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2006.09.25
私的録音録画補償金にかかる議論で検討すべき論点(ダイジェスト)
http://himagine9.cocolog-nifty.com/watchdogs/2006/02/post_795d.html
「私的録音録画補償金制度はどう議論されていくか」
(エンドユーザーの見た著作権)
今年の2月だったか、文化審議会著作権分科会の私的録音録画小委員会が発足するというのに先駆けて、「私的録音・録画問題で話し合ってほしい論点」なるものをブログに掲載したことがある。『エンドユーザーの見た著作権』という、著作権関連のニュースを中心に採りあげている別ブログでの記事だ。
残念ながら、そこで挙げた論点の殆どは、私的録音録画小委で触れられることすらしていないわけなのだが。
それから半年以上経過した。私的複製規定の「見直し」について検討するはずだった法制問題小委員会が自らの責任を放棄してしまい、検討を私的録音録画小委に丸投げしてしまうという暴挙に出てしまった。この方針が打ち出された報告書(案)に対する意見募集が行なわれていたところなので、その方針ってのはおかしいだろうという意見とともに「私的録音・録画問題で話し合ってほしい論点」をアップデートして提出した。私的録音録画小委に物申す機会が無かったからね。
本当だったら、意見募集期間中 早々に掲載して皆さんの意見提出の参考にでもなれば良かったのだが‥‥恥ずかしながら私も急に忙しくなったもので、あれだけの分量を締切りに間に合わせるのが精一杯だったのだ。お許しいただきたい。
そんなわけで「私的録音録画補償金にかかる議論で検討すべき論点」と銘打ってアップデート版を掲載したい。このエントリーでは項目を簡単に記した「ダイジェスト」を。本文(これが長くなっちまった!)は次のエントリーに掲載するつもりだ。
なお、うちのブログを読んでいただいている方々にはお判りかと思うけれど、私にはどう逆立ちしても法学の素養が身に付いていないことをお断りしておく。冗談抜きでズブの素人である。まぁそういう素人たる いちエンドユーザーが疑問に思ったことを包み隠さず口に出しているわけだ(なんたる恥知らず!)。こういう指摘が刺激になって議論が巻き起こってくれれば、とそう思っている。
だいいちね、エンドユーザーは本当に自分の疑問をきちんと指摘できているのかと、これまた疑問に思うのだよ。私的録音録画補償金などというアホな制度を何の論理的根拠も無しに作られてしまったのは、エンドユーザーが著作権制度をきちんと問い質してこなかったからだと私は考えてる。まぁ私も件の「輸入権」問題をきっかけに、言いたいことを言うようになったのだから他人のことは言っていられないのだが。
近年の著作権トピックは殆どが我々エンドユーザーに直接関係してくることばかりなのだ。だから疑問に思ったことはその場で指摘していかないと、我々に不利なようにどんどん制度が変更されていってしまう。今話題の著作権保護期間問題だってそうだ。
結果的にどうなるかは判らないとしても、最低限の議論を我々自身が巻き起こしていかないと、このまま連中の思い通りに改悪されていくぞ。
──エンドユーザー諸氏が思い思いに声を挙げてくれることを願って。
【1.議論に先立つもの】
●1-1 大前提
1-1-1 エンドユーザーが納得できる理論を構築すべき
・これができなければ著作権制度は維持できない。
・エンドユーザーが現行制度に不満があるからと言って、「無知」「意識の低さ」が原因とは限らない。むしろ著作権制度と社会常識との乖離を疑うべきである。
・制度設計および変更時の論理的検討は必須である。その内容を後からでも辿れるよう留意して情報公開すべきである。
●1-2 議論の当事者
1-2-1 私的録音録画小委員会
・エンドユーザーと「消費者」団体は一致しない。
・エンドユーザー代表をもう数名追加すべきである。
・エンドユーザーの多種多様な意見を議論に反映させるため、こまめな意見募集を。
・寄せられた意見や疑問をもとに「そもそも論」を議論していくべきである。
1-2-2 忘れられた重要当事者
・私的録音・録画問題においては重要な位置にいながら「忘れられ」ているレンタル事業者。
・特に、補償金と貸与権使用料との関係は洗いなおす必要がある。
※レンタルCDからのコピーが補償金制度創設の根拠のひとつとされた。
【2.現行制度に感じる疑問】
●2-1 「補償」の検討
2-1-1 私的複製の範囲
・私的録音録画補償金制度はあくまでも私的複製に対して適用されるものであるから、法制問題小委員会での「私的複製の範囲」検討によって大きな影響は出ない。
・私的複製として考えられる私的録音・録画態様のうち、“権利者へ、経済的不利益を具体的に発生させているもの”だけに補償金を課すべきである。
2-1-2 「不利益」の存在
・著作権制度としては、著作物の商用利用からの正当な対価を保証するのが本道。私的領域へいちど入ったあとの著作物視聴に新たな対価を生じさせる必要があるのか。
・私的録音・録画によって私的領域内での著作物視聴は拡大している。しかし所詮は同一人(あるいはその家族)による視聴である。無限に拡大するわけではない。
・私的複製に権利者の「不利益」を推定するということは、ひとりのエンドユーザーが同一著作物を何度も重ねて購入することを推定するのに等しい。あまりに現実離れしている。
・もし私的領域内で私的録音・録画や視聴をするたびに料金が発生するとすれば、そもそもエンドユーザーは著作物(複製物)を購入するという行動を続けるだろうか?
