録)が何かによって、著作権者に補償されるべきものと補償しなくて良いものが分かれるのではないかと思うのだ。
 自分が持っているCDを(自分で使うために)コピーするのに補償金を要求されるのには納得できない。手持ちCDから編集盤を作って聴くのは私もやっている。今ならパソコンや iPod に曲を取り込むのも同種の利用法だ。これは権利者に損害を与えるような利用法ではない。
 コピー元がレンタルCD等の借りてきたものなら、確かに権利者に損害を与えるだろう。しかしこの中でも、廃盤等の事情で入手できないものであれば コピーして補償金を求められるのは納得できない。需要のあるものを勝手に売らないのだ、権利者がみすみす販売機会を失しているだけの話である(私は著作権制度を楯にした廃盤・絶版を何よりも憎む)。
 よって、補償金を課すべき場面というのは、現行の制度よりも非常に限られてくる筈だ。法的根拠はともかく、払う側の気分としてはそういう感じである。

 ところが、補償金を要求する権利者や制度運営側はそう考えていない。あくまでも「私的複製」が権利を侵害するものだと考えている節がある。
 例えば、先にリンクを示した法制小委事務局作成の「概要」には「著作権者等は、デジタル方式の録音・録画機器及び記録媒体を用いて行われる私的な録音・録画に関し、補償金を受ける権利を有する」とされており、どのような場面での複製かは考慮されていない(──というのは言い過ぎで、本来なら機器・媒体を指定するときに考慮される制度設計なのだろう。しかし現行運用で問題が生じているのは明らかである)。
 また、私的録音録画補償金管理協会によるガイドブック『私的録音録画と著作権』(文化庁が監修しており、著作権情報センターが配布。また、著作権情報センターのサイト内には同内容のウェブページも用意されている)にはその本音を垣間見ることができる。

http://www.cric.or.jp/qa/cs02/cs02_3_qa.html
「ケーススタディ著作権 第2集」
(著作権情報センター)



Q3
私的に録音・録画した複製物を人に売るわけではないのですが、それでも権利者の利益を害することになるのですか。

(中略)
個々に見れば家庭内におけるごく小さな範囲の私的な録音や録画であっても、これを社会全体として見た場合は、大量の録音物や録画物が作成されることとなり、このような膨大な著作物の複製をトータル的に見れば、権利者の利益が損なわれていることとなります。

 極めつけは、今期の法制小委#3で発言した音楽制作者連盟常務理事の発言である。

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/013/05050301.htm
「文化審議会 著作権分科会
 法制問題小委員会(第3回)議事録」
(文部科学省)



(上野音楽制作者連盟常務理事) (中略)目の前にある、じゃあMDと同じような行為、今まで自分のライブラリーからCDをMDレコーディングプレーヤーに入れてMDに抜いて、外にMDを持って出ていく。これに補償金がかかっている。同じように、自分の持っているパソコンにライブラリー化した音楽をiPodに抜いて外へ持っていく。これは補償金がかかっていない。私的録音補償金制度に行為としてはまったく同じ行為をしているにも関わらず、この問題が今論じられた時に、11年度以降の話のように今聞こえているのが僕はちょっとよく分からない。目の前の問題です。

 こういった「権利者」側の主張が成立するためには、私的複製が即ち「利益」を損ねるものだという前提が必要である。これは勿論、我々の感覚からすれば(とくに「フェアユース」の考え方を知ってしまった今では)納得しがたいものだ。
 それでも彼らの立場で考えてみようか。なぜこのような発言が堂々とできてしまうのか。私が苦し紛れに出した答えの一つは、彼らが著作権法の「複製権」ありきで考えているのではないかというものだ。つまり、私的複製として権利が及ばないとされているにも関わらず、それはあくまでも例外の規定であって 本質的には権利侵害なのだ、と。

