« 2007年3月 | トップページ | 2007年6月 »
2007.05.26
同じ資料を読んでいながら解釈が変わる奇妙さと興味深さ
http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2007/05/post_b72f.html
「【著作権】とんでもない法案が審議されている」
(たけくまメモ)
これの話。
とりあえず事実関係のみを淡々と洗う。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/cycle/dai9/9gijisidai.html
「知的創造サイクル専門調査会(第9回)議事次第」
(首相官邸:知的財産戦略本部)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/cycle/dai9/9siryou2.pdf
「資料2:知的創造サイクルの推進方策(案)」 (PDF)
※上記 PDF より、ノンブル19ページ
(2)海賊版対策の更なる強化を図る
○1 著作権法における「親告罪」を見直す
海賊版は犯罪組織の資金源となり得るなど社会にもたらす重大な悪影響が指摘されていることを踏まえ、強力かつ効果的な取締を推進し、抑止力を向上させるため、海賊版の販売行為など著作権法違反行為のうち親告罪とされているものについて見直しを行い、非親告罪の範囲を拡大する。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/cycle/dai10/10gijisidai.html
「知的創造サイクル専門調査会(第10回)議事次第」
(首相官邸:知的財産戦略本部)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/cycle/dai10/10siryou1.pdf
「資料1:知的創造サイクルの推進方策(案)」 (PDF)
※上記 PDF より、ノンブル19ページ
(2)海賊版対策の更なる強化を図る
○1 著作権法における「親告罪」を見直す
海賊版の氾濫は、文化産業等の健全な発展を阻害し、犯罪組織の資金源となり得るなど、経済社会にとって深刻な問題となっている。重大かつ悪質な著作権侵害等事犯が多発していることも踏まえ、海賊版の販売行為など著作権法違反行為のうち親告罪とされているものについて、非親告罪の範囲拡大を含め見直しを行い、必要に応じ法制度を整備する。
▲ 第9回会合から第10回会合の間に、問題の表現が多少改められた。しかし中立的な言い回し(現状維持にも非親告罪化にも転べるよう)になっているのに過ぎず、相変わらず「等」「など」「著作権法違反行為」といった曖昧な表現が多い。
発表時が前後するが──
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/cycle/dai8/8gijisidai.html
「知的創造サイクル専門調査会(第8回)議事次第」
(首相官邸:知的財産戦略本部)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/cycle/dai8/8siryou2.pdf
「資料2:知的創造サイクルに関する今後の課題」 (PDF)
ノンブル16ページ
(2)具体的方策
著作権等侵害のうち、一定の場合について、非親告罪化する。
「一定の場合」として、例えば、海賊行為の典型的パターンである営利目的又は商業的規模の著作権等侵害行為が考えられる。
営利目的の侵害行為は、その態様から侵害の認定が比較的容易であるとともに、他人に損害を与えてまで金銭を獲得するという動機は悪質である。また、営利目的ではなくても、例えば愉快犯が商業的規模で侵害を行った場合には、権利者の収益機会を奪い、文化的創造活動のインセンティブを削ぐなど、経済的・社会的な悪影響が大きい。
▲ 「一定の場合」などと書かれているが、よく考えてみよう。この文章は何の限定をも示してはいない。「営利目的」などというのは必ずしも対価を得ることだけではなく、広告を付したり「実費」を得ることも含まれてしまう(ケースバイケース)。複製権を除く支分権の多くが非営利・無償・無報酬の場合に権利が及ばないこととする旨を定めていることを考えれば、殆どの著作権(および著作隣接権)侵害事例がこの「一定の場合」に含まれる。また、非営利であっても自動公衆送信などの場合には、そこに「公衆」が群がることで「商業的規模」にふくれあがることなど容易に起こる(この「商業的規模」とは権利者に与える不利益の大きさと考えるのが妥当ではないか?)。
