2007.07.09
私的録音録画小委#5の資料1(事務局作成「叩き台」)の問題点
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/020/07061916/001.htm
「文化審議会 著作権分科会 私的録音録画小委員会(第5回)
議事録・配付資料 [資料1]」
(文部科学省)
──箇条書き。
●私的録音・録画から外す範囲について相変わらず進める気でいるのがまず論外。しかも「有料放送からの録音録画」までいつのまにか加わっている。これらの法改定については実効性の検討が不可欠であるが、私的録音録画小委員会でどれだけ検討したというのか。「そもそも論」すなわち「なぜ私的録音・録画に補償金を課さねばならないのか」という論点でずっと進められてきたではないか。
●HDD ビデオレコーダーや携帯音楽プレーヤーについて「これを対象としないことは、負担の公平性の観点から問題がある」としているらしいが、これは事務局が判断することではない。まして補償金制度というそもそも不公平な制度において、課金対象の範囲が不「公平」などと称するのは片腹痛い。
●パソコンについて「論点をどのように整理するかを改めて検討する必要がある」としているらしいが、ということは、上記 携帯音楽プレーヤー等については論点整理・検討は必要ないと考えているのか。そもそも論をすっとばし、加えてこういう重要な論点をもすっとばす。そもそも法制小委での議論(2005年度)では現行制度に問題点が多いため iPod 等への課金見送りということであった。しかし私的録音録画小委においてその現行制度の問題点は全く解消されていない(検討すらされていない)。新たな課金対象を考える段階には全く無いということだ。
●加えて、現行の政令指定についても簡便化する方向性が出されたらしい。ふざけるな、だ。法制小委では現行制度では政令指定の維持が望ましいとはっきり結論されている。また、 iPod への課金議論を見ればわかるように、現行の「政令指定」のままでも著作権分科会での議論を経ることで一定の「透明性」は得られている。文化庁主導で不適切な議事進行が為されるという点では「評価機関」なぞというものを用意しても同じだ。むしろその公開性が危ぶまれるところである。それよりも文化審議会の各議事録を早く公開することに努めるべきであろう(その方がよほど「透明性」に資するというものだ)。
●俺はあちこちで「ユーザーを支払い義務者にするという日本法の規定は、私的録音録画補償金制度における唯一の合理的制度設計だ」と発言している。しかしこの前提すらも覆す提案を文化庁はしている。これは CPRA からも提案されていることで知られているが、全くもって言語道断である。
●まず、この支払い義務者をメーカーにするというのは、エンドユーザーを私的録音・録画問題の議論の場から排除する効果がある。実際の負担はエンドユーザーが行なっているにもかかわらず、である。
●さらに言えば、メーカーに課金することで補償金の返還制度を改めるというインセンティブが下がる。私的録音・録画をしていないユーザーにも補償金を負担させるという不当な制度設計を可能にするということでもある。要は、他人の著作物の私的録音・録画〈にも〉使える機器・記録媒体を買った人間は全員 著作権・著作隣接権の管理団体へ みかじめ料を払えという制度が完成することを意味する(財産権侵害で訴訟を起こしたいくらいだ)。
●仮に私的録音・録画が補償すべき行為だったとしたら、その補償金を支払うのはユーザー自身であるべきである。だからこそ日本法での規定は合理的なのである。
●なお、メーカーを支払い義務者とすることについての上記問題点は、私的録音・録画問題に補償金制度で対応すべきと唱えた半田正夫氏ですら看過できないものとして指摘している。
●「コンテンツ提供者から補償金を徴収する『世界初』の制度設計案」というのは、実は補償金制度創設時にも検討されていた(記事で例示されているほど大胆なものではなかったが──著作権審議会第10小委員会報告書参照のこと)。しかしこの時には明確に否定されている。理由は RIAJ の生野委員が反論したという内容そのものだ。
●もっともユーザー側からすれば、買った金額に補償金が上乗せされるということ自体 受け入れられるものではない。まして買ったものからの私的複製については権利者の利益を損なうものでないことは権利者からも認められたところである。
●個人的には、これは“目くらまし”ではないかとも思われるが。おおよそ実現不可能なものを対比として持ってきて、“本命”の議論へと向かわせるための。しかし本来とるべき方向性が資料1に含まれていないという事実を我々は堂々と指摘すべきである。
●メーカーが利益を「権利者」に還元しなければならないとしたら、「権利者」もまたその利益を、プレーヤーを作っているメーカーに還元すべきであろう。各媒体のプレーヤーをメーカーが作っているからこそ、「権利者」はCDだの DVD だのを作って得ることができるのである。結局の所、このような主張は自分らの利益拡大だけを考えているのであり、共存共栄を考えているものではないということ。
投稿:by 暇人#9 11:39 午後 [著作権行政 watch, 音楽業界の愚行] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
2007.06.20
私的録音録画補償金拡大を強行する文化庁 ──エンドユーザーはこれ読んで怒れ!
6月15日 に開催された文化審議会 著作権分科会 私的録音録画小委員会(第5回)会合の内容が徐々に明らかになってきている。
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2007/06/18/16070.html
「私的録音録画小委員会、見直し議論は『補償の必要がある』ことが前提?」
(INTERNET Watch)
http://nirvana.blog1.fc2.com/blog-entry-82.html
「著作権分科会 私的録音録画小委員会(第5回)」
(zfyl)
委員から相次いで指摘されていた「そもそも論」を積み重ねるという必須の作業をすっとばし、ついに事務局側から強引に「叩き台」と称する方向性が打ち出された。その中には反対意見が出ている私的複製範囲の縮小や補償金の必要性ありと認めることに加え、私的録音録画小委では一切議論されていない iPod 等への課金・汎用機器 記録媒体への課金・支払義務者の変更(返還制度の実質的廃止)・政令指定の変更なども明確な形で書かれている。
まさに「結論ありき」の形で出された「叩き台」であり、これまでの議事進行を見ても異論を全く受け付けない形で公表されるに至ったものだ。
このような有様では、とても合意形成の場とは呼べない。この小委員会で何かが決められたとしても、エンドユーザーが納得できるものではないし、またメーカーもそうした“新制度”に従うことなど非常に困難であろう(個人的には、最悪の場合、メーカーが訴訟を起こすなんてことも視野に入れるべきではないかとすら思う)。
以下、事務局が独断で作成した「叩き台」と、それに対して当然に反論した亀井委員 (JEITA) の発言を引用する。
※なお「叩き台」は第5回会合当日の配付資料から、亀井委員の発言は傍聴者によるメモから引用。いずれもブログ 『zfyl』 に掲載されていたもの。
■資料1から、事務局が過去の議論を踏まえず一方的に提示した「叩き台」(抜粋)
※下線は引用者による。
http://zfyl.shacknet.nu/070615_m01.pdf
【資料1】
私的録音録画に関する制度設計について
1 前提条件の整理
(1)第30条の範囲の縮小
私的録音録画に関するいくつかの行為類型のうち、
ア 違法複製物・違法サイトからの録音録画
イ 適法配信・有料放送からの録音録画
については、第30条の適用範囲から除外することとするが、それ以外のものについては従来どおりの適用範囲内とすることでどうか。
(2)著作権保護技術と補償の必要性との関係
(中略)
2 仮に補償の必要性があるとした場合の私的録音録画補償金制度の基本的なあり方
(中略)
(2)録音録画機器・記録媒体の提供という行為に着目した制度設計について
○1 対象機機・記録媒体の範囲について
(中略)
ウ 改善すべき課題と対応策
(ア)対象機機について
○ 現行制度は、私的録音録画に専ら使用され、かつ記録媒体を内蔵しない機器(分離方専用機器)を想定して制度設計を行っている。
○ 現在は、
a 録音録画機能以外の機能(再生機能は除く)を併せ持つ機器(汎用機器)
b 記録媒体を内蔵した一体型の機器
が主流となりつつあり、この傾向は、ここ数年のうちにより顕著となっている。
○ このようにIT技術の急速な発達に伴い一体型機器や汎用機器を用いて行う録音録画が増加していることを考えれば、これを対象にしないことは、負担の公平性の観点から問題があるところから、対象機機の範囲を見直す必要があると考えるがどうか。
○ 専用機器については、記録媒体を内蔵した機器(一体型専用機器)であっても、私的録音録画に専ら使用される専用機器であることに違いはないことから、対象にすることについて課題は少ないと考えられるがどうか。
○ 汎用機器については、
a ポータブル・オーディオ・レコーダ (iPod、 ウォークマン等)に代表されるように、汎用機能を有するが消費者の主たる用途は私的録音録画であるもの と、
b 通常のパソコンのように、消費者の主たる用途が私的録音録画であるとはいえないもの
に分類されると考えられる。
○ aの場合、例えば専用機器であるポータブル・オーディオ・レコーダと汎用機器ではあるが主たる用途は録音録画であるものとの取り扱いを異なるものとすることは、負担の公平性から問題があることから、これを対象にすることが適切であると考えるがどうか。
○ bの場合、機器の購入者が私的録音録画に供する可能性がかなり低いものもあると考えられることから、補償金の対象とするかどうかは、この論点をどのように整理するかを改めて検討・整理する必要があると考えるがどうか。
○2 対象機器・記録媒体の決定方法について
(中略)
ウ 改善すべき課題と対応策
○仮に汎用機器・記録媒体も対象範囲に加えるとすると現行の政令指定方式では対応できないと考えられ、他の問題点も考慮すると、新たな決定方式を考える必要があると考えるがどうか。
○例えば、次のような方法により、弾力的に、また迅速かつ透明性ある決定方式にすることは考えられるか。なお、他に適切な方法はあるのか。
例 政令で定める基準に照らして、公的な「評価機関」の審議を経て、文化庁が定める
(説明)
・政令で一般的な基準(たとえば、技術、用途)を定め、具体的な対象については評価機関で議論されることとなるため、汎用機器についても利用実態を考慮して判断できる。
・公的な評価機関は、例えば権利者、製造業者、消費者、学識経験者で構成され、そこで対象範囲が議論され、透明性が確保されたプロセスにより審議する。
・政令指定よりも迅速に対応できる。
○3 補償金の支払い義務者
ウ 改善すべき課題と対応策
○ 現行制度は、専用機器・専用記録媒体を前提にした制度であるところから、負担の公平性の点から、仮に汎用機器等を対象にする場合、イの問題点から現行制度のように利用者が支払い義務者では対応できないと考えられるがどうか。
