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2006.05.21
知財戦略本部・コンテンツ専門調査会#8 ──知財推進計画の本質は変わらない?
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/contents/dai8/8gijisidai.html
「知的財産戦略本部コンテンツ専門調査会(第8回)議事次第」
(首相官邸)
5月18日 に知的財産戦略本部・コンテンツ専門調査会(第8回)が開催された。議題は「知的財産推進計画(コンテンツ分野)について」。現在 知財戦略本部で策定されている『知財推進計画 2006』 の一部が明らかになっている。
ここで配布された資料は次の通り──
【資料1】知的財産推進計画(コンテンツ分野)について(概要)
【資料2】知的財産推進計画(コンテンツ分野)について
【資料3】パブリックコメントの結果について
【資料4】契約の自主基準・ひな形の策定について(案)
【資料5】委員提出資料
資料5−1 角川委員・依田委員提出資料
資料5−2 國領委員提出資料
資料5−3 日枝委員提出資料
資料5−4 依田委員提出資料
資料5−5 麻生委員提出資料
資料5−6 久保委員提出資料
実際の文書は冒頭のリンク先で入手できる (PDF)。
資料1は知財推進計画(コンテンツ分野)の概要。見るまでもない簡単なまとめ。
資料2は知財推進計画。コンテンツ分野に限定して掲載されているようだ。今回の資料では これがメイン。
資料3は「知的財産推進計画2006に盛り込むべき政策事項」パブリックコメントの結果。内容は 4月25日 に公表された「知的財産推進計画2006の策定に向けた意見募集の結果について」の「結果概要」 (PDF) と同じもので、そこからコンテンツ分野に関わるものを抜粋している(元々の「結果概要」が分野別にまとめられているため、その後半部分がコンテンツ分野に当たる)。
資料4はコンテンツ制作に係る契約の在り方を探るもの。‥‥と言っても、映像に関する実演家・映画・放送番組・ライブエンターテインメントの項目を立てて「当面の進め方」を述べているに過ぎない。そのほとんどが 「2006年度中に」 云々。具体的な文書ではないので読むに及ばない(契約関係に興味がおありの方は、この資料を足がかりに実際の協議を調査していくことが必要となろう)。
資料5からは委員による意見。
資料5ー1は角川・依田両委員による「模倣品・海賊版の個人輸入等の取締り強化について」。要は、個人輸入も取り締まれという話。
資料5−2は國領委員による「知的財産推進計画について」。競争政策の堅持・発展を求める意見。
資料5−3は日枝委員による「『知的財産推進計画(コンテンツ分野)について』に関する意見」。委員自身が詳しい(であろう)放送関連の項目について異議を述べたもの。ちとツッコミたいので後で触れよう。
資料5−4は依田委員による「『知的財産推進計画 2006』 (案)に対する意見」。普段から言いたいことを言って(顰蹙を買っている)せいか、今回は具体的な話ではない。コンテンツ産業の保護をもっとやれという方向性で、読むに及ばず。
資料5−5は麻生委員による「地方におけるコンテンツ産業の振興について」。福岡県での取組みを紹介しながら、それでも東京中心の産業構造のために限界があることを指摘(しっかし、これって解決可能なのかなぁ)。直接口には出さないが「何とかしてくれぇ」ってことなのだろうか。
資料5−6は久保委員による「知的財産推進計画(コンテンツ分野)について」。いろいろと知財推進計画にツッコミを入れているようだが、私も逆ツッコミを入れたい。後述。
以上の資料のうち、私がさしあたり目を留めたのは資料2・資料3・資料5−3・資料5−6といったところ。本調査会においては(資料を見た限り)波乱は無かったようだ。とは言え、私が何も思わなかったかというと そういう訳でもない。いつものような長文ツッコミを後で入れるつもりである(いつもにまして長尺になりそうな予感)。
資料2で明らかになった『知財推進計画 2006』 だが、その本質は変わっていないように見受けられる。要は「何か変えなくっちゃ」というものを、所轄の官庁の見通しに基づいて書いてあるに過ぎない。例えばCD再販の廃止などは「検討する」程度の後退した表記になっていたりする。
