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2005.07.01
法制小委#5 ──私的録音録画補償金制度自体には問題点指摘の意見殺到、しかし iPod 課金は賛否割れる
6月30日、 文化審議会 著作権分科会 法制問題小委員会(第5回)が予定どおり開かれた。議題は「私的録音録画補償金の見直し」について。
前回に予告された通り(第4回議事録参照のこと)、委員が先に意見を提出し、それを踏まえて話し合われた模様だ。
同じく第4回での予告では「前回御出席いただきました説明者の方々にも再度御出席をいただいて」とされていたが、意見対立を鮮明にした権利者側・メーカー側の代表は実際に呼ばれたんだろうか? そうすれば まさに「決戦」の場と化したことは想像に難くないのだけど。
すでに報道が何本か出ている。新聞記事の中から、産経新聞のものを紹介しておく(記事自体は共同通信の配信)。
http://www.sankei.co.jp/news/050630/sei074.htm
「iPodなどの課金先送り 著作権補償で文化審小委」
(Sankei Web 政治)
▲ 引用はこちらから。
http://tontonsblog.seesaa.net/article/4744185.html
「iPodなどの課金先送り 著作権補償で文化審小委」
(Where is a limit?)
▲ ネタ元。
文化審議会著作権分科会は30日、法制問題小委員会を開き、大人気の「iPod」などハードディスク内蔵型やフラッシュメモリー型の携帯デジタル音楽プレーヤーを、音楽や映画の著作権を守るためMDプレーヤーやDVDレコーダーの販売価格に上乗せして課金している私的録音録画補償金の対象に加えるかについて協議したが、賛否が割れてまとまらず、次回に結論を持ち越した。
まぁ、これで「決戦」の結果は判りましたわな。
──先延ばし(笑)。
しかしね、 iPod 課金に限って言えば、ここまで審議がもつれたのはラッキーな方なんじゃなかろうか。
配付資料(後述します)の委員意見を読んでみると、私的録音録画補償金の問題は皆認識していても、制度の前提を容認している意見が圧倒的なのだ。つまりディジタルコピーは(どんな態様でも)権利者の利益を侵害するもので、ディジタルコピーができるってだけで補償金を課すべきだという(もちろん本来の機能が録音か録画にあるという要件には拘束されるが)。
そんな考えが主流だったら、 iPod に課金することは とても避けられない。どう考えたって、あの製品は音楽を聴くことが主な用途のディジタル私的複製機器なんだから。
にも関わらず意見が割れたってことは、私的複製の状況変化とか 消費者の理解を得られていないとか 制度自体が不適切だとか、そういった諸々の問題点を放置して課金対象を拡大すべきではないと主張する委員が少なくなかったということだ。それだけ問題意識が共有されているという。
まだ最終結果はどちらに転ぶか判らないが、スケジュールが詰まった中でさえ先延ばしせざるを得なかったことは割合よろこばしい事なのではないかと思う。繰り返すけど、私は課金への流れの方が強いと思うから(その反面、その流れが変わることを望んでいる)。
上記の産経記事で目につくのは、「補償金がiPodなどに課金される場合は数百円となる見込み」との部分。委員から質問か何かあって話に出たのだろうか。
もともと私的録音録画補償金の額は「カタログに表示された標準価格の65%相当額の2%(上限1,000円)」(録音機器の場合)と定められているので、現在の iPod の価格から計算することが可能である。もっとも iPod の価格は型番で異なるから、金額に幅が出てくるけれども。それはともかく、この数字で“文化庁は iPod 課金の試算をしている”とか疑ってはいけませんよ。
あと、同記事で対立した意見の例として前田委員と山地委員の意見がそれぞれカッコ書きで挙げられている。しかしね、こんな対比をさせちゃイカンでしょ。
「iPodは技術的には(音楽以外のデータ記録などもできる)汎用機であり、音楽専用として課金対象とするのは理解できない」という山地委員の意見の方は極端にすぎる。いや確かに iPod でOSは走るよ。それでもあれは音楽プレーヤー。どう考えても苦しい抗弁で、(あの意見を直接対比させれば)前田委員の意見の方に分がある。
むしろ制度見直しを求める意見が多かったことを対立項として挙げるべきだったのではないか。だからこそ何の検討もなく課金対象を拡大することは許されないのだ、と。議論を長引かせているのは この主張が(無視できないほど多く)支持されてるからだ。
審議内容の詳しいところについては、やはり ITmedia の記事が使える。 iPod 課金への委員発言が引用を交えて伝えられており、審議の内容を知る情報としては新聞記事よりも有用だ(この辺りは伊達に追い続けてないなぁ。もちろん文字数の制約が新聞より比較的緩いというのもある)。
