2009年6月18日 (木)

法制小委#2(議事概要メモ)

すでに津田さん末廣さんが傍聴時に主な内容をまとめてくれてるのだが、いちおう私の記録も出しておく。
例によって記録と記憶を頼りにしてるので正確性は保障できません。議事内容への最終判断は公式議事録の公表まで待っていてください。

文化審議会著作権分科会
法制問題小委員会(第2回)議事次第

日時 平成20年6月17日(水)
   17:00~19:00
場所 虎ノ門パストラルホテル
   新館5階 「ミモザ」


議事次第

1 開会
2 議事
 (1)権利制限の一般規定について
   (「著作権制度における権利制限規定に関する調査研究会」委員等よりヒアリング)
 (2)その他
3 閉会

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2009年6月10日 (水)

著作権法改定案の国会審議状況

 国会で審議中の著作権法改定案。3月10日に提出され、5月12日に衆議院を通過、同日に参議院へ法案が送られた。それからおよそ1か月が経過したところだが、6月8日になって参議院で動きがあった。この日に参議院・文教科学委員会へ法案審議が付託され、翌9日には法案趣旨説明が行なわれたのだ。
 法案提出から国会審議のこれまでの期間だけを見ると、かなり時間をかけて審議しているように見える。しかし実際のところ審議に使っているのはたった1日だけ(5月8日の衆議院・文部科学委員会)。しかもその日のうちに衆院可決の方向が決定された。著作権法改定案の優先順位をうかがわせるものではあるが、それにしても審議にかける時間の短いこと。
 今国会は会期が7月28日まで延長されている。参議院に限って慎重な審議が期待できるわけでもなく、よほどのことが無い限りは、会期切れで廃案という結末は無さそうである‥‥。

http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/171/meisai/m17103171054.htm
「議案審議情報:著作権法の一部を改正する法律案」
(参議院)

http://www.webtv.sangiin.go.jp/
「参議院インターネット審議中継」
※トップページから「会議検索」→6月9日をクリック→「文教科学委員会」

 なお、衆議院での審議の模様は会議録が公表されている(なお本会議では、委員会での結果報告と採決だけだったので会議録を参照する必要はなし)。

http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009617120090508009.htm
「第171回国会 文部科学委員会 第9号(平成21年5月8日(金曜日))」
(衆議院)

 とりあえず、現況としてはこんなところ。

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2009年5月14日 (木)

法制問題小委員会#1配付資料

 驚いたことに、12日の法制問題小委員会で配布された資料が、もう文化庁のサイトにアップされておりました。

http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/housei/h21_shiho_01/gijiyoshi.html
「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第1回)議事録」
(文化庁)

 とりあえずご報告まで。

(後日、追記するかもしれない。)

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2009年5月13日 (水)

5/12 法制問題小委員会#1(議事概要メモ)

 5月12日に開催された、文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第1回)会合の議事概要を以下に掲載します。例によって傍聴記録と記憶に頼って文章化してるので、正確性は保証できません(というか、話していることの大部分が理解できてなさそうな自分)。

 これやるのに時間がかかってしまったので余談的に触れるしか出来ませんが、この法制小委と同じ日、著作権法の改定法案が衆議院本会議を通過しました。次は参議院での審議ということになりますが、まぁ衆議院での民主党の取組み方を見ていると何とも。

文化審議会著作権分科会
法制問題小委員会(第1回)

日時 平成21年5月12日(火)
   10:00~12:00
場所 虎ノ門パストラルホテル
   新館5楷 「ミモザ」

議事次第
1 開会
2 委員及び文化庁出席者紹介
3 議事
(1)法制問題小委員会主査の選任等について
(2)法制問題小委員会審議予定について
(3)権利制限の一般規定について
(4)その他
4 閉会

配付資料一覧
資料1 第9期文化審議会著作権分科会法制問題小委員会委員名簿
資料2 小委員会の設置について(平成21年3月26日文化審議会著作権分科会決定)
資料3 「著作権法に関する今後の検討課題」(平成17年1月24日著作権分科会決定)の概要とそれ以降の審議状況
資料4 今期の法制問題小委員会の当面の検討課題について(案)
資料5 ワーキングチームの設置について(案)
資料6 「著作権制度における権利制限規定に関する調査研究 報告書」
    (平成21年3月 著作権制度における権利制限規定に関する調査研究会、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社)

参考資料1 文化審議会関係法令等
参考資料2 第9期文化審議会著作権分科会委員名簿
参考資料3 著作権法の一部を改正する法律案
参考資料4 第27回及び第28回著作権分科会における意見の概要
参考資料5 デジタル・ネット時代における知財制度の在り方について(報告)
      (平成20年11月27日 知的財産戦略本部デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会)
参考資料6 第3期知的財産戦略の基本方針(2009年4月6日知的財産戦略本部)抜粋

 配付資料の多くは既出のもの(基本問題小委の配付資料などを参考にしてくださいな)。

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2009年5月12日 (火)