他の項目についても大体同じ。著作権=文部科学省(文化庁)関連の書き方でお馴染みの、“中立的”表記でかつ「**年までに検討」というやつだ。こういう項目に限って事務方では方針を決めているだけに、表面だけの“中立”など害にしかならない。
さらに言えば、これまでの知財保護に関する効果の評価や実態の調査を厳密に行なっていくという態度に欠けているのも相変わらずだった。特に我々のような、音楽レコードの還流防止措置(いわゆる「レコード輸入権」)や雑誌・書籍貸与権の問題をきっかけに知財関連の動向を追うようになった人間にとっては、運用状況が惨憺たる有様(還流防止措置についてはレコ協が充分な情報を公開できていない、貸与権に関しては未だに集中管理機構が稼働していない)であるにもかかわらず知財戦略本部がそれを省みない現状に我慢ならない。知財戦略本部(さらに言えば著作権分科会も)の無責任さが共通の理解なのである。
──その意味でも、この「推進計画」の本質は変わっていない。
まぁ、中古ゲーム関連の項目復活が無かったことと、CD再販廃止の項目自体は消えなかったことだけでも良しとするか。
■「知的財産推進計画(コンテンツ分野)について」
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/contents/dai8/8siryou2.pdf
「知的財産推進計画(コンテンツ分野)について」
(首相官邸:知的財産戦略本部 コンテンツ専門調査会(第8回)資料2・ PDF)
この資料が最も注目すべきものである。
6月の正式発表に向け知的財産戦略本部で策定中の『知的財産推進計画 2006』 の一部(というか半分)を読める。基本は案文そのものであろう、そして一部は修正要望も併記されている。ここからどのような修正が入るかは議事録を見てみないと判らないが、そう大きくは変えられないのではないか。
私のような“もの言うエンドユーザー”の立場からすればツッコミたいところは多々ある。とは言え、一見“中立”を装いたい行政側の常套語法に収めてあると一定の理解も可能な内容だ。別の言い方をすれば、方針を立てずどっちつかずの表現が続き、各所轄省庁が“やれるところからやれるところだけやる”的な内容でしかないのだが。
当該資料はまず、次のような文章が目に飛び込んでくる(ノンブル2ページ)。
2011年 には地上デジタル放送への全面移行となるなど、本格的なデジタルコンテンツ時代が到来する。そこでは、インターネット上において、誰でも気軽に参加してコンテンツが創作され、循環していくであろう。今、我々がなすべきことは、多くの国民にとってコンテンツの創造・保護・活用が身近になる時代を展望して、ITモラルやマナーの啓発などIT化の進展に伴う影の部分にも対応しつつ、新しい保護マナーや流通環境を時代に先んじて整えることである。
我が国は、そのような新しいコンテンツ循環環境の広がりを通して、世界トップクラスのコンテンツ大国を目指す。
しかし日本は既に、インターネットでのコンテンツ配信で後進国に属している。
特に、還流防止措置・再販制と二重の保護にぬくぬくとしているレコード業界の「権利行使」で、音楽配信の実用化が遅々として進まない状態にある。さらに言えば、海外への日本音楽発信すらままならないでいる──還流防止措置の目的としたアジア進出ですら。
このような現状をどう認識しているのか、知財推進計画がどれほど役立つのか、シビアに評価しなければならない局面に来ている(何せ、還流防止措置が盛り込まれた知財推進計画から既に3度目の改訂を迎えているのである)。
1.ユーザー大国を実現する
(1)IPマルチキャスト放送の積極的活用を図る
(2)ユーザーに配慮したプロテクションシステムを採用する
(3)ユーザーが豊かなコンテンツを楽しめるようにする
(4)アーカイブ化を促進し、その活用を図る
(5)安心してコンテンツを利用するための取組みを奨励・支援する
IPマルチキャストについては、 「2006年度中の できるだけ早い国会に、著作権法及び電気通信役務利用放送法の改正案を提出する」とある。もはや既定路線であるかのような書きぶりだ。何のために現在 著作権分科会で議論しているのかねぇ。
なお「著作権法及び電気通信役務利用放送法の改正案」としているところは評価に値する。著作権法を改正しただけではIPマルチキャスト(デジタル地上波の再送信)が有線放送として実現できない──との法制問題小委員会での指摘が反映されていると思われる。有線放送の位置づけは著作権法だけで決まるものではなく、放送関連法で課せられる義務と裁定の利用が不可欠である。このバランスを取る(あるいは法と法で連携する)努力が求められる。ただ 「2006年度中」 に間に合うのかは甚だ疑問。