もっとも、今回の報道で一番おいしいところを さらっていったのは日経エレクトロニクスだ。 『What's my scene?』 で紹介されてた記事だけど、これの現状認識(冒頭の文)が笑える。いわく、「私的録音録画補償金の制度改定をめぐる議論が泥沼化している」。
──もっと泥沼化して貰わんと困るわな。俺たちにしてみりゃ。
いつものように、 『zfyl』 で傍聴レポートが用意されている。毎回の傍聴(法制小委だけでなく、関連審議会で全て傍聴されている‥‥)、配付資料の PDF 化、議事概要メモのまとめ等、その労力には想像を絶するものがあると思われるが、こちらとしてはディスプレイの前で何度も頭を下げて感謝しながら使わせてもらうしか出来ることが無い。本当にありがとうございます(全部チェックさせてもらってます)。
http://nirvana.blog1.fc2.com/blog-entry-42.html
「著作権分科会 法制問題小委員会(第5回)」
(zfyl)
資料 (PDF) が掲載されているので、今回はこれを元に記事を構成する。なお「議事概要(メモ)」は現在「作成中」とのこと。「土曜日以降公表予定」とあるから、私のこの記事に前後して載るかも知れないねぇ(私はこの記事を書くのに数日を費やしてたりする)。
ところで、今期の法制小委は議題について あらかじめ委員意見を集めるという手法が採られているのだが、前の第4回で傍聴者に配布されたと思しき委員意見資料は文部科学省の公式議事録ページ(第4回)に掲載されていない。これはどうしたことなのだろう? 議論過程の意見だから広く公表しないということなのか。これを読ませることで、「著作権マインド」を向上させることが望めると思うのだが。
今回の委員意見も、もしかすると公式議事録ページに掲載されないかも知れない。そうなれば 『zfyl』 で入手できる PDF は実に貴重なものだ。今回も実に興味深い意見が掲載されている。
配付資料
1−1 私的録音補償金の分配の流れ
(私的録音補償金管理協会作成資料)
1−2 私的録画補償金の分配の流れ
(私的録画補償金管理協会作成資料)
2−1 海外の私的録音録画補償金制度について
(社団法人日本音楽著作権協会等関係権利者7団体、
デジタル私的録画問題に関する権利者会議作成資料)
2−2 私的録画補償金制度における放送事業者の考え方
(デジタル私的録画問題に関する権利者会議作成資料)
3−1 「私的録音録画補償金の見直し」に対する
法制問題小委員会各委員提出意見(論点別整理)
3−2 「私的録音録画補償金の見直し」に対する
法制問題小委員会各委員提出意見(各委員からの個票)
私はいつものように、資料についてのメモを記す。
まず資料1−1「私的録音補償金の分配の流れ」。
私的録音補償金は、まず私的録音補償金管理協会 (sarah) に集められる。そして「共通目的事業」の基金へ2割差し引かれた後、日本音楽著作権協会 (JASRAC) と日本芸能実演家団体協議会と日本レコード協会 (RIAJ) の3団体に配分される。ほぼ3等分といった感じ (JASRAC が数パーセント多い程度)。そこから各団体の規程に基づいて権利者へと配分されるわけだ。ちなみに、 JASRAC からは一部 日本脚本家連盟にも配分されるらしい。
資料を概観すると、ここで登場する各団体への配分額、そして権利者への総配分額は示されている。しかし一人当たりの配分額が示されていない。せめて配分対象となる権利者の数が書いてあれば概算も可能だろうが、それも無い。実際に配分していれば、このあたりのデータは存在するはずだが?
資料の中身は読んでそのままと言った感じで特に感慨も無いのだが、あえて感想を述べれば、各団体が差し引く手数料が目を惹く。たいした収入だよな? しかも定期的なもの。補助金か何かと勘違いしかねないところである。ホント利権そのもの。状況次第で廃止されるべき補償金だという観点が管理団体側に無くなるのもむべなるかな、だ。
あと JASRAC の「分配の流れ」表には、 JASRAC に委託していない人のための分配金「非委託者分配基金」が用意されるとあるが、これが実際にいくら支払われているのか書かれていない。もしかして全然 支払われていないのか? さらに言えば、非委託者に分配する際でも JASRAC はきちんと手数料を貰ってるはずだが、そのことも書いてなかった。‥‥実態なき制度なのかも知れぬ。
資料1−2「私的録画補償金の分配の流れ」。
今度は私的録画補償金管理協会 (SARVH) からの分配の話だ。映像の場合は放送・映画・音楽・文芸などが絡んでくるから、私的録音補償金よりも分配の流れが入り組んでいる。補償金が分配される団体だけ ざっと挙げてみると、 JASRAC ・日本脚本家連盟(日本シナリオ作家協会・日本文藝家協会分を含む)・日本民間放送連盟・全日本テレビ番組製作者連盟・日本映画製作者連盟・日本芸能実演家団体協議会・日本レコード協会──といったところ。
この資料でも、各団体に入る補償金額と各権利者への分配総額が示されている。このうち分配の対象となる権利者の数を示しているのは日本脚本家連盟だけだ。何故だろうね?
