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2005.09.07
本当に私的録音録画補償金は形骸化しているのか?
え〜、今回はちょっと番外編みたいな位置づけ。
私の論考というよりは、外部の方の指摘を受けて書いておりますんで。
『ちょびっと試される。』の方で、十六夜さんという方からこんな書き込みを戴いたのである。
http://d.hatena.ne.jp/himagine_no9/20050903/p3
「法制小委#7資料が掲載」
(ちょびっと試される。)
# 十六夜
『http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/
013/05082601/001/009.htm
【携帯オーディオ機器の国内出荷の推移】このグラフを百分率じゃなくて出荷台数ベースで書き換えたグラフをどこかに掲載できませんかね?
MDはほぼ横ばい、そこにHDが上乗せされているという真実をアピールする場が欲しいですね。
当然2005年度は恣意的な数字ですし・・・』
で、十六夜さんからグラフ画像を戴いたのでここに掲載する(縮小画像をクリックすると別ウィンドウで表示されます)。青い部分がMDの出荷台数で、赤がハードディスク内蔵型の出荷台数。左から 2002年、 2003年、 2004年、ちょっと空いて 2005年の「予測値1」「予測値2」「予測値3」「予測値4」。
──どうですか。
MDって売れ続けてんのよ。このこと自体は、MDを持ってなくて CD-R だけを使ってる私にしてみれば意外としか言いようが無いのだけど、しかし事実は事実。MD(本体の方ね)は毎年同じくらい売れているのだ。
さて、このグラフについての考察をしてみよう。
2002年から 2003年 のデータについては、文化審議会 著作権分科会に報告予定の法制問題小委員会「審議の過程(案)」に掲載されたもので、「(社)電子情報技術産業協会、主要メーカー資料等により電波新聞社が作成したもの」を使っている。文化庁資料の付記によると、 平成17年4月8日付 電波新聞のものだそうだ。
電波新聞でのグラフは、各年のMD(携帯型)とハードディスク内蔵型との合計を 100% として、それぞれの割合を示したものである。それを、十六夜さんは、台数ベースでグラフにしてくれた。ちなみに 2005年 については「予測」なので別扱いとしている(詳しくは後述)。
2002年から 2003年 への推移で注目すべきは、先にも書いた通り、MDの出荷台数が横這い状態にあるということである。あえて言うなら、 2003年をピークにやや下降しているとも言えるか。
で、 2005年は どうなるのか。十六夜さんは予測値1から4を示してくださっている(ハードディスク内蔵型については、いずれも電波新聞の 270万台 をそのまま用いている)。特に付記は戴いてないのだが、私の主観でだいたいの見当を付けてみる。「予測値4」は横這いの状態が続いた場合の予測台数だ。「予測値3」は下降ペースが同様だと仮定した場合の台数。「予測値2」は、おそらく予測というよりは、「予測値1」と「予測値3」の中間点を参考として示したものだろう。
そして問題の「予測値1」である。何故これが問題かというと、電波新聞が予測した値がこの 160万台 だからである。こうして台数ベースで見ていき、しかも何通りかの「予測値」と比較すると、この電波新聞の「予測」はあまりにも極端に見えないだろうか?
なぜこんな極端な「予測」になるのか。それは文化庁による「審議の経過(案)」のグラフ(前述したように電波新聞のデータがオリジナル)見れば明らかだ(これも、縮小画像をクリックすると別ウィンドウで表示されます)。
総出荷台数に占める割合の減少傾向をもって、そのまま「予測」したのである。これは杜撰と言わざるを得ない。
仮にハードディスク内蔵型の 2005年の 出荷台数が 270万台 だったとしても、その増加傾向が丸ごとMD出荷台数の減少にするのではない。一定量に限られた“パイ”を食い合うのならともかく、携帯オーディオ機器の全体出荷料(ここのデータではMDとハードディスク内蔵型だけだが)が増加していることは、十六夜さんのグラフで 2002年から 2004年 の部分を見れば明らかだ。
もちろん、MDからハードディスク内蔵型へ移行するユーザーがいれば、MDの出荷台数は減っていくだろう。しかし、MDをよく使っている人であればあるほど、手元には多くのMD媒体を置いてある筈である。つまりハードディスク内蔵型を並行して使い、手元のMDを聴くために こちらの再生機器を買い求める場合だってある。MDの出荷台数が極端な下降線をまだ辿っていないのは、こうした理由があると思われる。
なお、この電波新聞のグラフの通りに「予測」したとしても、 2005年の MD 40% は減りすぎである。この前提に乗ったところでせいぜい半々程度が自然。これについては、MDが過半を切るという演出のためにさらに少なく「予測」したと見える。