・経済的な動きが生じない私的録音・録画にまで「利益」を無条件に想定するのはおかしい。
・“我慢=不利益”という考え方もあるが、これもおかしい。
2-1-3 複製権ありきの考え方
・“我慢=不利益”の考え方と表裏一体なのが、まず複製権ありきという考え方。
・私的領域内に複製機器があまり無かった時代ならいざ知らず、私的録音・録画に限らず著作物を複製する手段はいくらでも存在する現代で複製権を無条件に付与することは社会生活を脅かしかねない。
・これまでの著作権制度の前提がおかしかったのではないか?
2-1-4 私的領域に及ばない知的財産権
・複製権以外での著作権の設計を見てみると、著作物の使用や一部の利用については私的領域に及ぶとされていない。
・他の知的財産権についても市場での保護が第一義であって、私的領域にまでは及んでいない。
・私的複製は一般国民の知的活動の一環であり、過去の知識・技術を体系的に習得することで今後の表現活動へと繋げていく行為と言える。
・複製権によって私的複製が禁止されるとすれば、「知る権利」や「表現の自由」はもちろん、国民が文化的な生活を送ることすら阻害されてしまう。
・CD・レコード等の視聴が、映像・音楽文化を国民が吸収するのに極めて効果的なメディアであることは明らかである。しかも私的録音・録画が可能となることで、よりこのような文化に接する機会・時間が拡大させることも可能となる。
・私的録音・録画を抑制することは時代に逆行する社会を標榜するのと同じ。今後の映像・音楽文化を再生産していく若者から未来(機会と可能性)を奪うことになる。
・著作物(複製物)を購入することでエンドユーザーに認められるべき利用態様がある。
・エンドユーザーがわざわざ著作物パッケージを購入する以上、相当回数を視聴できなければおかしい。そして視聴態様にも不当な限定が生じるのはおかしい。
・エンドユーザーは私的録音・録画を前提にパッケージ購入している。
・著作物パッケージはその物理的制約から視聴態様がしばしば限られる。エンドユーザーは自分の“財産”をゴミにしないために、メディアシフトを試み視聴を続ける。
・旧メディアで所有した著作物と同じものを新メディアでも買い直しさせられるとすれば、それはエンドユーザーにとって理不尽きわまりないことである。
・無体物として渡される著作物(ネット配信など)では、ファイル形式や DRM ・再生環境を限定した仕様で流通している分、メディアシフトの重要性が著作物パッケージよりも高い。
・エンドユーザーが私的領域内で完結させる私的録音・録画は視聴と同義である。
2-1-5 「補償」されるべきもの
・私的録音・録画を行なうことで、私的領域内の著作物視聴は拡大する。結果、新たな著作物の購入・視聴を拡大することとなる。この効果は充分意識すべき。
・私的録音・録画を行なっているのは著作物(複製物)を所有する本人(またはその家族)なのであって、録音・録画できなかったとしても元々所有する著作物を視聴すれば同じこと。違うのは視聴態様の利便性だけである。
・私的録音・録画が抑制されても、決して著作物購入には流れない。持っていないものについては、始めから視聴しなくなるだけ。
・私的領域内での複製であれば、その量が多くても権利者の「不利益」とはなりづらい。極端な話、私的複製物の数はメディアシフトを要する分だけ発生する。そのうち同時に視聴されるものはごく僅か。同一家庭内では視聴する人物がいつも同じだからだ。
・なお私的領域内でどんなに私的複製を行なっても、著作物の視聴が無限に拡大するわけではない。誰にとっても1日は 24 時間しかない。
・権利者が本来得るべき「利益」についても検討すべき。これが得られなくなる因果関係が明らかな私的録音・録画態様にこそ補償金を課す。まずはその態様を特定せよ。
2-1-6 不当な「補償金」と、負のインセンティブ
・メディアシフトやプレイスシフトといった視聴用途の私的録音・録画に補償金を課すことは、エンドユーザーが著作物(複製物)購入を行なわないインセンティブを生じさせる。
・経済的な動きが生じない態様の私的複製にまで権利者の「利益」を推定し、それを「還元」させようとする制度設計などおかしい。エンドユーザーの理解など到底えられまい。
●2-2 「そもそも論」として