私的録音補償金でも私的録画補償金でも、各資料の3ページ目を見れば、各団体の管理手数料を知ることができる。各団体それぞれなのが興味深い。もちろん団体の規模や業務内容の違いがその理由なのだろうけど、各権利者への平均分配額を示せない程度の仕事ぶりなのに管理手数料をガッポリ頂戴してる団体があるということだけは心に留めておきたい。
資料2−1「海外の私的録音録画補償金制度」。
本制度の拡張を要求し続ける「関係権利者7団体」 (JASRAC ・日本芸能実演家団体協議会・ RIAJ ・日本音楽事業者協会・音楽出版社協会・音楽制作者連盟・日本音楽作家団体協議会)による資料。海外の状況をまとめたとしているが、はっきり言って彼らに都合の良いデータしか載せていない。補償金制度があるとされる各国について、「新規製品の指定方法等」「技術的保護手段について」を主に掲載している。
法制小委#5の直前にビジネス=ソフトウェア=アライアンスから意見書が公開されて話題になったところだが、この意見書(リンク先の PDF を参照のこと)には「諸外国における状況」と題したデータも用意され、ちょうど本資料2−1と互いに補完する内容となっている。つまりこちらも都合の良いデータしか載せてないということだが。
ともあれ、次のデータを資料2−1に書き込んで比較することをお勧めする。オーストラリアでは著作権法検討委員会が補償金制度の導入を否決、カナダでは iPod その他の MP3 プレーヤーへの拡大を否定(判決)、ギリシャではPCへの補償金の撤廃を決定、スペインでは政府がデジタル機器への補償金の拡大を否定、メキシコでは上院委員会で補償金制度導入を否決、ノルウェーでは政府が補償金制度に反対──だという。
ちなみに各国の音楽市場の規模が気になるところだが、レコ協でのデータ (2004年) によれば、音楽市場の大きい順にアメリカ・日本・イギリス・ドイツ・フランス・オーストラリア・カナダ・イタリア・スペイン・オランダ・ロシア・ブラジル・メキシコ・オーストリア・ベルギー・ノルウェー・スウェーデン・スイス・南アフリカ(以下略)といった感じだ。ざっと見ると、補償金やってる国と補償金やってない国は半々ぐらいじゃないか? 何より世界第1位のアメリカは補償金制度が無い。
あとは映像の市場規模を知るのに良いデータがどこかにありますかね?
「海外の私的録音録画補償金制度」についてもう1点。提出者の「関係権利者7団体」が表を示すにあたり、こんなことを冒頭に掲げている。
調査結果のポイント
(1)前々回資料「諸外国の動向」に加え、各国とも新規製品を補償金支払いの対象として順次積極的に取り入れている。
(2)私的録音録画補償金制度を廃止しても差し支えないような確実な技術的保護手段はどの国においてもまだ普及しているとはいえない。
(3)技術的保護手段の普及には消費者の理解も不可欠であるが、消費者は技術的保護手段の導入を必ずしも歓迎していない。
これを読んだ時に私は“殺意”を覚えたんだが。こういうことをシレッと言うかねぇ。さも消費者の望みどおりの状況を維持するためには補償金が必要であるかのような言い方をしているが、補償金の存在が消費者の「歓迎」する状況を維持するものではないことは明らかだ。自分たちに都合の良いときだけに「消費者」も持ち出すのは卑劣だ。
「消費者は技術的保護手段の導入を必ずしも歓迎していない」ことが判っていれば、利便性を犠牲にするだけの不完全な「技術的保護手段」などに手を出さず、きちんと消費者の声に耳を傾ければ良いのだ。それを何だ、「コピーコントロールCD」(これはあまりに不完全で技術的保護手段ですらない)だ、地上デジタル放送の「コピーワンス」だ、 iTMS FairPlay の拒否だ、あげくには iPod が「利益を侵害している」だ? そうした主張のどこに「消費者」の「歓迎」がある? この二枚舌め。
ITmedia のコラムで小寺信良氏が書かれているように、重い DRM が掛かっていないのであれば消費者は補償金を払うことを(必ずしも)拒否しないだろう。しかし現実には、米国のような「フェアユース」概念が導入されていないが故に(そして権利者側がそれを無視しているが故に)日本の消費者は世界から見ても稀なほど重い DRM を強制されている。その結果「CD」は売れず、国産の音楽配信は盛り上がらず、地上デジタル放送への移行には僅かな関心しか持たれていない。
さらに言えば、この「関係権利者7団体」の筆頭に名を連ねている JASRAC ほど「消費者」の「歓迎」から程遠い団体もない(まぁ RIAJ も酷いが)。こいつらはレコード会社が相次いで 「CCCD」 から撤退する際にそれを批判している。そして iTMS に対し「日本のルール」なるものを要望している。こうした発言を堂々としていながら、上に引用したように「消費者」の「歓迎」を云々するというのは あまりに消費者をバカにした態度ではないか。
──連中は利権を守るために「消費者」を持ち出しているだけだ。それが違うというのなら、まず普段の行動から見直していくべきだろう。 iPod へと利権拡大を狙っている場合ではない。
資料の話に戻る。
資料2−2「私的録画補償金制度における放送事業者の考え方」。