○ 仮に見直すとした場合、選択可能な制度は、我が国以外の国で採用されている製造業者及び輸入業者が支払い義務者になることが適切と考えられるがどうか。
○ なお、製造業者等の支払い義務者とすることの考え方を整理すると次のようになるが、これについて問題はあるか。
・録音録画機器等の提供があることから私的録音録画が行なわれるとの因果関係がある。
・著作権法の原則では、利用者が補償金を支払うのが基本であるが、個々の利用者から補償金を徴収するのは事実上困難であり、現行制度においても実質的には製造業者が補償金を支払っている。
・今回の制度見直しにより、負担の公平性の点から汎用機器も対象にせざるを得ないとすれば、返還制度に関する問題点等が拡大するなど現行制度の考え方では対応できないところから、第30条の存在により利益を得ており、現行制度においても実質的に補償金を支払っている製造業者等に著作者保護のために協力を求めることが適切と考えられる。
■この資料1に対して JEITA 亀井委員が当然にぶつけた反論
亀井委員:まず資料1について。
第10小委員会報告書などを読むと、基本的に著作物利用の責任は受益者たる利用者が負うというところから出発している。現行制度設計時はこうした理念が きちんと議論され、整理された上で作ら れたと理解している、資料1をみると、その理念はどこにあるのか。これから理念について議論されるのだろうと思うが、表面的に制度改正をするという議論に なってしまわないか。
前提条件の整理について。前回もかなり議論があったが、そういうことについて一切ふれられていない。何が「整理」か。
また、違法サイト、適法サイトとあるが、これについても定義が満足に議 論されていない。それ以外についても議論が全く不十分なまま。それでどうかと聞かれても「はいそうですか」とはいえない状況。それが前提である。
2に至っては、以前から事務局が出されているそのままの表現。いくつか意見を申し上げ たが、全く反映されていない。JEITAとしては、アの条件は成就しているのではないかと考えているが、そのことも書いてない。
それでも、「仮に」ということで「制度論をしようよ」ということで始まり、「これまでの本委員会の議論から」とあるが、どうしてそういう帰結が出てくる のか、全くわからない。
対象機器、媒体について、汎用機器、汎用媒体への拡大が提案されているが、ラフジャスティスの制度の上で拡大するということは、さらにラフにということだ から、全く妥当とは思われないし、先ほど理念は何かということを申し上げたが、これは「お金が欲しい」としか聞こえない。言い過ぎかもしれないがそのよう に さえ思える。
「消費者の主たる用途」と書かれて いるが、それが現行の政令の「主として・・・用に供するもの」という表現とどこがどう違うのか。主観的要件と説明されたが、その基準は非常に曖昧。たとえ ばPCをCDのコピーのために買う人はいるが、その用途はいったい何なのか、ということになる。
汎用機器を用いての録音録画が増えていると書かれているが、たとえばポータブルオーディオプレーヤーを買ってネット配信で買うという方が仮に増えたとして も、前提条件としてそれは補償金の外だということであれば、それはそもそも補償金を負担する義務がないということ。負担の公平性の観点から問題とい うが、果たしてそうなのか。
それから、決定方法について、現行法の政令指定という枠組みは、文化庁だけで決められるのではなく、様々な観点からの検討が必要だという前提から定めら れたもの。「例えば」としてあげられている方法では、その考え方はどこに行ってしまうか。法的安定性、明確性のためにもそうした制度であることが必要と考 えられる。
例ではそれによって迅速化されると書かれているが、形式的な評価委員会を設けて、一回的に議論して、その後文化庁が決められるから速くなるといっている としか思えないので、この審議会でいろいろ申し上げてもそれが取り上げられないことを考え合わせると、どう検討されるのか、非常に大きな疑問がある。
支払義務者について大きな提案がされている。外国の制度を引き合いに出されておっしゃっているが、ドイツでは元々機器メーカーが間接侵害者だという議論 から出発し ている。そこでできあがってきた制度と、当然ドイツの状況も勘案しながら決めた我が国の今の制度とでは、経緯、判断が全く違う。どうしてひっくり返すの か。立法事実に変化があるのか。説明が必要である。
返還制度がワークしていないという問題があるが、立証責任を利用者に負わせている点であるとか、運用上の問題がないか、補償金制度の認知が低い中で返還 制度をどれほどの人が承知されているか、といった点が全く議論されないまま、返還制度については、「支払義務者を変えれば忘れることできる」といっている ようにしか読めない。「そういう議論をしていていいのか??」という疑問がある。
最後に、「実質的に補償金を支払っている製造業者等に著作権保護のために協力を求めることが適切と考えられる。」と書かれているが、現在における メーカーの協力義務以上に支払い義務のことをおっしゃっているということであれば、今のような議論のプロセスからいえば、何をか言わんやであって、全く受 け入れることができない。
文化庁が今こういうものをごり押ししようとしているということを我々は知らねばならない。
こんなものはもはや「補償金制度」ではない。国民からの財産収奪だ。
投稿:by 暇人#9 05:58 午後 [ユーザーと著作権, 著作権行政 watch, 音楽業界の愚行] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
2007.06.18
【資料】私的録音録画小委は過去の議論を踏まえ、その内容の適否を精査した上で新たな提案へと進むべきである
※引用部中の下線は引用者による。
■2005年度 法制問題小委員会における検討の結果
(「iPod 課金」もしくは「iPod 税」問題の検討として注目された。)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/toushin/06012705.htm
「文化審議会 著作権分科会報告書」
(文部科学省)
第2節 私的録音録画補償金の見直しについて
○ハードディスク内蔵型録音機器等の追加指定に関して,実態を踏まえて検討する。
○現在対象となっていない,パソコン内蔵・外付けのハードディスク ドライブ,データ用CD−R/RW等のいわゆる汎用機器・記録媒 体の取扱いに関して,実態を踏まえて検討する。
○現行の対象機器・記録媒体の政令による個別指定という方式に関して,法技術的観点等から見直しが可能かどうか検討する。
(中略)
3 検討結果
本小委員会においては,平成17年2月,補償金制度に関し,著作権分科会「著作権制度に関する今後の検討課題」が示した各課題について検討を開始したが,検討の過程において現在の補償金制度が抱える様々な問題点が指摘された。したがって,この報告においては,まずはこの制度がこれまで我が国において果たしてきた役割や意義とあわせて,指摘された問題点等について述べることとし,それを踏まえた上で,著作権分科会の示した各項目についての検討結果その他を記すこととしたい。
(1)補償金制度の意義
平成4年に導入された我が国の補償金制度については,現在様々な問題が指摘されているものの,私的録音・録画が一般的に自由とされ(注14)かつ実際にデジタルによる録音・録画が広範に行われている現状(注15)の下で,これまで一定の機能を果たしてきた。
(注14)
ただし,平成11年の著作権法改正により,私的使用のためであっても「技術的保護手段を回避して行う複製」は「自由」ではなくなった。
(注15)
脚注14の法改正や技術の進展によりDRMは様々な分野において普及しつつあるが,CDについては,MDへの複製を一世代のみに限定するDRM(SCMS方式)はMD機器に広く普及されているが,汎用機からCD−Rへの複製に対しては,DVD,音楽配信,デジタル放送の場合と異なり,いまだ本格的にDRMが採用される状況にいたっていない。(49頁 表「デジタル環境下における主なDRMの例」参照)
(2)補償金制度を巡る諸課題
他方,本小委員会においては,補償金制度の制度上あるいは運用上の問題や,制度の前提となっている状況の変化等について,以下のとおり指摘されたところである。
ア 指摘された制度上の問題点
・実際に著作物の私的録音・録画を行わない者も機器や記録媒体を購入する際負担することとなる。この問題点を解消するための返還金制度も,そもそも返還額が少額であり実効性のある制度とすることが難しい。(複製を行う者の正確な捕捉の困難性)
・汎用的な複製に用いられる機器(パソコン)や記録媒体(データ用 CD-R) は,私的録音・録画に用いられる実態があるが,仮に指定すると音楽録音等に使用しない者にも負担を強いることとなり,指定は困難(しかし,指定されないことにより,現実に行われている多くの複製が捕捉されない結果となっている)。(複製の対象となる機器や記録媒体の正確な捕捉の困難性)
・権利者への分配は,CD出荷量,放送・レンタル等の音楽使用データより推計して行っており,緻密に算出しても,実態の捕捉の困難性から,著作物等を複製されているのに配分を受けることができない権利者が生じ得る。(配分を受ける権利者の正確な捕捉の困難性)
(注)「二重徴収」についての問題
・消費者が配信サービスにより楽曲の提供を受けた場合に,配信についての「課金」と,私的録音に対する「補償金」が「二重徴収」されているのではないかとの問題が指摘された。
〈「二重徴収」に当たらないとする意見〉
配信サービスの対価はあくまでも「消費者への音源の配信」や「ダウンロードに際しての複製」についての対価であり,その後の私的複製は対象としていない。
〈「二重徴収」に当たるとする意見〉
ユーザーの複製を前提とした配信サービスにおけるビジネスモデルにかんがみると,配信サービスの対価を徴収した上で「補償金」を徴収することは「二重徴収」に当たる。
・購入等の手段によって,自己所有のCD等を複製する場合においても「補償金」が「二重徴収」されているのではないかとの問題が指摘された。
イ 指摘された運用上の問題点
・消費者に制度が知られておらず,機器や記録媒体購入の際負担していることを認識していない消費者がほとんどである。
・補償金の返還制度は十分に機能していない。
・共通目的事業の内容が十分知られていない。また,権利者のみならず,広く社会全体が利益を受けるような事業への支出も見られる。
ウ 現在の補償金制度の前提となる状況の変化
・現在の補償金制度は,「私的録音・録画が零細であり,その捕捉が事実上困難である」ことを前提とした制度であったが,DRM等の技術の進展により私的録音・録画の実情の捕捉が可能となりつつあるとの意見がある(注16)。したがって,「機器や記録媒体の購入の際にすべての消費者が補償金を支払わなければならない」という現在の制度を正当化する根拠は失われつつあるとの指摘がなされたところである。
(注16)
もっとも,DRMの普及については,その社会的なコストがどの程度か見極める必要があると共に,ユーザーのプライバシー保護が十分である必要がある。