プロテクションシステムの項。「一定の枠組みにおける電波利用方式の設定・実施、放送関連機器・システムの規格・運用に関わるプロテクションシステムの設定に関しては、こうした技術規格等が事実上の利用に当たっての制約になり得るということを踏まえ、行政としても、 2006年度 以降も引き続き、ユーザー、メーカー、関係事業者等幅広い関係者の参加を得、その検討プロセスを公開してその透明化を図ることによりシステム間の競争を促進する」とある。言ってみれば無難な文章。
もっとも総務省から「バランスのとれた仕組みの策定、採用と、その透明かつ継続的な見直しプロセスのあり方について検討し、 2006年度中 に結論を得る」と修正するよう意見があったそうだ(詳細は当該資料を参照のこと)。期限を設けることで少し踏み込んでいる感もあるが、方向性が打ち出されたわけではない。
項目の最後で「民間事業者においてプロテクションシステムを検討する場合は、過去の失敗例に学び、ユーザーの利便に配慮するよう奨励する」とあるのが御愛嬌。しかしこの「過去の失敗例」とは具体的に何を指すのかは書かれていない。片手落ちだ。
(3)は注目が集まるであろう一項。「弾力的な価格設定など事業者による柔軟なビジネス展開を奨励する」「音楽用CDにおける再販売価格維持制度について検証する」の二項目に分かれている。
前者については、「事業者による書籍・雑誌・音楽用CD等における非再販品の発行流通の拡大及び価格設定の多様化に向けた取組を奨励し、その実績を公表する」とある。しかしこれなどは既に公取委によって行なわれているところであり(著作物再販協議会──『zfyl』 でのリンクを参照のこと)、それでいて「非再販品の発行流通の拡大」も「価格設定の多様化」も殆ど進まない有様である。ただ現状を引き写しているに過ぎないこの項目で、どんな効果が得られるというのか?
後者についても文句を言いたい。今までの議論の中ではCD再販の廃止を提言するかのような方向性で論じられていたところ、この案文では後退した印象を受ける。「音楽用CDについては再販売価格維持制度の運用実態と効果を検証し、必要に応じてより効果的な方途を検討し対応する」とのこと。しかし還流防止措置との二重保護があり(注:音楽用CD等に再販制が認められていたのは著作権法による保護──映画のような強い保護──が無かったからという説がある)、また海外と比較しても日本製CDが非常に高価であることが知られている。CD再販廃止が急務なのは明らかである。
項目が残っただけでも幸運なのだろうか。関連省庁としては公正取引委員会・文部科学省・経済産業省が挙げられている。新たな動きが本当に起こるのか要注目である。
アーカイブについては、 「NHK アーカイブスや民間放送事業者等の保有する放送番組などの活用が図られるよう、関係者の合意や過去の放送番組の二次利用に関する権利処理に係る取組を促す」、「放送番組センターや東京国立近代美術館フィルムセンターの機能の充実を図るともに(原文ママ)、漫画やアニメ関係資料、写真の収集保存について、地域・民間等での取組に協力する」とある。
ここで不思議なのは、日本における最大のアーカイブ施設・国立国会図書館に触れていない点である。デジタルアーカイブへの取組みをいち早く行なってきたこの施設と連携し、放送番組センター・フィルムセンターがアーカイビングを行なう方がより有効というものであろう(それぞれの施設が各々アーカイブ・利用システムを構築するのでは労力の無駄だ)。某与党が「提言」した「独立行政法人化」(国立国会図書館の実質解体である)を見越してのことかと思うのは私だけか。
余談だが、日本最大のアーカイブネットワークとなれば NHK アーカイブスということになるだろうか。しかしこれは各地の放送局で利用できる反面、「1回2時間まで(土日は1時間まで)」などという利便性からほど遠い実態であり、受信料の無駄遣いではないかと疑われる運用ぶりである。いつまでこれを続けていく気なのか。インターネットでの配信などを視野に入れるべきだ(有料配信を、受信料に代わる新たな財源とする考えもあり得る)。