衆議院・文部科学委員会で著作権法改定案が可決

 「違法配信からの録音・録画を禁止する」との名目で私的複製(著作権法第30条)の範囲を縮小する、いわゆる「ダウンロード違法化」の条項を含んだ著作権法の改訂案が8日、衆議院の文部科学委員会を通過した(審議経過参照のこと)。4月24日に法案の説明が行なわれ、今月8日が初めての審議だったわけだが、その日のうちに採決された。後日、おそらく無風で衆議院本会議を通過し、参議院での審議へと移ることになるだろう。
 この日の委員会で質問をした議員は、民主党から高井美穂・松野頼久・川内博史・和田隆志の4委員、共産党が石井郁子委員、社民党が日盛文尋委員。この日の委員会の流れが、事務局作成の「衆議院文部科学委員会ニュース」で速報として公表されている。

http://www.shugiin.go.jp/itdb_rchome.nsf/html/rchome/News/monka17120090508009_f.htm
「文部科学委員会ニュース(5月9日)」
(衆議院)



1 著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出第 54 号)
・塩谷文部科学大臣、宮﨑内閣法制局長官、竹島公正取引委員会委員長、政府参考人及び長尾国立国会図書館長に対し質疑を行い、質疑を終局しました。
・採決を行った結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
(賛成-自民、民主、公明、共産、社民)
・馳浩君外4名(自民、民主、公明、共産、社民)から提出された附帯決議案について、和田隆志君(民主)から趣旨説明を聴取しました。
・採決を行った結果、全会一致をもってこれを付することに決しました。
(賛成-自民、民主、公明、共産、社民)

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2009年4月22日 (水)

4/20 基本問題小委員会#1

傍聴時の記録と記憶を頼りに委員の発言を書き起こしています。
正確さは保証できませんが。


文化審議会著作権分科会
基本問題小委員会(第1回)

日時 平成21年4月20日(月)
   14:00~16:00
場所 三田共用会議所 3F大会議室


(出席)
いではく・河村真紀子・佐々木正峰・瀬尾太一・玉川寿夫・中村伊知哉・野原佐和子・野村豊弘・三田誠広・宮川美津子

(欠席)
石坂敬一・大林丈史・後藤雅実・迫本淳一・里中満智子・苗村憲司・松田政行

主査の選任:野村委員

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2009年3月30日 (月)

著作権分科会 #28 ――フェアユース戦線はいつもの風景

 3月25日に、文化審議会著作権分科会の第28回会合が開かれた。この分科会では1月に前期・2008年度までの報告書が出され、それを受けて3月10日に今国会へ著作権法の改定案が提出されたところだ。法案の方は衆議院で先に審議される予定らしいが、30日現在でまだ審議は始まっていない。ともあれ、法案提出を前期の区切りとして、25日は今期・2009年度の分科会運営について話し合われる最初の会合となる。

文化審議会著作権分科会(第28回)
  日時:平成21年3月25日(水)
     10:00~12:00 ※実際には30分ほど早く終了
  場所:三田共用会議所 3F大会議室

【議事】
1 開会
2 委員及び文化庁関係者紹介
3 議事
(1)文化審議会著作権分科会長の選出について
(2)小委員会の設置について
(3)その他
4 閉会

【配付資料】
資料1 文化審議会著作権分科会委員名簿
資料2 「著作権法に関する今後の検討課題」
    (平成17年1月24日・著作権分科会決定)
    の概要とそれ以降のこれまでの審議状況
資料3 小委員会の設置について(案)

参考資料1 文化審議会関係法令等
参考資料2 文化審議会著作権分科会(第27回)議事録
参考資料3 著作権法の一部を改正する法律案の概要
      ※配付資料には法律案そのものも含まれていた。
参考資料4 デジタル・ネット時代における知財制度の在り方について(報告)
      (平成20年11月27日 知的財産戦略本部デジタル・ネット
      時代における知財制度専門調査会)
参考資料5 広崎委員意見書
      (第9期文化審議会著作権分科会の運営に対する意見)

 分科会の運営の話——と言っても、実際に議論をする場は、分科会の下に設けられる「小委員会」の方である。だからこの小委員会をどう設置するのかが話の中心になる。
 昨年まで設けられていた、iPod全盛の今の時代に適合した私的録音録画補償金制度を話し合う「私的録音録画小委員会」と、保護期間の延長の是非を議論する「過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会」は、前期最終回にあった予定のとおり解散となった。今期設置されるのは3つ、「基本問題小委員会」「法制問題小委員会」「国際小委員会」だ。