2-2-1 フェアユース類似規定創設の必要性
・米国著作権法のフェアユース規定に類似した概念を(例えばスリーステップテストを要件にするなどして)導入し、一般権利制限規定を権利制限個別規定との並行で設けられないか。
・著作物(複製物)を購入するエンドユーザーの権利を意識することが肝要。
・エンドユーザーが著作物を買うときの意識は“今後ずっと視聴する権利を買った”。それに加えて“自由な態様で視聴する権利を買った”。
・著作物(複製物)売買が一般的なものであり、エンドユーザーの上記意識が社会常識となっている以上、こうした私的録音・録画が無償・自由で行なえるようにする必要がある。
2-2-2 「違法コピー」喧伝の詐欺性
・パソコンを使った私的録音・録画はまぎれもなく私的複製である。適法行為。
・しかしレコード業界はこれを「違法コピー」と名付けて喧伝しつづけている。
・現行補償金制度へのエンドユーザーの理解が一向に進まない一因は、もともと私的録音・録画の自由を確保するために導入された補償金制度下で上記のような言動を繰り返していることにある。
・また「コピーコントロールCD」とやらを市場にばらまいていた時期にも、各レコード会社は補償金の分配を従来通り受けていた。二重・三重の意味で「詐欺」である。
・私的録音・録画にかかる補償金制度のもとでは、私的複製そのものを禁じるような重 DRM は撤廃されるべきである。
※なおCDの規格内ではコピーコントロールを実現できない。
もっとも実態の伴わない欠陥品だったとしても、売り手本人が「コピーコントロール」を標榜している以上、私的録音録画補償金の対象から外すのが妥当である。
【3.疑問の検討】
●3-1 現行制度創設時の論点を洗い直せ
3-1-1 メディアシフトが全く検討されていない
・現行の私的録音録画補償金が創設される際に念頭に置かれていたMDは、その用途はエンドユーザー自らが所有するレコード・CDからのメディアシフトが主である。
・しかしメディアシフトの多くが権利者への不利益を生じさせないことは全く考慮されていない。メディアシフト用途の私的録音・録画を課金対象から外すなど、見直しが必要である。
3-1-2 制度創設の根拠はレンタル・放送
・補償金制度の必要性はレンタルCDや放送からの私的録音・録画にあるとの説明がなされていた。
・レンタルでは貸与権使用料と補償金との関係が問題となる。レンタル事業者は「二重取り」を訴えているが、 JASRAC の見解がそれとは異なることが判明している。
・エンドユーザー視点で言えば、レンタルCDからの私的録音・録画について補償金を課さないとする運用が論理的である。
※補償金制度が創設された前後において、貸与権使用料が減額されたのか否かを調査し、また当事者双方から意見聴取した上で検討する必要がある。
・放送については、タイムシフト用途の私的録音・録画が考慮されていない。
・実は、「ライブラリー目的」の私的録音・録画だけは補償金制度の根拠として示されている。
・現在ではタイムシフトやプレイスシフトにしか使われない録音・録画機器が登場している。
・録音・録画というだけで一括して扱うのは、現実との齟齬を大きくするのみである。
・なお現在の私的録音においては、放送からのものが極めて少ないことが判明している。分配方法を是正する必要がある。
3-1-3 「不利益」の正体を明らかにせよ
・なぜ私的録音・録画が権利者の「不利益」なのか。具体的に、どのようなメカニズムで「不利益」を発生させているのか。
・この問題は「そもそも論」として根元的なもの。
・私的録音録画補償金制度がエンドユーザーの理解を得なければ存続できない以上、この根元的な疑問を解消する必要がある。
・国際条約上の判断や法学上の用語を含めて検討していく必要はあろうが、最終的には国民全体で理解し運用していける論理を構築しなければならない。
3-1-4 スリーステップテストの精査を
・現行の私的録音録画補償金制度に関しては、スリーステップテストについて極めて粗い議論しかなされていない。
・私的録音・録画問題は行政・法学者の間だけで“解釈”できていれば済む問題ではない。国民全体として共有していける論理・概念を用意すべき。
・国民全体を巻き込んだ議論を審議会で行なうべき。
3-1-5 デジタル・アナログを区別する妥当性は?