(3)検討の結果
以上のような,補償金制度の導入の経緯や意義,更に問題点の指摘を踏まえ,本小委員会としては以下の結論を得た。
ア 著作権分科会が示した各検討事項について
○ハードディスク内蔵型録音機器等の追加指定に関して,実態を踏まえて検討する
・仮に本制度導入時にこのような機器が存在していれば,この制度の対象となったであろうとの意見があった一方で,市場に投入されている一部機種には写真その他のデータを保存できる機能を有するなど,音楽の再生以外の機能を有する「汎用機器」のものもあることから,補償金の対象とすることが適切ではないとの指摘もあった。
・しかし,これら機器は,音楽の録音・再生を最大のセールスポイントとして販売され,また購入されているのが実態である。したがって,主として「音楽の録音に用いられるもの」として指定すること(注17)は不可能ではないと考えられる。
・しかしながら,本件について検討する過程においては,現在の補償金制度についての様々な問題が指摘されるとともに,そもそもこうした問題点を抱えたままで新たな指定を行うことについては反対する意見も多数述べられたところである(注18)。
・このような状況の下では,本小委員会としては,現時点で内蔵型機器の指定を行うことは必ずしも適切ではないと思料する。今年以降の私的録音・録画の検討において,補償金制度について抜本的に検討を行う中でその検討結果を踏まえ適切に検討すべきであると考える。
(注17)
著作権法第30条第2項は,機器と媒体を分離して規定しているが,機器や媒体の指定は,国民の権利・義務に直接関連する事項であることから,条文は厳格に解釈する必要があり,現在の条文で想定されていない「内蔵型」指定をするためには,法律の規定ぶりを変更する必要がある。
(注18)
現在販売されている「内蔵型」機器については,パソコンは別として他の機器への直接の複製が不可能となっているものが多く,また,私的複製の対価はレンタルや配信サービスを受ける際の料金に織り込み済みであるとの意見もあり,これを補償金の対象とすることについて,各方面の理解を得るには至っていない。
○現在対象となっていない,パソコン内蔵・外付けのハードディスクドライブ,データ用CD−R/RW等のいわゆる汎用機器・記録媒体の取扱いに関して,実態を踏まえて検討する。
・汎用機器は,私的汎用機器は,私的録音・録画に用いられることが多く,例えば内蔵型機器のうち,録音についても,パソコンを経由して複製が行われるなど,私的録音・録画の現状においては,無視できない存在であるにも関わらず,パソコン内蔵・外付けのハードディスクドライブ,データ用CD-R/RW等のいわゆる汎用機器・記録媒体(以下「汎用機器等」という。)は現在補償金の対象とはされていない。
・この点,汎用機器等については,以下のような理由から,補償金の対象とすべきでないとする意見が多数であった。
(i)録音や録画を行わない購入者からも強制的に一律に課金することになり,不適切な制度となる。また,補償金返還制度も機能しづらい。
(ii)課金対象を無制限に拡大することにつながる。
(iii)実態として,他人の著作物の録音・録画が利用の相当割合を占めるとは考えにくい。
(iv)現行の補償金制度の問題点を増幅させる結果を招く。
・なお,汎用機器等の取り扱いは,今後の私的複製における重要な課題であることから,今年以降の私的録音・録画の検討のなかで,十分な検討を行い,結論を得る必要がある。
○現行の対象機器・記録媒体の政令による個別指定という方式に関して,法技術的観点等から見直しが可能かどうか検討する。
・現行制度では2つの問題があると指摘される。1点目は,技術を指定する現行制度は,指定までの時間がかかり過ぎて権利者の補償に欠けることである。2点目は,技術を指定する現行制度は,私的録音録画補償金を支払う消費者には理解できず,制度への理解を妨げる一因ともなっていることである。
・しかし,法的安定性,明確性の観点から,現行の制度の下では,現行の方式を変更すべきではない。
・ただし,機器等の個別指定が技術革新の速度に対応できないという意見や,指定手続を機動的かつ透明性の高いものにすることを前提に,機器等の指定を省令又は告示に委任することも検討すべきとの意見もあった。補償金制度の見直しの際に,併せて検討するべきである。
イ 私的録音録画補償金制度の課題について
(ア)私的録音・録画についての抜本的な見直し
・平成17年1月24日に著作権分科会で示した「著作権法に関する今後の検討課題」や「知的財産推進計画2005」においては,私的複製に関して,それが認められる範囲の明確化などについて検討することとされている。
・本小委員会としては,今回の検討の過程で補償金制度の在り方について様々な問題点や社会状況の変化の指摘があったことを踏まえ,上記「私的複製の検討」では,私的録音・録画についての抜本的な見直し及び補償金制度に関してもその廃止や骨組みの見直し,更には他の措置の導入も視野に入れ,抜本的な検討を行うべきであると考える。
・この私的録音・録画の検討は,実態を踏まえた解決策を見出し,著作権分科会「著作権法に関する今後の検討課題」や,政府の「知的財産推進計画2005」に示されているように,平成19年度中には一定の具体的結論を得るよう,迅速に行う必要がある。
・なお,検討に当たっては,補償金制度に対し,本小委員会において指摘された点や以下の点等について十分留意すべきである。
(i)平成4年の制度導入時においては,国際条約との関連に大きな考慮が払われた。私的録音・録画が今後一層広範かつ自由に行われるような事態となれば,我が国としてはその国際的な責務を十分果たしているか,国際社会から厳しい目を向けられることは必定である。そのようなことから,今後も国際条約や国際的な動向との関連に大きな留意を払いながら,私的録音・録画により権利者の利益が不当に侵害されると認められることのないよう留意する必要がある。
(ii)また「ユーザー」の視点を重視し,提案されるべき将来あるべき姿は,ユーザーにとって利用しづらいものとならず,かつ納得のいく価格構造になるよう留意する必要があるとともに,ユーザーのプライバシー保護にも十分留意しなければならない。
(イ)現在の制度の運用上の改善
・ 私的録音録画補償金制度の当面の運用に関しては,次のような改善を速やかに図る必要がある。
(i)「消費者への理解」に努める。
(更なる広報活動の充実・商品パッケージ記載の充実)
(ii)「共通目的事業」の理念の再検討又は見直し。
■現 私的録音録画小委員会で当初出されていた検討方針
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/020/07042409/005.htm
「私的録音録画問題に関する検討の進め方(案)
(第1回会合配付資料5)」
(文部科学省)
私的録音録画問題に関する検討の進め方(案)
私的録音録画問題を解決するために具体的にどのような方法が考えられるかについて、次の手順に従って検討する。
1.第30条(私的使用のための複製)の範囲の見直しについて
○昨年の小委員会で事務局が提出した「著作権法第30条について(私的録音録画関係)」(参考資料6)及び「著作権法第30条の範囲外とすべき利用形態等について(案)」(参考資料7)に関する議論を踏まえ検討する。
(検討例)
・第30条の対象外にすることが可能な利用形態とは何か。
→昨年の小委員会の議論では、違法複製物、違法サイト(ファイル交換によるものを含む)からの私的録音録画及び適法配信からの私的録音録画については、制度改正に課題が少ないと整理されている。
・第30条の対象外とする利用形態について権利者と著作物提供者や利用者との円滑な契約が可能かどうか
→例えば iTunes のような著作物提供者と利用者との間の契約関係がある有料サービスについては利用者の私的複製の部分も含め円滑な許諾が可能と考えられるが、利用者との間の契約関係のない一般のホームページからのダウンロードや、広告収入により運営している配信サービスについてはどうか。
・違法状態を放置することにならないか
→例えば違法サイトからの私的録音録画を第30条の対象外とした場合、現在の違法サイトの利用状況が変わらなければ違法複製が蔓延するおそれがあるが、これについてどう考えるか。
○なお、私的録音録画問題は、著作権等の権利制限を認めた第30条の範囲内の複製が問題の前提であることから、一定の利用形態が第30条の対象外になれば、その利用形態に関する補償措置の必要性の議論は必要なくなるのは言うまでもない。
2.補償措置の必要性と具体的な対応方法について
(1)著作権保護技術と補償措置の必要性について
○昨年の小委員会で事務局が提出した「私的録音録画に関する補償措置の必要性について(案)」(参考資料8)に関する議論を踏まえ、著作権保護技術の程度と補償措置の必要性の関係について更に整理し、どのような著作権保護技術であっても複製が可能である限り補償措置の必要性が伴うのか、反対にどのような保護技術であれば補償措置の必要性がなくなるのか等について検討する。
○また、昨年の小委員会で事務局が提出した「著作権法第30条について(私的録音録画関係)」(参考資料6)に関する議論を踏まえ、補償措置の必要性と関連して、技術的保護手段の設定について一定の制約を設けるかどうかについても検討する。
(2)具体的な対応方法について
私的録音録画補償金制度による対応
補償金制度による対応をするとした場合、対象機器・記録媒体の範囲、一体型機器の取り扱い、支払義務者、私的録音(又は録画)補償金管理協会のあり方、補償金の額の算定方法、共通目的基金等のあり方、補償金制度の広報等の問題について検討する。
オーバーライド契約その他の方法による対応 第30条を維持したまま、例えば権利者と著作物の提供者や利用者との契約により対応する方法は考えられるか、また、その他の方法により問題の解決を図れる方策はあるのか検討する。 →例えば、CDレンタルについて、レンタル店がレンタル料金に私的複製の部分の対価を上乗せして徴収したり、CD販売について、CDの販売価格に私的複製の部分の対価を含めることは考えられるか。放送については何らかの方策が考えられるか。
本文として、別ブログで詳しく書くつもりではあるが、これまでの検討課題として挙げられたものをまともに議論させず、ただ事務局が思うように小委員会運営が進められていくのであれば、それは権利者・利用者間の合意形成とはとても言えない。
すなわち、私的録音録画小委員会第5回会合をもって私的録音録画補償金の正当性が完全に失われ、もはや従うに値しない利権を生きながらえさせるだけ(しかしユーザーが支払いを拒否することで実質死に追いやることができる)の事態と化すことになろう。
合意形成というものは本来、対立する当事者同士の間でもって共通して持てている認識を特定し、かつ対立点も互いの納得できる落としどころを探ることで(要は双方に妥協する姿勢が必要)可能となるものである。しかし文化庁著作権課(私的録音録画小委の事務局)はそうした理解と納得の段階を踏まず、いきなり自分らの望む「叩き台」とやらを提示し、強引に議論を進めようとした。当然反論が相次ぎ、結局は「そもそも論」での対立に終始したとのことである。
