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2006.01.14
著作権分科会 #17 ──資料にすら目を通しているとは思われない勉強不足の分科会委員たち
1月12日に 文化審議会著作権分科会 (第17回) が開かれ、報告書が了承された。今期の法制問題小委員会で議論された「権利制限の見直し」「私的録音録画補償金の見直し」についての方針が、小委員会での議論通りに決定したこととなる。
分科会の内容を伝える報道については 『Where is a limit?』 が追いかけているので参照されたい。残念ながら これといった記事はまだ出てきていないのだが。どうしても視点が私的録音録画補償金に偏ってしまうきらいがある(報道機関がそれじゃまずかろう)。
さて、ここでは 『zfyl』 の「議事概要(メモ)」をもとに感想を述べたい。委員発言に看過できないものが あまりに多いからだ。かと言って、気合い入れてツッコむほどの中身でもない。だから ゆるゆるとツッコんでみる。
http://nirvana.blog1.fc2.com/blog-entry-54.html
「文化審議会著作権分科会(第17回)」
(zfyl)
○ 金原委員(社団法人日本書籍出版協会副理事長〔株式会社医学書院代表取締役社長〕):権利制限の見直しについて。報告書に含まれる特許、薬事、教育について、非常に公共性が高いのはよくわかるが、見直しに当たって考慮いただきたいのはベルヌ条約との整合性である。ベルヌ条約は、著作物の通常の利用を妨げず、かつ、その著作者の正当な利益を不当に害しないことを条件としているが、公共の場合についての定めはない。もともと公共性の高い部分で利用される著作物がその為に作られている場合には、著作物の通常の利用を妨げることを考慮いただきたい。
▲小委員会での議論でも、ベルヌ条約との整合性に配慮されていたことは言うまでもない。それよりも、どのように「正当な利益を不当に害」することとなるのか具体的に指摘すべきであろう。それとも具体例を示せない理由でもあるのか?
▲「公共の場合についての定めはない」(つまり公共の場合には権利制限できない?)との見解はベルヌ条約を誤解しているのではないか。
▲論理的な議論がしたいのであれば、「公共性の高い部分で利用される著作物がそのために作られている場合」を特定し、その場合と そうでない場合それぞれについて権利制限の可否を判断すべきであろう。また、許諾権・報酬請求権の扱いもそれぞれ考える必要がある(必ずしも報酬請求権まで制限しなければ実現できないというものでもない)。こういう論の立て方が出来ず、同じ台詞ばかり繰り返していても能がない。
※金原委員発言
薬事のところでは、製薬企業は複製物を提供することについて直接の対価を得ないということだが、製薬会社による複製物の提供は業務に密接に関係あると思うので、検討いただきたい。
▲国民の生命に関わる情報提供について、その公共性を全く理解していない。また、ここでも許諾権と報酬請求権をごっちゃに述べているが故意なのか否か(理性的判断としては報酬請求権までの後退を主張すべき場面だろう、これは)。
※金原委員発言
著作権法42条が想定しているのは、内部利用であり、同様の趣旨であると考えるのは行き過ぎと思う。あくまで、行政の内部利用と限定されているのであり、対外的頒布まで延長したり、同種と考えるのは拡大解釈があるのではないか。
▲ならば法改正して「対外的頒布」を認めるべきであろう。
※金原委員発言
入手困難については、ここで入手困難とは、許諾のことと思うが、すでに権利団体による許諾が機能しているので、誤解のないようにしていただきたい。
▲権利団体による許諾が大して機能していないことが資料に掲載されている(当該手続で使われる資料のうち、多くが許諾対象となっていない)。権利者側は、アウトサイダーの問題をあまりにも過小評価している。
▲また、アウトサイダーの許諾権についても無理やり既存管理団体で扱わせるべきとの意見もチラホラ見るが、これとて一種の権利制限であろう。こうした考えは、権利者団体側の「自分たちの権利だけは守りたい、他人のは知らん」というエゴでしかない。というか、これは法律で許諾権を制限するのと同じ手法である。
○ 神山委員(社団法人日本新聞協会新聞著作権小委員会委員長):(中略)今回提案の特許・薬事は、特許を得たい、新薬の承認を得たいという私企業の営利目的行為に対して権利制限を認めようということで、筋が違うと思う。例えば、特許を得るために必要な手続のためにコストがかかるというのは当然負担すべきコストであり、権利制限を認めるのはいかがなものか。医薬も、副作用情報の提供も社会的責任として当然すべきことであり、権利制限を認めるのはいかがなものかと思う。
▲ここでも許諾権と報酬請求権をごっちゃにした意見が出ている(権利制限に反対するための方便か?)。許諾権を制限させて、報酬請求権を行使するという発想が なぜ出てこないのか。
