2005.11.25

未来へと開かれた扉 ──『インターネット図書館 青空文庫』

 著作権系ブログの界隈ではちょっと話題になってる本『インターネット図書館 青空文庫』を手に入れたので、パブコメへのツッコミをちょっと休止して読んでみた。

インターネット図書館 青空文庫
4899840721野口 英司

はる書房 2005-11
売り上げランキング :

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 いきなりこんな感想で恐縮だが、妙な読後感だった。
 ──なんだか物足りないのである。

 正直な話、あの値段の割にページ数が少ないのではないかと(購入前に)気になったものだ。書店でこれを手にして、思わず「薄ッ」と声を挙げたくらいだから。
 いや、青空文庫の使い方が図解されていたり、青空文庫のこれまでの歩みが簡潔にまとめられていたり、青空文庫の「工作員」さんの素顔が紹介されていたり、青空文庫所蔵作品のいくつかを冒頭の見開き分だけ掲載されていたり、今後の青空文庫の活動を間違いなく左右する著作権保護期間延長問題について論じられていたりと、“これが載っていると面白いだろうなぁ”と考えつくようなものは既に用意されている。内容が薄い訳では決してなかった。
 それでいながら、読み終わったあとに物足りなさが残るのである。
 理由はなんだろうか?

 私にとってのこの本の価値を考えてみる。
 私は普段 azur で所蔵作品を読むだけであって、青空文庫の隅々まで知り尽くしているわけではない。だから、この本が丁度いいガイドになってくれる気がする。これを片手に青空文庫サイトを散策するのも悪くない。
 「工作員」さんの仕事が本で紹介されているお陰で、彼らの仕事に対して親しみが持てるようになる。今まであまり注視しているところではなかったけれど、時間があれば「工作員マニュアル」なども読んでみようかなんて思ったりもする。
 見開きしか掲載されていない幾つかの作品。読みやすい紙の本で出だしを読むことで、これに興味が惹かれれば青空文庫に移動して読むことができる。読む気力も勢いもそのままで作品に向き合える。
 著作権保護期間延長問題については、これからの展開が非常に気になるところである。これには、著作権に少なからず興味を持っているブロガーたる私自身も関わっていかねばならない問題だと感じている。
 そこまで考えていて、ふと思いついたのが次の仮説だった。

 ──『インターネット図書館 青空文庫』は その本自体で内容が完結していないのではないか。だから読み終わっても「終わった」という実感が持てない(勿論これは私個人の印象でしかない)。

 青空文庫の視線の向こうには いつも「未来」がある。
 扱っている作品は確かに「過去」のものではある。
 しかしそれを引き継ぎ次世代に渡すのは「現在」の住人たちである。
 そしてその文化が託され、新しい文化が花開くのが「未来」である。
 なお、著作権保護期間が延長されることで失われるのもまた「未来」だ。
 よりよい「未来」を創造していくために「過去」や「現在」と向き合う。
 青空文庫の試みとはそういったことなのである。

 『インターネット図書館 青空文庫』で描かれているのは「未来」だ。だから本の中だけでは決して完結しない。本としての完結性を高めるのなら、「過去」だけで本を構成するという方法もあっただろう。しかし、青空文庫という現在進行形の試みを表現するためにサイトへの誘導を行わなければ意味がないし、また彼らの試みをより正確に伝えようとするのなら「未来」をも語らねばならない。本の完結性は多少なりとも犠牲となってしまったけれど、その方針には間違いはなかったと思う。
 もし「過去」のことがもっと濃密に書かれていたなら、とも想像してみる。そのときは、「現在」や「未来」に対しての視線を弱めてしまうのではないだろうか。だからあのページ数は多すぎず少なすぎず、絶妙なものだったのではないか、と

 何ごとも腹八分目が消化しやすいのである。
 ──うわっ、この例えで全部台無しだッ。

 真面目な話。
 もし青空文庫を(名前だけでも)御存知の方だったら、富田倫生氏による第3章「『天に積む宝』のふやし方、へらし方」だけでもお読みいただきたい。そしてこれに強く共感されたなら、この本を支援していってほしい。例えば買うのでもいい、図書館に納入を促すのでもいい、知合いに薦めるのでもいい。
 この本は、「未来」へと開かれた扉であるのだから。

 青空文庫を知らないという人に届くところまで浸透できれば、この本が作られた意義というものは充分達せられると思う。その後にひかえている著作権保護期間の問題は、本を手にした一人ひとりに委ねよう。きっと一緒に闘ってくれる人だって出てきてくれるに違いない。




 最後に、関連するページの紹介もしておこう。
 第3章の富田倫生氏の文章には原形になったものがある。青空文庫にて、今年の元旦付で発表されたものである。
 また、付録 DVD に収録された富田倫生氏の講演(東京国際ブックフェア 2004 で行われたもので1時間弱のフル収録)は、その採録がボイジャー社のサイトで読める。映像も一部アップされている。

http://www.aozora.gr.jp/soramoyou/soramoyouindex.html#000144
「著作権保護期間の70年延長に反対する」
(青空文庫・そらもよう)

http://www.voyager.co.jp/salon/TIBF2004/Tomita_web/index.html
「新しい本をどうつくり、どう読むか」
(ボイジャー)

