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2005.09.17
「JASRAC の考え方」の言葉のあや
では、前回の記事で予告した通りに、 JASRAC の言い分にツッコミを。
本日のテキストは以下の通り。
http://www.jasrac.or.jp/shiteki-rokuon/05/09_4.html
「JASRACの考え」
(JASRAC)
http://www.jasrac.or.jp/shiteki-rokuon/05/09_6.html
「FAQ」
(JASRAC)
まずは 「JASRAC の考え」から。
いきなりベルヌ条約の話から入るのだが、まぁ今さら言うまでもなく、「そのような複製が当該著作物の通常の利用を妨げず、かつ、その著作者の正当な利益を不当に害しないこと」であれば権利制限をできるという話。ならば「著作者の利益を不当に害」することとは何かが問題になる訳だが、あいかわらず具体的な話にならない。
しかも、
この制度(引用者注:私的録音録画補償金制度のこと)により補償されるべき著作者の利益が、ハードディスク内蔵型、フラッシュメモリ内蔵型録音機器・記録媒体等が政令指定されないまま利用拡大されることにより、さらに大きく損なわれるようであれば、わが国として国際条約との整合性が問われかねず、著作者等の権利を特例として制限し、私的複製を許容している著作権法 30条 1項の規定の見直しを迫られる恐れがあります。
──などと宣っている。これ、仮定の話じゃねーか。
「著作者の利益」が「損なわれる」ことを証明しないと、この命題は成立しないぜ。こんなの論理学のイロハだよ。これで延々と主張し続けるんだから呆れてくる。
正当な利益というのは何なのか。そこさえ示せれば、 iPod 課金の正当性が証明できるってのにな。 JASRAC はどうして遠回りなことばかり やりたがるのか。権利制限で及んでいない複製権を楯に強弁するよりは、遙かに楽な証明だろうに。
「創作された音楽がCDや音楽配信により販売され、音楽ユーザーにより購入され、その経済的な果実が音楽作家やアーティスト、レコード会社等に還元される」という「創造のサイクル」の中で、どこに iPod が入ってくるのかね? これのどこに影響を及ぼして、「正当な利益」が損なわれるのかね?
この「創造のサイクル」とやらは「レコード輸入権」の時にも使ってた話だ。そのサイクルは先細りの様相だけど。日本の音楽業界はどこを見て商売やってるのか解らないような態度ばかり。 JASRAC はその代表だろう。彼らが率先して、ユーザーの音楽離れを進めている。理解できないような理由で余計な出費ばかり強いるのだから。
せめて、ユーザーの疑問には真摯に答えていく必要があるだろうな。「誤解」だの「誤った議論」だの「誤った認識」だのとレッテル張りに逃げるのではなく、きちんと論理的な回答を用意すべきだろうよ。そのために高い給料もらってんだろ、 JASRAC の幹部連中はさ。
「No Music, No Life」 な俺たちにとって、 「No Logic, No Right」 でもある──とでも言っておこう。 JASRAC が大声出せば「理解」が得られると思ったら大間違いだ(後日注:肝心のフレーズを間違えて書いてたので、直しました。苦笑)。
「FAQ」 から幾つかピックアップしてツッコミ。
1.私的録音補償金の制度ができたのはどうしてですか?
「不利益」の正体は相変わらず明らかにしていない。
審議会で議論をして補償金制度創設の結論が得られたかのように書かれているが、この前後には全く結論が得られない 物別れの議論を経ているのである。第五小委員会(国民の理解が十分でなく対応策は時期尚早とされた)・著作権問題に関する懇談会(当事者同士の話し合いでは結論出ず)・第一〇委員会(ここが補償金制度創設を提言)・私的録音 録画問題協議会(ここでようやく当事者間合意)と、「十五年」かかっている。
こうしたところでも、私的録音録画補償金制度が根本的に問題を抱えている様子が判る。そもそも、なかなか合意できないような前提で創設されているのである(論理的検討がきちんと為されているのかすら疑わしい)。
3.JASRAC は iPod 等にも補償金をかけるように要望しているそうですが、それはどうしてですか?