地上デジタル放送へ完全移行する 2011年 には(その重 DRM を根拠として)補償金制度を廃止すべきとの意見(第3回議事録を参照のこと)を受け、それに反論した(つもりの)文書だ。「デジタル私的録画問題に関する権利者会議」から出されている。
要するに、たとえ1回でも録画できることは確かなのだから補償金を払え──という主張である。それで納得できる人は手を挙げてくれ。
資料3−1「『私的録音録画補償金の見直し』に対する法制問題小委員会各委員提出意見(論点別整理)」。
事務局が設定した問い3つについて、各委員が意見を提出したもの。法制小委#5に先駆けて集められた。この問いに加え、「自由記載」として欄が設けられており、各委員はかなり突っ込んだところまで意見を述べている。私的録音録画補償金の問題に興味のある人には必読の内容と言える。
資料3−1と3−2は実質的に同じ文書である。違いは、意見の並べ方だ。3−1は設問毎にまとめてあり、3−2は委員毎にまとめてある。これらは それぞれメリットがあるので、できれば両方読まれることをオススメする。お暇なら‥‥ね。
ここで設定された問いは次の通り──
1 ハードディスク内蔵型録音機器等について、政令による追加指定に関して、実態を踏まえて検討する。
2 現在対象となっていない、パソコン内蔵・外付けハードディスク ドライブ、データ用の CD-R/RW 等のいわゆる汎用機器・記録媒体の取扱いに関して、実態を踏まえて検討する。
3 現行の対象機器・記録媒体の政令による個別指定という方式に関して、法技術的観点等から見直しが可能かどうか検討する。
如何だろうか。確かにこれらは「私的録音録画補償金」に係る主要な論点ではある。
しかし、お気づきだろうか、設問の立て方がそれぞれ微妙に異なっている。1は「追加指定」を前提とし、2は「検討」だけを、3では「見直し」について問うている。事務局側が誘導したい方向性を示したものなのだろうか。
また、これに対する委員意見の傾向も興味深い。1は先行報道にあったように意見が割れ、結論を出すのが先送りにされた。2は殆どが問題を指摘し「検討」すら必要ないとしている(これは、「検討」のみを問うた設問の立て方にも関わらず こうした強い拒否感が打ち出された点を特筆すべきであろう)。3についても、現行の政令による個別指定を維持するべきとの意見が大勢を占めるようだ。
さて委員意見を概観していきたいところだが、ここで1つ注意事項を。資料3−1と3−2は、基本的には いずれから読んでも同じだが、中山主査の意見だけは資料3−2で先にまとめて読んで戴きたい。資料3−1から読むと、中山主査が権利者の要望に理解を示しているような印象が強くなってしまうのだ(もちろん「自由記載」欄を読めば必ずしもそうでないことは判る)。他の委員の意見についても、その意図を正確に読むためには、3−2で読む方が適しているということは言えるかも知れない。
なお、私としては資料3−1を読んでの感想は後回しにしたい。いろいろ引用したい意見があって長くなることが必至の上、法制小委の風向きを概観するためには こちらの資料の方が使いやすいからだ。
資料3−2「『私的録音録画補償金の見直し』に対する法制問題小委員会各委員提出意見(各委員からの個票)」。
前述したように、各委員の思考・立ち位置を読むにはこちらの方がいい。特に中山主査の意見は必読の内容。実に客観的に正論が展開されており、また これが法制小委の多数意見ではないかと思わせる内容である(資料を一通り読んだ後でそんな印象を持った)。他の委員の意見を概観したところで引用したい。
中山主査の他には、あくまでも私の視点からということになるが、加藤委員(全国地域婦人団体連絡協議会事務局長)の意見が目に付いた。かなり積極的に意見を述べ、制度の見直しを全面的に主張している。ただ一人の消費者代表だから、当然と言えば当然か(余談だが、前回の意見書での消極性とは実に対照的である)。
あと「消費者の不信感」を前面に押し立てた里中委員(言わずと知れた漫画家)の主張も意外と言えば意外。いや iPod 擁護の意見を第3回でも展開していたところから その立ち位置は窺えていたのだが。「消費者」を前面に出せば出すほど、図書館関連での権利者としての主張の方向性と矛盾していくような気がするのは私だけか? ともあれ、 iPod ユーザであることを明言しているだけあって「消費者」としての意見をはっきり主張している(個人的には、 iPod が更なる複製を生まないということにも改めて触れて欲しかったな)。この補償金制度の件に関しては、消費者代表は2人いるようなものだ。味方につく人が僅かでも増えていくのはありがたい。
あとは村上委員(一橋大学教授)の徹底した先送りの主張が清々しいほどだった(笑)。「ここ2年間ほど実態把握とその評価分析に努めてはどうか」という。確かに2年ほどすれば、コピー制限や利用者個別課金も進んでくるだろう。そうなれば「根本的な制度見直し」(この主張も村上委員の意見にある)が現実味を帯びてくる。もちろんそれを見越して先行した議論を始めていくことも含めているのだろう。
この他にもピックアップしたい委員意見はたくさんある。が、後で論点別に読んでいく時に適宜引用したい。ホント興味深い意見がたくさん出ているのだ。
中山主査の意見にもどる。前述した通り、この意見はまとめて読むべきだと思うので、ここで採り上げる(長くなりますよ)。まずは論点に即して見てみよう。