もはや文化庁著作権課にはこの議論の場を仕切る能力が全くないと考えるのが自然であり弁証法的観点からも帰納的である。今期私的録音録画小委員会が開催されるたびに多くの小委員会委員が根幹の議論提示をしたにもかかわらず、作為的に論点として採り上げることをしない(検討方針を示す資料に反映させない)などハナから「結論ありき」の審議会運営を続ける事務局には真摯な姿勢など微塵も感じられない。
文化庁が公平公正な著作権行政を運営するのに適切な省庁であるとは全く言えず、速やかに著作権行政を他の省庁に移管することを「アップル」でなくても強く望むところである。
配付資料等、小委員会での詳しい内容が明らかになり次第、さらなる考察を加える。
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2007.06.13
【資料】貸与権と私的録音補償金
文化庁による解説、および法学者の発言から抜粋。
■文化庁側解説(一般向け)
レンタル業界への規制の新設
──著作者の貸与権の創設等──
著作権法の一部を改正する法律
59.5.25公布 法律第46号
文化庁著作権課 木村豊
(時の法令・通号1238 (1985.2.3))
著作権法の一部を改正する法律が昨年の五月一八日に成立し、本年一月一日から施行された。
今回の改正は、貸レコードなど著作物等の複製物の貸与、音楽テープの高速ダビング業や文献複写業など公衆の使用に供される自動複製機器による複製の規制を中心とするもので、現行法制定以来初めての大改正であるということができる。(中略)
今回の法改正の最大の動機となった貸レコード店は、昭和五五年に東京の三鷹に最初の店が開店して以来、急速に普及し、現在では一九〇〇店をこす状況にあるといわれている。
このように急速に普及した背景には、通常は購入すれば一枚二八〇〇円するLPを平均すれば二五〇円程度で借りられるという安さとともに、家庭内への録音機器の広範な普及から、借りたディスクをテープに家庭内で簡単に録音できるということがある。このようなところから、著作権法で保護している作曲家、作詞家の著作者、歌手等の実演家、レコード製作者の経済的利益に影響を与える問題としてクローズアップされてきた。
更に、音楽テープを貸し出して、店内でダビングさせるレンタル・ダビング併営店が出現して、このことも権利者に大きな影響を与える問題となってきた。
このような背景の下に、文化庁においては五八年一月に、これらの著作権法の改正のための当面の緊急課題についての検討を著作権審議会にお願いし、同年の九月にその審議結果を得て、それを踏まえて今回の法改正が行われたものである。
著作権法を知る=15=
私的録音・録画問題
文化庁文化部著作権課 井上明俊
(時の法令・通号1283 (1986.6.15))
多くの人々は、ラジオ放送から流れてくる音楽を録音し、あるいはテレビ放送から好きな映画を録画し、または友人や貸レコード店からレコードを借りてテープに録音した経験を持っているであろう。
この行為は、著作権法上、「複製」に該当するため、著作権者に許可なく行うと、本来は著作権侵害になるものである。しかし、著作権法には第三〇条という規定が設けられており、著作物を個人的又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とする場合には、自由にこれを行えることとされている。したがって、この限りにおいて、著作権は制限され、人々は著作権者の許可なく音楽をテープに録音することができるのである。
現行著作権法の仕組みはそうなっているが、よく考えてみると、我々の生活はひと昔前と違い、あまりにも容易に私的録音・録画をすることができるようになっている。ほとんどの家庭にはラジカセ、ステレオセットなどの録音機器があり、ビデオテープレコーダも急速に普及しつつある。録音・録画用テープは安く入手できるし、エアチェック番組が一目でわかる雑誌も多数販売されている。
現在、膨大な量の私的録音・録画が行われていることが予想されるが、その一方で、著作権法の基本に立ち返り、他人の知的創作活動の成果を自由に利用してよいのか、例えば、レコードを買う代わりのダビング行為などはレコードの販売量がそれだけ現象することは明白であり、レコード製作に寄与した作詞家、作曲家等の著作権者、歌手・演奏者、レコード製作者等の著作隣接権者に対し、なんらかの手当をしなければならないのではないかという問題が浮かび上がってくる。
■法学者による理解
山積する音楽著作権問題のゆくえ
カラオケ、CDレンタル、私的録音・録画を中心に
青山学院大学教授 半田正夫
(法学セミナー 1992.4 [No.448])
現在、CDレンタルショップは全国で五六〇〇店舗といわれている。登場したのが昭和五五年であるから、いかに急成長したかがこの数字によって明らかである。一枚二〇〇〇〜三〇〇〇円もするCDを購入することは小遣いの少ないヤングにとっては大きな出費となって容易に手が出ないが、レンタルショップを利用することにより、三〇〇〜四〇〇円のレンタル料で借り出し、これを自己所有のオーディオ機器で録音して自分のものとすることができる。録音といっても最近のオーディオ技術の急速な進歩により原盤と音色がほとんど変わらないからこれで十分で、とくに買う必要をみないし、飽きたら消去してまた録音すればよいという利点もある。これがヤングの間に絶大な人気を得るにいたった理由でもある。だが、このようなレンタルショップの急成長に伴い、CDの売り上げが激減し、このためレコード小売店の経営が困難となるという事態が生じてきた。そして影響はひとり小売店のみならず、作詞家・作曲家などの著作権者や実演家・レコード製作者などの著作隣接権者にも多大の影響を与えることとなった。 そこで、これら権利者は立法運動を展開し、その結果は昭和五九年の著作権法一部改正によって達成されるにいたった。
著作権法三〇条は、私的使用のため著作物を録音・録画することは権利者の許諾を要することなく自由に行うことができるとしている。ところが、録音・録画機器の開発・普及に伴い、エア・チェックなどの方法により、家庭内において録音・録画が盛んに行われるようになり、権利者側に対してなんらかの補償措置を考慮すべきではないかとの考えが登場するにいたった。(中略) 利用者による録音・録画の入手源はレンタルショップからの場合とエア・チェックの場合とが二大入手源といってよいが、前者の場合、貸与権が認められたことによってレンタル業者は報酬を権利者に支払っており、業者はこれをレンタル料に上乗せしてユーザーに転嫁しているはずである。ところが右の報酬請求権制度の導入が行われれば、これとは別に機器メーカーの支払った分がユーザーに転嫁されるのであって、結局ユーザーは二重払いさせられることになりはしないかという問題など、なお解決すべき問題も多く、今後の動向が大いに注目されるところである。
私的録音と補償金請求権
──新制度の誕生と法的問題点──
半田正夫
(法曹時報四五巻一〇号〈平成五年一〇月一日発行〉所収)
ところで、近年における録音技術の急速な進展に伴い、高性能を有する録音機器が低廉な価格で出回るようになり、家庭内に急速に普及・浸透してきている。その結果、CDレンタル店や友人から借りたCDやラジオから流れる音楽を自己所有の録音機器で録音して自分のものにしてしまい、その影響でCDの売行き定価し、著作権者(作詞家・作曲家)や著作隣接権者(レコード製作者・実演家)の収益に多大の不利益をもたらすという現象が発生してきている。そこで、私的使用のための複製の自由の制度を維持しながらも、権利者の経済的不利益を解消させるためのなんらかの方策が必要となってくるが、これを実現したのが、平成四年一二月一六日に成立した著作権法一部改正法である。この改正はドイツにおいて一九六五年以来採用されている方式を基本的に採用したものであるが、従来の著作権法の理論に転換を迫る部分もあるため、なお検討すべき多くの問題をかかえているといえる。
利用者が著作物を録音・録画する際に録音・録画の入手源をどこに求めるかについては、CDレンタル(映像についてはビデオレンタル)とエア・チェックとが二大入手源といってよい。前者については、貸与権(映像については頒布権)が認められたことによってレンタル業者は報酬を権利者に支払っており、業者はこれをレンタル料に上乗せしてユーザーに転嫁しているはずである。ところが今回の立法によれば、これとは別に機器・記録媒体メーカーの支払った分がユーザーに転嫁されるのであって、結局ユーザーは二重払いさせられることになってしまう。この不公平さを是正するためのなんらかの方策が必要となりはしないか。
[座談会]私的録音・録画と報酬請求権
(ジュリスト 1993.6.1 (No.1023))
日本音楽著作権協会理事長 石本美由起
文化庁文化部著作権課課長補佐 関裕行
日本芸術文化振興会理事長 加戸守行
全国地域婦人団体連絡協議会事務局長 松下直子
〈司会〉筑波大学教授 斉藤博
斉藤 (中略)昭和五九年に、貸しレコードにつきまして、法的な対応がなされました。貸レコード問題は昭和五八年の暫定措置法あたりから考えますと、実質上は複製権の問題でもあったわけです。私的複製といいますか、それの一角を貸しレコード問題の解決という形で処理したと考えることもできるわけです。建て前からしますとそういうことは決してないとお叱りを受けるかもしれませんが、実質上は私的録音・録画問題の一角について、法的な手当てをしたと評価できるようにも思います。そうでございますと、私的録音・録画問題につきまして、長い間、法的な対応を何もしなかったというわけではないようにも思いますが、いかがでしょうか。
加戸 (中略)貸しレコードが問題になったときも、実は家庭内録音の相当大きな共犯者だという発想が強かったわけです。そういった点では、制度的には私的録音とは区別してありますが、実体的には法改正に至った原動力というものは私的録音・録画の問題が底流にあったということは否定できない事実であり、かつ当時貸しレコードが国会で議論になった際も、私的録音・録画の問題を解決すべきであって、そちらのほうがもっとより根元的な問題ではないか、という議論は確かにありました。ただ客観的状況として、当面貸しレコードに対する問題をどう処理するかということで、当時法改正をしたのはやむを得ない措置だったと思っています。貸しレコード屋さんはホームテーピングの責めもだいぶ負った形で当時対応されたかと思います。
CD等のレンタルと著作権問題
青山学院大学教授 半田正夫
(法律のひろば 1992.2)
レコード(CD、テープを含む。以下同じ)のレンタルショップが登場したのは昭和五五年東京武蔵野市においてであるが、その後急成長し、同五九年には一八〇〇点、同六〇年には三〇〇〇点に達し、現在では全国で五六〇〇店舗、八〇〇億円市場と言われるまでに発展している。