「海賊版対策」を謳っていながら、いやそもそも「海賊版」というのは「著作権等を侵害して制作されたもの」としか定義されていないのだから、海賊版対策なるものが相当の射程の広さを持っている──全く限定されないものであるのも無理はない。
もし我々が「海賊版」と聞いてイメージするもの(たとえば路地で売られている違法 DVD や、違法複製ソフトウェアなど)に対象を限定するなら、たとえば支分権のうち「複製権」のみを非親告罪にするとか(これでも広い──さらなる限定が必要)、デッドコピーのみにするとか、登録制との併設(加えて利用促進策も)を行なうとか、そういった具体的アイディアと共に この「非親告罪化」は語られるべきである。
現時点で、上記文書で読む限りは著作権等(ここでの「等」は著作隣接権を指すものと考えられる)侵害行為全般の非親告罪化を謳っていると解釈されてもおかしくはない(その程度の文章)。
だからこの非親告罪化の論を同人誌と絡めて論じるのも、あながち的はずれではない。同人誌(二次創作)が関係してくるのは複製権と翻案権と考えられるが、上記引用部では「翻案権」を除外しているようには全く読めない(逆に言えば、翻案権を侵害したものでも「海賊版」と呼ばれ得る)。また、新たに「創作性」が認められないような「二次創作」の場合には、それは翻案権でなしに複製権の侵害として判断され得る。ケースバイケースとは言え、(デッドコピーに非親告罪化の対象を限定しないかぎり)同人誌がこの議論の影響を受ける可能性は高い。
法学と司法・行政の実際から、上記のような憂慮の声に対し思い過ごしであるかのような反応を返す者もいるが、もはや著作権法が専門家のセンスだけで回されているものではないことを重く見るべきである。
拡大解釈・恣意的運用の余地が心配されているものの実際の運用からその心配がない(心配する必要がない)というのであれば、別に拡大解釈・恣意的運用を認めない限定した規定ぶりでも問題はないということである(憂慮され得る部分には実効性を期待していないということなのだから)。最初からそのような限定した話で進んでいるのであれば、余計な騒ぎにもならないで済む。
しかし現実問題として今の議論は限定されていない。また、本当に非親告罪化しか方法が無いのか、説明されているような非親告罪化の対象で広すぎはしないのか(もっと適切に限定できないのか)を検討する(そして公に伝える)ことをしない限り、今の案が一般人にとって説得力を持ち得ることなどあるまい。
■知的創造サイクル専門調査会 議事録から──
第8回。かなり長くなるが、全貌を明らかにするために敢えて引用する。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/cycle/dai8/8gijiroku.html
「知的創造サイクル専門調査会(第8回)議事録」
(首相官邸:知的財産戦略本部)
○中山委員 権利を強化しようとするときはとかくプラス面だけ強調されがちなんですけれども、全体を見てこういうマイナス面もあるということを申し述べるのが法律家の役割ではないかと思いますので、あえて申し上げたいと思います。(中略)
親告罪なんですけれども、これはちょっと考え直す必要があるのではないかと思います。ただ、結論的に言いますとどちらに転んでも社会はそれほど大きく変わらないだろうと思います。特許権は先年、これを非親告罪にしたわけですけれども、非親告罪にしたから何か変わったかというと全く変わっていないんです。というのは、強盗や殺人ですと警察がすぐ動いてくれますけれども、知的財産権侵害というのは基本的には民事の話ですから、うっかり警察が動くともう民事はすっ飛んでしまいますから民事不介入が大原則で簡単には動いてくれません。親告罪にしようが、非親告罪にしようが、ちゃんとした証拠を持っていて、こうこうこうですということを言わなければなかなか動いてくれないので、実際はほとんど影響ないのかなという気はいたします。
ただ、著作権は特許と比べますと侵害の範囲が広いというか、あいまいな面が多いわけです。翻案などがありますから、どれが侵害かわからない。窃盗などの場合は窃盗犯は自分は窃盗をやっているということがわかっているわけですからいいんですけれども、侵害かどうかわからないというときに、しかも第三者が告訴をして、仮に警察が動いてしまった場合にどうなるのか。権利者の方は、これは黙認しようとか、まあいいやと思っていても、実は第三者が告訴をするという場合もあり得るわけです。特に著作権は近年では全国民的に関係を持っている法律になってきましたので、こちらの方は特許とはまたちょっと違って場合によっては弊害が生ずる可能性もあるのかなという気がいたします。