論点1。これは iPod への課金を問うものであるが、一応の筋(これはディジタルの複製が自動的に権利者の利益を侵害するとする、制度の前提条件を踏襲したもの)が通っているとして理解を示し、「汎用機器に課金するのはあまりに多くの問題を抱えており、とりあえず、緊急避難的にハードディスク内蔵型録音機器等に課金するという選択肢もありうるかもしれない」としている。ただし条文によって当該機器のみを切り分けて指定できることが必要だ、とも。「ハードディスク内蔵型録音機器等への課金賛成論者にサンプルを書いて欲しい」とも(欄は違うが)記している。なお、この欄での「理解を示し」ている風の印象は自由記載欄でひっくり返る。
論点2。汎用機器・汎用媒体への課金については「現行の制度を前提として、録音・録画しない者からも強制的に金を徴収することを意味する」とし、「現行法の持っている問題点を増幅するだけであり、好ましくない」とはっきり否定している。
面白いのは自由記載欄だ。項目1・2・3での記載を合わせたよりも倍のページを費やして突っ込んだ論を展開している。 iPod 等への課金については真っ先に述べており、「問題は山積しており、これらの問題に一切目をつぶり、単に政令でハードディスク内蔵型録音機器等を追加して済ませることは到底認められない」としている。
補償金制度の「問題」は次のくだりに集約されている──
現在の課金制度は、対価の徴収・分配の両面において、ラフジャスティスと言わざるを得ない。他人の著作物の録音・録画をしないユーザからも徴収しており、多数の録音・録画をする者も、少ししか録音・録画しない者も同じ額の課金をしている。また録音・録画できないものも出現しているが、そのような点も考慮されずに課金されている。
録音・録画をしないユーザに対しては、補償金の還付制度は存在するが、これは誰が考えても利用できない、実効性のないシステムであり、現に全く利用されていない。このような還付制度は、憲法違反のそしりを免れるためのアリバイにすぎず、当初から機能しないことが予想されていた。
また徴収した金の配分は、果たして公正になされているか、分配率が固定化していないか、真に著作権保護等のために使用されているか等の検証も必要となろう。また徴収した額の2割は共通目的基金に繰り入れられているが、これは著作権の利用料という私財であり、このように公共目的に使用することの法的意味も問題となろう。この問題は今に始まったものではないが、コピーコントロール技術が発展すればするほど、大きな問題となろう。
ただ、以上のようなラフジャスティスが正当化できるとすれば、他に利用可能な手段がないという説明以外にないであろう。たとえラフであっても、他に方法がなければやむを得ないということになる。その意味で、30条2項(引用者注:著作権法のこの項目で私的録音録画補償金が規定されている)が設けられた時代においては、この課金制度は一応の合理性をもっていたであろうし、またそれなりに機能をしてきたと言えよう。
制定時の裏話や現行制度へのフォローも ちょっと入れてたりして(笑)。
それにしても徹底的な指摘が続いている。課金方法の問題、還付金の問題、配分の問題、共通目的基金の問題‥‥。さらには上の引用部分に続き、「このラフジャスティスが現在でも通用するのか、という点についての充分な検証が必要となる」としている。
「ラフジャスティス」が引き起こす問題が次々と別の問題を引き起こしていく様子は、その後の中山主査の意見に詳しく描写されている。例えば共通目的基金(著作権センターなどの著作権啓蒙活動に使われている)に関しては「徴収・配分においてラフジャスティスであるが故に、その代償として置かざるを得なかった規定で、徴収・配分が正確になればなるほど廃止に向かうべきであり、かりに公共目的上必要な支出であるならば税で賄うのが筋であろう」とする。コピー制限が激増する現状で「ラフの程度が一段とひどくなっていると言える」との評価もなされている。
最後は次のように締めくくっている。
以上のように、技術の発展により、30条2項は制度疲労を起こしつつあるが、さはさりながら、現状において、直ちに30条2項を廃止して、新たな制度の定立をするほどには議論が煮詰まっていないし、またコピーコントロール技術等の帰趨、普及の状況を見極める必要もある。今後の展望については未だ絵が描けない状態であり、今後、積極的な議論が必要であろう。
ホント、きちんと検討・議論してもらいたいものだ。中山主査の一存ではままならないとは思うが‥‥。仮に「根本的見直し」を検討するとしても「かなりの時間を要する作業であり、3年程度は必要ではないかと推測される」としている。
ここまでのまとめに採り上げていない意見も含まれているので、中山主査の意見だけはぜひ原文に当たってください。暇人からのお願いです。
ここからは資料3−1を概観しながら、興味深い委員意見を拾い上げる。
まず論点1。 iPod 等への補償金課金について。
これは本当に意見が割れていて、現行制度の趣旨からすれば iPod 等に課金しないのは不公平だとする意見と、そもそも私的録音録画補償金は問題が多く 課金対象を拙速に広げるべきでないとする意見とが拮抗している印象である。
課金賛成派の意見としては、この記事の冒頭で紹介した産経記事(元は共同通信記事)でも引用されていた前田委員(弁護士)のものが代表的と言えるだろう。