 本を買うのも立ち読みするのも面倒という方(たしかにこれって面倒ですよね)は、上の記事を読むだけでも是非お願いしたい。前者は、今後本格化するであろう保護期間延長の問題について解りやすく説明されている。後者は、そうした保護期間延長によって潰されかねない青空文庫の活動が紹介されている。
 まずは知ることから。何をすべきかは、その後で考えよう。

 ──以下に、なにか行動する気になった時のための参考サイトも紹介しておく(最後のは mixi のコミュニティなので、会員の人のみ閲覧可能)。徐々にではありますが延長反対の動きは始まっています。

http://noextend.ring.hatena.ne.jp/
「はてなリング - Stop! Copyright-Extend」

http://d.hatena.ne.jp/nazokou/
「著作権延長反対Ring」

http://mixi.jp/view_community.pl?id=436143
「著作権延長反対」
(ソーシャル・ネットワーキングサイト [mixi(ミクシィ)])

投稿:by 暇人#9 02:11 午前 [感想, ] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2005.04.16

『問題な日本語』 北原保雄・編

(★★★)

 『明鏡国語辞典』の執筆陣による日本語本である。「まえがき」によれば、『明鏡国語辞典』発売を記念して、全国の高校の国語科教師から「気になる日本語」を集め解説する試みをしたことが この本のもとになっているらしい。

問題な日本語―どこがおかしい?何がおかしい?
北原 保雄

大修館書店 2004-12
売り上げランキング : 55
おすすめ平均


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 この本に限らず、日本語本は近年わんさかと発売されている。
 この流行は、日本語への興味を喚起させるという意味で言えば 喜ばしいことではある。英語偏重の考え方が幅を利かし、日本語とも英語ともつかぬカタカナ語ばかりが巷に溢れる(「IT革命」って何じゃらホイ)‥‥こうした現象は「活字離れ」が原因だとは言いたくはないが、日本語に対する自覚に欠けるためということは言えるのではないか。この流行が、そうした現象へ歯止めをかける切っかけになるかも知れない(解決策にはならないだろうが)。
 ただし この「日本語ブーム」は、何かにつけ一部の言葉遣いを「乱れ」「揺れ」などとして“断罪”する輩に発言の機会を与えるものでもある。これなどは副作用と言ってよいだろう。己の垂れ流す“壊れた文章”を棚に上げて、多くのテレビ・新聞において こうした“断罪”が多く見られるのは笑い話にしかならない(何せ彼らは、不用意な略語、カタカナ語濫用、単純な誤用等々、人のことなど全く言えない状態である)。
 こうした「乱れ」「揺れ」を指摘する声の多くが、常用漢字表や現代仮名遣いなどの内閣告示(いわゆる「国語」表記の基準)や、学校で習うような「国語」文法を基準にしている。いや それならまだマシかも知れない。自分使っている言葉が即“正しい”と考えていると思しき人だっている。そして日本語という自然言語の多様性を全く考慮していない様子が見え隠れする。さも“正しい”日本語がどこかにあるかのような錯覚を抱きつつ、現実に使われている言葉をただ非難する方向にしか考えが進まない。実に嘆かわしい限りだ。
 確かに、論理的に説明のつく誤用というものもある。また、そのままでは意味を取り違える蓋然性があり、言い換えた方が望ましい言葉もある。これらは避けるべきだし、「間違い」として指摘する必要がむしろあるものだろう。要は、「間違い」と決めつける前に そう判断するのに何をもってするのか意識すべきということである。

 で、この本だ。すこぶる売れているらしい。
 普段の私は「ベストセラー」なるものには見向きもしないのだが(日本語本は割と気になる方だが、「ベストセラー」だからと言って買うものは極めて少ない)、この本に関しては、日本語の誤用を指摘する他の類似本とは異なる部分に目が惹かれた。
 「まえがき」に示された、著者のこの姿勢だ。

 日本語ブームといわれ、日本語に関する本が数多く出版されているが、本書は、単に「使ってはいけない」「この用法は間違っている」と指摘するだけの本ではない。どうしてそういう表現が生まれてくるのか、誤用であったとしても、その誤用が生まれてくるいわば「誤用の論理」は何なのかを究明している。

 ここを読んで気に入り、買うことにした。
 もっとも価格が安いというのも理由の一つだったけれど。

 ちと意地の悪いことを書くと、実はこの本、こうした姿勢以外に売りは見あたらない。採り上げた言葉の多くは既発の類似本と重なるネタである。また、他では見られないネタについても、採り上げる必然性の無いものも散見される(新味を出そうとしてるのは解るんだけどね‥‥)。
 しかし これらの言葉を採り上げたページでも、上記の姿勢を貫き論じることで新たなる価値を生み出している。一連の論を通して、ただ「気になる日本語」を「誤用」と断罪することを戒め、冷静になって考えることで「誤用とは言えない」もの・本当の「誤用」・「まだ一般化していない」ものなどを見極めていくべきだと身をもって示しているかのようである。
 そして、そうした論考の一つ一つを集めると『明鏡国語辞典』になるのだ、と(笑)。

