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2007.06.13
【資料】貸与権と私的録音補償金
文化庁による解説、および法学者の発言から抜粋。
■文化庁側解説(一般向け)
レンタル業界への規制の新設
──著作者の貸与権の創設等──
著作権法の一部を改正する法律
59.5.25公布 法律第46号
文化庁著作権課 木村豊
(時の法令・通号1238 (1985.2.3))
著作権法の一部を改正する法律が昨年の五月一八日に成立し、本年一月一日から施行された。
今回の改正は、貸レコードなど著作物等の複製物の貸与、音楽テープの高速ダビング業や文献複写業など公衆の使用に供される自動複製機器による複製の規制を中心とするもので、現行法制定以来初めての大改正であるということができる。(中略)
今回の法改正の最大の動機となった貸レコード店は、昭和五五年に東京の三鷹に最初の店が開店して以来、急速に普及し、現在では一九〇〇店をこす状況にあるといわれている。
このように急速に普及した背景には、通常は購入すれば一枚二八〇〇円するLPを平均すれば二五〇円程度で借りられるという安さとともに、家庭内への録音機器の広範な普及から、借りたディスクをテープに家庭内で簡単に録音できるということがある。このようなところから、著作権法で保護している作曲家、作詞家の著作者、歌手等の実演家、レコード製作者の経済的利益に影響を与える問題としてクローズアップされてきた。
更に、音楽テープを貸し出して、店内でダビングさせるレンタル・ダビング併営店が出現して、このことも権利者に大きな影響を与える問題となってきた。
このような背景の下に、文化庁においては五八年一月に、これらの著作権法の改正のための当面の緊急課題についての検討を著作権審議会にお願いし、同年の九月にその審議結果を得て、それを踏まえて今回の法改正が行われたものである。
著作権法を知る=15=
私的録音・録画問題
文化庁文化部著作権課 井上明俊
(時の法令・通号1283 (1986.6.15))
多くの人々は、ラジオ放送から流れてくる音楽を録音し、あるいはテレビ放送から好きな映画を録画し、または友人や貸レコード店からレコードを借りてテープに録音した経験を持っているであろう。
この行為は、著作権法上、「複製」に該当するため、著作権者に許可なく行うと、本来は著作権侵害になるものである。しかし、著作権法には第三〇条という規定が設けられており、著作物を個人的又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とする場合には、自由にこれを行えることとされている。したがって、この限りにおいて、著作権は制限され、人々は著作権者の許可なく音楽をテープに録音することができるのである。
現行著作権法の仕組みはそうなっているが、よく考えてみると、我々の生活はひと昔前と違い、あまりにも容易に私的録音・録画をすることができるようになっている。ほとんどの家庭にはラジカセ、ステレオセットなどの録音機器があり、ビデオテープレコーダも急速に普及しつつある。録音・録画用テープは安く入手できるし、エアチェック番組が一目でわかる雑誌も多数販売されている。
現在、膨大な量の私的録音・録画が行われていることが予想されるが、その一方で、著作権法の基本に立ち返り、他人の知的創作活動の成果を自由に利用してよいのか、例えば、レコードを買う代わりのダビング行為などはレコードの販売量がそれだけ現象することは明白であり、レコード製作に寄与した作詞家、作曲家等の著作権者、歌手・演奏者、レコード製作者等の著作隣接権者に対し、なんらかの手当をしなければならないのではないかという問題が浮かび上がってくる。
■法学者による理解
山積する音楽著作権問題のゆくえ
カラオケ、CDレンタル、私的録音・録画を中心に
青山学院大学教授 半田正夫
(法学セミナー 1992.4 [No.448])
現在、CDレンタルショップは全国で五六〇〇店舗といわれている。登場したのが昭和五五年であるから、いかに急成長したかがこの数字によって明らかである。一枚二〇〇〇〜三〇〇〇円もするCDを購入することは小遣いの少ないヤングにとっては大きな出費となって容易に手が出ないが、レンタルショップを利用することにより、三〇〇〜四〇〇円のレンタル料で借り出し、これを自己所有のオーディオ機器で録音して自分のものとすることができる。録音といっても最近のオーディオ技術の急速な進歩により原盤と音色がほとんど変わらないからこれで十分で、とくに買う必要をみないし、飽きたら消去してまた録音すればよいという利点もある。これがヤングの間に絶大な人気を得るにいたった理由でもある。だが、このようなレンタルショップの急成長に伴い、CDの売り上げが激減し、このためレコード小売店の経営が困難となるという事態が生じてきた。そして影響はひとり小売店のみならず、作詞家・作曲家などの著作権者や実演家・レコード製作者などの著作隣接権者にも多大の影響を与えることとなった。 そこで、これら権利者は立法運動を展開し、その結果は昭和五九年の著作権法一部改正によって達成されるにいたった。