 基本問題小委員会は、「著作権関連施策に係る基本的問題に関すること」を議論するとされる。この表現自体は配付資料にあった文言を引いているだけだが、あまりにも漠然としすぎてはいる。事務局が説明する中で例示した議題は、私的録音録画補償金と保護期間延長の問題だ。つまり解散された2つの小委員会を吸収したような形のようだ。それぞれの小委員会でも持て余してしまった議題なだけに、他の「基本的問題」を扱いつつこれら二つの議論も進められるのかは疑問。議題設定に文化庁の恣意が反映しやすいだけに、注視したい。
 「基本問題」と銘打っているだけに、事務局は方針として「文化政策的な見地から大所高所の議論をしていただける場として設置してはどうか」と提示している。この文化庁の言う「文化政策的な見地」が果たして好ましいものになるのか、私見だが微妙に思えてならない。「保護」だけが文化政策ではなく、しかもコンテンツ産業だけが「文化」ではない——そこからこぼれるものを無視したり、あるいは一緒くたにしすぎた結果が、〈時代の流れに対応できていない著作権法〉という今の状況なのではないか。
 長いこと著作権分科会の動きを見てきたためか、かなりうがった見方をする私ではあるが、心配の種が尽きないというのが正直なところである。

 法制問題小委員会は「著作権法制度のあり方に関すること」を話し合うということで、著作権法学者中心の構成で例年通りの設置。ここでは、前期まで議論しながら課題として残されているものに加え、「放送・通信の一元化への対応」「権利制限の一般規定」などが新たに挙げられている(事務局説明より)。議題てんこ盛りになるいつもの展開なのは間違いないが、その中でも最も注目が集まるのは「日本版フェアユース」だろう。

 国際小委員会も前期に引き続いて設置される。国際条約などで国内法制に対応すべき点が出てきた場合、その議論をここで行うのが主な役割なのだが、近年はこの種の動きが少なく会合が開かれるのも年に数回程度だった。もっとも前期最後の会合で「国際的な議論に先行して検討課題を設定しよう」との方針が出ており、また「模倣品・海賊版拡散防止条約」ACTAの展開も注目されるところなだけに、今期に大きな議題が持ち上がることが予想されないわけでもない(ただしACTAの中身が明らかにならないことには、今後の影響をはかることができないが‥‥)。

 今年度の小委員会はおそらく4月に入ってから本格始動する。まだ委員構成などは明らかにされていないが(たぶん事務局から本人への打診は始まってるだろう)、大ネタの未消化が目立つ著作権分科会である。バタバタと“審議したつもり”“結論が出たつもり”で片付けられることがないよう、注視していきたい。

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2009年3月26日 (木)

著作権法改定案2009:待望された条項と抱き合わせで盛り込まれたもの

 「著作権法の一部を改正する法律案」が3月10日に閣議決定され、その日のうちに国会へ提出された。文化審議会の著作権分科会が1月に出した報告書(PDF)で法改定すべき課題が挙げられたのを受け、文化庁が法案の原案を作り、内閣での調整を経て、「内閣提出法案」として国会の審議を受ける運びである(内閣から出される法案が法律になる過程はここの説明がわかりやすい)。
 衆参両議院のサイトにはそれぞれ議案審議情報が掲載されている。ただし今のところは法案提出の事実のみが書かれる。なお法案本文は衆議院サイトに、また衆議院で先に審議される旨が参議院のサイトに載っていた。
 合わせて、法案審議で使われる関連資料も文部科学省のサイトで公表された。国会議員でなくても、「概要」「新旧対照表」などで法案の中身を確認できる。

http://www.mext.go.jp/b_menu/houan/an/171/1251917.htm
「著作権法の一部を改正する法律案」
(文部科学省)

http://www.shugiin.go.jp/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/g17105054.htm
「閣法 第171回国会 54 著作権法の一部を改正する法律案」
(衆議院)

http://www.shugiin.go.jp/itdb_gian.nsf/html/gian/keika/1DA5E0A.htm
「議案審議経過情報 閣法 第171回国会 54 著作権法の一部を改正する法律案」
(衆議院)

http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/gian/17103171054.htm
「議案審議情報 著作権法の一部を改正する法律案」
(参議院)

 衆議院の解散時期をにらみつつ与野党が対立する「ねじれ国会」の中で、この法案がどう審議されていくのかは不透明だ。もっとも、この18日には民主党・川内博史議員が質問趣意書を提出したという。現時点ではまだ内容が明らかになっていないものの、じきに公表されるだろう。

http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/171221.htm
「著作権法の一部を改正する法律案に関する質問主意書」
(衆議院)

 と、これまでの法案提出の状況に触れてきたところで、気になるのは法案の中身である。
 先に書いたとおり、衆議院サイトにも法案が掲載されているが、これは現行の著作権法から改定・追加すべき箇所を指定し、改定後の文を添える形で書いてある。読んだだけでとても理解できる代物ではない(まるで設計図を読めというようなもの)。むしろ、文部科学省サイトの方の「概要」「要綱」「新旧対照表」(リンク先参照)を読んだ方が、比較的理解しやすい。あくまで比較だが‥‥。

 法案の中身を1枚ものにまとめた「概要」での説明によれば、本法案の趣旨は「電子化された著作物等(デジタルコンテンツ)の流通促進のため、インターネット等を活用して著作物等を利用する際の著作権法上の課題の解決を図る」ことにあるという。
 また、法案の三本柱として「インターネット等を活用した著作物利用の円滑化を図るための措置」「違法な著作物の流通抑止」「障害者の情報利用の機会の確保」が挙げられている。具体的には、以下のような項目が主なものだ。