 こうした考え方による歪みが顕在化しているのが今の私的録音録画補償金制度なのだと思う。利用の態様を考慮せず ディジタルでの「私的複製」を一括りにして補償金を課す。そのために次は iPod だ、次は汎用機器だ、などと対象の拡大ばかり無制限に主張される利権と化してしまった。制度上の歯止めはそこにない。あえて言うなら、審議会が認めるか否かというところだろうか。しかしそれでは「権利者」が言いたい放題なのは変わらない。
 iPod を対象とすべきかという議論が出るとき、私はアンビバレントな思考を余儀なくされる(著作権関連の問題はこういうケースが多くなるのだけど)。 iPod はコピーを増やすという種類の複製を伴わない。一定容量内でコピーしたり消したりという態様である。とは言え、ここでの「コピー」とは紛れもなく「録音」の一形態だ。ディジタル処理された「録音」だ。だから私的録音録画補償金制度を導入した思想からすればクロという判断になるのが自然。どんな態様の私的録音でも権利侵害なのだと考える立場からすれば──との前提では私は悲観的にならざるを得ない。
 だから私は 「iPod が対象とされるのは不可避」と発言してきた。法制小委でも、現行制度で指定可能とする意見も出された。当然 私はそれを望まないが、現行制度からすれば(論理的帰結として)指定されるのが自然だ。
 ──いや、法制小委の今までの流れからすれば、若干の希望は持てているけれども。

 ところで、 iPod が議題になっていることを批判する人たちには ぜひ考えてみて欲しい。 iPod が指定されさえしなければ それで良いのだろうか、と。ここで指定が阻止できれば それで済むのか。そもそも私的録音録画補償金とは何なのか。あれは妥当な制度なのか。MDに補償金を課すこと自体、妥当なことなのか。
 我々が声を挙げるべきなのは、 iPod の指定に対してだけではなく、制度そのものに対してではないのか。あの制度が あの趣旨で存続する限り、さらに第二・第三の iPod が俎上に上げられるのは間違いない。──「フェアユース」など微塵も考えない「権利者」を名乗る連中によって。




 まぁ素人考えを長々と書いてきた訳だが、ここで専門家の意見をクリップしておこう。

 まずは以前トラックバックを戴いた小倉弁護士 『benli』 の記事から。

http://benli.cocolog-nifty.com/benli/2005/05/cccd_37af.html
「CCCDとライセンス料等」
(benli)

 ここでは、 iPod を私的録音録画補償金の対象とすべきかを論じるところから始めて、この制度自体に疑義を投げかける内容となっている。特に、 「CCCD」 のレンタルでの使用料を考察するのに「公への演奏」を引き合いに出している点が興味深い。 「CCCD」 を出しておきながら補償金を受け取るのは おかしいじゃないか──とは音楽ファンから よく指摘されたところであるが、その矛盾を解消する(ひとつの)答えにもなっている。

 特に 冒頭の、小倉弁護士の正論には力づけられる。

 この問題を考える上で重要なのは、「著作物が複製されること自体によって、著作権者はいかなる損害を現実に被るのか」という視点で物事を考えていくことです。

 iPod の利用は 「Media Shift」 に当たり、「正規商品とは市場で競合しません」と説明する。この論の組立て方 自体は、小倉弁護士の今までの記事の中に度々登場していた。だから私も少なからず影響を受けていると思うのだが、今あらためて読み、自分の立ち位置の確認をさせてもらった気持ちだ。
 レンタルされたCDがコピーされたときには「競合」するという状況分析にも共感できる。そして、冒頭の前提が私的録音録画補償金制度の問題点をも あぶり出す所にも。

「私的録音録画補償金」は正規の音楽CDを購入して「Media Shift」をしているだけのユーザーにも負担を課している点で問題が大きいような気がします。「CDレンタル&媒体への私的複製」によるライセンス料収入の減少を補うのは、もっぱらCDレンタルについてのライセンス料によってまかなうべきではないかと思います。

 なおCDレンタルと言えば貸与権の話になるが、これの創設当時に面白い話がある。 CDVJ のサイトでの解説によれば、「昭和59年に貸与権が創設された当時は、権利者に『レンタルはコピーを助長する』といった考え方が強くあったため、使用料金額については、ユーザーがコピーを行なうことを踏まえて、当時の録音使用料をベースとして決められました」という。さらには「私的録音補償金制度が導入された現在、各権利者はユーザー及びレンタル店双方からコピーに関する代償を二重に受け取っていることになるため、CDレンタル使用料の早急な見直しが必要です」とも。