 こうした宣伝効果が どこまで意識されているのかは判らない。帯や最終ページに広告が載っているから、全く意識していない訳ではないだろう。結果的には、この本は『明鏡国語辞典』への導入編としての位置付けにピタリとはまっている感じだ(ただ導入編としての価値だけではなく、単独の本としても楽しめるところが この本の質を決めている。そうでなければ売れはすまい)。
 日本語への ある姿勢をしっかりと見せる。新しい言葉をただ拒絶せず、それまでの言葉との兼ね合いを論じているから、ここで採り上げられていない言葉についての興味をも喚起する。そこで示した姿勢の成果とも言える『明鏡国語辞典』へも自然と目が行くという具合だ。こいつは辞典と言っても『広辞苑』ほど高いやつじゃないから、CD1枚を我慢すれば買える。あからさまではあるけど 悪い印象は持たない戦略に乗せられてみるのも面白いかも知れないな。そのうち本屋へ行くことにしよう。

 結論。この『問題な日本語』は日本語の「誤用」を考えるものの中では好感を持てる珍しい一冊。

投稿:by 暇人#9 02:49 午前 [感想, ] | 固定リンク | コメント (1) | トラックバック

2005.01.04

『反社会学講座』

パオロ=マッツァリーノ・著


反社会学講座
パオロ・マッツァリーノ

イースト・プレス
2004-06-20
売り上げランキング 1,456
おすすめ平均


Amazonで詳しく見る
   by G-Tools

 この本の元になっている文章系サイト『スタンダード反社会学講座』は、 『北国tv』 の はなゆーさんの所で以前紹介された時に知った(らしい‥‥と言うのは、もう記憶が定かではないから。ただ当該記事の内容、時期からすると これのようである)。この時はざっと読んだ程度だったのだが、その面白さは強烈に印象づけられていた。そして今回、 kojidoi さんの所で言及されているのを読んで、書籍化されていたのを知ったのだった(要するに、件のサイトを継続的には読んでいなかった訳である)。

 『反社会学講座』は、社会学なるもののパロディの体裁をとりながら、巷でまことしやかに流れている言説に対し反例を示すものである。初版発行が 2004年6月23日、 私が買ったのは 10月発行の 第6刷だ。つまるところ、ここまで売れていた本を今頃になって私は手にした訳である。
 この本の基調として流れるのは笑い。“学問”の皮をかぶった言説にツッコミを入れつつ、自らボケをかますという構造。それによって書き手自らの存在をも相対化し、読み手は「メディアリテラシー」の存在を再認識させられる。実際、ボケの入るタイミングを追ってみると、けっこう注意深く入れられていることに気づく。“ヘタしたら このあたりで読者が信じちゃうかも知れないな〜”という辺り、まさに絶妙のタイミングでボケが入る。きちんと読んでいれば嘘・デタラメ・誇張であることが判る仕掛けだ。
 著者のプロフィールからしてそうだ。本文の方があんなにボケ満載(しかも日本ローカルな)なのに、著者がイタリア出身なものか。まして「某大学のジャズ愛好会で顧問をつとめた際に、会報に掲載されたプロフィール」ときた。父に関するくだりを読んでも、どう考えたって「ツッコんでください」との匂いがプンプンする。試しに「反社会学講座」でググってみたら、このプロフィールが事実だと勘違いしている人が若干見受けられたが、これは著者の本意ではあるまい。疑いもなく信じ込んでしまっている姿を見せられると、あまりのイタさに薄ら寒い思いすらする‥‥。
 「嘘コケー!」「そんなわけないだろ!」「ギャハハハハ(笑死)」などと、本文に書いてある内容に距離を置きつつ、ツッコミ精神で読むのが正しい作法と言えよう。勿論そんな中で、指摘されている内容に含まれた一面の真実にギクリとさせられるのも楽しい。それもまた「反社会学」の真骨頂だ。これぞ諷刺だ。マッツァリーノ氏は現代に突如あらわれたトリックスターなのである。

【目次】

●なぜ社会学はだめなのか
●キレやすいのは誰だ
●満足ですかー!
●パラサイトシングルが日本を救う
●公平な社会を作るバカ息子(娘も)
●日本人は勤勉でない
●続・日本人は勤勉でない
●フリーターのおかげなのです
●ひきこもりのためのビジネスマナー講座
●ふれあい大国ニッポン
 データで読むふれあい
●ふれあい大国ニッポン
 ふれあいダークサイドの歴史
●本当にイギリス人は立派で
 日本人はふにゃふにゃなのか
 イギリスの若者に説教の巻
●本当にイギリス人は立派で
 日本人はふにゃふにゃなのか
 欧米の労働者よ、真面目に働けの巻
●本当にイギリス人は立派で
 日本人はふにゃふにゃなのか
 欧米の大学生は本当に自立しているのかの巻
●学力低下を防ぐには
●それでも本を読みますか
●夏季限定首都機能移転論
●スーペー少子化論争
 スーペーさんが騙る少子化の神話
●スーペー少子化論争
 少子化のせいじゃないと、私、困るんです!
 経済・労働力編
●スーペー少子化論争
 少子化のせいじゃないと、私、困るんです!
 年金・働く女性編
●まとめ・渡る世間は自立の鬼ばかり