・検索エンジンサービス(適法化)
・所在不明権利者を対象とした裁定制度の改善(適法化)
・国会図書館での所蔵資料のデジタル化(適法化)
・ネット販売での美術品等の画像掲載(適法化)
・情報解析研究のための複製(適法化)
・通信障害の防止、データ消失の防止、
 送信の効率化等のための複製(適法化)
・電子機器利用時に必要な複製(適法化)
・海賊版と承知の上での販売の申出(違法化)
・違法配信から、違法と知りながらの複製(違法化)
・視覚障碍者向け録音図書の作成を公共図書館でも(適法化)
・聴覚障碍者向け映画・放送番組に字幕・手話を付与(適法化)
・発達障碍等で利用困難な者に応じた複製(適法化)

 ※カッコ内「適法化」は、これまで違法だったが権利制限に加わるもの。
  「違法化」は、新法で著作権等が及ぶものとするもの。

 著作権法の改定は、「~権」のような新しい権利の付与や罰則強化など「権利者」側に有利な面だけを考えているように見えがちだが、もう一方で権利の限界――つまり利用する側から見て、無断での著作物利用が「違法」になるか「適法」になるかの境界を変更する働きもある(文化庁が「権利者」側に立っているか否か、論者によって様々な見解もあるだろうが)。今回の法案は、まさしくこの「境界」を決める話である。
 上記の改定項目をざっと眺めるだけでも、検索エンジンサービスの実施、ネットオークションなどでの商品画像の掲載、通信過程での一時的キャッシュ、障碍者福祉の拡大など、何年も前から待望されてきた法的対応が多く盛り込まれており、“めでたい法改正”という雰囲気を演出したいのだなと見えるところではある。現に著作権法改定(法案の閣議決定)を伝える各種報道はそういう方向で出されている。
 しかし「概要」だけでなく実際の法案を読んだときに、本当にその“趣旨”どおりの中身なのかという疑問が出てくる。

 「適法化」される項目がどう法案に書かれているか。
 たとえば検索エンジン(47条の6)の場合、確かにウェブサイトなどの収集や蓄積・インデックス化などはできるようになる一方で、実は「情報の収集、整理及び提供を政令で定める基準に従って行う者に限る」との限定がつけられている。またオークションなどでの商品画像について(47条の2)も、「複製を防止し、又は抑止するための措置」が必要だとされ、そこで要求される「措置」の内容は政令で決められるという。
 この「政令」というのは、国会を通さなくても政府が出せる命令(ここでは「著作権法施行令」を指す)のことだ。つまり、これらの規定で適法となる範囲が行政府の一存で決められるようになるのである。自由利用の範囲を決めるのに何らかの条件が必要だとしたら、国会で審議して決めるのが筋で、それこそ著作権法に書き込めばいい話だ。今回の法案がやろうとしているのは、「適法」の範囲の決定権を国会から政府へ委任させることに等しい。
 想定される政令の内容については、国会で質問が出たり言質を取ったりすることも考えられる。しかし今後は「日本版フェアユース」のように国会で作るルールを抽象化して、司法での違法・適法の判断を重ねることで柔軟なルール作りを模索しようとの機運がある時に、いたずらに政令へ委任する項目のを増やすのは如何か。司法へシフトしようとするルール作りの主導権を政府が横取りするようなものだ。ここは慎重に審議すべき。

 現行法では権利が及ばなかった範囲だったのを、及ぶように変える項目もある。違法に配信された著作物を「その事実を知りながら」録音・録画する行為を、私的利用目的であっても違法だとする条文がそれだ(30条1項3号)。また、この基準に合わせるためか、先の検索エンジンを実現するための複製(47条の6)や、通信や機器利用時のキャッシュ(47条の5第1項1号)でも、違法に配信されたものは複製できない(新設される権利制限から除外)という限定が設けられている。しかも海外で配信されたものでも、日本で同じことをしたとして「違法」ならばアウトだとわざわざただし書きを付けている。
 違法配信にまつわるこのような「違法」複製の判断は、一応は受信側が「違法と知っている」かどうかが基準となっている。しかし「知っている」のかという主観的な要件なのに他人(司法)に判断されるということで、一介のユーザーである我々には不安の残るところである。実際問題として、我々が本当に「知って」いたのかよりも、判断する者がどう考えるかが重要になってしまう。

 受信した情報が「違法配信」だと「知って」いた――そう誤解されないようインターネットで振る舞おうとするなら、ユーザーはかなり萎縮的に行動せざるを得ない。国内外のあらゆる場所から情報が発信されている時代である、そのうちのどれだけが「適法」に配信されたものだとユーザー側で確信できるだろうか。“怪しいものには近づかない”としただけでも、とりわけ海外で発信された情報にはアクセスできなくなる。
 まして海外(現地)では適法に配信されていながら、日本法で違法とされるような場合も出てくるのなら尚更だ。それとも、ネットワークの利便性を享受したい人は、あえてそうしたルールを踏み越えていくことを立法者は想定するというのだろうか。守りようもない縛りばかりのルールなら、そうなってしまう可能性も(萎縮効果とは裏腹だが)ある。
 「適法」と「違法」の線引きを明確にし、ユーザーや事業者が萎縮的にふるまわくても済むようにするのでなければ、「日本版フェアユース」に先行して法律を変える意味がない。法案を今のままで成立させては、混乱かルール軽視につながるだけだ。