確かに親告罪だと6か月という制限はあるわけですけれども、別に告訴をしておいて後から証拠を出してもいいわけですし、知的財産の場合はそれほど大きな問題はないのではないかと思います。それよりもむしろ何かマイナスの効果の方が大きいのではないかという気がいたします。以上です。
○阿部会長 ありがとうございました。
○久保利委員 それに関連して親告罪の問題ですけれども、むしろ私は見直しをしていただくことは、それ自体はマイナスではないのではないかと思います。
ただ、中山先生もおっしゃったとおり、今どういうふうになっているかというと、親告罪ですから告訴権者が必死になって証拠をそろえて訴えに行くわけです。そうしますと、基本的にはリジェクトされるわけです。やりたくないんです。それから、やる能力も余りないんです。したがって、捜査当局はなるべくならばこの著作権問題には触れたくないというふうに思っていますから、なかなか受けてくれないのですが、あれやこれや証拠書類をそろえてどうだ、これでもかと言って持って行ってもし警察がやらないのならば、それこそマスメディアに発表して警察はこういう犯人を甘やかそうとしていると言いますよというくらい脅かさないと、なかなか引き受けてくれない。その代わり、引き受けてくれたら警察のメンツにかけてもやってくれるわけです。
ということは、それだけ本気になった侵害された人がいれば警察は結局は渋々ながらでも動いてくれるというのは、実は親告罪だからそうなっているわけで、親告罪でないということになると告発はしましたよ、親告罪ではないけれども一応御通知しましたよ、捜査の端緒を与えましたと言っても、さあ動くのか。動くときに親告罪で告訴を受理してしまうと、あとはその事件をどうしたかということを報告し、内部できっちり検査をしなければいけなくなりますから、やることはやってくれますが、何もないとなるとやってくれるのかなというところがあるわけです。その意味では、私も親告罪にするということが直ちに捜査当局が非常にやりやすくなるということにはならないだろうとは思います。
ただ、もう一つ逆の手立てを立てて、例えば交通事故撲滅月間とか、交通安全週間などと同じように、とにかく著作権事件摘発強化月間みたいなものをつくって、この間できるだけそういう事件に特化して各警察は頑張りなさいというふうなことになって、今までは親告罪だったので告訴がこないと動けなかったけれども、今度は動けるようになったんですから、積極的に国民に対する啓発も含めて、捜査当局よ頑張りましょうという話がセットで出てくるならば、これは逆に効果的になるかもしれないという意味で、実は捜査当局の能力とやる気をいかに担保するかというところにかかっている。
それを何もしなければ、私は中山先生と同じ考えにならざるを得ないわけですし、そこがすごく強化されるということであればそれはプラスになる。したがって、親告罪の見直しというのは、何か別の強化策とセットにならないと真の効果は上がらないような気がいたします。以上です。
○阿部会長 田中委員、どうぞ。
○田中委員 確かにCDやDVD等の海賊版が大量に出回っているという現実がございますが、親告罪とするかどうかという点については、非親告罪にしても今、両先生がおっしゃったように本当に機能するのかなという懸念があります。一番の懸念は、法制度を変えた際に、実際にだれがどのようにきちんとハンドリングしていくのかという点です。ただ、法制度を変えただけでは済まない問題であり運用する仕組みをきちんと構築していかなければなりません。ですから、是非、運用の仕組み作りも合わせて検討していくべきだろうと思います。
○中山委員 関連で、今ここで大いに問題になっている海賊版ですね。これだけ考えると、私も久保利先生などがおっしゃるとおりだと思うんですけれども、微妙な事件がある。日本ではまだパテントマフィアみたいなものは余りいないんですけれども、著作権の場合はパテント以上に、先ほど言いましたようにあいまいなところがあるので、非親告罪にするともしかすると変なところで変なことが起きるのではないか。そちらの懸念がちょっとあるということをもう一度申し上げたいと思います。
○八田委員 制度の構築が必要だという今の皆さんの御意見に賛成です。しかし制度をつくるというのは大変なことなので、それが仮にできないとしても、この6か月というのは短過ぎると思うので、少なくともこれは変えていただけないかと思います。 例えば、大学で、先生が学生の論文を剽窃したというようなときに、学生は先生を在学中に訴えるのは非常に難しいと思うんです。それで、それは卒業を待ってからやるというようなことはあると思います。