・デジタルとアナログを区別する根拠が乏しい。
・そもそも論として、アナログとデジタルを区別する必要があるのか否か、しっかり検討しておく必要があるのではないか。
・現行制度の前提をよしとするのであれば、デジタル録音・録画の中でも劣化する圧縮音声・映像の場合には補償金対象外とすべきである。
※アナログの私的録音・録画にも課金すべきとの議論もあり得る。
3-1-6 メーカー悪者説に固執する、信義則を忘れた権利者
・「メーカー悪者説」は現行補償金制度の創設前から存在する考え方。
・これを権利者側が放棄したことで(メーカーとの画期的和解を経て)制度創設が成った。
・メーカーが新たな機器を開発していくことで、著作物販売のビジネス機会が広がっている事実を無視してはならない。
・あくまでも補償金を支払っているのはエンドユーザー(これは現行補償金制度の設計において唯一の論理的判断)。
・今でも「メーカー悪者説」をとなえ続ける者が権利者側にいる。見苦しい限り。
・このような現状は、現行の補償金制度ですら維持困難になっている証拠ではないか。
・「メーカー悪者説」を権利者側が放棄できなければ、補償金制度を廃止すべきではないか。
3-1-7 再検討すべき他の手段
・著作物流通の上流で補償金徴収。
・税金型の補償金制度。
・いずれも補償金制度検討時に否定されている。
・エンドユーザーが著作物(複製物)を購入する際に私的録音・録画の権利も得ていると考えれば「著作物流通の上流で補償金徴収」とほぼ同じ形式となる。
・共通目的基金には少なからず「税金型の補償金制度」としての性質があり、この割合を増やすことで「税金型」に近づけていくという選択肢もとり得る。
【4.前期法制小委で指摘された論点】
●4-1 ハードディスク内蔵型録音機器・録画機器
4-1-1 タイムシフト目的の私的録画
・ハードディスク内蔵型録画機器の使用は、放送からの録画を行なう場合が殆ど。しかしタイムシフト用途に限定されている。課金の必要はない。
4-1-2 プレイスシフト目的の私的録音、そして iPod 等の汎用性
・ハードディスク内蔵型録音機器は、パソコンを介したプレイスシフトを行なうのみ。
・特に iPod 等から他の場所へデータ移動はない。
・プレイスシフトは基本的に権利者への「不利益」を生じさせない。
・パソコンやデータ用 CD-R は汎用機器・記録媒体にあたり別論である。
・iPod 等も機能の多様化が進んでおり、汎用機器に当たるのではないかとの指摘もある。
・iPod 等の汎用機器化は今後も進むだろう。
4-1-3 機器・媒体一体型の指定は著作権法上 予定されたものか?