著作権法三〇条は、私的使用のため著作物を録音・録画することは権利者の許諾を要することなく自由に行うことができるとしている。ところが、録音・録画機器の開発・普及に伴い、エア・チェックなどの方法により、家庭内において録音・録画が盛んに行われるようになり、権利者側に対してなんらかの補償措置を考慮すべきではないかとの考えが登場するにいたった。(中略) 利用者による録音・録画の入手源はレンタルショップからの場合とエア・チェックの場合とが二大入手源といってよいが、前者の場合、貸与権が認められたことによってレンタル業者は報酬を権利者に支払っており、業者はこれをレンタル料に上乗せしてユーザーに転嫁しているはずである。ところが右の報酬請求権制度の導入が行われれば、これとは別に機器メーカーの支払った分がユーザーに転嫁されるのであって、結局ユーザーは二重払いさせられることになりはしないかという問題など、なお解決すべき問題も多く、今後の動向が大いに注目されるところである。
私的録音と補償金請求権
──新制度の誕生と法的問題点──
半田正夫
(法曹時報四五巻一〇号〈平成五年一〇月一日発行〉所収)
ところで、近年における録音技術の急速な進展に伴い、高性能を有する録音機器が低廉な価格で出回るようになり、家庭内に急速に普及・浸透してきている。その結果、CDレンタル店や友人から借りたCDやラジオから流れる音楽を自己所有の録音機器で録音して自分のものにしてしまい、その影響でCDの売行き定価し、著作権者(作詞家・作曲家)や著作隣接権者(レコード製作者・実演家)の収益に多大の不利益をもたらすという現象が発生してきている。そこで、私的使用のための複製の自由の制度を維持しながらも、権利者の経済的不利益を解消させるためのなんらかの方策が必要となってくるが、これを実現したのが、平成四年一二月一六日に成立した著作権法一部改正法である。この改正はドイツにおいて一九六五年以来採用されている方式を基本的に採用したものであるが、従来の著作権法の理論に転換を迫る部分もあるため、なお検討すべき多くの問題をかかえているといえる。
利用者が著作物を録音・録画する際に録音・録画の入手源をどこに求めるかについては、CDレンタル(映像についてはビデオレンタル)とエア・チェックとが二大入手源といってよい。前者については、貸与権(映像については頒布権)が認められたことによってレンタル業者は報酬を権利者に支払っており、業者はこれをレンタル料に上乗せしてユーザーに転嫁しているはずである。ところが今回の立法によれば、これとは別に機器・記録媒体メーカーの支払った分がユーザーに転嫁されるのであって、結局ユーザーは二重払いさせられることになってしまう。この不公平さを是正するためのなんらかの方策が必要となりはしないか。
[座談会]私的録音・録画と報酬請求権
(ジュリスト 1993.6.1 (No.1023))
日本音楽著作権協会理事長 石本美由起
文化庁文化部著作権課課長補佐 関裕行
日本芸術文化振興会理事長 加戸守行
全国地域婦人団体連絡協議会事務局長 松下直子
〈司会〉筑波大学教授 斉藤博
斉藤 (中略)昭和五九年に、貸しレコードにつきまして、法的な対応がなされました。貸レコード問題は昭和五八年の暫定措置法あたりから考えますと、実質上は複製権の問題でもあったわけです。私的複製といいますか、それの一角を貸しレコード問題の解決という形で処理したと考えることもできるわけです。建て前からしますとそういうことは決してないとお叱りを受けるかもしれませんが、実質上は私的録音・録画問題の一角について、法的な手当てをしたと評価できるようにも思います。そうでございますと、私的録音・録画問題につきまして、長い間、法的な対応を何もしなかったというわけではないようにも思いますが、いかがでしょうか。
加戸 (中略)貸しレコードが問題になったときも、実は家庭内録音の相当大きな共犯者だという発想が強かったわけです。そういった点では、制度的には私的録音とは区別してありますが、実体的には法改正に至った原動力というものは私的録音・録画の問題が底流にあったということは否定できない事実であり、かつ当時貸しレコードが国会で議論になった際も、私的録音・録画の問題を解決すべきであって、そちらのほうがもっとより根元的な問題ではないか、という議論は確かにありました。ただ客観的状況として、当面貸しレコードに対する問題をどう処理するかということで、当時法改正をしたのはやむを得ない措置だったと思っています。貸しレコード屋さんはホームテーピングの責めもだいぶ負った形で当時対応されたかと思います。
CD等のレンタルと著作権問題
青山学院大学教授 半田正夫
(法律のひろば 1992.2)
レコード(CD、テープを含む。以下同じ)のレンタルショップが登場したのは昭和五五年東京武蔵野市においてであるが、その後急成長し、同五九年には一八〇〇点、同六〇年には三〇〇〇点に達し、現在では全国で五六〇〇店舗、八〇〇億円市場と言われるまでに発展している。