実際の 2005年 の出荷台数というのは もっと先にならないと判らないだろう(そりゃそうだ、まだ終わってないんだから)。この 2005年 という年がMDにとって(出荷台数が激減する)契機となる年になるのなら、それは実際のデータが出てくるのを待って判断すべきである。少なくとも、 2004年 のデータまでを見た限りでは、MDは極端な減少を見せていないのだから。
さて。私が問題にしたいのは、電波新聞のグラフではない。文化庁が、なぜこのグラフを引用してきたのか──ということだ。
端的に言って、これは私的録音録画補償金制度の「形骸化」の認識を植え付けるためだと思われる。そして性急な iPod 課金を実現させる、と。
なぜ私がこう考えるかというと、文化庁は実態を知るために もっと相応しい資料を持っているからである。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/
013/05050301/005/006.htm
「文化審議会著作権分科会
法制問題小委員会(第3回)議事録
[資料2−2]参考資料1」
(文部科学省)
法制問題小委員会(第3回)で配布されたこの資料 (sarah から提出されたデータが元になっている)で、「私的録音補償金額の推移」「記録媒体の出荷数と補償金の推移」「機器の出荷数と補償金の推移」と3つのグラフが用意されている。
これを見れば、MDの減少傾向は確かに見られる(なお「機器」の総出荷台数のため、MD以外の機器も含まれる)が、MDの出荷台数が 2005年では 160万台に 急落するようには読めない。 2004年 (平成16年) の値がグラフに入っていないものの、電波新聞での 296万台 という数字はかなり説得力がある(下降曲線の延長上にある感じである)。
この資料だけでは出荷台数の予測を立てづらいところはあるが、こちらを用いずに電波新聞のグラフを持ってきたことに対し作為を感じずにはいられない。課金対象機器が今後どうなるのかという見通しとしての説得力は sarah の資料の方が上だからだ。また「予測」を立てる場合も、出荷台数の推移曲線から自然な点を取るか 十六夜さんのように幾通りかの「予測」を示すかすべきであろう。
もっとも、重要な決断は こうした「予測」に基づいてすべきでない。きちんとしたデータが確保されてから行なわねばならない。その意味で、電波新聞のデータを元に私的録音録画補償金が「無くなってしまう」などという喧伝は(今のところは)事実に反すると断ずるべきである。
なお、面白いのは記録媒体の出荷数は横這いの状態にあるということである。ここはMDだけではなく音楽用 CD-R も含まれている筈だが、補償金制度の基盤は決して揺らいではいないのである。
確かに補償金額自体はガックリ減ってるわけだが、これは制度基盤の問題ではなく、制度運用の問題である。権利者側はメーカー側と交渉すれば良いだけの話である。それが出来なければ、そもそも私的録音録画補償金制度自体、存続は不可能ということではないか。
端的に言えば、私的録音録画補償金制度は、ユーザーとメーカーの理解と協力があって始めて可能となる制度である。それについて、権利者はどう考えているのだろう? ただ「金よこせ」で済む話ではなかろう。現行制度で運用がマズければ それを正すのが先だ。 iPod がどうの、汎用機器がどうの、安易に対象を拡大して取り分を増やそうとするだけが能ではない。
iPod に課金すべきか否かはここでは論じない(他でもやってることだし、いま考えている最中でもある)。ただ一つ言えるのは、 iPod 課金について検討したり、私的録音録画補償金制度自体を検討するのに、若干の時間の余裕があるということである。
──MDがそこそこ売れ続けてるんだから。記録媒体だって売れ続けてるんだから。
投稿:by 谷分 章優 10:29 午後 [著作権行政 watch] | 固定リンク
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えーと、まずインフォメーションから先にあげておきます。
なお、最新ニュースとして、共同通信のほうで(同時に河北新報にも掲載)
課金の賛否結論出ず 私的録音で文化審小委報告というのがあがってます。
これによると、報告は、iPodの場合で販売価格に数百...... 続きを読む
受信 2005/09/08 22:10:18
» [著作権][文化庁]数字のマジック [Copy & Copyright Diary から]
[http://d.hatena.ne.jp/copyright/20050903/p1#c:title=9月3日付けのエントリにコメントをいただいていました]が、余力が無く対応できないでいたところ、暇人#9さんが取り上げました。 試される。(ココログ mix): 本当に私的録音録画補償金は形骸化しているのか? http://himagine9.cocolog-nifty.com/kitaguni/2005/09/uretenaino_md__e0f9.html 本当に私的録音録画補償金は形骸化... 続きを読む
受信 2005/09/08 22:32:25