・法技術的な問題だが、機器・記録媒体が一体化したもの (iPod 等のような)を補償金対象に指定することは著作権法上 予定されていたのかという論点も指摘された。
・検討・論理構築のすえに一定の結論が出されることを期待したい。
●4-2 二重徴収問題
4-2-1 法解釈からの議論、そして契約法と一般慣行
・私的録音録画補償金が私的録音・録画に対する「補償」とされている以上、本来の著作物利用あるいは著作物視聴から得るべき利益と、私的録音・録画から受ける権利者の「不利益」の両方を検討し、その結果で「補償」の内容を決定すべきである。
・著作権法だけでなく契約法や一般慣行などのバランスも考慮すべきかと思われる。
・私的録音・録画についてどのような前提で権利者・エンドユーザー間の(間接的な)合意がなされているのか。
・「二重徴収」問題について前期法制小委ではネット配信についてのみ注目されていた。しかし購入・レンタル・放送・友人間貸借などについても「二重徴収」問題は発生し得る。
・現行制度の中で課金相当とされている録音・録画態様においても、その課金が本当に相当であるか再検討する必要がある。
●4-3 補償金を課すのがおかしい態様
4-3-1 所有著作物(複製物)からの私的録音・録画
・たとえばCDを買うことで、音楽を(私的領域内で)自由に聞く権利を得たと考えられるか。もし考えられれば、当該著作物の私的録音への「補償金」課金は「二重徴収」となる。
・特にCDの場合、エンドユーザーの私的録音は売買の前提となっている。私的録音を抑制しようとすれば一般的慣行に反することとなり、市場からの強い拒否反応を受ける。
※なお「コピーコントロールCD」が市場から撤退した際には、発売レコード会社から “iPod に私的録音して音楽を聴くというユーザーのニーズを無視できなくなった”との旨の発表があった。
4-3-2 「コピーコントロール」された著作物(複製物)からの私的録音・録画
・「コピーコントロール」を謳っていながら実際にはその機能を果たしていないものの場合、私的録音・録画がなされていることがあるかも知れない。しかし権利者が意図して事実に反した「コピーコントロール」を明示している以上、「不利益」となる私的録音・録画が行なわれていないものとして扱うのが公正というものである。
・コピーが自由に行なえる著作物(複製物)と、「コピーコントロール」された著作物とで、補償金分配の扱いが同じというのはおかしい。
・コピー制御と私的録音録画補償金は両立しない。
・要は、権利者に補償金かコピー制御かのいずれかを選択させるべきなのである。
4-3-3 レンタルした著作物(複製物)からの私的録音・録画
・レンタルCDに関しては、エンドユーザーが私的録音を行なうとの前提で貸与権が創設され、貸与権使用料が決定された。補償金を課すべきではない。
・レンタルビデオ・レンタル DVD からの私的録画については、私的録音とは少し事情が異なる。レンタルビデオにはコピーガード(著作権法上の技術的保護手段)がかけられており、補償金の対象外。レンタル DVD には複製の方法が存在している上に、コピーガードが技術的保護手段か見解が分かれる。検討が必要である。
※レンタルに限らず、実際に私的録音・録画が可能な仕様で市場投入される著作物(複製物)が、エンドユーザーの私的録音・録画を前提としているのかについて検討を要する。なおエンドユーザー側は、私的録音・録画を前提として価格との兼ね合いを見ている。購入行動に既に織り込まれているわけだ。
4-3-4 ネット配信で購入した著作物(複製物)からの私的録音・録画
・配信の仕様として採用された DRM との兼ね合いが問題。
・当初の売買で対価が支払い済みである以上、補償金を課すのはおかしい。
・以上の見解は前期法制小委でも大部分を占めていた印象。
4-3-5 友人からの借り物からの私的録音・録画
・これはまぎれもなく私的複製の範囲内。
・本来の購入を代替する性質は否めないところ、私個人としては補償金を課すのはやむをえないと思う。
※ただしこうした私的録音・録画が次の購入行動を誘発するという一面を無視してはならない。
・日本レコード協会らがこうした私的複製をその範囲から外すよう要求しているようだが、これは自らの首をしめる行為である。
・友人からCDを借りて聴くこと(また私的録音すること)を禁じたところで、音楽を聴くこと自体をやめるだけの話である。その気さえあればレンタルでも同じ。
・個人による個別支払い方法を用意してはどうか?