それから、ほかの大学の先生が何かを剽窃したというときに、親告罪だから自分は訴えることができるのだけれども、まずは、向こうの大学の処分を見たい。そして、それが非常に甘かったら自分としては告訴したいというときに、大学の決定なんて6か月ぐらいすぐたってしまいますから、結局機を逸してしまってまずいことになるというようなことがある。だから、私はほかの分野はよくわかりませんけれども、こういう学術的なものに関しては6か月はちょっと短いと思います。
○中山委員 この6か月は刑訴で決まっているんですけれども、これは私も調べていないんですが、例外はあるんですか。
○久保利委員 強姦罪の場合には別ですね。強姦罪も含めて罪名によっては期間が違うものもありますから、この関係は6か月にしないという八田先生のような御意見は決して憲法違反の法律でもないし、そういう意味では可能だと考えられます。
○中山委員 知的財産法で決めれば、多分それは刑訴の特別法ということですね。それは可能だと思うんですけれども、ただ、現実には先ほどの大学のようなところはそういうもので刑事になったというのはほとんどないので、多分それは民事で訴えて社会的なサンクションを受ける。それにプラスしてなかなかそういう事件で刑罰というのは余り聞いたことはないし、多分これからも余りないんだろうと思いますけれども。
○八田委員 それならばそもそも告訴をすることを認めなければいいわけです。やはりこれは告訴をする必要がある場合もあるだろうと想定しているわけでしょう。だとすれば六ヶ月で切る合理的な理由がないと思います。その場合にすぐ告訴に走らないで他の対応を見たい。しかし、もしほかの対応をしてくれないのならば告訴もやむを得ないという非常に強い気持ちを持つ場合というのはあり得ると思うんです。そういう場合に、やはり6か月というのは短いのではないかということです。
○藤田次長 事実関係だけ御紹介を申し上げますが、刑事訴訟法の235条は親告罪の告訴は犯人を知った日から6か月を経過したときには、これをすることができない。ただし、次に掲げる告訴についてはこの限りでないということで例外が2つ認められております。1つは性犯罪の関係、それからもう一つは外国の元首、使節等が行う告訴あるいは外国使節等に対する侮辱、名誉棄損関係の告訴、この2つについては例外が認められております。
○久保利委員 刑訴法を変えなければだめだということですね。
○中山委員 でも、理論的には刑訴法でなくてもあり得るんじゃないですか。ただ、さっきの例でいくと多分刑訴法でしょうね。
▲ 中山教授の「どちらに転んでも社会はそれほど大きく変わらないだろうと思います」だけを強調するのでは全く議論にならない。その後で、慎重を議論を進めていくべきだと釘を刺してもいるのだ。むしろ「侵害の範囲が広いというか、あいまいな面が多いわけです」との指摘が重い(要は、非親告罪化に憂慮する声が多いのもここに起因する)。
また、非親告罪化を正当化するものとして資料にも書かれている出訴期間(6ヶ月)であるが、これを延ばすことでも対処可能である旨が示唆されてもいる。これを踏まえてもなお、非親告罪化する必然性があるのか否か。
中山教授は第9回においても釘を刺している。
非親告罪化が簡単にすべきものでは決してないということだ。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/cycle/dai9/9gijiroku.html
「知的創造サイクル専門調査会(第9回)議事録」
(首相官邸:知的財産戦略本部)
○中山委員 19ページの下の方の「著作権法における「親告罪」を見直す」というところですけれども、前回議論がありまして、見直すべきであるという意見も多々ありましたが、私は疑問を呈したわけです。
これはいずれ文化審議会の著作権分科会の方に回っていって議論すると思いますけれども、かなり重要な問題でありまして、ここでできなかったような問題も多々議論をしなければいけない。特許権と違いまして、著作権は創作主義が採用されており、創作すればそれだけですぐ権利が発生しますので、何が著作権かよくわからないという面があります。そのような状況において、非親告罪化するとどういう問題が起きるかという点を十分検討しなければいけませんので、このように断定的ではなくて検討の余地が残るような文章にしていただければと思います。
■議論を限定せよ!
