« 言ってることも やってることもバラバラなオリコン社長 ──しかし一方的なレンタル叩きは見過ごせんなぁ | トップページ | 『セキュアCD』の話 ──やっぱ再生保証は無し? »
2005.08.23
iPod 課金 ──文化庁「中立的な立場」の嘘と、法制小委委員の“逆襲”
こういう記事が話題になっている。
日本経済新聞の 2005年8月22日付紙面、「法務インサイド」という欄で掲載されたものである。コンパクトディスクビデオレンタル商業組合 (CDVJ) のサイトに転載されているのだが、今のところ日経サイトには掲載されていない模様。 CDVJ が日経に許諾を取ってるのかは判らないのだが、ここは ありがたく使わせて貰おう。
http://cdvnet.jp/modules/news/article.php?storyid=615
「iPodに印税、上乗せ?――もめる私的録音補償金」
(CDV-NET - エンターテイメントNEWS)
▲ コンパクトディスクビデオレンタル商業組合による
日経記事の転載。
引用はこちらから。
http://tontonsblog.seesaa.net/article/6138534.html
「iPodに印税、上乗せ?——もめる私的録音補償金」
(Where is a limit?)
▲ ネタ元。
「アップルさん、iPodで絶好調じゃないですか。補償金、覚悟して下さい」。今年春、文化庁の政策担当者がアップル日本法人の企画担当者にささやいた。アップル担当者は、文化庁と権利者団体による“包囲網”を感じた。
「補償金、覚悟して下さい」?
しかもそれが「今年春」、「文化庁の政策担当者」の発言?
──な、なんですと!?
「今年春」っていうと、法制小委で審議が始まる前後か。
もうそこのころから文化庁は見通しを立ててたって訳か。
「覚悟して下さい」なぞと言える立場の人間ってどこのどいつよ? さも方向を見定められる立場であるかのような口ぶり。
いやね、これが誰の発言なのかは大体予想できてはいたんだわ。そしたら、『ふっかつ!れしのお探しモノげっき』で注目に値する証言があった。
http://blog.drecom.jp/ecolin_profile/archive/416
「ケンリダンタイナミナサマニハツケルクスリハナイノカ?」
(ふっかつ!れしのお探しモノげっき)
実はアタシが今だに忘れることのできないシーンがあります。
それは昨年のJASRACつー代々木上原に、レンガ作りのそれはそれは・・・・おーきな建物に、毎日毎日、少しでもラクして懐を増やそう(苦笑)という団体さんが主催のシンポジウムにラッキーなことに当選して、いそいそ♪と出向いた時があったんです。
多分昨年の11、12月くらいの話だったかしらね。
そのシンポジウムの時に、あの吉川氏がパネリストとしてでてこられてね、このような発言をされたんです。もう時間も経ってるので、曖昧なトコもあるんですけど。
「私的録音補償金導入については、文化庁としては、なんとしても、ユーザーのみなさん(だったかな、そこらへんが曖昧)理解を求めて進めていきたい」
そんなことをまるで、自信ありげに発言されるあのお姿は今だにアタシの脳裏に焼きついておりますよ、ええ。
ああ、やっぱり。あの人なら言いかねないわな。
勿論、実際のところ「覚悟して下さい」が誰の発言だったか判らないわけだが、文化庁著作権課がこの1年で邁進してきた方向性を思い浮かべれば、こうした疑いに対し極めてクロに近い心証を抱いても致し方あるまい。
今年の8月3日に、まだ解散する前の衆議院・文部科学委員会で川内博史議員が質疑に立ったのは記憶に新しいところだ。そこで、私的録音録画補償金に係る文化庁の方針についてこのようなやりとりがあった。
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/
kaigiroku/009616220050803016.htm
「第162回国会 文部科学委員会 第16号
(平成17年8月3日(水曜日))」
(衆議院サイト)
○川内委員 (中略)七月二十八日の法制問題小委員会で、新しい甲野著作権課長が、この制度は行政機関である内閣が粛々と決めるべきものと思うと発言をされて、法制問題小委員会の議論がどうなろうと行政が決めるんだというふうにもとれるわけでありますが、文化庁は、法制問題小委員会に、アイポッド等について政令での指定をするかしないかということを諮問されたのか。
それとも、これは同じく私の理解では、著作権法に関する今後の検討課題と各資料との関連表というやはり文部科学省が出している資料によれば、指定を求める団体、そして指定をすべきではない、あるいは全体を見直すべきだという反対の団体、両側からの要請を受けて議論をされているものというふうに、要するに中立の立場で議論をされているものと認識をしておりますが、その認識を確認させていただきたいということ。(中略)
○加茂川政府参考人 お答えをいたします。
さきの法制問題小委員会での担当課長の説明についてでございますが、あくまでも中立的な立場に立ちながら、現行制度のもとで法律に基づく政令指定の制度を説明する中での言葉でございまして、アイポッドの課金について特定の予断を持っているものではございません。
それから、現在、法制問題小委員会でこの問題を検討しておりますのは、委員御指摘のように、権利者側からのこういったアイポッド等の録音機器の追加指定について要望があったこと、他方、製造者側からは補償金制度の抜本的な見直しについても要望があった、そういう双方の要望も踏まえながら今中立的な立場で検討が進められているということを、ぜひ御理解いただきたいと思っています。
文化庁が「中立的」である──という命題に対する反証は、去年の著作権法改悪を例に挙げるまでもなく、今までのやり方を見てくれば幾らでも挙がってくる。最近は審議会に対する目もかなり注がれるようにはなってきたから、文化庁側の発言も慎重にはなっていたようであるが、それでも なお改心には遠い。
ことあるごとに、上のような国会での牽制が必要なのである。チクリチクリやっておかねば、またいつ文化庁が おかしなことを始めるか判ったものではない。現に、国会の目の届かないところで「補償金、覚悟して下さい」と来た‥‥。
この問題発言が本当に文化庁側から出たとするなら、その後に「中立的な立場」を強調した加茂川次長の国会答弁の妥当性すら危ういものとなる。
──というか、国会をバカにしすぎてやしないか?