 違法配信の扱いについてもっと詰めていくべきだし、最悪でも、海外で配信された場合の「国内で行われたとしたならば~」とのただし書きを削除すべきだと思う。

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2009年3月 1日 (日)

JASRACへの、公取の排除措置命令は落ち着いて聞きたいね。

 日本音楽著作権協会、略称がJASRAC。著作権に詳しいわけでない人でも、その名前だけなら知っているのではないか。CDや本などに、JASRACから「使用許諾」を受けた旨が書かれていることが多い。著作権侵害をしたとされる人物を提訴してニュースにも出る。何かと名前が目に付く団体である。
 JASRACの仕事はというと、作詞家や作曲家の音楽著作権を預かり、演奏会・カラオケ・CDやDVDの製作などで音楽(JASRACが権利を預かった曲)が使われるたびに、「使用許諾」を出して対価を徴収することだ。使用料は1曲いくらで計算するのが基本だが、膨大な数の曲を商売で扱う事業者にとっては「これだけ払えば使い放題」の仕組みの方が便利なこともあり、JASRACは「包括許諾」の選択肢も用意している。
 この「包括許諾」の“お得意様”の代表が放送局。テレビやラジオの番組では、ひっきりなしに音楽が使われている。当然JASRACとの契約が必要だ。現状としては、1曲いくらの個別の許諾よりも、放送事業収入の1.5%を支払って使い放題にしてもらう包括許諾が選ばれている。

 その、テレビ局とJASRACとの契約にクレームがついた。市場競争を阻害するものが無いか監視する公正取引委員会が、2月27日にJASRACへ契約の改善を求める「排除処置命令」を出したのだ。その理由は、JASRACが前述の条件で包括許諾をテレビ局に与えていることが、他の著作権管理事業者がテレビ局と使用許諾を結ぶのを妨げているから——だという。現に公取委の発表(PDF)では、後発の競合事業者であるイーライセンスが2006年10月から参入を試みたが、テレビ局にしてみればイーライセンスが管理する楽曲(例として大塚愛「恋愛写真」など、エイベックスが権利を持つ曲が示されている)の使用料はJASRACへの支払いと別に発生する「追加負担」となるため、殆ど使われなかったとのこと。エイベックスとイーライセンスは期間限定で使用料無料とするなどの試みを行なったが、以後の使用料を得られる見込みが立たなかったため、イーライセンスは管理委託契約を解約されてしまった。
 公取委は今回、JASRACがテレビ局相手の著作権管理事業で「私的独占」を行なったと判断した。実はこれまでにも公取委はJASRACに対し目を光らせており、2006年9月8日から音楽著作権管理事業が「独占的状態」にある分野だとして監視対象に加えていた。監視対象となる基準は

国内総供給価額が950億円超(法律上の基準は1,000億円超)である事業分野であって,上位1事業者の事業分野占拠率が45%超(同50%超)又は上位2事業者の事業分野占拠率の合計が70%超(同75%超)のものである

——とされ、JASRACがこれに当たると考えてきたわけだ。その「独占的状態」に加え、2005年に民放連からイーライセンスが参入した分 使用料を減額するかと問われ「減額する意向は無い」と協議の場でJASRACは回答、現実にイーライセンスが参入に失敗してしまった。今回の命令に先がけて昨年4月にはJASRACへの立入検査を公取委は実施している。その際に報道で明らかにされた内容から、今回の命令まで公取委の見解で特に変更された部分は無いようだ。
 では、今回の「排除措置命令」はJASRACの存在そのものを「私的独占」と判断したものと言えるのか。そして「包括許諾」が否定されたものなのか。