「現在、 iPod 等の携帯用音楽プレイヤーが急速に普及し、MD等からのユーザーの移行が進んでいますが、 iPod 等が政令で指定されていないため、私的録音の実態は減っていないにもかかわらず私的録音補償金の額が減少し権利者への「補償」の機能は低下しています」とある。しかしMDプレーヤーが依然 売れ続けているのは私の以前の記事の通りだし、音楽用 CD-R とMDを合わせた記録媒体の売上も横這い状態である。私的録音補償金の額が減少しているのは確かだが、それは iPod とは全く関わりのないこと、MDや CD-R の単価が下降しているからに他ならない(これらの補償金額は卸価格の一定料率で計算されているため)。
補償金本意で考えれば本来なら JEITA との話し合いで料率の調整(もしくは定額にする)を行なうべきであろうが、それは実現できていない。私的録音録画補償金制度は、権利者側と機器・媒体メーカーと消費者との三者が同意できなければ成立し得ないという脆さがあり、補償金制度の「形骸化」にはこうした原因がある。要は JASRAC の自業自得なのである。
4.自分で買ったCDから iPod 等に曲を入れるだけのユーザーもいるのに、補償金の対象にしようとするのはおかしいのではありませんか?
今まで「私的録音」をひとまとめに論じてきた JASRAC だが、ここで「自分で買ったCDから iPod 等に曲を入れる」という個別の使用態様に下りて言及するようになった。「本来であれば、複製物が一つ作られるたびに著作権者は権利を行使して使用料を得られるはずのところ、その権利を制限して使用料を得ることができないようにしていることの代償が補償金なのです」と、 JASRAC の本音が出てきた(ま、彼らは元から一貫した主張ではあるが)。
要するに、CDを1枚でも2枚でも、「私的複製」をする場面で買っていけ──という主張である。レコードでも、CDでも、アナログカセットテープでも、 DAT でも、iTMS でも、 Mora でも、全部買えという話である。それが著作権なのだという。
──アホか! JASRAC がこういう考えでいることが明確になった(今まではそれを匂わせているだけだった)だけでも良しとするか。このような財産の収奪が果たして「権利者の正当な利益」たりえるのかの議論に進むことができよう。
ちなみに同一著作物から二重に収益を得ることが正当でないということは、中古ゲーム裁判で明らかにされているところである(ただし私的複製物を指しているものではない辺りに議論の余地がある)。このあたりはどう考えてるのかね、 JASRAC は。
5.音楽配信から購入した曲しか iPod 等に録音しないので、補償金を支払うことになるとすれば、納得できません。
JASRAC の不完全な許諾システムを棚に上げて、その名目を理由に“許諾していない”との説明。 JASRAC の側でシステムを変えれば済む話(ってか、配信業者との合意内容はどうなってるわけよ? 本当なら「私的録音補償金を払う必要があります」とかアナウンスすべきじゃないのか。ま、まだ指定されてないから他の言い回しをしなけりゃならないが)。
音楽配信音源は CD-R への焼き付けや形態プレーヤーへの転送を前提に売られているものであるが、こうした JASRAC の主張が消費者にも及ぶのか、第三者の専門家の意見を待ちたいところだ。はっきり言えば、こういう JASRAC の考えとは違うところで実際の売買が行なわれている(つまり消費者は JASRAC の言い分を知らされないでいる)。仮に裁判になったら、どう判断されるかねぇ。
6.音楽配信は配信事業者がすでに著作権使用料を支払っているはずです。二重取りではありませんか。
「(私的複製で補償金を支払うべきというのは)テレビやラジオの放送から録音録画する場合、自分で購入したCDから録音する場合、レンタルしたCDから録音する場合も同じです」とある。──これは本音だろうな。
これらはすべて「5」と同じ問題を内包している。放送の場合はCMを視聴することで対価を支払っているという考え方もあるし、自分で購入したCDでは既に「通常の利用」への対価が支払われている。レンタルCDの場合も私的複製を前提とした貸与権使用料が支払われている。 JASRAC にとっては不本意であろうが、これらの場合それぞれについて検討が必要だろうと私は思う(ただ私には検討は無理だな‥‥専門家にお任せします)。
JASRAC が柔軟な許諾システムを用意すれば、これらの使用料で私的複製を含めることは可能だろう(価格への転嫁が可能である以上、「支払いの対象となっている行為やそれを行っている人自体が異なります」というのは有って無きがごとしの説明だ)。
7.音楽配信はダウンロード価格に補償金を上乗せすればいいのではありませんか?