 本書のサブテキストとして、サイトのトップページから読める「御意見無用」「アフターサービス」「自著を語る」の3つも必読だろう。どのように読むべきかがバカ丁寧なほどに示されている。本文中での注意深く計算されたボケ位置を彷彿とさせる気遣いぶりである。

http://mazzan.at.infoseek.co.jp/goiken2.html
「御意見無用2〜アフターサービス」


 全般的なことですが、当講座ではほとんどの場合、承知の上で、あやしげな論理をつむぎ、ズレた結論を導き出しているつもりです。話の展開をおもしろくするために、心にもないことをいうこともあります。しかし、そういう場合でも、ネタとして使っている資料やデータは本物です。資料そのものを捏造することはありません。ただ、データの一部だけを見せたり、どうでもいいデータをむりやり比較したりするだけです。
http://mazzan.at.infoseek.co.jp/goiken3.html
「御意見無用3 自著を語る」


 私がおそれているのは、批判されることよりも、読者が信者になってしまうことです。つっこみ力がなくなった人間の行き着く先が、狂信者です。だから、私のことは、おもしろいコトいう、おもしろいオッサンだな、くらいに思ってくれれば光栄です

 マッツァリーノ氏は、「メディアリテラシー」という言葉を「つっこみ力」と表現している。これが『反社会学講座』の第一原理なのだろう。この「つっこみ力」とは特定のものに向けられるのではなく、全てのものに向けられるべきもの。決して正しい・間違っているなどと即断するためのものではない。そうした「つっこみ」の対象には勿論マッツァリーノ氏自身も含まれているのだ(だから彼は注意深くボケを入れ続ける)。

 この本は笑える。
 正月だというのに本屋へ飛んでいき、買い、一気に読了してしまった。ついでにサイトへ行って新作分も全部読んでしまった。書籍未収録分は、さらに文章に磨きがかかっている印象だ。あの語り口が技術に裏打ちされたものである証拠。見事だ。
 読んでいて頷き、笑い、ツッコむ。読書の楽しみを三拍子揃えた本なのだ。

投稿:by 暇人#9 04:06 午前 [] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004.10.05

『コンピュータユーザのための 著作権&法律ガイド』 ──別名『萌える法律読本 :)』

コンピュータユーザのための著作権&法律ガイド―CDバックアップからホームページ作成まで、身近な著作権の疑問を解決!
プロジェクトタイムマシン

発売日 2002/09
売り上げランキング 7,627


Amazonで詳しく見る4839907935


(★★★★★)

 『コンピュータユーザのための 著作権&法律ガイド』は、以前ここでも採り上げた『萌える法律読本 ディジタル時代の法律篇』の旧版にあたる本だ。いわゆる『萌える法律読本』の元祖というわけ。
 新版を買った私が、なぜ その後に旧版も買ったのだろうか? 単に〈どこがどう更新されているのだろう〉という興味で、図書館から旧版を借りてみたのが最初だった。それが、後に自分でも買う羽目になったという。
 ──その答えは単純だ。旧版にも〈買うだけの価値〉があったからである。

【目次】
1.著作権Q&A
2.時事の法律トピック
3.著作権法アウトライン

 旧版と新版の最も大きな違いは、旧版の第3章目「著作権法アウトライン」だ。全体像を見渡しながら解説されたもので、条文そのものも掲載されている。またとない著作権法入門だと思われるのだが‥‥新版では割愛されてしまった。
 新版ではさらに、旧版の残り部分の先に最新情報を持ってくる構成を採った。
 ──この違いについて、私はこんな感想を持った。

●「著作権アウトライン」の割愛は勿体ない。ホント勿体ない。
●しかし、新版の情報量を考えるとやむを得ない。その選択が間違いだとは断じて言えない。
●最新情報を頭に持ってきた意図だって解らぬわけではない。旧版との違いをはっきりさせるには最適の方法だ。
●そして現に、新版の最新情報は相当に気合いが入っていた。
●──が、新版の構成が読みづらいものだったことも事実なのだ。

 新版では、気合い籠めて書かれた最新情報を腹一杯になるまで読める。しかし その後でユルい(基本的な)Q&Aに付き合わされるのがキツい。そして更にその後には、最新情報と多分に重なってしまう「時事の法律トピック」が待っている。──そして あの全体の厚さ。
 内容の充実度・解りやすさ・その存在意義は決して軽視できるものではない。しかし新版の「本」としての完成度を考えると、星4つが限界ではないか。