 そのいずれでもない。今回の公取委の「排除措置命令」が求めていることは、あくまでも(1)放送を相手にした包括許諾契約で(2)放送に使用される楽曲のうちJASRAC管理楽曲のしめる割合が使用料算出に反映されず(3)放送局から見てJASRAC以外の事業者への使用料が「追加負担」となってしまう——現状の改善である。JASRACのシェアを下げるために団体を分割しろとか、放送分野以外でも包括許諾をやめろとか、そうした広い命令ではない。排除措置命令書を見たかぎりでは(2)さえクリアできれば済む話にも思える。テレビ局からの全曲報告をこのところ進めてきたJASRACにとっては、時間はかかるにしても不可能ではあるまい。
 それ以上のことが求められるとしたら。JASRACの規模を小さくする何らかの手段をとるか? JASRACはもともと国内で唯一の音楽著作権管理団体だった。70年の歴史の大部分を独占事業者として築いてきた。その実績と組織規模に手がつけられないまま、2001年から「著作権等管理事業法」によって他の事業者の新規参入が可能になった(この経緯は朝日新聞のコラムが解りやすくまとめている)。JASRACが「独占的状態」にとどまるのは当然の結果だが、それにもかかわらず今回の公取委の命令は対象範囲がかなり限定されている。穿った見方をすれば、JASRACには(現時点では)放送局相手の包括許諾でしか突っ込み所が見つけられなかったようにも映る。
 包括許諾そのものを禁止するか? 包括許諾は放送以外の分野でも使われている。最近話題になったところでは、YouTubeやニコニコ動画といった動画共有サービスと結んだのも包括許諾契約だ。しかしこの分野では放送と対照的に、イーライセンスやJRC(ジャパン・ライツ・クリアランス)といった後発事業者との契約も進んでいる。インターネットユーザーの反応を見ると今回の命令がこちらへも影響するのか心配する声があるようだが、命令書の書きぶりでは特に影響は無いように思われる(JASRACも、記者会見でそうした見解を示している)。
 もしJASRACを分割したり包括許諾を禁止するなどという話になれば、テレビ局だけでなく、ほかの利用者にとってもかなりキツイことになるだろう。1曲ごとに権利が委託される業者を探し(こちらはシステムを用意すれば解決できるが)、1曲の使用ごとに対価が積み重なり、利用が進むたびに使用料が青天井となってのしかかる。
 そこまでの大変革を強いるような「排除措置命令」なら、今回の命令とは全く違う書きぶりになっていたはず。JASRACの「独占的状態」をどうにかしてほしいと思う向きにとっては、やや拍子抜けなところもあるかも知れない。興味深いことだが、今回のJASRACへの命令についてイーライセンスもコメントを出している(PDF)。「放送権とともに、業務用通信カラオケ、貸レコードなど他の利用形態においても同様の『包括利用許諾契約』が締結され、競争阻害要因となっているおそれがあります」として、他の分野についても公取委の監視を求めているのだ。

 今後、この問題はどうなっていくだろうか。公取委の「排除措置命令」は即日効力が発するというが、JASRACは命令が出された当日にプレスリリースを発表、また記者会見も開いて、「審判」を請求し全面的に争う姿勢をみせている。
 確かに、放送でどんな曲を使うかは放送局自身が決めることで、今回の命令ではJASRACの方が結果責任を負わされているような形になっている。とは言え、独占事業だった頃と同様の契約を維持し、新規参入が現実に失敗してしまっていることにJASRACの責任は無いのか、との点が気になるところでもある。審判から訴訟へと発展する可能性もある中で、そうした論点に答えが出てくることを期待したい。
 その行方次第では、放送分野以外でもJASRACへ競争上の規制がかけられ得るのか、見えてくることもあるかも知れない。落ち着いて動向を見ていこう。

続きを読む "JASRACへの、公取の排除措置命令は落ち着いて聞きたいね。"

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2009年2月25日 (水)

「Culture First」連合の主張が相変わらずなのは、JEITAの議論に乗せられたくないってことなのか

 権利者団体91団体からなる「Culture First」連合が、文化庁の募集するパブリックコメントへの意見を2月24日付で公表した。ブルーレイディスクへ私的録画補償金を課金する政令(著作権法施行令)の改定に対し、文化庁が示した条文案に賛成する内容だ。ただし「意見を発表しました」とアナウンスされているため、すでに文化庁へ提出されたのかは判らない。

 このパブコメには、メーカー団体のJEITA(電子情報技術産業協会)も既に意見を提出、2月13日付でその全文が公表されてもいるJEITAの意見は、ブルーレイへの課金が決まったのは文部科学省と経済産業省の「二省間合意」が根拠で、両省で合意した範囲にかぎって課金を定めるべきとの内容。具体的には、二省間合意の文面を引用しながら、地上デジタル放送の録画には補償金を課金すべきでないことと、ブルーレイへの課金がアナログ停波(2011年)までの期限付きの措置だと明記すべきことを主張している(加えて、ブルーレイを指定する条文に要件の追加を求めているが、ここでは特に触れない)。なお、文化庁の政令案にはそうした限定はなく、単純にブルーレイを課金対象へ加える趣旨のようだ。

 おそらくJEITAの意見が公表されたことを意識して、Culture First連合もパブコメの締切り前に意見を公表したのだろう。権利者側としては文化庁案がそのまま通れば望み通りなのを、そこに加えてJEITAを名指しし批判する意見をまとめているのだから。反論の内容は、ブルーレイへの補償金課金は当然、地上波放送がアナログでもデジタルでも同様に課金すべき、JEITAの主張は間違っている——というもの。