「安心してコンテンツを利用するための」云々では、こうした「違法・有害情報」への「対処」が表現の自由を侵害しかねないことへの配慮に欠けている。「一部のコンテンツが青少年を含め社会全般に悪影響を及ぼしている」との指摘が本当に正しいのか、そこから本来調査すべきであるところ、「映像コンテンツ倫理連絡会議」なる団体の活動を「推奨」するなどというヒステリックな方向性が打ち出されている。「情報発信者が自らのコンテンツの表現レベル等をマークとして表示する仕組みの実用化」を「支援」するなどというものも、その具体的な形が見えないうちは、表現の自由・知る権利が侵害されかねないとの危惧を抱かざるを得ない。
この項目では、聴覚障碍者・高齢者に対して「字幕付き日本映画・番組の拡大やウェブアクセスビリティの向上などの取組みを奨励する」との記述もあり、「安心して」云々の表現に一応のエクスキューズを用意しているように映る。しかし視覚障碍者に対する録音図書のネット配信など、昨年 障碍者対策として法改正相当と判断されたものでも未だ実現していないものが存在する。にもかかわらず これを忘れ、取って付けたように「字幕つき日本映画・番組」云々の話をしてもどれだけ説得力があるというのだろう。
やはり前段の情報規制の方が本旨ではないのか。
2.クリエーター大国を実現する
(1)クリエーターが適正なリターンを得られるようにする
(2)クリエーターの能力発揮を支援する
(3)コンテンツ分野における人材育成を図る
(4)利用とのバランスに留意しつつ適正な保護を行う
(5)優れたコンテンツを顕彰し、制作を促進する
(6)コンテンツに関する研究開発を促進する
クリエーターへの「適正なリターン」については3項目──「契約慣行の改善や透明化に向けた取組を奨励・支援する」「契約における自主基準やひな形の策定を促進する」「独占禁止法等を厳正に運用する」としている。
契約慣行についての指摘をひとつだけ。「映画、音楽配信、アニメ、ゲームソフトなどのコンテンツ業界における業界構造や契約・流通の慣行などについて、 2006年度 も引き続き、実態を調査し、公表する」との記述がある。我々に身近なところでは音楽配信におけるアーティストの取り分がCD並みに抑えられている(本来コストが異なるにもかかわらず、取り分が不当に低い)との話もあり、実態調査とその結果の公表が望まれるところであろう。きちんと実施しろ!
クリエーターの「能力発揮」については6項目ある。「インターネットを使ったコンテンツの発信を進める」「コンテンツの再利用を通じた新たな創作活動を促進する」「コンテンツ制作に対する投資を促進する」「コンテンツの制作・投資等を促進するインセンティブを付与する」「フィルムコミッション等の映像制作活動を支援する」「ネット上のビジネスマーケットを構築する」。このうち私が特に指摘したいのは最初の2項。
インターネットでのコンテンツ発信について、「クリエーターがエンドユーザーに近いところで自己の作品をプロモートしやすくなるよう、 2006年度から、 (社)日本音楽著作権協会 (JASRAC) など著作権等管理事業者や音楽出版社等の協力を得て、円滑、柔軟な権利処理を一層促進する」とある。なかなか立派な題目ではある。問題はその具体策なわけだが‥‥ JASRAC 自身が発表したものが幾つかあっても、それが適切に運用されるかは微妙である(ここの包括許諾には分配上の問題があることが知られている)。知財戦略本部として実態把握の努力をすべきだろう。
コンテンツ再利用についても注目すべき文言がある。「利用条件を明確化したマークを作品に付す取組を奨励することなどを通じて、自分の作品を積極的に利用してもらいたいと考えるクリエーターを支援し、他人の作品や保護期間の満了した作品を活用した創作活動を促す」──前段はクリエイティブコモンズの利用を指すものであるし(いや正しくは文化庁の自由利用マークなんだろうが)、後段は著作権切れ作品の重要性を認めたものである。この項目を出すことを知財戦略本部は忘れてはならない。こうした「創作活動を促す」ことと著作権保護期間の延長は相容れない考えなのである。すなわち、“今後 20年間は パブリックドメインに著作権切れ作品が加わらない”などという事態を引き起こすことは許されない。
人材育成についてはパス。
利用とのバランスに着目しながら「適切な保護を行う」とした項目は議論を呼びそうだ。ここもひとつの目玉と言える。