この項目で重要なのは、 JASRAC が 「iPod 等の携帯用音楽プレイヤーの音源は、音楽配信のダウンロードに限られず、自分で購入したCDやレンタル店で借りてきたCDをリッピングしたものもあります」と認めたことにある。彼ら自身が iPod 等での録音源を示したのである。これで議論の対象が絞られる。
配信音源・購入したCD・レンタルCD。3種類である。私的録音録画補償金制度が創設された時点では、放送音源とレンタルCDを中心に議論されていた(購入CDも音源として確かに存在していたが、無いものかのように扱われた模様)。この割合が変化していることだけは JASRAC も認めるところとなった訳だ。
このうち、繰返しになるが、配信音源とレンタルCDは使用料を支払っている。ここの調整で私的複製の「補償」をすることが可能である。そして購入CD。私は購入CDの私的複製が「権利者の利益」を害するものであるという前提には立たない。
この論点整理は、 JASRAC がもたらした唯一の恩恵かも知れない。
9.デジタル録音できれば、携帯電話や子供のおもちゃのようなものまで、補償金が必要になるのですか。
「指定されるための要件として、『主として録音の用に供するもの』でなければなりません」とか書いており、さも他のものには補償金がかからない書き方である。アホか。 JASRAC ら「悪の七団体」が汎用機器・記録媒体にも補償金の付加を要求しているのを自分で忘れたか。
はっきり言おう。 JASRAC の要求どおりに話が進めば、いずれは「携帯電話」や「おもちゃ」にもパソコンにもデータ用 CD-R にも補償金がかかるようになる。どこかで歯止めを掛けねば 取り返しの付かないことになるし、私的録音補償金を、権利者の「不利益」を中心とした検討を前提とした制度にしなければならない。そうでなければ、「録音」と名の付くものに対してはどんなものにまで補償金を要求するようになるだろう。それが JASRAC だ。
10. 携帯用音楽プレーヤーが広まり音楽を聞く機会が増えるということは、ミュージシャンにとってもいいことなのだから、それでいいじゃないですか。
「ハードディスク内蔵型録音機器等を使った私的録音行為から、何の代償も得られない状態が続けば、著作者の経済的損失が拡大して、将来の創作活動に悪影響を与えます」とある。そこにどんな「経済的損失」があるというのか。ハードディスク内蔵型録音機器が無くなったら、その使用場面で二重・三重のCD購入が見込めるというのか。
「経済的損失」の正体を JASRAC は説明する義務があると思うし、私はその「損失」を理解する手がかりを探し続けている。少なくとも、今回の JASRAC の「大声」はその助けには全くならない。
11. 補償金はメーカーが支払えば良いのではありませんか。
ここでは JASRAC は「メーカーが、その販売に際して価格に補償金相当額を上乗せして代わりに補償金を集め、権利者に還元する」と説明している。これで「権利者」側の「消費者には補償金の負担がない」「価格に転嫁しているのはメーカーの責任だ」という言説が的はずれであることが証明された。
補償金はユーザーが負担するものであり、 iPod に補償金がかけられれば それは我々が上乗せで支払うことになるのである(ただしアップルがビジネス判断でいくらか“かぶる”という選択肢はある)。この問題はメーカーの問題だけではなく、我々自身の問題だということだ。
14 と 15。
私的録音補償金の返還制度について軽く触れているが、この間のやりとり(書類は郵送)にかかる手間・費用が返還請求者の負担になることには全く触れていない。これではアンフェアと言わざるを得ないだろう。
もっとも、 iPod 課金が実現したとして、「外部メモリや外付けハードディスクとしてデータを持ち歩くためにしか使」わない場合には返還してくれるそうなので、ぜひ該当する方は皆 返還要求してみよう。なお法制小委では、返還制度の今後の運用を検討し請求側のハードルを低くすることを検討するとしている。現状では全く機能していないから、当然だわな。
16. 私が支払った私的録音補償金は一体どうなるのですか?