(箇条書き)
【非親告罪化の前にやれよ!】
●まず刑事告訴できる期間について見直し
●告訴を受けて警察・検察がどう動くのか検証
●映画については、映画盗撮防止法の効果を見る
【非親告罪にするとしても、範囲を限定しろ!】
●複製権侵害のみを対象、そこからさらに限定
●営利目的デッドコピーを対象
●現に市場流通し競合する正規品があるものに限定
●国内で最初に公表されてから一定期間のみ
(映画盗撮防止法のように8ヶ月以内とか、
あるいは1〜2年程度とか。)
●デジタルコンテンツ流通促進法制、
とりわけ「二階建て」法制を前提にすべき
(非親告罪化には登録制が必須。)
【海賊版問題に終わりはない】
●まず海賊版と競合しうる正規流通を確保しろ
●価格付けを市場に委ねろ(一定の値下げ程度で回るって)
●流通に際し、サードパーティを積極的に使え
●質で海賊版を凌駕しろ
(正規品デッドコピーなら取締りを強化しても
理解を得られるのではないか?
それ以外ならば微妙。)
●自動公衆送信権侵害で非親告罪化を云々するのは時期尚早
(そもそもネットでの正規配信自体が不足。)
投稿:by 暇人#9 12:50 午前 [ユーザーと著作権, 著作権行政 watch] | 固定リンク | コメント(0) | トラックバック
2007.05.21
保護利用小委#2:ヒアリング第1弾
──こちらでは久々の更新。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/021/07050102.htm
「文化審議会 著作権分科会
過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会(第2回)
議事録・配付資料」
(文部科学省)
4月27日 に開催された、文化審議会 著作権分科会 過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会(以下、「保護利用小委」と略す)第2回会合での配付資料が文科省サイトで公表された。
第2回・第3回会合の2度にわたって「創作者団体・個人」「利用者」「アーカイブ関係者」「学識経験者」からのヒアリングが実施されていたところで、その対象は、保護利用小委が検討課題として挙げた「過去の著作物等の利用の円滑化方策について」「アーカイブへの著作物等の収集・保存と利用の円滑化方策について」「保護期間の在り方について」「意思表示システムについて」のうち発言者が意見を述べたいものすべてということになっている。
第2回会合において意見を述べたのは15名。それぞれがレジュメを提出したため、配付資料の数も膨大なものとなった。
ところで、この第2回会合での配布資料が公式に参照可能となったことで、これらに目を通した上で答える形のアンケートが実施されている。つまり、発言者それぞれの言い分について、賛同できるか否かを問うものである。
http://q.hatena.ne.jp/1179316258
(人力検索はてな)
現在、文化審議会著作権分科会過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会において、関係者のヒアリングを行っています。4月27日に開催された第2回小委員会にて、1回目のヒアリングが行われました。
著作権の保護期間等を検討する小委員会、関係者ヒアリングを実施
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2007/04/27/15585.html
著作権保護期間の延長問題、関係各団体が文化審で意見表明:ITpro
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20070427/269849/
文化審議会のサイトでヒアリングの際の資料が公開されています。
文化審議会 著作権分科会 過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会(第2回)議事録・配付資料-文部科学省
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/021/07050102.htm
この資料に全て目を通してから回答してください。
今回のヒアリングで採り上げられている課題は、著作権制度について多少なりとも興味がおありの方にはたいそう刺激になろうかと思われるものであるから、ぜひ時間を作ってお読み戴ければ幸いである。できればアンケートにも参加いただきたい。
※ただし、「はてな」のユーザーアカウントが必要なので御注意あれ。
■各配布資料の感想(メモ)
これは決して配付資料を要約したものではないので注意のこと。
私が独断と偏見で感想を述べたものである。たいした内容ではないので以下、箇条書き。
【社団法人日本文藝家協会】
●「文藝」とは、意味をなさない文字列を延々と書き連ねることを示す言葉か?