賛成。ハードディスク内蔵型録音機器等は、音楽の録音等を主たる用途として想定して開発・設計されており、主として音楽の録音等を目的として販売・購入され、現実にもその目的に使用されていると考えられ、MD録音機器など既存の私的録音録画補償金の対象となっている機器に市場において代替する商品である。そして、ハードディスク内蔵型録音機器等による大量の私的録音録画が現に行われており、それが権利者の経済的利益に与える影響は、既存の私的録音録画補償金の対象となっている機器の与える影響と同等又はそれ以上のものと考えられるから、ハードディスク内蔵型録音機器等を早急に同補償金の対象とする必要がある。
課金反対派としては、山地委員(ソフトウェア情報センター専務理事)のものを挙げておこう。あれ? 産経記事と同じじゃん‥‥かどうかは、以下の引用を読んでから判断ください。
●本補償金制度は、下記4に後述する通り、多くの基本的問題を内包しており、廃止も含めて制度自体の根本的な見直しが必要である。このような状況にある制度に対して、基本的議論をすることなく、機器の追加等により制度の肥大化を図ることは、制度自体の見直しを遅延させることにも繋がりかねないため、政令による追加指定は不適切である。
●また、追加の候補に挙げられているiPodについては、「携帯できる外付けHDD (Hard Disk Drive :外部記憶装置)」として利用することが可能であるため、汎用機器と解される (http://arena.nikkeibp.co.jp/col/20050607/112417/)。 従って、録音専用機器と解することは事実誤認であり、政令による追加指定は不適切である。
後半の意見が産経で引用されたものだ(おそらく同じ趣旨の発言を山地委員がしたのだろう)。しかしこの主張は「不適切である」。あくまでも問題とされているのは主要な用途だからだ。 iPod を外付けハードディスクで使う人がどれくらいいるのかということである。やはり音楽用途の方が多いことは明らかである。
それよりも、課金反対論として代表となり得るのは前半の主張の方である。この意見と、先の前田委員のような意見が拮抗していたために結論を先送りせざるを得なかったのだと思われる(制度に対する問題意識は共有されているものであり、無視できないものだったのだろう。それは自由記載欄の各委員意見から窺われる)。
論点2。汎用機器・汎用媒体(たとえばパソコン用 HDD、 データ用 CD-R/RW など)の扱いを検討するかどうか。
私的録音録画補償金制度自体の問題点を指摘する声が圧倒的多数、まずはこれを検討しろと。その中でも、汎用機器・汎用媒体に課金したときは私的録音録画に使わない人から徴収する問題が大きく(検討するまでもなく)不適切だとする意見が多数を占めている。代表的な反対意見としては、先に引用した中山主査の意見を参照のこと。
論点3。現行制度では課金対象となる機器・媒体を政令で指定しているが、この方式を見直すかについて。例えば、省令・告示等で指定することが念頭に置かれている(この場合、文化庁の判断で指定することが可能になる)。こうすることで、新しい機器や媒体をすばやく指定できるようにして欲しいという権利者側の要望を踏まえてのものである。
これについても、反対意見──すなわち現状維持が適切とする意見が多数を占めているようだ。ただでさえ問題の多い補償金制度において、現在の技術動向を踏まえて検討することを要する現行方式から手続を簡略化すれば、さらに問題点を酷くしてしまうという判断だ。代表的と思われるものを以下にピックアップしてみる。いずれも、この問題を理解する上で参考になる意見だ。
▼ 小泉委員(慶應義塾大学教授)意見
本制度による支払義務者は著作権の専門家でない一般消費者であり、政令方式である現在においても、制度に対する理解は決して十分に得られているとはいいがたい。これを省令におとす、あるいは政令での指定方式をとりやめて条文の解釈による(紛争があれば裁判所が決定する)、という仕組みをとった場合、制度の透明性は一層失われるおそれがあり、のぞましくない。
▼ 茶園委員(大阪大学教授)意見
個別指定方式の見直しが、問題となる機器・媒体の技術的性質のみから補償金支払の対象とすることを決定することを意味するのであれば、反対である。補償金支払の対象となる機器・媒体をどのように決定するかは、著作物の利用形態の現状および将来、著作物利用のうちで他人の著作物の私的複製であって権利者が報酬を受けることのできないものの割合の変化(の予測)等を踏まえた、私的録音録画補償金制度の在り方自体を議論する中で検討されるべきである。
政令指定方式からの変更に理解を示す委員でも、それに条件を付けた上で という意見もあった。
▼ 中村委員(スタンフォード日本センター研究所長)意見
政令で要件を示し、機器の指定を省令、告示等に委ねることは可能かつ妥当と考えます。
さらに、より機動的かつ透明な制度とするため、利害関係者の要望提出、行政府の決定案公示、パブリックコメント募集、標準処理機関の設定といった指定手続の明確化とオープン化も検討課題と考えます。
▼ 前田委員(弁護士)意見