 ──話を貸与権から戻す。
 小倉弁護士が繰り返す、「正規商品」と「市場で競合」するという要件は「スリー=ステップ=テスト」というものの一部らしい。私は不勉強なもので、そんなものを意識せずにいたのだけど。
 法制小委#4で配布された資料の中に、山本委員(弁護士)から提出された文章がある。「権利制限の法理」についてという題のものだ。

http://zfyl.shacknet.nu/050527_mat1-2.pdf
「『権利制限の見直し』に対する
 法制問題小委員会各委員提出意見」
▲ 法制小委#4での資料1−2を PDF 化。
  『zfyl』 にて配布されているもの。
  なお本家・文科省の議事録ページにはまだ掲載されていない。



権利制限規定は、ベルヌ条約9条2項および TRIPS 協定13条に基づいて、いわゆる「スリー・ステップ・テスト」に適合するものでなければならない。したがって、スリー・ステップ・テストは、権利制限規定の立法のみならず、解釈においても基準とされなければならない。(中略)
 スリー・ステップ・テストの第1要件は、権利制限のある特別な利用行為が立法措置において特定することである。第2の要件は、その利用行為が「当該著作物の通常の利用を妨げない」ことであり、第3の要件は、その利用行為が「著作者の正当な利益を不当に害しない」ことである。

※ 当該資料 44ページより引用。

 私的複製も権利制限の一種であり、何かしら議論となる時には この「スリー=ステップ=テスト」に拘束される。このうち第2要件の「当該著作物の通常の利用を妨げない」というのは、つまり著作者らが著作物(の複製)を販売することで利益を得るという「通常の利用」を妨げないということだ。ここで小倉弁護士の表現が関係してくる。
 山本委員もその基準として、 WTO パネル報告書 (2000年5月5日) を引用してこう説明している。「権利者が著作物に対する権利から経済的価値を引き出す通常の方法と経済的競争を生じ、これにより権利者から多量のまたは実質的な商業的利得を奪う場合」に通常の利用を妨げたと判断される、と。
 となると、やはり私的録音録画補償金の妥当性を疑わざるを得ない。補償金が課せられる多くの場合において、補償金は本当に必要だったのか? やはり小倉弁護士も指摘したように、CDレンタルとの関連を考えるのが先ではないか。

 最後は法制小委の中山主査の言葉を引用しておきたい。必ずしも私的録音録画補償金について述べたものではないけれども、著作権の考え方の基礎として肝に銘じておきたい。もっとも「複製権」ばかり主張する「権利者」どもの発言を見るたびに このくだりが浮かんでくるんだけどね。

著作権を天賦人権のように考え、絶対的なものと考える向きが一部にはあるが、著作権制度といえども、所詮は他の制度と同様、社会の中の一制度であり、他の社会的要請との調和を図る必要がある。

※ リンク前掲の、法制小委#4資料1−2を参照のこと。
  42ページより引用。

 もっとも中山主査は「権利者のために真に考えなければならないことは、(中略)インターネットを通じた侵害を如何にして防ぐか、といったデジタル時代の大きな問題である」とも述べている。その意味では、私的録音録画補償金に理解を示しているようも思われる。だからこそ、バランスを意識した舵取りをしてもらえるのではないかと私は注目する。

 いや正直、私には法制小委の今後の流れを読むことはできないのだ。かつて記事の題にしたように「信じても良いのだろうか?」である。元はと言えば この制度を導入したのは法制小委(名前は違ったのかも知れないけど)、あの還流防止措置を送り出してしまったのも法制小委である(これは積極的に肯定したものではなかったが)。どこまで正論が通るのか、楽観視できないのである。信用できないのである。
 ああ‥‥。

投稿:by 谷分 章優 11:17 午後 [著作権行政 watch] | 固定リンク

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