・売られているCDほどの対価ではなくとも、友人から借りたCDを聴くことに際しわずかばかりの対価を支払いたいと考えるエンドユーザーも少なくないはずである(そうでなければレンタル業など成立するはずがない)。
4-3-6 放送番組からの私的録音・録画
・放送番組はエンドユーザーに届く前から既に権利者への対価が支払われている。
・特にタイムシフト用途の私的録音・録画は補償金を課さずとも行なえるようにすべきである。
・私的録音については、補償金を創設した頃から激減している。「不利益」を無視できるほどにまで行きついた感がある。
・私的録画については、「アーカイブ化」目的のものについて検討する必要がある。
・あえて権利者への「補償」を考えるとすれば、現行制度の手法による記録媒体課金で充分対処可能である。タイムシフト専用機の存在を考えれば、当該録音・録画機器を新たに課金対象とする必要はない。
4-3-7 私的録音・録画時には複製元を所有していたが、その後 売却した場合
・現行法では私的複製の範囲内。適法。
・しかしながら権利者に対する「不利益」が生じるか否かについては意見の分かれるところ。
・補償金を私的録音・録画の事後で支払う方法を確保できれば、多少の「不利益」は緩和させられるのではないか。
※この私的複製をその範囲から除外すべきとの意見も見られるところではある。しかし私はそれに反対である。「不利益」を生じさせかねない私的録音・録画を有償・自由とするための制度が補償金制度だからだ。
私的複製の範囲を基本的にいじらず処理する方法を模索すべき。
4-3-8 自作曲や非著作物から、自ら行なった私的録音・録画
・もとより補償金を課すいわれはない。
・パブリックドメインについても同様。
●4-4 メディアシフト・プレイスシフト・タイムシフト
4-4-1 対価支払い済み著作物につき、
上記目的の私的複製は補償金の対象外とすべき
・エンドユーザーが自ら対価を支払って入手した著作物(複製物)に関しては、メディアシフト・タイムシフト・プレイスシフト用途の私的録音・録画を無償・自由で認めるべきである。
・手持ちCD・レンタルCD・配信音源・放送音源については、その著作物(複製物)が私的領域に入る際に権利者の得るべき利益は既に支払われている。
・現在の私的録音・録画では所有著作物(複製物)のメディアシフトが大半を占めることとなっている。このことは補償金制度創設時の前提とは大きく異なっている。
4-4-2 上記目的の複製に使われた CD-R やMD
・権利者への「不利益」を生じさせていない以上、補償金を支払う必要はない。
・また記録媒体への課金により支払われた補償金については返還すべきではないか。
※もっともエンドユーザー自身が認めた支払いについてはその限りではない。
4-4-3 ハードディスクは有限期間しか使えない
・ハードディスクは有限期間しか使えない(壊れやすく、またその予測が難しい)という特性から、プレイスシフトあるいはタイムシフト用途でしか私的録音・録画できないことは明らかである。
・もし私的録音・録画した内容を保存しておきたいと希望するエンドユーザーであれば、別メディアへバックアップを行なうところである。すなわち、メディアへのバックアップ時にのみ補償金を徴収するとした場合でも現行補償金制度の趣旨は全うできる。
・なお上の意見では、 DVD-R などの“一度しか書き込めない記録媒体”を使用した場合には「ライブラリー化」目的であると推定している(所有著作物を私的録音・録画した場合を除く)。
4-4-4 上記目的の私的録音・録画につき
技術的保護手段の回避も認めるべきではないか
・エンドユーザーに、自ら購入した著作物(複製物)を視聴しつづけるためメディアシフトの権利を認めるべきである。この場合に限り技術的保護手段の回避も合法とすべき。
※新たなメディアで新規商品を売りたい業界側としては、いかなる付加価値を提示し買ってもらうか模索するのが本道というもの。
●4-5 汎用機器・記録媒体
4-5-1 録音や録画に使用している場合
・方法はともかくとしても、補償金を課すという妥当性なしとはしない。
・しかしながら、その使用が本当に「補償」すべき複製態様なのか検討する必要がある。
4-5-2 録音や録画に使用していない場合
・ここに該当するユーザーは非常に多い。
・汎用機器や記録媒体に補償金を課せられない理由がここにある。
・エンドユーザーの自己申告による個別徴収が可能となれば、いくらかマシな状態になるように思われる。
●4-6 政令指定
4-6-1 基本は現行通り
・補償金制度を維持すべきか廃止すべきかは別として、政令指定の方式を変える必要はない。
4-6-2 規定を簡略化すべきか?