 一方、旧版。まずQ&Aで基本を押さえつつ徐々にステップアップ。基本的な事項が最初に提示されていくから、本のペースに合わせて読んでいける(内容としては新版もほぼ同じなのだが、位置の違いがこのような読みやすさの差異を生んでしまう)。次に時事問題で内容の更なる充実を図る。最後に著作権法をおさらいする(付属資料みたいなもの)。
 ──読みやすいのだ。完成度が極めて高い(さらに言えば、厚さも丁度よかったりするし)。だから星5つの評価。

 実に残念な話なのだが、公式サイトでの案内によれば、新版を発売したので旧版は絶版とのことである。

http://moeru.jp/series/
「萌えるネット (萌えるシリーズ公式WWWサイト)」
見出し「萌えるシリーズ」。

 それなら「おにいちゃん」(プロジェクトタイムマシン代表で この本の 「Producer / Director」 Morza Dizemble 氏)、 新版の付録につけてる CD-ROM に旧版の方も PDF 収録したら如何ですかね?
 ──このまま埋もらせるのは勿体ないですぞ。

 あ、そうそう、私は別に「萌え」てないからね。

投稿:by 暇人#9 07:53 午後 [また買っちゃった, ] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

『だれが「音楽」を殺すのか?』

だれが「音楽」を殺すのか?
津田 大介

発売日 2004/09/22
売り上げランキング 656


Amazonで詳しく見る4798107034


(★★★★★)

 うち以外の Weblog では既報(うちの Weblog ってこればっかりやな)の本。『音楽配信メモ』の津田大介氏による著書である。

 先月末の話。池袋に行って買ってこようと思い立ち、ジュンク堂のサイトで在庫状況を確認していた。もはや在庫状況を調べずに本屋へ行く私ではないのである。せっかく買いに行って無かったら腹立つからね。そんなことならアマゾンで注文した方が良い(だれが「本屋」を殺すのかねぇ‥‥俺か? ちなみに地元の本屋にはあらかじめ探しに行ったぞ。目当てのものは無かったけど)。
 ──ジュンク堂では売り切れ! この検索結果を見たとき、私は戦慄した。買う気になってるのに買えない時ほどツラいものはない。続いてリブロ(池袋西武)に電話をかけた‥‥が、話し中。もうどうにでもなれと思ってビックパソコン館本店に電話したら、ここにはあった。助かったよ。取り置きしてもらって池袋へ急行、無事に入手。

 あの表紙は最高だな。ネット上で初めて見た時から「コレダー!」と思ったりなんかして。音楽聴くサル──というウォークマンCM(確か初代 次郎だったよね)のコンセプトを今に蘇らせる試み(これを表紙に使おうって言い出したのは誰なんだろ?)。「裸のサル」ばりの名コピーだったからなぁ(画だけど)、あれは。ウォークマンの代わりに iPod を使ってるのが、今のソニーを象徴していてビミョーな味わい。二重の“くすぐり”ってとこ。

 『だれが「音楽」を殺すのか?』。その略称を何とするか。
 元祖“本コロ”に因むなら、やっぱ“おんコロ”かなぁ。著者自身は「音殺(おところ)」と称しているようですが(“ほんコロ”と“おんコロ”じゃ音だけで区別できないから、「おとコロ」とした判断は全然間違っていない)。

 そうそう、肝心の本の内容に触れてなかった。
 音楽業界にまつわる論点をあぶり出している決定版書籍と言える。この種類の本が他に無いこともあって、ただ一冊 孤高の存在でもある。出版物の形でまとめられたものとして ひとつの到達点であり、これから この種の論点について語られていく上で出発点となるべき存在だろう。価値のある一冊ですよ、これは。
 各章、時系列をふまえつつの解説が読みやすいし、年表まで用意されている。主に扱われているのは、輸入権問題・ 「CCCD」 ・「違法コピー」・音楽配信について。

【目次】
1.レコード輸入権──洋盤が聴けなくなる?
レコード輸入権とは何か?/輸入権の導入経緯/輸入権問題とインターネットの力/法律が施行されたら本当に洋楽輸入盤が聴けなくなるのか/高橋健太郎インタビュー「輸入権問題の本質と音楽業界の今後」

2.CCCD ──コピーできないCDの悲劇
なぜ突然こんなものが導入されるようになったのか?/ CCCD の仕組みと再生機器の問題/ CCCD の音質は悪いのか?/音楽の制作現場と CCCD / CCCD を導入する国、しない国/ CCCD は本当に「過渡期」のメディアなのか?/曽我部恵一インタビュー「音楽のこれから」

3.違法コピーとファイル交換
まず「違法コピー」について考えよう/許せる違法コピー? 許せない違法コピー?/ファイル交換ソフト「ナプスター」の衝撃/「ナプスター以後」のファイル交換ソフトと日本/ファイル交換ソフトは音楽業界の売上を落としたのか?/佐藤剛 (FIVE D 代表)インタビュー「音楽に愛を込めて」

4.音楽配信サービス──埋まらない日米の格差
音楽配信サービスの変遷/なぜ日本では音楽配信がブレイクしないのか?/日本独自で成功した音楽配信「着うた」/なぜ iTMS が日本で始まらないのか?