このような急成長を遂げるにいたった原因には、次の二つが考えられる。一つは、ヤング層の絶大な支持を受けたことである。お小遣いの乏しいヤングにとっては一枚二〇〇〇〜三〇〇〇円もするCDを度々買うことはできないが、レンタルショップを利用すると、三〇〇〜四〇〇円で借り、これを自己所有のオーディオ機器を使用して録音することにより自分のものとすることができる。どうせ曲のはやりすたりは激しいからとくに買う必要はなく、何回も聞いて飽きれば消去して、また新しいCDを借りればよい、というのがヤングの考え方である。オーディオ技術の急速な進歩によって原盤と音色のほとんど変わらないテープ録音が可能になり、この性能のいいオーディオ機器が家庭内に普及していることが、レンタル利用現象に拍車を駆けているといってよい。二つは、レンタルショップの利用が当初、合法的な行為であったからである。市販されているレコードを購入してこれをレンタルに回す行為は──レンタルショップが登場した当時には現在のような貸与権が著作者に認められていなかったから──著作者の許諾を得る必要はなかったし、また利用者が借りたレコードを録音しても、私的使用のための録音は複製権の侵害とはならない旨の規定が置かれているため(著三〇条)、これまた適法であり、レンタルショップ利用のどこの段階にも違法な行為は存在しなかったのである。
このようにしてレンタルショップは急成長をとげたが、これによって直接打撃を受けたのはレコード小売店であり、さらにレコードの売上の定価によって作詞者・作曲家などの著作権者や実演家・レコード製作者などの著作隣接権者にも多大の影響を与えることとなった。そこでこれら権利者は自己の財産的利益の確保を目指し、立法活動を展開するにいたった。
私的録音録画補償金制度における製造業者等の役割
岡山商科大学教授 阿部浩二
(コピライト 1998.6)
カラオケの経営者の場合と同じく、貸レコードの経営者も借主が借りたレコードを録音することを知りながら、レコードを貸すので、これも、貸レコード業者の貸与と借主の録音を一連の連続する行為と捉え、貸与をもって借主の録音行為と同視することができるのではないかと考えることができます。このように、密接に関連する2つの行為を連続して捉えるという考え方には、前に述べたカラオケ事件や、酌婦稼働を訳する契約と密接なkねかいがある前借金に関する消費貸借を無効とする最高裁判決(昭和30年10月7日)や、制定法では、割賦購入あっせんにかかる商品に欠陥があるときに、あっせん業者に代金を支払うにつき対抗できるという抗弁権の連続を想定する割賦販売法の30条の4にみられる考え方であります。私的録音録画の問題でも、そのための機器等の提供と一連のものとして捉え、提供者であるメーカーに録音録画のために生じる権利者の不利益をカバーする何らかの役割を期待できるのではないかという発想であります。
しかし、貸レコード業者の貸与と借主の録音録画を連続的に捉え、貸与をレコードの複製と同視し、レコードの貸与を複製権の侵害とみることは理論的にあるいは可能かもしれないが、貸レコード業者に対し複製権の侵害を理由に貸与の差止めと損害金支払請求の訴訟を提起しても解決までには時間がかかるだろうというわけで、皆様もご承知のように、レコード協会その他の方が大いに運動して、議員立法で「商業用レコードの公衆への貸与に関する著作者等の権利に関する暫定措置法」が昭和58年に制定されたのであります。
貸与権という新しい権利を創設してしまいましたので、そうしますと、少なくとも貸レコードについては「連続性」という考えは不要となりますし、むしろ、連続性という考え方に対し、否定的な印象さえ与えられたのであります。ホームテーピングは別であるといえないことはありませんが、やはり一歩下がって考えざるを得ないという感じを私はもったのであります。かくして登場するのが、報償責任の考え方であり、それが、著作権法104条の5に結実するのであります。
■おまけ
私的録音録画補償金創設にかかる議論に参加していた人物の証言。
「私的録音・録画問題とその周辺(2)
貸レの出現と懇談会の見識」
(社)日本電子機械工業会 著作権委員会
委員長 野田 康正
(「電子」 1992・9、 31ページより)
著作権法に貸与権が織り込まれたことで、文化庁はCD1泊2日の著作権使用料を 70円 と決めた。市価 2,500円 ないし 3,000円 もするCDが貸レコード店で1泊2日 250円 前後で借りられることは、ことに若年層 (15-25歳 までぐらいの中高大学生)には大きな魅力となったものの、3割以上が著作権使用料となる料金の設定について高すぎるのでは、との声が貸レ業者のみならず、権利者や文化庁などの関係者にもあがった。結局「‥‥ホームテーピングされていることもあるから‥‥」ということで決着した。
当時、日本レコード協会の調査によれば、貸レ利用者の 90% 以上が借りてきたCDやレコードからホームテーピングしている実態をあげていたこともあり、高い料金の設定に踏み切った。この著作権使用料は法施行6年後の 1991年 (平成3年)には 100億円 を越える大きな金額が貸レコード業者から著作権者側に支払われている。
■おことわり
本記事での引用は、以下の記事で論じるために行なったものです。
http://himagine9.cocolog-nifty.com/watchdogs/2007/06/post_e58e.html
「レンタルCDにかかる『二重徴収』が否定された日」
(エンドユーザーの見た著作権)
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【資料】貸与権と私的複製は国会でどう議論されたか
国会会議録より抜粋。
なお引用部での下線は引用者による。
■第九十八回国会・衆議院・文教委員会
商業用レコードの公衆への貸与に関する著作者等の権利に関する法律案審査小委員会
昭和五十八年五月十一日(水曜日)
○石橋(一)議員 商業用レコードの公衆への貸与に関する著作者等の権利に関する法律案でありますが、先般提案理由の説明はいたしたわけでありますので、この法案の提出に至るまでの経緯あるいは問題点等、きわめて率直に申し上げ、御参考に供したいと思います。
まず第一点は、貸しレコードの実態とその影響でありますが、商業用レコードを販売価格の大体七%前後で公衆に貸与することを業としているもの、いわゆる貸しレコード業でありますけれども、昭和五十五年の六月ごろ東京三鷹で出現をしまして以来、全国的に急速な普及を見まして、日本レコード協会の調査によりますと、五十六年六月で全国で約五百店、同年の十二月で約九百三十店、現在は千七百店舗あると言われております。
日本レコード協会が昭和五十六月九月に実施した実態調査によりますと、貸しレコード利用経験者のうち、貸しレコードからテープで録音をしたことがある者は九七・四%にも達しております。また、通産省が昭和五十六年度に実施した実態調査、あるいは日本レコード協会の調査によりますと、貸しレコード店の近所の小売屋さんの売り上げは、平均二割から三割ぐらいの減少を来しております。 (中略)
このようなことがあって、わが党は昨年の二月に文教部会の中に著作権問題等プロジェクトチーム、森喜朗主査、前の文教部会長でありますが、これを設置いたしまして、貸しレコード問題を含む著作権問題の検討を行うことといたしました。同プロジェクトチームは三月四日以来十回の会合を開きまして、関係団体、学識経験者の意見を聴取するなどいたしまして慎重に審議を進めました。
この際、貸しレコード問題に対する関係団体の意見は、このような意見の開陳があります。
日本音楽著作権協会でありますが、貸しレコードについて権利者に何らかの権利を認めることにより権利者の保護を図りなさいということです。
それから日本レコード協会は、貸しレコードは音楽創造のサイクルを破壊するものであり容認できませんということであります。特例法の制定または著作権の一部改正によって、商業用レコードの著作者の権利にはレコードを業として賃貸の用に供する行為を禁止する権利が含まれていることを明文化してくれ、こう言っております。
それから日本芸能実演家国体協議会でありますが、これは貸しレコード業を規制をしてくださいと言っております。
それから全国レコード小売商組合連合会でございますが、使用料を徴収して貸しレコードを公認することは音楽文化の衰退につながります、有償、無償を問わずレコードを公衆に貸与する行為を禁止をしてくれと言っております。
それから日本レコードレンタル協会でありますが、これは、貸しレコード業は音楽産業の底辺を拡大し、その発展に貢献するものであるので、その保護育成を図ってください、さらに協会としては、コピー文化に携わるすべての業者との協議の上で権利者に利益を還元する考えも持ち合わせております、こういうことを言っております。
そこで、提案の理由でありますけれども、著作権問題等プロジェクトチームにおきましては、このような慎重な検討を進めた結果、第一は、著作者、実演家、レコード製作者の保護の観点から、貸しレコードが及ぼす影響をそのまま放置することはできないという判断をまずしました。
(中略)この法案は第一条にも規定しておりますように、商業用レコードの公衆への有償貸与行為に関し著作者、実演家、レコード製作者に権利を認め、これらの者の複製権または録音権の保護に資することを日的といたしておるものでございます。貸しレコードの場合、利用者の多くが私的録音を行い、そのためにレコードの売り上げが減るという実態があるので、貸与行為によって経済的損害を受ける著作者、実演家及びレコード製作者に新たな権利を認めることによりその保護を図ろうとするものであります。
■第百回国会・参議院・文教委員会
昭和五十八年十一月二十四日(木曜日)
○吉川春子君 (中略)いろいろな経過はあるにしても、今後ますます録音テープによる録音というようなこと、録画というようなことはふえる傾向にあると予想されますし、同時に、こういうものを大量に取り入れなければ貸しレコード業界としてもやっていけないという側面もあるというふうな意見も私ちょっと聞いておりますが、そこで、録音、録画機器に対する賦課金制度について、外国等においてはすでにやられている国もあるわけですけれども、この点についてわが国でも早急にこの制度を求める必要があるというふうに私は考えますけれども、そういう制度を設けることを考えておられるのかどうか。もし考えておられるとすれば、どの程度までその作業が進んでいるのか、それをお伺いいたします。
それで質問は終わりです。
○政府委員(加戸守行君) 私的複製に係りますその録音、録画問題でございますが、すでに五十六年の六日に著作権審議会第五小委員会の報告をちょうだいしておりまして、この問題に取り組む必要性が指摘されると同時に、国民の間におきます法意識を徹底させること、あるいは関係団体の、関係者間におきます合意の形成に向けての努力をすべきことという御指摘がございまして、そういった小委員会報告を受けた形でございますが、現在、昨年の二日に著作権資料協会の中で著作権問題に関する懇談会、いわゆる民間の機関といたしまして、関係団体の専門家あるいは学識経験者等をもって構成されます著作権問題懇談会で、この録音、録画機器に関します問題を中心とした私的複製の問題についての話し合いが進められているところでございまして、この懇談会の一応の考え方を受けまして、文化庁としてもこの私的複製の問題に抜本的に取り組む必要性があることを認識している次第でございます。
なお、今回の著作権審議会の第一小委員会報告におきましても、最終的な付言でございますが、この家庭内における録音、録画問題についての抜本的解決を図るため、制度面での対応が早急に必要であるという点については異論がないという御指摘もございますし、この御報告を直接体しまして努力を続けたいと考えている段階でございます。