・文化庁で示すガイドラインが適切に提供されれば、現行どおりでも問題ないのではないか。
※あえてエンドユーザーがこの規定ぶり(理解の困難さ)に直面するとしたら、新たな指定がなされたとき検証が難しいという程度か。
【5.これからの制度】
●5-1 私的録音録画補償金制度廃止の可能性
・私的複製によって生じる不利益が小さなものであれば、私的録音録画補償金を存続させる理由はない。
・特に現行制度は、正当な対価を支払って入手した著作物(複製物)の私的複製については全く考慮されないでいる。
5-1-1 補償金制度は DRM とは両立しない
・私的録音・録画が行なえない前提で売られている著作物(複製物)の権利者には補償金を分配する必要がない。
・数回だけの私的録音・録画を可能としている DRM についてはどうか。無 DRM の著作物と同じ扱いになるのはおかしいだろう。
・設定された可能複製回数に応じて分配額を調整すべきである。それができなければ、分配先から外すべきである。
・なお複製可能となってしまうような拙い“コピーコントロール”の場合でも、権利者の言い分を尊重し その内容に応じた分配額調整を行なうべきである(あるいは分配先から外す)。
5-1-2 既に家庭内に存在する著作物(複製物)について
・DRM がかかった著作物(複製物)であれば、私的録音・録画の複製元となっても補償金の対象とする必要はない。 DRM はかかっていない著作物(複製物)ならば、それは権利者が私的複製を容認しているものと推定することが可能かもしれない。
・エンドユーザーが無償・自由で認められるべき私的複製というものが存在するのか否か。
・自分で購入した著作物(複製物)については私的複製に補償金を課す必要はない。
・CDというものが全く使われなくなるまでは、補償金制度を完全に撤廃するためのハードルが高いように思われる。
・CDの利用がどの程度すくなくなれば補償金制度撤廃が可能になるか、そのあたりも検討に値する。
●5-2 暫定的に改善すべき点
5-2-1 分配の透明性確保
・sarah や SARVH は勿論のこと、 JASRAC 等のような主たる分配先権利者団体についても分配方法の透明化を図るべきである。分配先の件数(権利者数)や平均分配額・最高額・最低額・分配決定プロセスおよびそれに供するデータなど、ユーザーの理解を得るのに必要となる情報がきちんと公開されるよう、文化庁からも指導を実施すべきである。
・分配を正確性を期すために私的複製実態の把握を行なうことも考えられるとはいえ、 DRM などを利用し自動的に情報収集するのは問題がある。エンドユーザーのプライバシーの問題が発生し、行き過ぎと言わざるを得なくなる。
※こう言っては実もフタもないが、エンドユーザーと権利者自身の双方から文句の出ない徴収法でありさえすれば、そう正確さを追求する必要はない。エンドユーザーが納得する仕組みを構築するには、投げ銭的に補償金を支払えるようにする考え方もある。
5-2-2 共通目的基金は廃止・縮小すべきか?
・共通目的基金は、実際には私的録音・録画されていながら補償金の分配を受けられない権利者に対し、間接的な利益還元を意図したものであることを忘れてはならない。
・仮に共通目的基金を廃止するとすれば、分配をより正確にしなければならない(しかしそれでは前述のとおり、エンドユーザーのプライバシーを損ねるおそれが出てくる)。
・現行の分配手法のまま共通目的基金を廃止するとしたら、現在多額の補償金を受け取っている権利者の取り分が増えるだけである。問題を拡大する。
・共通目的基金を税金から拠出すべきとの議論もありえる。しかし税金からの拠出が決定したところで、上記の分配問題は解決していない。現行制度から変更することは合理的でない。
※なお個人的には、共通目的事業の恩恵を受けている。著作権を理解しようとする一般国民にとっては有益な情報提供をもたらしているからだ。かえって補償金をすべて共通目的基金にしてはどうかとすら思う。
5-2-3 返還制度
・その実効性を確保することが必須である。
・返還手続きを簡略化することが望まれ、今のように手続きにかかる費用が返還金額を上回るような状態は解消する必要がある。
・課金された製品(機器や記録媒体)への配慮も欠かせないものとなろう。
5-2-4 制度の周知
・現状として全く足りない。
※実に皮肉なことだが、権利者団体が iPod への課金を大々的に主張したことの方が私的録音録画補償金の存在を知らしめるのに役立った。もちろんネガティブな意味で周知されたのだが。
●5-3 これからの補償金制度
・メディアシフト・プレイスシフト・タイムシフト目的の複製を課金対象から外し、権利者への「経済的不利益」を具体的に与えかねない複製態様にのみ補償金を課すという前提のもとで以下の提案を述べる。
※もちろん補償金制度自体が不要であるとの考え方もある。
5-3-1 録音・録画機器への課金をやめよう
・現行の私的録音録画補償金制度では、政令で指定された録音・録画機器と記録媒体に補償金が課せられることとなっている。
・最近はタイムシフト用途にしか使われない録画機器が登場している。
・記録媒体に課金するのは感覚として理解できる。本来 購入すべき著作物(複製)を私的複製で間に合わせていたとすれば、テープなりディスクなりが増えていくことになる。受益者負担として理解されやすい構造。
・しかし機器の場合は違う。多く私的録音・録画する人も、少ない人も同じ補償金額を支払わされている。
・記録媒体への課金に一本化すれば、多くの私的録音・録画を行なう者から多く徴収する形になる。機器に課金していた分を記録媒体へ上乗せし、その結果 記録媒体への課金が増額したとしても致し方あるまい。
※現状、ハードディスクレコーダーにも iPod にも補償金は掛けられていない。ただ現行制度の前提を維持すれば、課せられる可能性は高いものと考えられる。おそらくエンドユーザーの理解を得ることに失敗し、補償金制度が崩壊することとなるだろうが。
5-3-2 付加価値をつけた CD-R の市場投入が可能ではないか?