このような急成長を遂げるにいたった原因には、次の二つが考えられる。一つは、ヤング層の絶大な支持を受けたことである。お小遣いの乏しいヤングにとっては一枚二〇〇〇〜三〇〇〇円もするCDを度々買うことはできないが、レンタルショップを利用すると、三〇〇〜四〇〇円で借り、これを自己所有のオーディオ機器を使用して録音することにより自分のものとすることができる。どうせ曲のはやりすたりは激しいからとくに買う必要はなく、何回も聞いて飽きれば消去して、また新しいCDを借りればよい、というのがヤングの考え方である。オーディオ技術の急速な進歩によって原盤と音色のほとんど変わらないテープ録音が可能になり、この性能のいいオーディオ機器が家庭内に普及していることが、レンタル利用現象に拍車を駆けているといってよい。二つは、レンタルショップの利用が当初、合法的な行為であったからである。市販されているレコードを購入してこれをレンタルに回す行為は──レンタルショップが登場した当時には現在のような貸与権が著作者に認められていなかったから──著作者の許諾を得る必要はなかったし、また利用者が借りたレコードを録音しても、私的使用のための録音は複製権の侵害とはならない旨の規定が置かれているため(著三〇条)、これまた適法であり、レンタルショップ利用のどこの段階にも違法な行為は存在しなかったのである。
このようにしてレンタルショップは急成長をとげたが、これによって直接打撃を受けたのはレコード小売店であり、さらにレコードの売上の定価によって作詞者・作曲家などの著作権者や実演家・レコード製作者などの著作隣接権者にも多大の影響を与えることとなった。そこでこれら権利者は自己の財産的利益の確保を目指し、立法活動を展開するにいたった。
私的録音録画補償金制度における製造業者等の役割
岡山商科大学教授 阿部浩二
(コピライト 1998.6)
カラオケの経営者の場合と同じく、貸レコードの経営者も借主が借りたレコードを録音することを知りながら、レコードを貸すので、これも、貸レコード業者の貸与と借主の録音を一連の連続する行為と捉え、貸与をもって借主の録音行為と同視することができるのではないかと考えることができます。このように、密接に関連する2つの行為を連続して捉えるという考え方には、前に述べたカラオケ事件や、酌婦稼働を訳する契約と密接なkねかいがある前借金に関する消費貸借を無効とする最高裁判決(昭和30年10月7日)や、制定法では、割賦購入あっせんにかかる商品に欠陥があるときに、あっせん業者に代金を支払うにつき対抗できるという抗弁権の連続を想定する割賦販売法の30条の4にみられる考え方であります。私的録音録画の問題でも、そのための機器等の提供と一連のものとして捉え、提供者であるメーカーに録音録画のために生じる権利者の不利益をカバーする何らかの役割を期待できるのではないかという発想であります。
しかし、貸レコード業者の貸与と借主の録音録画を連続的に捉え、貸与をレコードの複製と同視し、レコードの貸与を複製権の侵害とみることは理論的にあるいは可能かもしれないが、貸レコード業者に対し複製権の侵害を理由に貸与の差止めと損害金支払請求の訴訟を提起しても解決までには時間がかかるだろうというわけで、皆様もご承知のように、レコード協会その他の方が大いに運動して、議員立法で「商業用レコードの公衆への貸与に関する著作者等の権利に関する暫定措置法」が昭和58年に制定されたのであります。
貸与権という新しい権利を創設してしまいましたので、そうしますと、少なくとも貸レコードについては「連続性」という考えは不要となりますし、むしろ、連続性という考え方に対し、否定的な印象さえ与えられたのであります。ホームテーピングは別であるといえないことはありませんが、やはり一歩下がって考えざるを得ないという感じを私はもったのであります。かくして登場するのが、報償責任の考え方であり、それが、著作権法104条の5に結実するのであります。
■おまけ
私的録音録画補償金創設にかかる議論に参加していた人物の証言。
「私的録音・録画問題とその周辺(2)
貸レの出現と懇談会の見識」
(社)日本電子機械工業会 著作権委員会
委員長 野田 康正
(「電子」 1992・9、 31ページより)
著作権法に貸与権が織り込まれたことで、文化庁はCD1泊2日の著作権使用料を 70円 と決めた。市価 2,500円 ないし 3,000円 もするCDが貸レコード店で1泊2日 250円 前後で借りられることは、ことに若年層 (15-25歳 までぐらいの中高大学生)には大きな魅力となったものの、3割以上が著作権使用料となる料金の設定について高すぎるのでは、との声が貸レ業者のみならず、権利者や文化庁などの関係者にもあがった。結局「‥‥ホームテーピングされていることもあるから‥‥」ということで決着した。
当時、日本レコード協会の調査によれば、貸レ利用者の 90% 以上が借りてきたCDやレコードからホームテーピングしている実態をあげていたこともあり、高い料金の設定に踏み切った。この著作権使用料は法施行6年後の 1991年 (平成3年)には 100億円 を越える大きな金額が貸レコード業者から著作権者側に支払われている。
■おことわり
本記事での引用は、以下の記事で論じるために行なったものです。
http://himagine9.cocolog-nifty.com/watchdogs/2007/06/post_e58e.html
「レンタルCDにかかる『二重徴収』が否定された日」
(エンドユーザーの見た著作権)
投稿:by 暇人#9 06:45 午後 [ユーザーと著作権, 著作権行政 watch, 音楽業界の愚行] | 固定リンク
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