▲特許での権利制限について「私企業の営利目的行為に対して権利制限を認め」るという認識の奇妙さ。今までの配付資料(「審議の経過」や「報告書」)にきちんと目を通していれば このような解釈になりようがない。中山委員が分科会の場でも説明しているが、特許にかかる権利制限は瑕疵ある特許を認めないための対抗策である。瑕疵ある特許が存在することで迷惑するのは国民であり、技術発展阻害・訴訟コスト負担など後々大きな影響を被るのである。また、医薬関連の公共性については言うまでもない。
▲「私企業の営利目的行為」と表裏一体の手続であるがゆえに反対が出てくることはまだしも理解できるが、ならば どう区別すれば「私企業の営利目的行為」から切り離せるのか、そういった視点で権利者側から論点をなぜ提示できないのか。多くの人権が「公共の福祉」に制限される以上、著作権を理由に公共性を切り捨てることもまた許されまい。にもかかわらず、彼らの主張は公共性を切り捨てろということなのである。
▲公共性に配慮し、出来ることなら著作権も守る。そのバランスを全く考えない権利者は害にしかならない。
○ 中山法制小委主査:特許を例に答える。これは、出願人が自分の利益のためにコピーするのではなく、第三者が特許をつぶすために使うのである。むしろ出願人としては出てこない方がよいこと。特許という重大な権利が瑕疵あるものとして力を持たないための公益目的である。
○ 神山委員:自分のコストで潰せということである。
▲中山委員がここまで説明しているにもかかわらず、理解できない分科会委員。
○ 岡田委員(社団法人日本音楽著作権協会理事〔作詞家〕):(中略)報告書の内容を蒸し返すことなくとおっしゃったが、これは報告書であって絶対的なものではない。間違ったものであった場合には、それに基づく検討により間違いが広がるので、むしろ、蒸し返したり、内容を振り返ることは必要なことである。この報告書を前提とすべきとの考えは少しおかしいのではないか。
▲「絶対的なものではない」のは私的録音録画補償金も同じ。根本的に再検討すべきは、いわゆる私的録音・録画問題そのものなのである(私はこの議論が正確に行なわれたことは今まで無かったと確信している)。論理的基礎を蓄積できるような議論をこれから やり直さねばならない。
▲結局のところ、権利者として都合の良いように詭弁を弄しているに過ぎない。そういう発言だ(彼らは私的録音録画補償金を「前提とすべき」と考えているのだから)。
○ 中山法制小委主査:現在政令指定されていない機器で私的録音する行為は違法ではないので、政令指定されていないiPodに課金しないことが著作権を侵害するということではない。しかし、著作権侵害ではないが、実際上の利益侵害はあるかもしれない。もし、現在権利侵害があれば、直ちに違法だから何とかしないといけないということになる。
(中略)報告書ではiPodに課金することの是非は述べてない。30条の見直しを早急にしなければならないということ。また、利用者は何でも無料で利用できなければならないということは言ってないし、審議会でもそういう意見は皆無であった。
▲「実際上の利益侵害はあるかもしれない」との言い方に注意。あくまでも断言できないのである。
▲中山委員の立場(その考えも含め)では当然の発言ではあるが、「利用者は何でも無料で利用できなければならないということは言ってないし、審議会でもそういう意見は皆無であった」との話には違和感を持つ。「無料で利用でき」るべき場面というものを考えていただきたいものだ。
○ 大林委員(社団法人日本芸能実演家団体協議会専務理事):(中略)以後の会というのは、委員構成を含めてどういう構成になっているのか。これ以後の議論は細かい具体的な問題が出てくるから、是非権利関係の方、直接の当事者を入れていただいて、激論でも結構なので、はっきり議論を戦わせた方がよいと思う。なぜか。たとえば、二重徴収という論旨がある。別なところには、制度上の問題点ということで、汎用的機器、媒体が用いられる実態がある一方で使用しない場合にも負担が生じるとある。誤解かどうかわからないが、これは矛盾しているので、その整理を含めて当事者に是非出てきていただきたい。
(中略)ここにいる人の全てがエンドユーザーでもあって、いろいろ考えがあると思うので、エンドユーザーとしてどう考えるかは我々も考える必要があるが、今後は関係者も入れて議論をお願いしたい。
▲「直接の当事者」にエンドユーザーが含まれているのか否か。怪しい。
▲二重徴収の問題と、汎用機器・記録媒体の問題とは全く別の話である。何がどう「矛盾」しているのか教えてもらいたいものだが。
▲「ここにいる人の全てがエンドユーザーでもあって、いろいろ考えがあると思うので、エンドユーザーとしてどう考えるかは我々も考える必要がある」という発言に至ってはナンセンス。権利者と名のついた者が今までエンドユーザーのことを考えたことがあったか?(皆無ではないが。) エンドユーザーの意見については「我々も考える」のではなく、エンドユーザー自身に参加させて反映していくしかあるまい。最低限、パブコメの意見だけでも読むべし(エンドユーザーを騙るイタいものもあるが)。
○ 土肥委員:(中略)補償金問題にとっても、確かに実際上の不利益が起きているのだろうと思う。来年以降引き続き検討することとされているが、これは今年引き続きという趣旨と思うので、適宜調整いただきたいが、いずれにせよ、DRMが完全にできるようになっても補償金制度はなくならないのだろうと思う。集中的に議論しないと、現在利益が損なわれているとしたら不公平な状態になると思うので、集中的で端的な議論が行われる必要がある。