終章 音楽のこれから
いまでもトランジスタラジオは「キミの知らないメロディ」をキャッチしているか?/音楽メーカーと流通の問題/新しい音楽文化を創造する新しい政策やライセンス/アーティストとリスナーの新しい信頼関係

 この本は、基本的には『音楽配信メモ』その他で述べられている内容をまとめたものと言っても良く、既読の情報が結構多い。だからおのずと新ネタの方に目が行くわけなのだが、私が読んでいて一番の“目玉”と思えたのは高橋健太郎氏へのインタビューだ。私が今まで「輸入権」問題ばかりを追ってきたのもその理由か。
 高橋健太郎氏自身も Weblog を運営しており、その思うところはそこで述べられている。にも関わらず、ページをたっぷり取って(聴き手の津田氏とともに)話の流れに気を配っているためか、このインタビューにおいても新味のある話が結構出てきているのだ。
 読みどころは、輸入盤規制反対運動に対する氏の冷静な視点、反対運動の「広告代理店業」を買って出るにあたっての作戦、特に本人が「マキャベリスティック」と評する割り切り方、辛辣にならざるを得ない音楽業界の未来について、そしてその中でのひとつのアイディア──といったところか。

 終章も強烈な印象を残す。論点を絞って落ち着いて述べていた他章とは様子が異なり、そこで述べられなかった他の問題点、最新情報、そしてその展望に著者の思いと、盛りだくさんで密度の濃い内容だからだ。畳み掛けられるかのようだ。
 最初とラストの節の題も心の琴線に触れる。「今でもトランジスタラジオは『キミの知らないメロディ』をキャッチしているか?」「コピーコントロールはハートにある」。いずれも元ネタのあるフレーズではあるが、音楽ファンの在り方を謳い、終章にふさわしいものだ。

 津田大介様。
 堪能させて戴きました。
 たぶん今後も使わせていただきます、この御本。
          暇人#9 拝




 ──以下、つれづれなるままの雑感。

 「CCCD」 問題に対する分析も必見の内容。
 不正 TOC ・エラー・規格逸脱・再生無保証・返品拒否・コピー可能・機器への負荷‥‥そして音質の考察(劣化があるかないか、結論を安易に出すようなことはしていない)。また、「CCCD」 導入の可否と原盤権との関連については成程とも。

 「CCCD」 に関して、一部のアーティストが表明した意見もまとめられている。私の場合は あるサイトを情報源にしていたから、この本に掲載されていた中に知らない発言も結構あった。

 「違法コピー」については法解釈を一通り示した上で、さまざまな場面を想定し私見が述べられている。「許せる」「許せない」を目安として。
 この章では他の章と違って思い切り私見に走っており、非常に興味深い。法に基づいた解釈は他の本に任せるとばかりにだ。だからこそ この本は読んで面白いものに仕上がっているとも思うのだな(主観と客観の間でいかにバランスをとっていくのかという。その著者の立ち位置に逐一納得しながら読んでいたりするのだ、私は)。
 「違法コピーについて甘めの見解を示している」とあとがきに書かれてはいるけれど、あそこで著者が示したスタンスは、著作権との関わりに揺れる音楽ファンの正直な気持ちだと思うのだ。“そこまでガチガチにしてくれるな”という。

 音楽への愛情と聴き方が垣間見える文章を読むのは実に嬉しいことだ。

投稿:by 暇人#9 07:44 午後 [「CCCD」, 「輸入権」問題, 「輸入権」資料, また買っちゃった, , 音楽業界の愚行] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004.09.23

【weblog 本紹介】『ウェブログ=デザイン』 こもりまさあき・著

ウェブログ・デザイン
こもり まさあき

発売日 2004/06
売り上げランキング 15,528


Amazonで詳しく見る4844357506

★★★★

 星つけすぎかなぁ‥‥でも役立ってくれたし。

 うちの Weblog 『試される。 ココログmix』 のデザインは、この本を参考に設定していきました(ココログでの初心者向け設定画面による変更は別として‥‥)。ちなみに基礎としたのは 『北国tv』 でも使わせて貰った TSUNO 氏の 『Simple Panther』 なんだけどね。そこからの調整が この本の手柄ってこと。