検討することには賛成。ただし、仮に個別指定方式を変更するとすれば、新しく登場した機器・記録媒体が私的録音録画補償金の対象となるかどうかについて紛争が生じた際に、その紛争を迅速に解決するための制度を設計することが必要である(訴訟で決着をはかることは適切な方法とは思われない)。
前田委員の意見でも訴訟の危険性を指摘しているところが興味深い(小泉委員は同じ観点から反対の立場をとっている)。
本項の意見でもっとも目を惹くのは山地委員のものである。他の委員からとは若干異なる視点から反対意見を述べている。
●見直すための検討をすること自体を否定するものではないが、現状の「政令による個別指定方式」を批判する意見の中には、妥当性を欠くものもあると考えられるので、まずは、批判内容の妥当性の考察が必要である。
●仮に、見直すとした場合には、その方向性として、対象機機等を政令以外の省令・告示等により指定する方式もあろうが、これは文部科学省一省の単独指定の可能性を高めることになる。本制度が多くの関係省庁・関係産業界との協力・連携の下に運営されていることを考えれば、本方式を採用することは不適切である。
省令などで指定できるようにすることは、文化庁(文部科学省)にフリーハンドを与えるものだという指摘が外部からされたことがあるが、委員からこの意見が出てきたことは注目に値すると思う。
さて、最後の項目。自由記載欄では、制度の問題点を指摘する意見が相次いでいる。
まずは消費者代表の加藤委員の意見から。
パソコンなどの汎用機器・媒体は、2に述べるように、現在の補償金の対象とすることは不適当である。他方、現在の対象機機にハードディスク内蔵型などを追加しても、汎用機器・媒体が対象にならない状況では、私的録音・録画の一部しか依然対象にならず、不公平感が生じる。機器・媒体の購入時に一律に課金するという現在の補償金は、既に制度として維持困難なものとなっており、機器・媒体の政令指定の追加という方法ではなく、早急に、根本的な制度の見直しを行うべきである。
(現在の制度が続く間)
消費者が補償金について認識できるように対象機機・媒体について、消費者が支払う補償金の額を表示するとともに、制度の啓発を行うべきである。
(補償金の配分について)
補償金が具体的にどう配分されているか、20%の部分も含め、配分基準と実際の配分先について透明性を高めるために、配分のあり方について、例えば当審議会などで議論すべきである。
まぁ無難と言えば無難な意見(笑)。逆に真っ当すぎて、とんがった部分が無いというか。これが中道的とも言える。
この自由記載欄の中で ひときわ目を惹くのが潮見委員(京都大学教授)の意見だ。凄いよ、とんがってるよ。結構長い意見のうちの一部を引用する。
●いずれの方向をとるにせよ、現在のメンバー構成で政令による追加指定・個別指定の問題を議論して、政令でその成果を実現するというのでは、利用者たる消費者の声が十分に反映されない。消費者の声を代弁する委員が1人というのは、あまりにもいびつである。
●同様に、機器メーカーの意見がヒアリングのような形でしか聞けないというのも、問題である。著作権関係団体の意見と同様の委員の数を、消費者関係委員と機器メーカー関係委員(事業者側委員)に割り振って初めて、各方面からの意見を対等に反映できる手続保障がなされるものと言うべきではないか。上記1から3の議論を仮におこなうのならば、委員会のメンバー構成に配慮をすべきである。ことに、「政令」による運用面での処理で対処するのであれば、立案面で国民の声を反映するだけの十分な機会の保障と国民各層への事前の照会が必要である。
──トンガッてる! 委員会のメンバー構成への注文が委員本人からなされるという。もっとも、幅広い議題を抱える著作権分科会としては、消費者代表・メーカー代表を増やすというよりも権利者側代表を減らす方向を採らざるを得ないと思うけれども。別の言い方をすれば、有識者代表として参加されている大学教授殿各位がどれだけパブコメの一般意見を汲めるかということの方が重要だったりするのだ。もっとトンガッた大学教授が出てきてくれることを祈るよ。その方が まだしも実現可能だと思う。
今回の意見書で大活躍(笑)の山地委員は、自由記載欄でも大暴れ(良い意味で)である。以下に一部引用する。
現行制度は、次のような基本的問題を内包している。(引用者注;項目の一部のみ引用する。正確な意見内容は原文を参照のこと。)
3.補償金の対象となるようなデジタルの私的複製を全く行わない一般消費者も、補償金を支払うことになっている。制度上は、そのような人に対しては「返還請求権」を与えているが、返還請求のために必要となる手間と費用が、返還されるであろう金額よりも、通常は遙かに多いことと、そのような複製をしないことの立証の困難さから、返還請求は、ごく最近、1件起こされたのみである(朝日新聞 平成17年6月22日 朝刊3面「初の返還決定、でも8円」)。従って、この返還請求権は、名目だけのものであり、全く実が無い。
上記問題に加えて、昨今では、以下のような社会状況も見られるところである。
●我が国における放送コンテンツについては、 2011年の デジタルへの完全移行(アナログ放送の終了)に向けて地上波のデジタル化等が推進されつつあるが、現在放送されている地上デジタル放送には「コピーワンス(1回のみのコピー可)」信号が付加されており、私的使用目的のダビングすら不可能という、国際標準から見ても、極めて厳格な著作権管理の仕組みが採用される等、技術的保護手段(複製防止技術)の飛躍的進展が見られるところである(防御技術が進みすぎ、消費者にとっての使い勝手が悪くなり、消費者にソッポを向かれるのではないかという懸念を覚える程である)。