■第百一回国会・衆議院・文教委員会
昭和五十九年四月二十五日(水曜日)
○木島委員 貸しレコード問題というのは何が問題なんですか。賃貸が問題なんですか、コピーが問題なんですか。
○加戸政府委員 昨年、当委員会で御審議願いました貸しレコード暫定措置法の考え方といたしましては、レコードの貸与がイコール複製に結びつくということで、貸与行為について許諾を得なければならない相手方を複製権者といたしまして、そういう理論構成をとっているわけでございます。今回の著作権法一部改正案におきましては、著作物の複製物の貸与それ自体を一つの独立した有力な経済的利用行為であるという観点に立ちまして、貸与そのものの経済的性質に着目して権利を設定するという考え方をとったわけでございます。 ただ、実際問題といたしましては、この貸しレコードの発端は、暫定措置法の考え方にもあらわれておりますように、貸されることによって借りた人が家庭でコピーをとられるという結果を招来し、結果的にはレコードの売り上げ波あるいは著作者、実演家等の経済的損失に結びつくという考え方であったわけでございまして、発想としてはそういった趣旨に基づいたものではございますが、理論構成といたしましては、先ほど申し上げましたように、貸与そのものについての経済的な利用行為に着目した法体系としているわけでございます。
○木島委員 そこが許諾権と貸与権の違いだ、暫定法と新しい法律、この改正法とで変えたところの理由はそういう意味ですか。今おっしゃったような理由ですか。
○加戸政府委員 法律的な性質といたしますれば、ただいま申し上げたような考え方の相違があるわけでございます。ただ、実態的には、今回の著作権法一部改正案は暫定措置法で盛られました内容を実質的に踏襲いたしまして、ほぼそれと同じような仕組みで実態的な効果が生ずるような形での立案をしたわけでございます。理論的には先ほど申し上げたような違いがあるということでございます。
○木島委員 暫定法、コピーと絡むということでしたよね。コピーが絡むということは三十条との関係。これをコピーするのは大体個人ないし家庭内ですよね。とすれば、これは三十条の関係では、暫定法ではこれは関係ないわけでしょう。したがって、貸与権というものを新しい改正案では考えたということじゃないのですか。
○加戸政府委員 先生おっしゃいますように、暫定措置法に基づきまして貸与についての許諾を得なければならない規定がございますが、そのことによって借りて帰った人が家庭でコピーすることにつきましては三十条の規定に該当いたしまして、一応著作権法上はセーフになっているわけでございます。その考え方は、今回の著作権法一部改正案におきましても、家庭でコピーすることはセーフでございますが、貸与そのものについての権利を動かす。暫定措置法の考え方は、先生おっしゃいますように、家庭へ持って帰ってコピーするのはセーフだけれども、しかし、そのことによって損害を受けるのだから、やはり貸すことについてはコピーすると同様な効果を生じさせているという実質的な理由に基づいた考え方が暫定措置法であったと理解しております。
■第百一回国会・衆議院・文教委員会
昭和五十九年四月二十五日(水曜日)
○木島委員 貸しレコードと貸し本と、歴史的なことはあるけれども、権利の保護という点ではまさに同じですよね。いろんな事情はあるかもしれないけれども、権利は権利としてきちっと認めるということが必要だと思うのです。これは、そういう意味では認めておると解釈してよろしゅうございますね。
○加戸政府委員 今回御提案申し上げました著作権法一部改正案の中では、附則の四条の二を設けまして、貸与権の規定は、書籍または雑誌の貸与については当分の間適用しないといたしておりまして、貸し本業は当分の間許容するという立て方をとっておるわけでございます。先生御指摘のように、原理的には著作物の複製物の貸与でございますから、レコードであろうと古本であろうと同じでございます。
ただ、このような外し方、当分の間除外いたしました理由といたしましては、貸し本業というのがここ百数十年の間延々と伝統的に続いてきた事業であるということが一つ。それから、貸し本自体のレンタル料というのも今それほど高くなくて、かつ貸し本業によって膨大な経済的な利益を得ているという実態にもない。それから、貸し本を借りた人が持って帰ったものをコピーすることによって本の売れ行き、発売が落ちたというような状況ではなくて、貸しレコードの場合には、御承知のように家庭でコピーをいたしますものですから、レコードの発売枚数が当然落ちてまいる、売り上げが落ちてまいるという相関関係もあるわけでございます。そういった諸般の状況を踏まえまして、もう一つには、貸し本について権利を及ぼした場合の権利の処理の仕方について、例えば日本音楽著作権協会のような形で、書籍に関します、あるいは雑誌に関します文芸、学術その他の権利者団体を統括した集中的権利処理機構が存在して、そこと契約すれば月決め幾らで貸し本業が営めるというような契約体制を整えるというのにいたしますには、まだ現状は整備されていない。そういうような状況を踏まえまして、当分の間、貸し本については適用除外するという考え方をとっているわけでございます。
■第百一回国会・衆議院・文教委員会
昭和五十九年四月二十七日(金曜日)
○佐藤(徳)委員 (中略)御承知のとおり、レンタルが出店をいたしましたのが五十五年六月ですね。以来、通産省が五十八年八月現在で調べた状況によりますと、千九百十店にまで増加をしているわけであります。大臣の提案理由の中では千九百軒とありますけれども、恐らく今日の段階では二千軒に達しているのではないかと推定されるかと思うのであります。
そこでお尋ねいたしたいと思いますのは、提案理由の中には、こういうレンタル業者が増加をしたために云々とこうあるわけですけれども、そういう関係でお尋ねをしたいと思っています。レコード会社の売り上げの状況をその意味で知りたいのでありますが、文化庁は実際の売り上げの状況をどのように把握されておりますか、お示しください。
○加戸政府委員 貸しレコード業が出現したことと直接の結びつきがあるかどうかというのは、これは大変難しい問題でございますけれども、少なくとも貸しレコード業が出現いたしましてから五十六年、五十七年にかけまして二年間連続、レコードの売り上げが減少したということは状況としてあるわけでございまして、そういう意味で、どの程度の影響が貸しレコードに起因するものか、あるいはレコードに対する消費離れなのか、その辺は分析することは極めて至難のわざであろうかと思います。
しかし、特に貸しレコード業種というのが、丸いディスクを使いましてレンタルするケースが極めて高いわけで、それをテープにとるわけでございますけれども、ディスクそのものの売れ行きあるいは売上額というのが年々減少しているという点から見ますと、ディスクのレンタルが貸しレコードの中心であるという点を考えると、ある意味の相関関係があるのではないかという推測はつくわけでございます。
○佐藤(徳)委員 提案理由の中には、断定はしておりませんけれども、いささかそのように受け取れるような文言がありますので、そういう意味でお尋ねをしたわけであります。
売り上げが減少してきている、特に五十六年、五十七年が減少しているというお答えでありますけれども、それでは、権利者に一体どれだけの被害になっているのか、数字がわかればひとつお示しいただきたいと思います。
○加戸政府委員 これも極めて難しいわけでございまして、レコードの売り上げが減少した分イコール、言うなれば著作者側にとってみれば録音使用料の収入が減ったと理解するのか、あるいはもっと伸びるべかりしものが減っているのか、横ばいのはずのが減っているのか、その辺の分析も不可能でございますが、要するに、潜在的にどれだけの経済的利益を得べかりしものが減少したのかということ、これも証明が極めて困難でございます。ただ、申し上げられますことは、五十六年度、五十七年度におきまして、今申し上げたレコードの売り上げの減少に伴いまして、音楽著作権協会に入る録音使用料も連動して減少しているということだけは申し上げられるわけでございます。
○佐藤(徳)委員 数字を集約するのはなかなか難しい状況だなというのは私も理解できますが、いずれ文化庁はそれを手がけてみたらどうかと思うのであります。
■百一回国会・衆議院・文教委員会
昭和五十九年四月二十七日(金曜日)
○江田委員 (中略)最初に、レコードレンタルというものを一体どう見るかということなのです。これも大臣の方からもお話がありましたが、私は、これは一つの新しい文化の形なのかなという気がするのですね。(中略)しかし、違っているからというので、古いなとか、おまえらなんか昔を知らぬなと言われたのではどうしようもないわけで、お互いにそれぞれの違いを認識しながら同時に理解をし合うということが必要ですが、どうも今の音楽文化の中に二つのものが混在している。あるいは二つ以上のものが混在しているのかもしれませんが、一般に伝統的な音楽文化ということになると、やはり送り手がプロフェッショナルで磨き抜かれて、すばらしい音楽をつくるためにそのことに生涯をかけてがんばっていく。受け手はそれを本当に良好な環境で静かに、私は受け手でございますと、それこそ赤ちゃんがきゃっと言ってもいけない、げたの音がコロッといってもいけない、そういう環境のもとで聞きたい。そういうものからだんだん変わって、受け手の方もある種の参加をしていきたい。今度送り手の方も、ある種の科学技術の発達などに伴って、単に送り手としてのプロフェッショナルという性格がだんだん薄れてきていますね。そして、そういう中で、例えばカラオケの中から歌手が出てくる。まあカラオケなんかは一つの新しい文化の芽のあらわれかもしらぬが、そういうものとしてレコードレンタルも、コピー文化という言い方だと何となく軽薄な文化というような語感が伴いますけれども、そういう新しい科学技術の中で新しい文化の形ができつつあるのかなという感じがするのですが、文部大臣のその辺の感触をちょっとお伺いしたいのです。
○森国務大臣 先ほど馬場さんの御質問の中でも申し上げたのですが、一枚のLPレコードを静かな環境で、それこそ自分の吸うお茶の音も遠慮しながらじっと聞いていく、こういうファンもいる。しかし、若干は音質が悪くても、ヘッドホンか何かで喧騒のソウルなどを聞いて体を一緒になって動かしていく。これはもうそれぞれ、音楽を愛する一つの所作だろうと思うのですね。どれがよくてどれがいけないということはない。質が若干悪くでもできるだけ安く手に入れて、自分の好きな曲をテープにとって、いつでも好きなときに、場合によっては歩きながらでも聞く、そういうことを若い人たちは好む。しかし、それは非難はできないと私は思うのです。いずれその子たちも、また年齢とともに、音質の全く狂ってない、いいレコードを静かに聞こうという気持ちにだんだんなっていく。そういう意味で、若い世代の皆さんがレンタルのレコードを利用してお互いにテープを回し、聞きながらやっている、それは私はある意味では生活の知恵だと思いますが、もう一つは、将来音楽を支えてくれるファンの拡大、ちょっと言葉は悪いのですが、その予備軍を形成していくことになるのではないか。僕はそういうつもりでこの問題に対応したのです。