 この本、買う時にも「使いやすそうだな、よし これにしよか」ってな具合でピンと来たんだな。で、実際に使っても相性バッチリ。基本形から変更までの図解を、様々な場面に応じて掲載していて解りやすい。ここまでだけでも、それなりにデザイン変更できる(付箋貼って参考にしてるページも多いよ)。
 ただ、(びっくりしたのだけど)ココログプロではスタイルシートを自分の手で変更しなければならないのね。ココログプラスのように設定画面がある訳じゃなくて。もちろんココログプラスで設定したスタイルシートを流用(変換)して使えるけど、そこから調整していこうとなるとスタイルシートを読む必要がある。そうしなけりゃ、また元のスタイル設定画面に戻って、設定を変えて、さらに上級用に変換しなければならなくて‥‥これが面倒くさい。それが判ってから覚悟を決めたね、私は。
 スタイルシートを本片手に読みだした訳だ。実はこの本、役立つのは 200ページ目以降(それまでは良くある入門書って感じ)。スタイルシートと実デザインとの対応、スタイルシートの初期設定値、各属性の説明など‥‥ページ数にして僅か 23ページのお陰で私は この本を無駄にせずに済んだのだ。
 まぁ私はスタイルシート初心者だったんでね、「良くある入門書」部分でも それなりに恩恵に与れたけど。

 ──なんだか、下手くそな売り文句の羅列って感じだなぁ。

 以下、目次。

Introduction - about weblog -
●ブログってなによ?
●ココログの基本操作

Category 01 - background -
●背景色を変更してみよう
●背景に画像を適用する
●背景に画像を繰り返し表示する
●記事の背景を設定する(応用編)

Category 02 - font -
●フォントサイズを変更する
●フォントカラーを変更する
●文字の修飾を決定する
●行間と行揃えを指定する
●パートごとのスタイルを指定する(応用編)

Category 03 - layout design -
●レイアウトを変更しよう
●タイトルを画像に変えてみよう(1)
●タイトルを画像に変えてみよう(2)
●罫線 (border) を設定しよう
●マージンと余白を指定する(応用編)

Category 04 - photo -
●画像をアップロードしよう
●画像の貼り込みを指定する
●画像にスタイルを適用する(応用編)

Category 05 - link -
●リンクカラーの設定
●パートごとのリンクカラーの指定

Category 06 - parts design -
●フォームのカスタマイズ
●リストのカスタマイズ(応用編)

Category 07 - calender -
●カレンダーの表示
●カレンダーの書体、余白の変更(応用編)
●カレンダーの配置変更(応用編)
●記事の背景を設定する(応用編)

Appendix 01 - stylesheet basics -
●スタイルシートについて
●ココログのウェブログ新規作成時に生成されるスタイルシート
●ココログのページとスタイルシートの関係

Appendix 02 - stylesheet reference -

 余談だけど、私は HTML についても万年初心者。 Weblog やってると多少は使うもので、こんな本を片手にキーを叩いている。

『HTML 4 クイックスタートガイド』
 (エリザベス=カストロ 著・MdN)
『HTML デザイン辞典』
 (足立裕司 著・翔泳社)

 しかし、掛けた金に比例した技術を身に付けてる訳ではないのだなぁ(笑)。
 もともと趣味・独学でしかないし。




 余談。
 私が愛用しているスタイルシート 『Simple Panther』 とは、これのこと。

http://ch.kitaguni.tv/u/292/Blog%2e%2e/0000028850.html
「北国スタイルシート - SimplePanther : MAC SN -北国tv」

 読みやすい仕様だと思いますぜ。ホント。
 『北国tv』をお使いの方には是非。

投稿:by 暇人#9 05:56 午前 [] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004.08.07

『萌える法律読本 ディジタル時代の法律篇』

4839915555.09.MZZZZZZZ.jpg

(注:「萌える」本の話で あまり かしこまるのも恥ずかしいので、いつもとは一人称および文体を変えてお送りします。)

 なんだか‥‥最近 読んでる本が某サイト絡みばかりだなぁ。

 第一印象は、ずいぶん“偏ってるな”と──いや悪い意味で言ったんじゃなくて、この手の本にしちゃ〈俺たちの側に立っている〉なと。ここまでハッキリ言っちゃって大丈夫なのかと却って不安になるほどでさ(笑)。

 そして価値観が共有されてるように思う。音楽好きで、漫画も好きで、同人誌もかじってて、パソコンもやってる‥‥そんな人を対象にしているようだから。俺もそんな感じだし。あと、あまり著作権には関係ないけど、小室哲哉(あるいは TM Network) があちこちに出てくるあたりは、ある特定の世代にとっては反応したくなる“くすぐり”なんだな(それに著者名からしてTM、つまり「タイムマシン」なんてのもね)。
 そんな調子だから、(少なくとも俺にとっては)ネタ選びが割と「かゆいところに手が届く」感じ。特に著者も音楽には強い思い入れがあるようで、「輸入権」問題にはページを多く充てている。「ここまでやって大丈夫なのか」って思うほど(笑)。