 このCulture First連合の主張で、「現行の補償金制度においては、ブルーレイディスクが、補償金の対象となることは明らかです」の一文が目立つ。彼らのこれまでの主張(公式サイトにも記者会見の模様として掲載されている)を踏まえれば当然出てくるものだ。彼らの考えは、「家庭内でテレビ番組を録画する行為自体が、権利者の得るべき利益を損ねている」とするところから始まっている。現行の補償金制度もそうした考えに基づく。
 ところがこの補償金制度の考え方に、「タイムシフト」目的の録画や、DRMのかかっている痴以上デジタル放送からの録画に「補償」が必要なのかという疑問がユーザーからぶつけられるようになった。今後の補償金制度ではそこまで含めて設計すべきだとの論は、補償金をめぐる2005年以後のメーカーの主張を後押しすることとなり、権利者側との対立の末に文化審議会著作権分科会での制度「見直し」をストップさせてしまっている。
 こうした論の対立がある中では、論者の立場によってはブルーレイが補償金の対象となるのが「明らか」とは言えないだろう。加えて、JEITAが公表した二省間合意によれば、「文部科学省は、著作権法30条2項が著作権保護技術の有無が支払い義務の発生要件になるかどうかについて明示的に規定していないと認識している」という。これまでの制度の考え方に立つ権利者側と、二省間合意を持ち出すJEITAとでは、前提が違う以上「この点で既にJEITAの意見は正しくありません」との権利者側の指摘は正しくない。

 JEITAが「二省間合意」にこだわる理由は、著作権分科会(私的録音録画小委員会)では補償金の議論が進まず、ブルーレイ課金が決まったのが二省間合意でそうまとまったためとの点にある。確かに、著作権分科会では課金対象にブルーレイを追加する旨を報告書にまとめておらず、わずかに二省間合意を紹介する箇所で追加が決まったものとしているのみだ。
 JEITAに対するCulture First連合の意見は、二省間合意そのものの解釈を示さずに、6月17日の経済産業大臣の会見内容を引いて「一旦延期した地上波デジタル放送の新たなコピールールである『ダビング10の早期実施に向けた関係整備の一助となることを期待』してなされたもの」と解説する。こう自らの解釈を示すだけで、「JEITAの意見はこの点でも、読む者に誤った認識を与え、混乱を招くものです」と結論することに説得力はあるだろうか。
 大臣の会見とJEITAの主張とで矛盾する点があれば面白いが、実のところJEITAが示した二省間合意は大臣会見と矛盾していない。それどころか、Culture First意見書が引用している会見録の別の箇所で、経産大臣は

暫定措置としてブルーレイに課金するということにしました。これは、既に確立されているはずですが、デジタル化しますとコンテンツの持ち主、つまり送るほうで、これは何回まで、それが幾らと全部設定ができるのです。アナログだとできないのですけれども、デジタルだとできるのですから、送り手の自由自在なのです。自由自在になる環境が整うまで、実際に行為としてダビングが行われ、それを利用する対象について、当面、いわば従来のDVD以外の部分を埋めたということでありまして、これはこれで適切な措置だと思います。

——とまで発言している。むしろJEITAの解釈を裏付けるようにも読める。権利者側からすれば、持ち出すには諸刃の剣とも言える会見内容ではないだろうか。

 権利者側が「私的録画=不利益だから補償金」との原則論で押すしかないのは理解できるし、私はやや同情もしている。二省間合意のような形で、文部科学省による半ば裏切りのような解釈が残されているのだから。文化庁のもとで制度「見直し」が全く動かなくなってしまった今、二省間合意をもとにしたブルーレイ課金との前提で議論せざるを得ず、 JEITAの“ゴネ得”が正当化される状況だ。
 とは言え、今回のCulture First連合の意見はJEITAへの反論として十分なものだったか。もしJEITAの主張を正面から覆すのなら、二省間合意を自分で取り寄せるなどして、自分に有利な解釈を作り上げるべきだったのではないか。
 たとえば、JEITAが公表した二省間合意には、「両省は、この政令の施行後3年を目途として、この政令の施行状況等について検討を加え、その結果に基づいて適切な対応を行う」の文がある。その一方で、この「見直し」はブルーレイ課金の廃止を決めたものではない。また、ブルーレイへ課金している間に“デジタルチューナーだけを搭載した録画機には課金しない”との扱いは合意に明記されていない。「3年後の見直し」を盛り込みさえすれば、デジタルチューナーのみの録画機へ課金しても合意内容に反しない——との解釈も可能だ。

 権利者が自分たちの主張を「明らか」だとして、それを“根拠”にJEITAの意見を「間違い」と強弁するより、真正面から反論をすることも可能だろうにとは思うのだが‥‥二省間合意が前提という“相手の土俵”に乗りたくないって話なのかしら。
 JEITAの主張にもほころびがあるだけに勿体ない。


※参考
 これまで『Culture First』サイトに掲載された記者会見の模様。

http://www.culturefirst.jp/news/2009/02/9.html
http://www.culturefirst.jp/news/2008/08/_8.html
http://www.culturefirst.jp/news/2008/07/culture_first_2.html
http://www.culturefirst.jp/news/2008/06/post.html
http://www.culturefirst.jp/news/2008/04/jeita_1.html

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2009年2月21日 (土)

「デジタル・コンテンツ利用促進協議会」のシンポジウムに存在価値はあるか?