(中略)レンタルレコードを利用していこうという若い人たちもやはり音楽文化を大変に愛してくれる人たちであるから、大事に大事にしていかなければならぬ、こういうふうに受けとめて私は今日まで来ておるわけでございます。
■第百二十五回国会・衆議院・文教委員会
平成四年十一月二十六日
※真鍋光広 委員 × 斉藤博 (著作権審議会委員)参考人
○真鍋委員 (中略)例えば貸しレコードの話でございます。これについては、貸しレコード店から借りた方、ユーザーといいますか消費者といいますか、その方々が録音するだろうということを前提にして貸しレコード店では一回貸すごとに五十円でしたか何円でしたか、著作権使用料ということで徴しておるわけですね。それとのかかわりというのは、考えてみると、ある意味では同じユーザーに対して二度取りをしておる、段階を違えて二度取りをしておる、こういう物の考え方もできるかと思うのですが、そのあたりについてはどう考えておられるのか、どう整理しておられるのか、少しお伺いしたいと思います。
○斉藤参考人 お答え申し上げます。
非常に鋭い御指摘でございます。確かに、貸しレコード業が出現しまして、これに法的な対応をいたしたわけでございますが、その際、貸しレコード業の実態を見ますと、ただいま御指摘ございましたように、借り出したユーザーが家庭等で録音をして返してくる、これがこういう御商売の、例外もございましょうが、一つの前提であったと思います。(中略)
こういうときに法的な対応ということになりますと、建前としましては、貸与に対する使用料ということでございますが、どうも当時の状況を考えますと、私的な複製とセットになった行為、何らかの形でこれに対しまして権利者を保護する、保護の道を考える、こういうことであったかと思います。貸しレコードへの対応というのは、実際的なことを申し上げますと、私的録音・録画問題の一部を解決したのではないか、このように個人的には思っております。
※平田米男 委員 × 斉藤博 参考人──
○平田(米)委員 先ほど真鍋先生が聞かれた点でございますが、ちょっとよくわからなかったので確認をさせていただきたいと思いますが、貸しレコードの点については、今後ディジタルで録音をする場合は、補償金といいますか、著作料の二重取りになるのではないかという御指摘があったのですが、もう一度それについてお答えをいただければと思うのです。
○斉藤参考人 お答え申し上げます。
実質的には重なる部分があり得るかと存じます。しかし、実際に今回の制度を運用するに際しまして、補償金の額をどうセットするか、こういう問題がやはり絡まってくるわけでございまして、ただいま示されているような案でございますと、かなり低く抑えています。こういうところで具体的に調整していくのではないか、このように思っております。
■おことわり
本記事での引用は、以下の記事で論じるために行なったものです。
http://himagine9.cocolog-nifty.com/watchdogs/2007/06/post_e58e.html
「レンタルCDにかかる『二重徴収』が否定された日」
(エンドユーザーの見た著作権)
投稿:by 暇人#9 06:35 午後 [ユーザーと著作権, 著作権行政 watch, 音楽業界の愚行] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
2007.06.08
知的財産推進計画 2007 からピックアップ
自分としては(アップルに新たな動きが無いかぎり)知財推進計画 2007 関連の話題はこれで打ち止めにしたいところであるが──
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keikaku2007.html
「知的財産推進計画2007の策定」
(首相官邸:知的財産戦略本部)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/070531/060531keikaku.pdf
「知的財産推進計画2007」
(首相官邸:知的財産戦略本部・ PDF)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/070531/060531siryou.pdf
「知的財産戦略の進捗状況
知的財産推進計画2007 参考資料」
(首相官邸:知的財産戦略本部・ PDF)
私が追いかけている著作権行政においては、だいたい文化審議会著作権分科会(およびその小委員会)で議題として既に挙げられているものが知的財産推進計画に反映されることとなっている(どちらが先かというのは、鶏か卵かみたいな話になるんだが)。つまり著作権分科会で動いている範囲内の表現となっていることが多い。
最近は結論をぼかし「検討する」「必要なときは法整備を実施する」などの表現が多く使われる。しかし一定の方向性を考えていないのであれば そもそも知的財産推進計画に載せる必要が無いのであるから、法規制に触れた項目がここに掲載された時点で行政側は規制へと舵を切り出しているとの認識でいることが肝要だろう。
その意味では、著作権行政によって国民生活(あるいは著作物利用者の文化的活動)が脅かされる危険性はかなり強まっていると言える。ことは保護期間延長問題や私的録音録画補償金問題に限られたものではないのである。
ともかく、私が「知的財産推進計画 2007」 に目を通したとき気になった項目をピックアップしてみる。独断と偏見により選んだものだが、ここで選から漏れたものについても重要なものがたくさんあるので、一度は目次に目を通し 気になる項目をチェックすることをお勧めする。
※うちにブログを継続的に読んでくれている方にはお判りかと思うが、一応。
私は、法律関係について ずぶの素人である。単純に、個人的感覚を(なるべく)論理的に検討した結果を文章にしているだけで、決してこれが最終的な結論というわけではない。現時点の私では知らない事実関係や、あるいは論理的間違いの指摘などを受け、私の見解が今後変化していくことは十分あり得る(というか〈絶対に〉あるだろうな)。
「エンドユーザー」の視点を標榜し(要は開き直って)やっていることなので読者諸氏には批判的にお読みいただくことを推奨したい。私としては、自分の考えが他人に影響を与えることよりも、皆さんが考え発言していく機会になることの方が嬉しいので。生活者の視点がもっと著作権を巡る議論に反映されるように‥‥。
もちろん私は今以上の勉強を己に課すつもりで(笑)。
【ノンブル5ページ】
※「知的財産推進計画2007」の策定に当たって
3.「知的財産推進計画2007」の基本的考え方
さらに、本計画の策定に当たっては、2007年2月に知的創造サイクル専門調査会(阿部博之会長)から、2007年3月にコンテンツ専門調査会(牛尾治朗会長)から、それぞれ報告を受けるとともに、国民やユーザーからパブリックコメントなどを通じ意見を聴取した。
▲ 今年3月に実施された意見募集については、この「知的財産推進計画 2007」 の公表と同時に結果が明らかにされた。すなわちインターネットで公表されたのは 2007年5月31日。
しかしながら「〜意見募集の結果について」という文書は 「2007年4月17日」 との日付が記されており、先の事実とは食い違っている。例年は本部会合や各専門調査会で資料として配付し委員らが(最低限、概要だけでも)目を通す手順になっていただけに、今回の推進計画策定にパブリックコメントがどう使われていたのか明らかでないという異常さが際だっている。
形だけでも意見募集を行なっておき(ガス抜き?)、知財推進計画策定は手前らで勝手に進める。これが「美しい国」の正体かもわからんね。
【ノンブル14ページ】
※重点編
2.知的財産の保護
II. 模倣品・海賊版対策を強化する
(2)個人輸入等の取締りを強化する
2007年度は、税関が知的財産侵害疑義物品を発見した場合、その多寡にかかわらず、原則として認定手続を執ること等を明確化した改正通達に沿って、税関は水際における取締りを強力に推進するとともに、侵害認定について、状況により専門委員制度を活用する等、厳正化を図る。また、必要に応じ、模倣品・海賊版の個人輸入・個人所持の禁止について更に検討を行い、 新法の制定等法制度を整備する。
(警察庁、法務省、財務省、文部科学省、経済産業省)
(3)インターネットオークション上の模倣品・海賊版の取引を防止する
i) 著作権法において、インターネットオークションへの出品など海賊版の広告行為自体を権利侵害とすることについて、2007年度中に検討し、必要に応じ法制度を整備する。
(警察庁、法務省、文部科学省、関係府省)
▲「海賊版」取締りに名を借りた過剰規制の危険に注視すべし。
個人所持の禁止など、市民生活に混乱をもたらす以外の何物でもない。また「広告行為」を禁止するにしても(インターネットオークションへの海賊版の出品をオークションサービス事業者が削除していくことを目的に必要最小限の範囲で行なう限りにおいては、この「広告行為」規制は正当化され得ると思う)、この「広告行為」の定義をきちんとしなければ言論を萎縮させることとなろう。「広告」の定義については意匠法などの先例もあるから問題ないものを定めるのも可能ではあるだろうが(間違っても「広告」と規定させてはならない)。
刑事罰であれば「故意」の存在が要件となり、また法規制としては「情を知って」などの要件が付くことにはなるだろう(そのように構想が語られる)。しかしこれによって我々が危惧するような副作用を防止できるだろうか? 否、模倣品の場合には真性品を買う必要を感じていない「模倣品」所持者が対象となってしまいかねないし、海賊版であれば正規流通で入手困難なものを無理にでも入手した所持者が対象となってしまう(たとえば他人の私的複製物を借り受け複製する場合など)。程度問題かも知れないが、〈自分にブランドは必要ない、模倣品であっても使う分には変わりない〉〈海賊版でないともはや入手できない〉場合において「情を知って」いると考えられる状況も決して少なくはない。
現行の正規流通が需要を満足させるには至らない以上、海賊版の存在の余地(その正当化の余地という意味ではない)があるのであり、海賊版規制をどんなに法で定めたとしても、結局 正規版が市場流通しているものについてしか実効性を担保できるものでない。絶対に存在してしまう部分は違法行為が放置される有様となってしまうわけだ(しかも適法に入手したものまで「模倣品」「海賊版」として認定され得るおそれまで生じてしまう──本来的にはこちらの方が深刻である)。
こうした規制は必要最小限にとどめるべきである。むしろ現行の規制の実効性を高める努力をするのが先だろう。
【ノンブル19ページ】
※重点編
4.コンテンツをいかした文化創造国家づくり
I.世界最先端のコンテンツ大国を実現する
(1)デジタルコンテンツの流通を促進する法制度等を整備する
デジタル化・ネットワーク化の特質に応じて、著作権等の保護や利用の在り方に関する新たな法制度や契約ルール、国際的枠組みについて2007年度中に検討し、最先端のデジタルコンテンツの流通を促進する法制度等を2年以内に整備することにより、クリエーターへの還元を進め、創作活動の活性化を図る。
(総務省、外務省、文部科学省、経済産業省)