この問題は、日経の記事だけにとどめておいたり、スルーしたりするのではなく、しっかり文化庁に問い質していく必要がある。エンタメ議連を通し、国会でも並行して追求してほしいところでもある。衆議院が解散中だというのが残念でならないが‥‥(よもや次の法制小委で情勢がひっくり返ったりしないだろうな?)。
文化庁が(国会答弁に反し) JASRAC 寄りの予断をもって法制小委に臨んでいるとしたら、これは見過ごせない大きな問題である。
なお日経の方は、文化庁が JASRAC ら『悪の7団体』側に立っていることを前提に記事を組立てているように見える。確証があるということなのか?
四月、「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会」で本格論議が始まった。夏頃にはiPod課金への道筋が整うだろうと文化庁や権利者団体は読んでいたが、甘かった。予想以上に委員の反発が激しかったのだ。
これがもし、文化庁として不本意な書かれ方だったら、きちんと抗議するなり、意見を述べるなりすべきだろう。どう読んでも、文化庁が iPod 課金を実現するつもりでいたとしか思えないような描写なのだから。
そして私はこの日経記事を信じる。と言っても記事だけで信じるに足ると考えたのではなく、衆議院・文部科学委員会での川内議員との質疑も考慮している。 iPod への補償金課金が実現しなくてもベルヌ条約違反ではない──ということを頑なに認めようとはしなかったのだ、加茂川次長は。前回の法制小委後の記者会見で「ベルヌ条約違反」と発言し、文科委でその不適切さをはっきり認めさせられた JASRAC と同じく、 iPod 課金ありきの態度なのである。嘘で塗り固められた利権拡大への意思と言ってもいい。
件の日経記事は『若旦那の独り言』でも採り上げられていて、若旦那さんがアツく反応されている。あげく滅びの呪文まで唱えちゃってるのだが‥‥それはそれとして、コメント欄で目を惹く情報が書かれていた。
日経新聞の8月9日・10日付紙面。関連記事があるという。
で、図書館で(笑)探してみた。「経済教室」という欄で、「私的録音補償を問う」という表題。これが上・下──計2回の特集。
「上」の方が「制度の信頼醸成が不可欠 課金の拡大急ぐな 消費者に多様な選択肢を」との見出し。慶應義塾大学教授・小泉直樹氏が執筆している。
「下」の方は「存続の基盤すでに失う 創作促進効果薄い 自由な利用抑える弊害も」との見出しがあり、弁護士・山本隆司氏が執筆。
──!