●「実に眩いばかりである」「返答に困る」「暗澹たる思いがする」「他のコンテンツでも状況は全く同様」→いずれもその根拠を検討することなく紋切り型で書き飛ばしたに過ぎない「文藝」。こういうのを紋切り型で「ひとりよがり」と呼ぶ。
●パブリックドメイン入り間近の著作者の名前を連ねているが、文藝家協会は、挙げられた作家と同時代の他の作家を語ることができるだろうか? そんな彼らの作品は今も我々の目に触れる機会を得られているか? 文藝家協会が例示しなかった人たちの作品こそ「国家的な財産の損失」ではないのか。保護期間延長はその「国家的な財産の損失」を回復不可能なところまで追いやってしまう。
●権利者データベースについては手前らで作りきれないのだと宣言。しかもデータベース外の著作者については「簡便な裁定制度」の適用を主張していたはずだが(とくに三田某)、それは資料に書かれていないようである。実際のヒアリングでは発言したのか、はたまた撤回したのか。
●すくなくとも、死蔵問題を解消する気概は彼らに見えない。
【協同組合日本脚本家連盟】
●主張が短すぎやしないか? それともあれか、「言いたいことは一行で言え」の実践か。
●アーカイヴについて、国会図書館や民間のものが既に存在しているわけだが、それに触れるでもなく彼らの主張を示すでもなく。アーカイヴは金の無駄だとでも言いたいのだろうか。
●保護期間のあり方については、なかなか大胆なことを言っている。こういう掴みは巧いな、さすがに。
●意思表示システムについての一行が笑えた。脚本家の実情については、ということか?
【協同組合日本シナリオ作家協会】
●なかなか良いことを書いてる。──と最初は思ったら、中盤からエゴ丸出し。
●INTERNET Watch 記事で「議論の中では利用者の立場からは保護期間の延長に慎重な意見もあったが、全体の意見としては創作者の立場を優先すべきであり、保護期間の延長を望むとした」と報じられているところから嫌な予感はしていたんだが。
●「子(著作物)は何時までたっても子である事を理解して頂きたい」→死後50年も行動を縛った挙げ句、親に金を入れ続けろとさ。子にも社会的立場ってものがあるのにな。これで70年に延長ともなれば、子が“社会復帰”できるのはいつの日か。
●シナリオライターの実情がどれだけ悲惨なものなのかは(いたたまれないほど)伝わってくるが、それがどうして保護期間延長に繋がるのか根拠が示されていない。
●たった一人の例をもって著作権保護期間延長の理由になり得ないことくらいは、論理性を要求されるシナリオライターなら判りそうなもの。第一、保護期間を延長することで直接の影響を受けるのは死後50年を経過した著作者だ。例に出しているのは今も生きているヤツではないか。例としてそもそも適切ではない(この例をもとに「著作権などあっても無意味だ」と主張するのならともかく)。
●これはシナリオライター以外の著作者や実演家にも言えることだが、現状の悲惨さは著作権保護期間で手当てすべき問題ではない(そもそも手当てにもならない)。既に亡くなっている人をどうこうするのではなく、今この時に生活し創作するものに手厚い保護が与えられなければ意味がない。要は、彼らが受けている不当な扱いを是正し、本来持ち得るべき権利を(フェアな範囲で)行使できるようにすべきなのだ。
●たいして権利も行使できないような境遇の中でいたずらに保護期間を延ばしてしまったところで、シナリオライターの利益には全くならない。むしろ彼らの作品が日の目を見なくなるような弊害が広がるだけである。
【日本音楽作家団体協議会・社団法人音楽出版社協会・社団法人日本音楽著作権協会】
●著作権が未来の創作に対する「インセンティブ」を標榜する制度である以上、当然にして既に創作された「過去の著作物」と今後創作される「未来の著作物」は分けて考えられるべきである。また「過去の著作物」が死蔵される現実がある以上(そして著作権・著作隣接権がその解消を妨害する以上)、当然に制度の見直しが図られる。この流れは「著作者への敬意」などというものとは全く無関係のものであり、彼らに止めることはできない。
●「保護期間が切れた著作物であれば、人格権を侵害するような利用形態を除けば自由に利用が可能です」→ほう。あんたらがそれを言うか。ならば「保護期間が切れた著作物」が毎年増えていく現行制度を維持すべきだな。それが最低限だ。逆に保護期間を延長したいのなら、「人格権を侵害するような利用形態を除けば自由に利用が可能」なものを著作権法の保護下で作るべきということにもなる。