▲ 現在 保護利用小委(文化審議会 著作権分科会 過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会)で審議が始まっているデジタルコンテンツ流通促進法制について、時期は前後するが知的財産推進計画にも盛り込まれた形である(もっともこれの元となるアイディアはかねてからパブリックコメント等で寄せられており、また知的財産戦略本部下の専門調査会でも同様の提案が出されていたという経緯がある)。
「コンテンツ大国」を目指すのであれば、コンテンツ流通の阻害要因をすぐに排除するのが必須である。現状、実際にサービスが始まっているインターネット配信の全て(音楽配信・映画配信・映像配信・テレビ放送同時再送信等々)において外国から遅れを取っているのであり、またこれがすぐに改善される兆しなど全く見られない。このまま停滞するコンテンツ業界と心中するか、思い切ったメスを入れて流通促進するかという選択が迫られている。
まぁ皮肉めいたことを言えば、いつまでも世界の潮流に乗れず、アナログな世界で「スローライフ」ってのも悪くはないが。最先端の奴らは海外サービスを使えば良いわけだし(笑)。
※上の「スローライフ」は本心じゃないぞ。
【ノンブル20ページ】
※重点編
4.コンテンツをいかした文化創造国家づくり
I.世界最先端のコンテンツ大国を実現する
(2)違法複製されたコンテンツの個人による複製の問題を解決する
合法的な新しいビジネスの動きを支援するため、インターネット上の違法送信からの複製や海賊版CD・DVDからの複製を私的複製の許容範囲から除外することについて、個人の著作物の利用を過度に萎縮させることのないよう留意しながら検討を進め、2007年度中に結論を得る。
(文部科学省)
(3)権利者不明の場合におけるコンテンツの流通を促進する
我が国が蓄積してきた豊かなコンテンツを有効に活用するため、諸外国の動向も踏まえ、権利者の不明その他の理由により利用者が相当の努力を払っても権利者と連絡が取れない場合に、利用の円滑化を進める新たな方策について検討を進め、2007年度中に一定の結論を得る。
(総務省、文部科学省)
▲ これらも文化審議会 著作権分科会(各小委員会)で議題に挙がっているものである。
特に私的複製の範囲を狭めるとする規制「違法複製されたコンテンツの個人による複製の問題を解決する」には注意が必要である。これを仮に法改定してしまった場合でも法規範・規制に実効性が期待できないこと(こうした複製を認知する方法がない)、ユーザーにとっても民事裁判原告(刑事罰は課さないとの文化庁の方針が明らかにされている)にとっても適法複製・違法複製の区別が困難であること(複製元が多くの場合 適法流通するコンテンツであり、加えて私的複製の手段自体が同じなのだから当然)、権利制限によって複製されたものが目的外使用の後に複製されたものでも「違法複製」に当たること(すなわちこの規制が対象とする範囲が極めて広い)、そもそも正規流通の不備によって「違法複製」でしか入手できないものが存在し一定のニーズが必ずあるということ等、こうした複製について単純に規制してしまうことについては問題が山積している。
加えて、並行して検討されている非親告罪化まで重なろうものなら、害悪は相乗的に大きくなる。上記の副作用に当局の恣意が重なってくるからだ。
これらの法改定を行なったところで、「違法」複製が爆発的に発生する(つまり著作権法が規範としての機能を失う)か、そもそもコンテンツ利用そのものが無くなる(誰も見たり聞いたりしなくなる)かのいずれかである。
※なお「合法的な新しいビジネスの動きを支援するため」などというのは全く説得力の無い前置きである。なぜなら、海賊版と積極的に競合し、ユーザーを正規流通へ取り返す試みが全くと言っていいほど為されていないからだ。現行流通の不備を突き実在するニーズを掠め取るのが「海賊版」の本質だというのに、いまだに「海賊版」が満たしてしまっているニーズを正規流通が掬い上げられないでいる(それは「海賊版」の存在によってビジネスチャンスが潰されているのではない。ビジネスチャンスが見過ごされているだけなのである)。
また、「個人の著作物の利用を過度に萎縮させることのないよう留意しながら」などというのは反対意見に配慮したかに見せる方便に過ぎない。この「留意」が実際に議論に反映されたことなど無いからである(私的録音録画小委で委員からここを危惧する意見が出たにとどまる)。規制構想の中に出てくる「情を知って」との要件を設けたとしても、この「留意」には不充分な限定と言わざるを得ない。このようなものは裁判所の認定次第でどうにでもなってしまうからである。そもそも「海賊版」入手に必然性(合法性ではない)があればあるほど「情を知った」上での入手となり得る。
▲ 権利者不明の場合の裁定制度簡便化には賛成だ。しかしながら実際の著作物利用の場面において、権利者不明の場合と同様に問題になっているものがもう一つある。それは権利者の頑なな許諾拒否による協議不調である。権利者が(禁止権を楯に)一方的に有利な条件を求めることが少なくなく、加えて反競争的な思想のもと“権利行使”されているという実態もある。このような場合にも強制許諾制度のようなものを用意する必要が(コンテンツ流通促進の観点からも)あろう。
【ノンブル21ページ】
※重点編
4.コンテンツをいかした文化創造国家づくり
I.世界最先端のコンテンツ大国を実現する
(5)ネット検索サービス等に係る課題を解決する
情報化時代におけるネット検索サービスが、国民生活の利便性の向上のみならず、産業政策や文化政策上重要であることにかんがみ、ネット上での検索サービス等に伴うサーバーへの複製・編集等や検索結果の表示に関する著作権法上の課題を明確にし、所要の法整備の検討を行い、2007年度中に結論を得る。また、新たなコンテンツへの検索・解析技術の開発・国際標準化や適切な保護ルールの検討などを2007年度から開始する。
(文部科学省、経済産業省)
(6)アーカイブ化を促進し、その活用を図る
公共的なデジタルアーカイブにおける著作物の収集・保存や絶版等に至った著作物で一般ユーザーが入手困難なものの提供など非営利目的や商業的利用と競合しない利用について、クリエーターへの補償措置も考慮しながら、コンテンツの保存・収集・利用を円滑に進められる方策を検討し、2007年度中に一定の結論を得る。
(文部科学省)
(7)インターネット上でのコンテンツの新たな創作・発信を促す
インターネット上における著作物の自由な創作・発信を促すため、2007年度中に、著作物等のネットワーク上での利用条件を意思表示するシステムの構築を目指し、著作者が予め意思表示する際の利用条件の類型化や本人の意思に基づく権利放棄の取扱い等のルールの法的課題等の研究を行うとともに、民間における自由利用促進のための取組を奨励・支援する。
(総務省、文部科学省、経済産業省)
▲ 日本の著作権法にフェアユース規定が無いために(日本ではフェアユースの法理は採用されていないので、正確に言えば〈個別の権利制限規定によるフォローが不充分なために〉だが)、インターネット上で実際にサービスが行なわれていながら厳密には著作権法に抵触しかねないものがある(サービス事業者の多くが米国企業だという事情もあるが、日本企業が行なっているサービスでも危ない橋を渡っているものは意外とある)。ここでは検索エンジンの開発・サービス提供が挙げられており、これについては著作権法上の手当ての検討が始まっているところである。
しかし他にも手当てすべき「フェアユース」的課題は多い。例えば(6)でも触れられているアーカイヴの問題。この項目で述べられているような「公共的なデジタルアーカイブにおける著作物の収集・保存や絶版等に至った著作物で一般ユーザーが入手困難なものの提供など非営利目的や商業的利用と競合しない利用」への手当ても勿論重要だが、これだけでは不充分と言わざるを得ない。日々 生まれては消えていくネット上の情報について民間でアーカイヴィングできるような法整備を早く実施する必要がある(公的機関に任せていたのでは大部分をフォローするのが物理的に不可能──民間が加われば幾らかはマシになる)。一度 世に問われた情報は流通を保持される仕組みを構築すべきである(個人的には、商用コンテンツに限って考えるべきでないと思う)。
加えて、インターネット上でのストレージサービスについても手当てしなければならない。現状ではサービス事業者が複製権・自動公衆送信権侵害を問われかねないところであり、こうしたサービスの登場がインターネットにおける国際的潮流であることを考えれば、私的複製に準じた使い方だけをユーザーに提供する場合には(つまりアップロードとダウンロードが同一人物に限定される仕組みを持ったもの)日本でも合法とすべきである。これが実現しなければ、ストレージサービスでも海外のものがシェアを握ることとなり(検索エンジンの現状と同様)、国内のITサービスの発展を阻害し競争力を削ぐのは目に見えている。
かように新たなサービスの余地が生まれてきていながら、日本では著作権法の不備によって国内事業者に足枷をはめるような事態はこれからも発生してくるだろう。こうした事態に個別に対応するのも結構だが、現状を見るかぎり時間がかかりすぎるきらいがあり、結局のところ海外のサービス事業者にデファクトスタンダード(および市場シェア)を握られることになる。もはやフェアユース規定創設を検討し、権利者との訴訟において正当性を主張できる最低限の根拠を確保しておくべきである(フェアユース規定創設の目的がこれである以上、「裁判にならなければフェアユースかどうか判らない」との創設論への批判は当たらないものと考える)。今こそ検討を始める時期に来ている。
挑戦的な国内事業者を片っ端から「著作権」で叩き潰している現状が健全と言えるのかどうか。よく考えたい。
【ノンブル60ページ】
※本編 - 第2章 知的財産の保護
II. 模倣品・海賊版対策を強化する
2.水際での取締りを強化する
(4)模倣品・海賊版の税関での取締りを強化する
○1 税関の体制を強化する
並行輸入や個人輸入と偽った輸入や個人による郵便物等の小口貨物を利用した輸入が、国内に偽ブランド品や海賊版が氾濫する原因の一つとなっている現状を踏まえ、それらの取締りを一層強化するよう、2007年度も引き続き、税関と権利者との連携の強化、税関の検査設備や情報システムの強化、必要な税関職員の確保、税関職員の能力の向上を進める。また、知的財産侵害物品の輸出入取締りに関する十分な情報の蓄積・共有を図り、より効果的かつ強力に税関による取締りを推進する。
(財務省)
○2 模倣品・海賊版の輸出・通過を取り締まる制度を整備する
模倣品・海賊版を侵害発生国・地域から第三国で積み替えて輸出を行うなどの新たな手口が発生している現状やG8サミットなどにおいて世界的な取組の重要性が指摘されていること等にかんがみ、模倣品・海賊版の拡散防止をより強力に推進するため、一時的に知的財産侵害物品を保税地域に搬入した場合についても、税関が取締りを実施できるよう、2007年度中に検討し、必要に応じ法改正等制度を整備する。
(法務省、財務省、関係府省)
▲ 「並行輸入や個人輸入と偽った輸入や個人による郵便物等の小口貨物を利用した輸入」を取り締まるために、適法な並行輸入・個人輸入等が割を食うような運用だけは避けてもらいたいと思うわけだが、実際