この名前には見覚えがある。私は見た途端にほくそ笑んだ。
そう、ふたりとも法制小委の委員である。しかも、いずれも課金反対派だ(ただし彼らには意見の差異もあり、どちらかと言えば小泉教授は慎重派、山本弁護士は音楽ユーザー寄りの強行反対派である)。
参考として、以下に彼らの意見を挙げておこう。文化審議会 著作権分科会 法制問題小委員会で、私的録音録画補償金の論議をするに先立ち提出されたものである。
文化審議会 著作権分科会
法制問題小委員会(第5回)議事録[資料3−2]
「私的録音録画補償金の見直し」に対する
法制問題小委員会各委員提出意見
(各委員からの個票)より
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/
013/05070401/003_2/005.htm
▲ 小泉直樹委員の意見。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/
013/05070401/003_2/020.htm
▲ 山本隆司委員の意見。
上の意見の延長でもあるのだが、日経での記事を概観してみよう。
小泉教授は、 iPod 等への課金の問題点として、音楽配信などの(すでに著作権処理された)音源を iPod で利用する時に「二重課金」となることと、徴収された補償金の2割が共通目的事業へ使われている(つまり権利者へ分配されていない)点を指摘している。そして「課金の結論を急がずに、まず補償金制度への国民の信頼の醸成に努め、技術の進展をしばらく見守るのも一策ではないか」と結んでいる。
山本弁護士も、共通目的基金(これを共通目的事業に使うことになる)の存在を問題視している。さらには補償金を徴収するのが「指定管理団体」(つまり serah と SARVH) だけである点も「(権利者が)選択する自由がなく競争もない」ため問題としている。「公社・公団が利権化する構図」とまで表現している。
さて、山本弁護士の主張の特徴は終盤にある。私としてはここが山本弁護士の主張に最も共感するところであり、今までも引用してきたところではあるが、ここでも敢えて引用しておく(日経記事「私的録音補償を問う」より)。
たとえばiPodによる音楽の録音を考えてみよう。録音される音源としては(1)P2P(ファイル共有)ソフトによる違法複製物のダウンロード(2)レンタルCDの複製(3)自己の所有するCDの複製(4)iTunesによる適法ダウンロード(5)著作権の保護期間が満了した音源の複製──の五つが主なものである。このうち本来、ライセンスを受けなければ複製できない音源、すなわち補償金を課すことに正当性のある音源は(1)と(2)である。あとの三つには補償金を課す正当性はない。
(5)はほとんど存在しないと思われるが(3)と(4)はiPodの利用方法としてかなりの割合を占めるものと考えられる。iPodに補償金を課すとすれば(3)(4)のような利用方法を抑制しかねない(しかも、権利者は利用料を二重に受け取ることになる)。こうした自由利用抑制効果は、いずれも無視しうるものではない。
※ 丸数字を括弧に置き換えてあります。
そして、山本弁護士は iPod 課金を否定するだけでなく、音楽用(補償金がかかっている)とデータ用(補償金がかかっていない)の二種類が存在する CD-R を例にとり、政令指定の不公平さによって補償金制度そのものが「すでに破綻している」と評している。
法制問題小委員会(第7回)を目前として、こうした記事が立て続けに新聞に載るのは意義がある。まぁ日経1紙であり、一般にどこまで知られているのかは判らないが‥‥。
そう言えば、法制小委では JASRAC らと相対する立場にある電子情報技術産業協会 (JEITA) もようやく「見解」を出した。機関誌 『JEITA Review』 2005年8月号に 掲載された記事とのことで、 JEITA のサイトには 8月19日付で 掲載されている。
http://www.jeita.or.jp/japanese/hot/2005/0819/0819.pdf
「私的録音録画補償金制度の問題点とJEITA の見解」
(JEITA / JEITA Hot Issues ・PDF)
実のところ、「今後の検討」においてツッコミ所は存在する。それは JEITA が消費者を代表する団体ではないが故のものであるため、ここでは敢えて触れない。それ以外は、制度の概要・問題点・ JEITA の見解を判りやすくまとめてある。
JASRAC らが法制小委#6の直後に記者会見を開いて以来、 iPod 課金のいわゆる反対派は手をこまねいてきた訳だが、徐々に動きは出てきてたんだな。しかも法制小委委員による“逆襲”というのが面白い。まぁどちらかと言えば、日経が委員の意見を借りた形なんだろうけど。それだけ日経記事の主張ははっきりしている。
そして JEITA の「見解」の発表。これで役者が揃った。
あとは JEITA の「見解」をどう広めていくか、だが‥‥ JASRAC らの記者会見というハンデを挽回するには どうするか。 JEITA が何か“隠し球”を考えていれば面白くなるが、どうなのだろう。
我々としても、何か出来ないか考えてみよう。
最後に、日経記事(「法務インサイド」の方)でも最後を飾った法制小委・中山主査の言葉を掲げておこう。これ、身も蓋もないくらいキツ〜イ一発。
著作権法は(問題の)吹きだまり的様相を呈している。現行法が社会の要請に応じうるものなのか、問い直す必要がある
法制小委の主査をして こう言わしめるほどなのだから、著作権行政っていったい何をやってたんだ──なんて一般市民の法律素人は首を傾げざるを得ない。
投稿:by 谷分 章優 06:45 午後 [著作権行政 watch, 音楽業界の愚行] | 固定リンク
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/42184/5601551
この記事へのトラックバック一覧です: iPod 課金 ──文化庁「中立的な立場」の嘘と、法制小委委員の“逆襲”:
» iPodに印税、上乗せ?――もめる私的録音補償金 [Where is a limit? から]
日本コンパクトディスクビデオレンタル商業組合のニュース経由iPodに印税、上乗せ?――もめる私的録音補償金という記事が掲載されています。元記事は日経の様です。気になる部分を引用させて戴くと 「アップルさん、iPodで絶好調じゃないですか。補償金、覚悟して下さい..... 続きを読む
受信 2005/08/24 14:10:14