「著作権法に関し、侵害のための専用品の提供行為について特許法と同様の間接侵害規定の創設を含め、それを超えるような規定の導入について、総合的研究を踏まえた上で検討を行い、 2007年度中に 結論を得る」「法定賠償制度の創設等を含めて、著作権侵害に係る損害賠償請求や不当利得返還請求等の役割・機能等に関して総合的に検討を行い、 2007年度中に 結論を得る」「映画の著作物については、その保護期間が『公表後 50年』 から『公表後 70年』 に延長されたが、映画以外の著作物に係る保護期間の在り方についても、著作物全体を通じての保護期間のバランスに配慮しながら検討を行い、 2007年度中に結論を得る」「いわゆる放送新条約の検討状況を踏まえ、放送事業者への放送前信号に係る権利、譲渡権の付与等に関して検討を行い、 2007年度中に 結論を得る」──とまぁ、文化審議会著作権分科会で「検討課題」とされたものを抜粋した内容である。
ここで我々が特に注視すべきは やはり著作権保護期間であろう。「著作物全体を通じての保護期間のバランスに配慮しながら検討を行い」などと書いてあるが、これは“映画に合わせて他も 70年 にしましょうか”と言っているようにも読める。映画で保護期間を延長しても目に見える発展があったわけでもなく、ましてコンテンツ死蔵の著しい文芸・音楽の著作物において保護期間を延長するなど自殺行為に等しい(なお他の著作物においても、保護期間を延長するに足る根拠は無い)。
今のところ著作権保護期間の延長を声高に叫ぶのは音楽関係の権利者団体であるが、もともと過重な保護を受け続けているところにもって更なる期間延長を求めるとは図々しい限りである。「青空文庫」などの例を引き著作権延長の弊害にも一定の配慮を見せた文芸関連の権利者団体とは全く異なり、音楽関係の権利者団体は自らの行為が文化に与える影響を省みない。このような団体が本当に公共の利益に資しているのかをまず問うべきであろう(余談だが、保護期間延長の議論の前にフェアユース規定の創設を行なうべきである。これがあることで著作物流通の阻害をある程度 緩和させられる)。
(5)(6)についてはパス。
3.ビジネス大国を実現する
(1)プロデューサー機能を強化し、国際的なビジネスを展開する
(2)コンテンツを輸出する
(3)著作権に係る課題を解決する
(4)統計資料を整備する
(5)ライブエンターテインメントを振興する
(6)地域コンテンツの活用を促進する
プロデューサー関連についてはパス。何の期待もできない。
コンテンツ輸出については指摘するべき項目がひとつ。
──還流防止措置。「音楽レコードの還流防止措置制度を活用するとともに輸出を拡大する」、取って付けたような文言。はっきり言って、「活用する」とか「輸出を拡大する」とか悠長なことを言ってる段階ではない。還流防止措置が運用されて1年半、「活用」して当たり前、輸出が「拡大」していなければならない段階だ。レコード業界が強く希望し、エンドユーザーの反対の中でも創設を強行した制度である、“何も効果がありませんでした”では済まされない。
この項の本文には、「音楽レコードの還流防止措置の運用状況や海外における邦楽レコードの販売・ライセンス状況を調査し、公表する」ともある。しかし日本レコード協会は未だに 2005年 のライセンス状況を調査できていない。海外への進出状況を説明するのに朝日新聞の提灯記事を参照しなければならない有様である。知財推進計画にあるように「調査」「公表」は本当に行なわれなければならないし、おそらくは それが当該制度の無意味をあぶり出すこととなるだろう。問題は、レコード協会が調査依頼に素直に応じるかであるが。
ところで、ここでかような文言を入れた以上、各種調査の公表および「輸出の拡大」が実行できなかった場合は還流防止措置を撤廃すべきであろう(来年の知財推進計画策定時には心せよ)。また、国会で議決した際の附帯決議に反する状態を生じさせた場合にも同様である。
現状、レコード協会での「対象レコードリスト」の運用すらまともに行なわれていない。しかも国内で洋楽として販売しているCDをも輸入差止めしている(立法説明では日本文化の輸出を旨としていたにもかかわらず)。欧米からの輸入盤(洋楽新譜)が国内盤に合わせて高値で設定されているとの疑惑もある。このように、もはや立法時の説明とは異なる態様で運用されている制度をいつまで続ける気か。
2005年、 還流防止措置が運用されてもなおレコード売上げが回復しなかったという事実は重く受け止めるべきである。仮に「還流盤」が入ってきたとしても、国内のレコード会社が受ける「不利益」など全く無いということである。
著作権にかかる課題──の項目はツッコミ所が満載である。