・補償金の分配先をあらかじめ確定した状態で課金した記録媒体があるとすれば、付加価値をつけたものを市場に投入することが可能になるのではないだろうか。あるアーティスト専用の CD-R を売り出すことなどが考えられる。
・エンドユーザーからしても、私的録音のための CD-R を買うことと、そのアーティストへの補償金支払いが直結することとなる。
【6.議論のされ方について】
●6-1 審議会(小委員会)の進行
・私的録音録画小委員会の議事進行に関して問題なしとはしない。
・委員構成としてエンドユーザー代表が不当に少ないこともそのひとつである。
・また今のところ論理的検討には至らず、各委員が自らが代表する団体の要望を述べたり、各種聴取に対する印象批評を行なうにとどまっている。
6-1-1 意見募集の必要性
・エンドユーザー(すなわち一般国民)の考えを小委員会での議論に反映させることが難しい以上、このまま議論を続けていくことは危険である。
・私的録音録画小委員会での議論を有益なものにするためにも、ここでの議論に関し こまめに意見募集を行ない、議題に反映していくことが必要である。
・エンドユーザーの指摘に耳を傾けず、結果として審議会(小委員会)で行なわれている議論が具体性に欠けるともなれば、議論そのものが行なわれなかったものと同じことになり、後々禍根を残すこととなろう。
・意見募集実施の際にも、文化庁による告知について一考する必要がある。今期法制問題小委員会の報告書にかかる、二度に渡る意見募集においては 『e-Gov.』 サイトだけの告知だけだった。でこうした文化庁の姿勢は、意見募集を形骸化させるものに他ならない。
・従来どおり文部科学省サイト・文化庁サイトそして 『e-Gov.』 サイトでの告知を並行して行なうべきである。
6-1-2 迅速な情報公開
・現状、法制問題小委員会も私的録音録画小委員会も、会合から1ヶ月ほどした後に議事録が公開されている。しかしながら これは非常に遅すぎる。
・他の省庁、たとえば総務省などは会合から数日ほどで議事録の公開を行なっている。
・文部科学省サイトにおいては議事録に先行し配付資料が公表されている。できれば会合当日に資料が公表されていることが望ましいのではないか。資料を作成する時点で PDF ファイルでも作成しておけば、日数をかけずにすぐさま公表できると思われる。
6-1-3 とりわけ議事録公表を速くするために
・審議会(小委員会)での議論の成り行きを正確に把握するためには、議事内容の迅速な公表が必須である。
・文字起こしのために、議事内容はテープで録音されているかと思われる。もしそうなら この音声をインターネットで公開しては如何か。文字起こしでは解りにくい発言のニュアンスを国民が知ることも可能となる。
※逆に言えば、今の議論が混乱しているのは、過去の議論の不足と公表記録の少なさが原因である。
6-1-4 余談だが──
・情報公開の新たな試みとして、著作権課長のブログなどを やってみては如何か。
(了)
投稿:by 暇人#9 11:52 午前 [ユーザーと著作権, 著作権行政 watch, 音楽業界の愚行] | 固定リンク
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コメント
> 著作権課長のブログ
経産省の某部長みたいになってしまいませんかね?
投稿者: 謎工 (2006/09/27 20:12:19)
あれれ。
「コメント欄を使わずにトラックバックだけで意見を受け付ければ炎上しにくくなる」と書いたつもりだったんですが、データ飛んじゃったのかなぁ。
まぁいっそ経産省のアレみたいになった方が現実を知るきっかけにはなるのかもしれませんが(アレの場合にはぜんぜんこたえてなかったようだけど)。
私の意図としては、ブログをやるときに周到な準備さえしておけばトラブルなく効果的な情報発信ができるよ、ということであります。
投稿者: 暇人#9 (2006/09/28 16:47:46)
あ、俺の慌て者。
こちらは「ダイジェスト」なので、コメント制限云々はわざと書いてないんですね。本編は長文の方を参照いただきたいってことで。
投稿者: 暇人#9 (2006/10/01 17:22:29)