これらの状況の変化により、私的複製の範囲が相対的に縮小しているという実態等にも鑑み、上気した多くの課題、問題を抱えている本制度を段階的に縮小し、例えば、アナログ放送が終了する 2011年を 目処に、これを廃止すべきと考える。
いやぁ、私的録画補償金の返還事例に言及してるとは、なんと早い(笑)。この返還発表が法制小委#5への牽制ではないかと訝しがる向きもあったが、幸い、このように返還制度が機能していないという意見が出るにとどまっているようだ(もっとも、実際の審議会の場での発言がどうなっているか まだ判らないけれども)。
また、 2011年の アナログ放送終了を機に補償金制度を廃止すべきとの意見は、第3回でもメーカー側から展開された主張と同じものである。今回の資料2−2でも反論が見られたが、委員の方からも これに関して反論があった。松田委員によるものだ。
本補償金制度は、私的使用を目的とするデジタル方式の録音・録画を対象とするもので、そもそも一世代コピーがこの対象となるものである。その後のコピーは、通常私的使用の範囲を超えるものであり、これが制限されることは本補償金制度とは関係がない。
まぁその説得力はどうか? その判断は読んだ方々にお任せしよう。メディアシフトが果たして一世代だけで終わるのか、なぜコピーワンスが嫌われるのか、 DRM がどの程度だと「軽 DRM」 と呼ばれているのか、などと合わせて考えておきたい。
私としては、機会があるごとに言及しているのだが、ディジタルコピーそのものが権利者の利益を侵害するものではないと考えている。権利制限の審議の中で、委員意見として「スリー=ステップ=テスト」の話が出たから、てっきり私的録音録画補償金の検討でも出てくるかと思っていた。
しかし、実にあっさりと、「ディジタルコピーは権利者の利益を侵害する」との制度の前提を受け入れた委員意見ばかりであることに失望を禁じ得ない。 iPod に課金するかという話になるなら、まず iPod へのコピーが利益侵害になるのか(市場と競合するのか)を検討すべきではなかったのか。小倉弁護士が真っ先に述べていたように。
一筋の光明‥‥というか、審議会では黙殺されたのかも知れないが、山本委員(弁護士)がただ一人 この点を突いた意見を書いている(ただし iPod に関してではなく、いわば傍論である)。
自己の所有するCDを複製することは、CD購入によって自己使用の対価を支払済みなので、これをMDに複製することには新たな損害を権利者に与えていないと考える。(中略)自己の所有するCD・MDに複製することに対する自由利用抑制効果は、無視しうるものとは思えないので、補償金制度を正当化しないと考える。
また、オーディオ用CD−R等に対する補償金制度は、欺瞞的である。オーディオ用CD−Rとデータ用CD−Rとは中身において何の違いもない。ただ補償金を掛けているかいないかの違いだけである。私もこの事実を知ったときから、保有するCDを複製する場合にはデータ用CD−Rを使っている。こうすることは違法でもないし、経済的に合理的な行動である。オーディオ用CD−Rを購入する消費者は、この事実を知らず、「オーディオ用」という以上オーディオ録音にはより高いクオリティをもたらしてくれるものと誤解しているのである。このような消費者の誤解によってのみ成り立つ制度は、存在すべきとは思われない。
これは凄い“激白”である。手持ちCDの複製に係る補償金の問題は私も(このブログという場で)指摘したことがあるが、法制小委の場(意見書ではあるが)で弁護士たる委員の口からこんな話題が飛び出るとは驚いた。この解釈は法的にどうなのだろう? 私は支持したいが、限りなくグレーだと思ってたもので、少し戸惑いながら意見書を読んだ。日本の著作権法にフェアユース概念さえあれば‥‥。
もっとも、山本委員が述べているのは自分のCDを複製する場合についてであって、レンタルCDやファイル交換で得た音源の複製については補償金の意義を認めている。こうした条件に応じた判断というのは、補償金制度に賛成なのか反対なのか どっちつかずの態度に見える人もいるかも知れない。しかし私は これこそが本来 補償金制度を論じるときに必要な視点なのではないかと思うのだ。
おそらくは、何が利益侵害で 何が利益侵害じゃないのかを論じるのは、著作権法 30条2項の見直しを検討する時までお預けになることだろう。 iPod への課金を考える際には是非、この視点をもって論じて欲しいものなのだが。
これで資料を一通り論じ終えた。あとは実際の委員会で委員がどういった発言をしたのかに興味が移るが、それは 『zfyl』 議事概要メモや 文部科学省の公式議事録が公表された後に検討したい。
では、また後日に。
(これで終わりです)。
投稿:by 谷分 章優 06:48 午後 [著作権行政 watch, 音楽業界の愚行] | 固定リンク
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受信 2005/07/02 21:11:07