「マルチユースを想定した契約を普及し、権利の集中管理を進める」では、集中管理の例として映像実演やレコード等が挙げられている。しかしこの集中管理の構想には音楽配信が含まれていない(著作権分科会法制問題小委員会での権利者側の説明で明言している)。この時点で既に、レコード利用の阻害は殆ど解決しない。せいぜい放送に使われたレコードが二次利用の際に流れるだけである(これが実現するだけでも大したことだというのが情けない)。
「ブロードバンド配信に関する利用料率に係る取組を促進する」と言っても、利用するところが無ければ絵に描いた餅である。利用者が現われるのが早いか、はたまた実演家・レコード製作者の集中管理機構が稼働するのが早いか。それは 『知財推進計画 2007』 に間に合うか。
「デジタル化時代に対応した法制度を構築する」には具体的提案はなし。
「私的使用複製について結論を得る」ことについては注意が必要。私的複製の範囲を狭めることに終始しないよう監視し、逆にフェアユース規定を実現させなければならない。「技術的保護手段との関係等を踏まえた『私的複製の範囲の明確化』、使用料と複製対価の関係整理等、著作権契約の在り方の見直し、オンライン配信への移行を踏まえた音楽関連産業の在り方等についての検討を進め、 2006年度中に 結論を得る」とする部分は、丁寧な検討を要するところであろう。実際には私的録音録画小委員会の委員構成、法制問題小委員会のスケジュールなどから まともな議論が期待できるか疑わしいが。
「デジタル化時代に対応した権利制限について結論を得る」については著作権分科会(法制問題小委員会)での検討項目を書いたに過ぎない。前段ではデジタル機器の保守・修理における一時的な複製について、後段ではeラーニングにおける著作物の公衆送信について、それぞれ権利制限の是非を問うものである。特に後段は法制小委に“門前払い”されているだけに、この扱いが意外な感じではある。
「権利者の利益と公共の利益に留意した権利制限規定を整備する」というのは特許・薬事行政における権利制限の話である。去年の著作権分科会で法改正相当とされていたものを、文部科学省(文化庁)が手前の都合で放置したものである。知財推進計画に謳うまでもなくさっさと法改正すべきである。
「契約・利用の観点からライセンシーの保護などについて結論を得る」。法制問題小委員会も検討事項が多すぎて大変である。まともに議論できるのか?
「技術的保護手段の回避等に係る法的規制の対象について結論を得る」。これは微妙。「技術的保護手段の有用性を担保するため、不正競争防止法上の技術的制限手段回避機器の譲渡に関する差止措置等の活用について周知徹底を図るとともに、接続管理(アクセスコントロール)回避行為への刑事罰の導入等について、将来の管理技術開発への影響等を踏まえつつ、法的措置の必要性の有無について、 2006年度も 引き続き検討を行い、必要に応じ所要の措置を講ずる」とある。こうした行為規制が適切だとは思えない。正当な対価を払わずにアクセスコントロールを回避して視聴するような場合に限るのならともかく、例えば 「CCCD」 を買ったのに聴けず回避行為をすることで漸く聴けるようになった場合に罰せられるようでは理不尽である(フェアユース規定の必要性はこういうところでも感じてしまう)。あと、無反応機器を使うことは回避行為に当たるのだろうか?
統計処理の整備については むしろ遅すぎるくらいである。「我が国のコンテンツに関する統計を精緻化し、諸外国の統計とも比較可能なものとするため、 2006年度中に、 統一的な統計資料を取りまとめ、公表する」──きちんと実行してほしいものだ!
ライブエンターテインメントの振興。「業界の近代化・合理化を支援する」「集積化に向けた取組みを奨励し、観光との連携を進める」。前者については「『出演契約に関するガイドライン』を周知するとともに、出演契約書のひな形の作成や舞台出演契約締結の徹底など、業界の自主的取組を奨励する」とあるが、当の「出演契約に関するガイドライン」がどこにあるのか判らない。これで意味があるのだろうか? 後者については「ホール・劇場・映画館等の集積化などに向けた関係者の自主的な取組を奨励、支援する」とある。
映画館と言えば、不可思議な価格横並びの実態がある訳だが、この辺りにメスは入らないのか?
4.改革のロードマップを実現する
5.コンテンツ促進法を的確に運用する
私が指摘すべき点は特に無い。
この資料の以後のページについても「日本ブランド」に関するもので、感想は特にない。
──要は関心のない分野であり、以下略。
(続きます)
投稿:by 暇人#9 03:08 午前 [著作権行政 watch] | 固定リンク | コメント(0) | トラックバック