▲「補償金問題にとっても、確かに実際上の不利益が起きているのだろう」と。「実際上の不利益」がどのようなものなのか示してほしい。断言されているわけではないが‥‥。「現在利益が損なわれているとしたら」みたいな仮定の話にしかならないから、この私的録音・録画問題が進展しないのだ。
○ 瀬尾委員:(中略)現在の私的利用について、音楽に限定されず、これまで個人的に簡単にするものだったのが、現在は個人が非常に精度の高いものをつくって、それを発信もできてしまう。家庭内という定義が当てはまらなくなっているのではないか。
▲「現在は個人が非常に精度の高いものをつくって、それを発信もできてしまう」? そりゃ「私的利用」じゃないだろう。そもそも前提がおかしい。
▲もし発信者本人が制作した著作物を指しているとしたら、それはそれで問題のある発言である。著作物の発信を“プロ”が独占し、「家庭内」での著作物制作までも阻害しようとする思想かも知れない。しかしながら“プロ”であっても、著作物制作が著作権法の保護下に入るのは それが「家庭」の外へ出た時点である(正確には、「家庭」の中にある時点でも公表権が関わってくるけれども。ここでは著作者人格権ではなく著作財産権に限定して考えることとする)。となると「瀬尾委員」の言っていることは まるっきり無意味ということになるが如何か。
○ 常世田委員(社団法人日本図書館協会常務理事):権利制限について図書館の立場から。図書館は理不尽なエンドユーザーの要求に対抗して権利を守っている立場である。(中略)
図書館の権利制限について。他館から借りた本のコピーについてはガイドラインが動き始めており、これにより一定程度問題は解決できると思うが、権利者団体に全ての権利者が参加しているのではないし、図書館は、法律とは異なるガイドラインのようなものについては過剰に規制してしまう場合もあり、これでは不十分だという認識を持っている。それについてもご理解いただきたい。
6つの要望について、多数が支持したとしているにもかかわらず先送りなのはなぜか。後退しているのではないか。「7その他」の積極的に政令に委任するというのが重要だろうと思う。今回、積極的に委任するとされているにもかかわらず、そういう手段が執られていないのは残念である。
4番目の再生手段の入手困難についても、以前の報告書で明確に法改正すべきとされているもので、早急に法改正が必要と思っている。
官公庁の報告書については自由利用マークでとあるが、実効が上がってないので要望しているのである。不可能な場合のみ表示するのが現実的ではないか。
障害者については法の下の平等を保証されていないということ。憲法にも抵触する。全く対応されてない障害者もいるということも理解いただきたい。
▲あくまでも この「議事概要」の中身が正確だったらという話でしかない(正確な言い回しについては公式議事録での確認を待つしかない)が、「図書館は理不尽なエンドユーザーの要求に対抗して権利を守っている立場である」などという発言を図書館側の代表者がしても良いものなのか? むしろそのエンドユーザーの「理不尽な」要求の問題点を解説したり、それが「理不尽」にならないようガイドラインなり法改正なり模索すべきであろう。図書館はエンドユーザーを“商売相手”にするものであり、かつ そのエンドユーザーを啓蒙していくという役割を担っているにもかかわらず、図書館協会を代表する者がこのような暴言を吐くとは。あまりにも思慮に欠ける発言ではないか(それとも何か、図書館関連の権利制限要望はエンドユーザーの「理不尽な」要求の結果だとでも?)。
▲図書館関連の要望が全滅したのは先の法制問題小委員会で既に決していたことだが、今までに日本図書館協会から声明が発せられたとは聞いていない。まして唯一実現の見通しがあった図書館間の相互貸借資料の複製については、文化庁著作権課による勝手な解釈で要望取下げのような形に扱われている(直後、図書館側と権利者側とのガイドラインが発表されたが)。このような不透明な検討を受けていながら沈黙し続け、この著作権分科会の場で反応を初めて返した。これだけ言いたいことがあったのなら、何故いままで沈黙していたのだ。
▲日図協は、さまざまな場面でもっと情報発信を強化すべきであろう。特に、言うべきことについては素早く声明を出すくらいの姿勢が必要だ。この点、あまり良い例ではないが JASRAC や文藝家協会を見習うべき。
投稿:by 谷分 章優 05:20 午後 [著作権行政 watch] | 固定リンク
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» 著作権補償金の上乗せ、「iPod」見送り決定 [Where is a limit? から]
NIKKEI NET経由著作権補償金の上乗せ、「iPod」見送り決定・文化審の記事が掲載されています。タイムスタンプは13:27です。この記事の中で気になる部分を引用させて戴くと iPodなどの携帯デジタル音楽プレーヤーの販売価格に、著作権者への補償金を上乗せするかどうかを..... 続きを読む
受信 2006/01/14 20:53:39