●アーカイヴの件で「保護期間を延長せずに『死後50年まで』で据え置いたとしても、この問題が解消しないことはいうまでもありません」とあるが、これが保護期間延長を肯定する根拠にならないということも言うまでもない。それどころか、保護期間を延ばすことでこの種の弊害はさらに拡大する。
●他にもツッコミどころは満載だが、いちいちそれに労力を割くのがバカらしくなってきた。笑止。
【社団法人日本漫画家協会】
●論じるに値しない。
【社団法人日本芸能実演家団体協議会】
●それぞれの主張について、実例を挙げていないのがきついな(実際の話ではどうだったんだろうか?)。
●「著作物の二次利用が進まぬ理由として、著作権法上の権利を阻害要因として挙げることの誤りは既に共有されている」→意味不明。実際の発言で訂正か補足があったかもしれない。もっとも、IPマルチキャスト同時再送信関連で実演家の権利が制限された(許諾権から報酬請求権へ「切り下げ」られた)のは明らかにこの考え方からくるものだし、また日本で音楽配信がなかなか広がらないのもレコード製作者による著作隣接権の不当な行使によるものである。これを否定する根拠は、権利者の側から何ら示されていない。
●「利用の円滑化については、既存の枠組みの中での関係者の協議を通じて解決できる」→それができないからIPマルチキャスト同時再送信で権利制限されたのでは? iTS の欧米並みサービスも未だに始まらない。日本の「関係者の協議」万々歳である。
●「安易に権利制限などの方策を採ることは、集中管理に取り組むインセンティブを損ないかねず」→IPマルチキャストも「インセンティブ」にはならなかったということか? もう少し危機感を持ってもらいたいのだが(経済財政諮問会議での「デジタル・コンテンツ流通促進法制」のように、彼らの「権利」はかなり切羽詰まったところまで来てると思うのだが‥‥早く論を組み直さないと、このままずるずると権利制限なり新法制へと進んでしまうのではないか──最低限、実効性ある集中管理にまで漕ぎ着けないと相手にすらされなくなるおそれがある。IPマルチキャストから彼らは何を学んだのだろうか)。
●「コンテンツホルダーと権利者団体の協力により一定の解決策をとることが可能」→やっておくれ。
●「権利者情報を含むコンテンツ情報の精緻化の必要性」→これはいいね。やっておくれ。
●著作権と著作隣接権が異なる扱いを受けることは致し方ない話。しかも実演は(ライヴパフォーマンスを除けば)映画著作物やレコード著作物との親和性が高く、これらの権利が公表後起算である以上(原著作物の著作権は除く)実演家の権利が実演後起算になるのも(混乱を避ける意味で)当然といえる。まして映画著作物では著作権切れと同時に原著作物(いわゆる原作・脚本だけ。音楽や美術著作物は別扱い)の著作権も及ばなくなるし、音楽著作物では JASRAC という強力な集中管理機構が存在する。
●ただし実演家の著作隣接権延長が肯定できるとすれば、唯一、映画著作物にかかる著作隣接権(20年分だけ)についてのみ考えられるのではないか(もっとも今検討されている集中管理なり強制許諾なり権利制限をも前提とすべきではある)。映画製作者(著作権法上の著作権者)だけが著作権延長の恩恵に浴するというのは不公平だろう。実演家の権利が解消するは、著作権は存続するはで、実演家にも利益還元が必要だと思うのは俺だけか?
【社団法人日本民間放送連盟】
●「放送事業者が放送のために製作する番組については、実演家の放送権のみの許諾を得る場合が多い」というのはレコード製作と大きく違う点か(レコード製作だと契約で譲渡させられる場合も多いようだからなぁ)。
●「裁定制度の利用を前提とした著作権者の探索においては何らかの権利制限を創設することが望まれる」→なかなか興味深い提案。今まで気付かなかった。(余談だが、フェアユース規定があればカバーできそうな気も。)
●著作者としての主張は少ないところが興味深い(民放キー局みずから製作する番組が少ないという事情も関係してるのか?)。余談だが、放送番組の著作権帰属ってのはかなり曖昧な気も。下手に保護期間延長とかいうとトラブルが増えるか?