 本全体の流れがあまり良くないので、頭から順番に読むのはキツいかも知れない。まずはペラペラめくりながら、目を惹いたところを拾い読みすると良いだろう。そういった読み方でも充分 価値を感じられる本だ(もちろん読了するのが一番いい)。何だったら第3章「時事の法律トピック」だけ まず読むのも良い。そこから関連するページを飛ぶ、と(関連ページへの案内もあって、いたれりつくせりなんだな)。
 著作権に興味があって(あるいは自分が著作権に関わる活動──同人誌とかバンドとかウェブサイトとかをしていて)、女の子の絵(いわゆるアニメ絵)に抵抗のない“そっち系”の人にオススメ。いきなり買うのはアレだって人は、そう、図書館で借りるのもよし。著者によれば、「書籍は沢山の人に読んでもらって意味がある」ので「プロジェクトタイムマシンの書籍はぜひとも図書館に置いて、購入する余裕の無い人にも読んで欲しい」 (14頁) とのことだ。だから遠慮なく借りて読もう(気に入ったら後で買いに行こうね)。

 最後に、ごくありふれたツッコミを入れておこう。「みゅう」とか「ほむほむ」とか言うキャラに「萌える」かって? 「萌える」わけねーじゃん。あれでキャラの質を相当落としてるよな。絵自体も特別に可愛い訳じゃないし。
 ──表紙だけで充分です(笑)。

投稿:by 暇人#9 12:54 午前 [] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004.07.15

『だれが「本」を殺すのか』上・下

410131635X.09.MZZZZZZZ.jpg

佐野眞一・著
★★★★★


 発売当時から話題になっていて、私も確かに読みたいとは思っていたのだが、今の今まで読みそびれてしまった。文庫化を機に(尤も それも他人のブログで知ったという恥ずかしい話なのだが)購入し、追加分が(なんと下巻の大半がこれだった)あって得した気分を味わっている。本編の方もさることながら、この追加分も読み応えがあったのだ。もし今頃ハードカバーの方を買ってたら、追加分の存在をしって悔しい思いをしていたに違いない。厚めの文庫本2冊だが、あわせて1400円ってのは安い!

 小さい頃から、注文した本がなかなか到着しないのに辟易していた(2週間で来れば早い方だったものね‥‥)。書店での品揃えには全く期待が持てなかったし、最近はぶらりと本屋で本を探すことなどしなくなってしまった(置いてない本を探したって無駄足だもんね)。オンラインの書店・在庫検索(池袋ジュンク堂)に飛びついて、その便利さを享受しているのが今の私なのである。もちろん買う前に、まず図書館で借りて内容に探りを入れているのだが(そうクソもミソも一緒に買えるかいな)。
 それはともかく、上のような“書店”観を持っている私には、この本で描き出された業界の実態は成程と思わせるような内容だった。私が感じてたことを裏づけているじゃないかと。そして、そんな自業自得の「出版不況」を図書館やブックオフの責任にするんじゃねえ! ‥‥とも、出版業界への月並みな批判をひとつ書いておこう。
 ただ、図書館・ブックオフが抱えている問題点にも興味は惹かれる。「出版不況」関連で槍玉に挙がってはいるが、業界の主張を見ていると、実はこれらが抱えている問題点については すっぽり抜け落ちているのだ。ただ図書館・ブックオフのせいにするだけで、その詳細を説明したり分析したりはしない。この本でようやく成程って思えるようになったよ(もちろん業界の主張を納得する訳ではないが。一理はあるねってこと)。

 「出版不況」の問題では、業界の自助努力と図書館・ブックオフとの落としどころが本当に得られるのだろうか? それとも音楽CDの問題のように、業界は努力せぬまま流通(図書館・中古売買・並行輸入だって、コンテンツの立派な正規流通である)を壊滅させ、ファンとの対立を激化させながら自壊していくのだろうか。
 「本」を殺すのは、日本人全体(つまり読者)の問題も関係している。すなわち文化に対してどう接するのかということ。実は「本」と同じような文化的危機が他にも進行しているとしか思えないところがあるのだ。本もダメ、音楽もダメ、映画もダメ、アニメもテレビ番組もダメ‥‥てなことになったら、日本に残ってる文化は何なのよって。日本語は? 社会常識は?
 文化の危機は「本」や「音楽」だけじゃない。いたるところにある。そして、それをなんとか解決しなきゃならないのは我々自身だってこと。一人ひとりの自覚と行動にしかそれは委ねられていないのではないかと思っている(この実感は本を読む前からあった。しかし読んだ後も ここへ帰結するのだ)。私は? 文化について考えていきたい(そして小さいながらも発言を)。日本語・本・音楽・映画その他の文化を吸収していきつつ。

 余談──本の中では佐野眞一氏の個人的見解も多く含まれており(特にそれは「本」の内容・価値に関することが多い)、それ全てに賛成することは出来ない。私は「本」以外の芸術(音楽・映画など)をこよなく愛する者であり、そうした多くの芸術に接するには絶対的価値など存在しえないことを知る必要があるからだ。「本」が人の成長に不可欠であることを認めつつも、私は「本」だけ読んでいれば充分などという幻想を抱くことは出来ない。
 「本」さえ読んで入れば社会問題の多くが片づくのなら、もし本当にそうであるのならば、こんな楽なことは無いと思うのだけどね。

投稿:by 暇人#9 06:44 午後 [また買っちゃった, ] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック