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2005.08.25

INTERNET Watch の落とした爆弾 ──我々が従うべきは JASRAC 規程ではない、著作権法だ

 INTERNET Watch で「どうなる『私的録音補償金制度』」と題した連載が始まり、話題となっている。最新記事は JASRAC の常務理事・泉川昇樹氏がインタビューに応じたもので、この発言の酷さもまた Watchdog 系ブロガーの間を駆け抜けたのだった。
 法制小委#7を控え、さながら INTERNET Watch が落とした爆弾である。こりゃ炎上しまくるぞ‥‥。

http://internet.watch.impress.co.jp/cda/special/2005/08/24/8874.html
「どうなる『私的録音補償金制度』〜『iPodも対象に』JASRACの考え」
(INTERNET Watch)

 JASRAC 側の言い分を総評しておこうか(各論は後で)。
 はっきり言って、内容はいつもと同じ。何ひとつ目新しい事実は登場していない。こんなんで説明した気になっているのだから、 JASRAC というのは お気楽な団体である。説得力も、示された根拠もゼロ。しかも本人、気づいてない様子‥‥。
 いやいや、好意的に見れば、利用許諾と私的複製の関係なんかを講釈したりもして興味深いのだが、これの根拠がアナタ、 JASRAC の規程と来たもんだ。
 ──違うだろ。俺たちが聞きたいのは、著作権法を根拠とした話だ。おまえらが勝手に決めた“ルール”などではない(しかも JASRAC のやり方なんざ、国会からも目を付けられるほどアコギな真似じゃねえか)。

 ん〜、熱くなりすぎた。落ち着いていこう。




 以下、逐次ツッコミ。

泉川氏
 (中略)現在の補償金制度の対象に加えていただくということは、制度の拡大ではなく単なる運用上の問題で、新たにPCや汎用機器を対象にしてほしいという問題ではありません。追加で指定された音楽用CD-Rなどと同じく法律上の要件を備えており、政令指定をいただきたいというお願いをしています。

 幸か不幸か、氏の言う「制度の拡大ではなく単なる運用上の問題」という主張は法制小委の主流ではない。 iPod 等の指定追加が制度の拡大であるとの認識は、前の日経記事での小泉・山本両委員も含め、無視できないほど多く出ているのだ(だから結論が出ないんだって)。
 確かに、「追加で指定された音楽用 CD-R などと同じく法律上の要件を備えて」いるものではある、 iPod 等は。しかし私的録音録画補償金制度そのものの妥当性が疑問視されている今、 JASRAC のこのような主張は説得力を持たない。

 iPodなどのほかにPCのHDDやデータ用のCD-Rも私的録音に利用されている実態を踏まえ要望しましたが、これらを対象とするには法改正が必要とされていることから、まずは、iPodなどのデジタルオーディオプレーヤーを現行の法制度の枠組みの中で追加していただきたいと考えています。PCやカーナビのミュージックサーバーなど、いわゆる汎用機については今後引き続き検討していただきたいと思っています。

 汎用機器への課金に至っては、言語道断。法制小委全体の流れとして、全く意に介されていない。もはや論点は iPod 等に絞られているのだ(補償金問題はね)。

 第一、主たる目的でもない「録音」「録画」を口実として、パソコン等を使う全ユーザーから税金のように徴収する制度など実現できる訳がない。現行の私的録音録画補償金ですら返還制度を設けないと憲法違反の恐れがある(と法制小委で指摘される)のに、ここで汎用機器に課してしまったら憲法違反そのものではないか。
 もしかしたら半分以上の徴収者に対して、コストをかけて返金していけとでも言う気なのか、 JASRAC は?

 (中略)著作権法第30条第1項は、限られた条件下で私的複製を認めていますが、第2項において、著作権の国際条約との整合性を諮る観点から著作権者の経済的利益を不当に害しないため補償金の支払いを義務づけています。

 従って、これらの機器・記録媒体が補償金の対象にならないのであれば2項はまさに形骸化したと言わざるを得ません。こうした事態に立ち入った場合は30条1項の制限規定自体の見直しに向かわざるを得ないと思います。

 相変わらずの“脅し”か。
 しかし衆議院・文部科学委員会でシボられただけのことはあって、 iPod 課金できなかったらベルヌ条約違反とは(直接には)言わなくなってるな。感心感心。

 「国際条約との整合性」と言っても、ここで関係するのは「著作権者の経済的利益を不当に害しない」ということだけであり、仮に iPod 等が「利益を不当に害しない」ものだとすれば、これに補償金を課す必要など無いのである。
 またその「利益を不当に害」する場合というのは、「通常の営利的な利用と競合してこれを成り立たなくする」ような場合のことである(小倉弁護士の 『benli』 参照のこと)。 iPod 等がこれに当たるのかはきちんと検討する必要があるし、現に法制小委では「二重課金」の問題も含め指摘されているところである(法制小委での検討はまだヌルいくらいだ)。

 ここでもし JASRAC が iPod 課金の主張を繰り返すのなら、 iPod 等がどのように「利益を不当に害」しているのかを具体的に示すべきである。 JASRAC の規程(録音)に基づいたとか、録音されたのと同じ曲がCDで買われた場合とか、そういうアホな丼勘定ではなく、きちんと iPod の使用態様に基づいた損害額計算をやってみろ。
 最低でも、法制小委の山本委員のように(1)P2Pソフトによる違法性複製物のダウンロード(2)レンタルCDの複製(3)自己の所有するCDの複製(4) iTunes による適法ダウンロード(5)著作権の保護期間が満了した音源の複製──に分類してそれぞれ計算。そしてここが肝心、前述の「通常の営利的な利用と競合」する分のみ計上すること。それくらいきちんと計算すれば、少しは見るに値するデータとなろう。

 30条を見直すということであれば、私的録音も許諾を必要とする利用行為となり、補償金制度も必要なくなりますが、それがメーカーやユーザーにとっていいことなのでしょうか。

 コピーを許諾する場合、個別に対価の支払いが必要になりますが、現在の記録媒体1枚の補償金額4円程度ではすまなくなると思います。なお、DRMによる個別徴収の提案がありますが、国際的にみてもこのような技術は普及段階にはありません。また、コスト面など今後の検討すべき問題が残されているのではないかと思います。

 ──ここの発言は無意味である。
 なぜなら、私的録音すべてが許諾を必要とするような法制度は不可能だからである。それとも何か、 JASRAC は各家庭を回って、プライバシーを侵し回って、私的録音の権利料を徴収する気か? どうやってやる気だ? 今日び、法律でバックアップされた NHK ですら各家庭から金を集められないでいるというのに。各家庭には JASRAC を門前払いする権利があるぞ。
 もっと真面目に言えば、「文化的所産の公正な利用に留意しつつ」「文化の発展に寄与する」という著作権法の目的にも反する考えである。

 そもそもの話、著作権法 30条2項 (私的録音録画補償金)が形骸化したからと言って、著作権法 30条 (私的複製)を変える必要などない。当該規定が「権利者の経済的利益を不当に害しない」範囲である限り、別に国際条約違反ともならない。私的複製をめぐる状況が変われば、当然 30条 2項の廃止も可能であろう。
 JASRAC がこの論法を続けるのなら、補償金制度が形骸化すると何故「利益を不当に害する」こととなるのかを示さねばなるまい。そうでなければ、話は進まないのだ。 JASRAC 自身はこれを前提に主張しているつもりだろうが、彼らの口から この“損害”を明確に示されたことは無い(これは自分勝手な“ルール”による一方的な主張とは違う。消費者を説得するに足る論理的帰結によるデータである)。

 購入価格に私的録音補償金が含まれていると解釈するのは誤解です。JASRACでは、レンタルCD、ネット配信、市販用CDなど利用行為に応じて許諾範囲を決めています。

 レンタルCDの場合、レンタルという行為に対し貸与権に基づく権利行使をレンタル店の事業者に対し行なっています。ユーザーがプライベートな領域でレンタルCDから複製する行為はまさに30条で示す私的複製にあたります。

 JASRACはレコード製作会社に複製の許諾を出しますが、この許諾の範囲は市販用の複製物の製作・頒布に限定されており、購入者が個人的にデジタル複製する場合は30条2項の適用を受け、補償金を別途支払うことになります。

 インターネット上の音楽配信は、JASRACでは「インタラクティブ配信」として「公衆送信およびそれにともなう複製により著作物を利用する場合」と規定しています。ダウンロード方式の場合は、受信先の記憶装置に記録・蓄積するまでが許諾範囲となるわけです。

 つまり、デジタル録音の場合、私的な利用範囲における複製すなわち私的録音は、JASRACの定める許諾の範囲外の行為にあたり、著作権法第30条の第2項により補償金を支払わなければならず、著作権料の二重取りには該当しません。

 こうした主張にどんな意味があるだろうか?
 まず、 JASRAC が主張の根拠としているのは、自身が勝手に決めた“ルール”である。 JASRAC の規程に基づいた話をしたところで、それは契約の当事者が従うべきものである。我々消費者は違う。
 JASRAC が規程に基づいて許諾を出しているのは、著作物利用で商売をする事業者である。消費者に対してではない。消費者が著作権法に基づいて著作物を使用する限り、 JASRAC と直接関わることなど無い。
 また、CDや配信音源を購入することで許諾されたとみなされるべき利用の範囲は、(考察が必要となれば)その実質的なものを見極めて判断すべきだろう。 JASRAC からの一方的主張では決定されない。
 現実として補償金なしの私的複製ができる中で、CDを売り続けるという音楽業界の判断がある。これは実質的な許諾とみなせはしないか? 配信音源も同様。あれは予め CD-R への焼き込みも想定して DRM が設定されている。これをどう考えるか。

 繰り返すが、我々が行動のよりどころとすべきは JASRAC の規程ではない(考察の参考程度にはなるかも知れないが)。著作権法である。
 ちなみに、この考えは著作権法改正論とは矛盾しない。不適切な規定があれば改正すべきだし、それは適切な議論を経て行なわれるべきである。しかしその考えの中心にあるべきは著作権法だ。

 JASRACでは2004年度に41万8,285作品に対して1作品あたり平均1,482円の補償金を分配しました。最低分配額は1円ですが、その場合でも明細を付けて分配します。なお、最高分配額は1作品につき約130万円でした。

 JASRACは分配にあたり、sarahが3年毎に実施する録音ソースの調査に基づく録音、CDレンタル、放送の各分野の利用実績に基づき各権利者に年2回分配を行なっています。もちろん、すべてのユーザーの個々の利用実態まではわかりません。もし、100%を求めた調査を行なうことになれば、補償金額以上のコストがかかることになるでしょう。

 この分配方法は、私的録音の実態反映率とすれば80%程度と見ています。利用されているにも関わらず、分配されない権利者も存在します。このため、全補償金の20%は共通目的基金として、すべての権利者のための事業に充てています。2004年度では共通目的基金は約4億4,500万円で103事業に活用されました。

 指摘されている分配の「不透明さ」は、上のような JASRAC の説明で解消されるようなものではない。もっと詳しいデータを出せと言っておるのだ。これでは法制小委に提出したデータと変わりないではないか。
 さらに言えば、 「sarah が3年毎に実施する録音ソースの調査」という所で自爆。3年ごとの実施で妥当なデータが得られるわけなかろう。音楽市場において、1年でどれくらいのCDが入れ替わってると思っとるのだ。ここ5年で見ても、シングル新譜は 2500 タイトルほどで推移、アルバム新譜に至っては 10000 タイトルを下らないのだぞ (RIAJ 資料参照のこと)。 カタログ数はほぼ横這いだから、新譜分がそっくり入れ替わってることになる(こちらは RIAJ 『日本のレコード産業 2005』 13ページ 参照のこと)。
  で、「私的録音の実態反映率とすれば 80% 程度」との根拠が全く無い。こいつらは説明する気があるのか? 

 ちなみに、何かと「不透明分配」の原因とされる共通目的基金だが、「分配されない権利者」への分配に代えるという意図もある。つまり、これを設けなければならないほど私的録音録画補償金制度は丼勘定だということだ。やってる方も判っててやったのである。
 ここでちょっと考えたいのだが、批判される共通目的基金を無くせば問題は解決するのかどうか。これを無くすと、ますます「分配されない権利者」の問題と、実態を反映していない分配の問題が拡大する。
 これ以上 私的録音録画補償金の歪みを大きくしないためには、共通目的基金を甘受するか、補償金制度自体を縮小・廃止するしか無いのである。まして JASRAC には分配正常化の意思は無いらしい。

 ──俺は廃止に賛成なのだ!

投稿:by 谷分 章優 12:40 午前 [音楽業界の愚行] | 固定リンク

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» どうなる「私的録音補償金制度」第二弾〜「iPodも対象に」JASRACの考え [Where is a limit? から]
 INTERNET Watch経由 どうなる「私的録音補償金制度」〜「iPodも対象に」JASRACの考えと言う記事が掲載されています。どうやら3日間短期集中連載、明日にはJEITA側の意見も聞けそうですね。う〜ん、この記事を書いた鷹木 創さんという人、やはり、25日にぶつけてきますね。 ..... 続きを読む

受信 2005/08/25 13:48:58

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