●利用者としての主張も割とひかえめ。
【日本放送協会ライツ・アーカイブスセンター】
●主張の中身自体は、民放連と足並みを揃えている印象。
●「NHK アーカイブスについて」が興味深い。
【社団法人日本書籍出版協会】
●「当協会としては、70年への延長、50年据え置き、どちらとも判断が困難な立場であります」→ほぉ。
●「著作物は、著作権者が権利を占有する私的財産であると同時に、〜適当であると考えます」→いいこと言ってる。
●他に若干のツッコミどころはある。「わが国が利用する海外の著作物の多くが欧米諸国のものであることを考えれば」云々は結論が必ずしも妥当しないし、「絶版の定義や絶版であるかどうかの確認は困難であり」などと「出版協会」が言ってる有様だし、「アーカイブに収める出版物は、現在のところ、著作権の保護期間が経過したものに限られるべきです」との主張は保護期間延長やむなしとの見解と相容れない(アーカイヴを停止しろと言ってるのに等しい)。
●「意思表示システムについて」は結構まともな内容。
【社団法人音楽電子事業協会・ネットワーク音楽著作権連絡協議会】
●「CP の基本方針」は傾聴すべき。
●「ネット配信では国境が無意味であり、50年のままだと日本のCPに対して海外の権利者が包括契約を拒否する恐れがある」→これホントかよ。本当に「国境が無意味」だったら、配信国からダウンロードされておしまいだろうに。日本だけ許諾対象から外して何が得になるんだか(かえってファイル交換の餌食になるだけじゃないのか)。
●「条件付き賛成意見」はあまりよろしくない項目名だな。どう読んでも反対意見だ。(俺が「輸入権」パブコメの時に賛成意見に入れられていたのを思い出した。)
●反対意見はストレートすぎて好感を持った。なかなかの主張(笑)。
●「意思表示システムについて」の懸念は妥当なところと考えられる。
【国立国会図書館】
●注目すべきは具体的データ。「権利者不明の場合」はやはり多いのである。
●「別添資料」も3つあるので併せて読まれたい。別紙2のデータ、別紙3の指摘は今後の図書館(アーカイヴ)を考える上でも有益な資料となろう。
【青空文庫】
●刮目して読むべし。
●「ゲーム機用読書ソフトの開発も進められている」ってのは、 Nintendo DS のアレかなぁ。もしそうだとしたら、青空文庫のデータを使って 4000円 ってのはボりすぎ。俺は Azur 使った方が便利だと思うんだけど、実際に Azur 使ってるユーザーってどれくらいいるのかなぁ。
【クリエイティブ・コモンズ・ジャパン】
●クリエイティブ・コモンズ入門の文章として是非(笑)。
●現行著作権法および保護期間延長問題についても明確な意見。
【エンドユーザー】
●印刷したプリントを読みながら、手を合わせて拝んじまったよ。まじで。
●たぶん津田大介氏にとっては書きづらいところがあったと思う。でもそこまで敢えて踏み込んでくれたことに感謝するのと同時に、これ以上は無理しないでほしいと思う面もある(どこまで氏自身が納得して書いているのか判断つかないだけに‥‥)。
●まずはこれが基礎資料。ここに書かれていることに異論があるユーザーがいたのなら、大きく叫べ。それが誰かに届くまで叫び続けろ。君たちには語るべきものがあるということなのだから。あるいは君が異論の無いユーザーだったら、友人にこれを読ませてやれ。そして、この意見が保護利用小委でどう扱われるのかを見届けてくれ。
●たとえ一人ずつでも発言者が増えていってくれることを祈る。自らの頭で考え、自らの口で発言し、自らの足で行動する人間が。それは必ずしも俺と同じ思想の持ち主を意味しない。まずは一人ひとりの声を顕在化(できればブログ等による可視化)すべきだ。理解し合うのはその後からでもいい。
●社会(そしてその写しである市場)は一人ひとりの選択行動の総和である。著作権制度も同様。ごく僅かな人間によって形作られるべきものなのではなく、より多くの人間によって考察・発言・対立・説得・理解・妥協が重ねられ平衡した末に見えるものなのである。こと著作権制度については、それが始まったばかりなのだ。
※全般として、発言者による実際の発言内容については議事録で確認しないと細かいニュアンスは理解しづらいだろう。ひょっとすると資料に一部訂正が入っている可能性もあるしね(ただ訂正部分は普通 公表前に修正されてしかるべきではあるが‥‥)。一定の判断保留を意識しつつ、冒頭で紹介したアンケートに接していただけると幸いである。
投稿:by 暇人#9 05:51 午後 [ユーザーと著作権, 著作権行政 watch, 音楽業界の愚行] | 固定リンク | コメント(0) | トラックバック