配分の不透明さは、 JASRAC の十八番である。どうして「不透明」と呼ばれているのか彼らは理解できていないようだが。各権利者団体へ配分されるところまでは書いてあっても、 JASRAC 内での配分を説明する文章は無い(せめて資料へのリンクぐらい張っとけって)。
何を基準に配分しているのか。その基準はどれくらいのスパンでアップデートしているのか。最低でも、その程度は示すべきであろう。
20. 補償金を受けるためには JASRAC の会員にならなければいけないのですか。
会員外への配分の実績を示すべきだろう。
ちなみに、会員外への配分の際にも、 JASRAC は手数料を取るとしている。
【追記: 2005.9.19】
読者の方へ──。
インターネットで発言をなさっている音楽ファンの方(大小、実名・匿名の如何を問わず)、もし iPod 等への私的録音補償金課金に納得できないなら声を挙げませんか?
詳しくは下記の記事を御覧ください。
http://himagine9.cocolog-nifty.com/kitaguni/2005/09/jasrac__f9e8.html
「JASRAC へ」
(試される。(ココログ mix))
投稿:by 谷分 章優 04:43 午後 [著作権行政 watch, 音楽業界の愚行] | 固定リンク
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» JASRACはおとりじゃないか? [若旦那の独り言2005 Ver.3 から]
9/15に週刊ダイアモンドの記事に関してエントリーを起こした。
続きを読む
受信 2005/09/17 17:43:13
» [JASRAC][私的録音録画補償金制度]JASRAC、及びJASRACの考えへの指摘・不信感 [musiclover blog から]
昨日の[http://d.hatena.ne.jp/freeyoursoul/20050916/1126881932:title=『JASRACへ、一方的な論調は止めてユーザーの意見を聞く姿勢を見せてくれませんか?』]の追記です。 ([http://www.himajin.jp/mt/ei/archives/001180.html:title=若旦那の独り言2005 Ver.3『JASRACはおとりじゃないか?』]経由) ●”JASRACの考え”について、JASRACの問題点の的確な指摘 昨日の... 続きを読む
受信 2005/09/17 19:10:41
» 反対する理由 [Non-Fiction から]
パブコメ提出にあたって、自分の考えを整理するために反対の理由をまとめてみる。第一に補償金というのがどういう目的のものかという意味から考えてみよう。”補償”という言葉からわかるように、これは私的録音によって著作権者に与えた損害をまかなうものという位置付けのものだ。ではiPodを使うことによって著作権者にとってどんな損害が与えられることになるのだろう?
そのためにはiPodがどのように使われているか、ということを考えてみる必要がある。自分の場合で考えてみれば、今iPodに入っている曲のほとんどは、... 続きを読む
受信 2005/09/17 23:35:36
» 私的録音補償金(iPod等税)パブコメスタート。 [ふっかつ!れしのお探しモノげっき から]
えーと、まずインフォメーションから先にあげておきます。
なお、最新ニュースとして、共同通信のほうで(同時に河北新報にも掲載)
課金の賛否結論出ず 私的録音で文化審小委報告というのがあがってます。
これによると、報告は、iPodの場合で販売価格に数百...... 続きを読む
受信 2005/09/26 8:31:16
» 私的録音補償金(iPod等税)パブコメスタート。 [ふっかつ!れしのお探しモノげっき から]
えーと、まずインフォメーションから先にあげておきます。
なお、最新ニュースとして、共同通信のほうで(同時に河北新報にも掲載)
課金の賛否結論出ず 私的録音で文化審小委報告というのがあがってます。
これによると、報告は、iPodの場合で販売価格に数百...... 続きを読む
受信 2005/09/26 8:32:18
» [NEWS] シャレにならないオジ様たち [DIGITAL DJ から]
ついに日本の音楽業界に風穴を開けてくれたアップル PCからiPodへのコピーをできなくすれば問題は解決する--法制小委第8回審議 デジタル音楽販売額3倍に 上半期、世界で900億円 iPod課金、反対が賛成の4倍超-パブリックコメント中間報告 PCからiPodへのコピーを..... 続きを読む
受信 2005/10/07 3:38:55
コメント
皆さん「キカイ」や「メディア」への課金に話題が集中させていますが、そもそもなんで音楽CDに「転送されることを前提とした課金」がなされてないんでしょうね。なんででしょうね(笑)。
「5」と「7」で余計疑問を湧き上がらせることとなっちまいましたよ>JASRACさん。
投稿者: 趣味の問題2 (2005/09/18 18:18:05)