 コンテンツのネット配信を促進できる法制度をまとめる「デジタル・コンテンツ利用促進協議会」(会長・中山信弘東京大学名誉教授)が、 3月12日の16時から如水会館でシンポジウムを開催する。同協議会の公式サイトで情報が掲載され、参加申込みの受付も始まっている。

 同協議会では、今年1月9日に制度案として「会長・副会長試案」を公表、1か月ほどパブリックコメントを募集していた。この結果を踏まえる形で、おそらくはシンポジウムの中で結果が示されながら、意見交換をおこなう趣旨なのだろう。

 「コンテンツ配信の促進を法制度で」という手法が議論される背景には、海外と比べ日本でネット配信が進まなかった原因として、コンテンツに複雑に絡む著作権・著作隣接権が挙げられがちだったことがある。現行の著作権法では、音楽や映像の著作者はもちろん出演者・レコード製作者・放送事業者など多数の権利者から許諾を得ないとネット配信ができない。同協議会の「会長・副会長試案」の主旨は、この多数の権利者と配信事業者との交渉コスト(そこには許諾を拒否されるリスクも含む)を下げる目的で、あるコンテンツにつき1名に権利を集約し許諾処理をさせるというところにある。
 しかしこの発想は、関係権利者の許諾権を制限するのと裏腹で、権利者団体から批判されている。実は「会長・副会長案」では、コンテンツの関係権利者の多数(割合はまだ決まっていない)が権利集約に反対すれば従来のままとされているが、かつて強制的な権利集約を主張していた「ネット法」構想(デジタル・コンテンツ法有識者フォーラム——協議会副会長のひとり角川歴彦氏や、事務局長の岩倉正和弁護士もメンバー)に案の出自があるため、権利者側の警戒感が強いままだ。

 デジタル・コンテンツ利用促進協議会だけでなく他の団体でも、コンテンツ流通を促進するのに何らかの方策をとる案が考えられている。たとえばコンテンツ学会の「ネット利用調整制度に関する民間審議会」では、今後制作される番組でネット配信が決まっていないものに配信事業者を決めるオークションを義務付ける制度(ただし時限的な制度を想定)が模索されている。また、「ネットワーク流通と著作権制度協議会」では契約モデルと使用料分配モデルを放送番組のジャンルごとに設定することで、ネット配信の際の話し合いの手間を減らす方向性が議論されているらしい(今のところ協議会としてのまとまった案が公表されていないが、会長職務代行の松田政行弁護士によるいわゆる「松田私見」の形で発表された資料は存在する)。

 こうさまざまな組織で議論される“デジタル・コンテンツ流通促進策”が出始めた頃には、確かに日本国内のネット配信状況は海外に見劣りしていた。ところが、最近になってNHKTBSフジテレビなどで「見逃し視聴サービス」などが少しずつ開始される環境になってきた。ゆっくりした歩みではあるが、こうしてネット配信の試行錯誤が始まったことで、はたして法制度などに頼った「促進策」が必要なのか、との観点からの議論が今後出てくるのは間違いない。
 状況の変化を横目に、以前は強く「ネット配信を促進しろ!」と考えていた私にも実は変化が起きてきている。と言っても、コンテンツホルダーに任せておけば十分と考えているのではない。むしろ逆で、動画配信サイトを使って日本製コンテンツを知らしめる試みが始まっていても、日本のユーザーからは見えないようにしていることが多いのに呆れているのだ。米国でDRMフリーの配信が広がっていても、日本のユーザーは相変わらず不便を強いられ続ける実態もある(iTunes Storeが代表例ですな)。そうまでして日本人の視聴機会を制限したいのなら、日本のコンテンツ産業がジリ貧になっていくのを黙って見ててやろうかって気にすらなってしまう。
 かなり後ろ向きな態度だと自分でも思うが。

 いやいや。たとえば日本で作られているコンテンツが、より利便性の高い形でいつまでも享受できるようになっていてほしい——そこまでの強い愛着がある視聴者なら、おそらく現在の試行の延長だけでは満足できない筈だ。何らかの強制力を働かせるか、あるいはコンテンツの送り手側が目覚めてユーザーへ不便を強いるのを放棄しないかぎり、状況は改善しないだろう。“廃盤”“絶版”だったり、ユーザーが「欲しい」時・場所では入手困難な作品が存在して、海賊版のニーズを高め続ける。
 触れたい作品が海賊版でしか入手できないなんてことほど悲しい状況はない。しかしそんな事例はいくらでもあるわけで、そういう思いがある以上はこの「流通促進」の問題で黙っているわけにはいかないだろう。私も。

 心の持ち方ひとつではあるが、今の「流通」に不満があるのなら、やはり3月12日のシンポジウムに期待できるものはある。

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2009年2月17日 (火)

文化庁の政令案パブコメ: おそらくはJEITAの立ち回り方が巧いのと、状況が彼らに有利だというのがあるのだろう

 文化庁が、私的録画補償金をブルーレイディスクへかけるための意見公募手続(パブリックコメント)を始めている。

 私的録音録画補償金というと、2005年からiPodへ課金する・しないで騒ぎになったアレである。ユーザーが家庭内で音楽・映像を録音したり録画したりするとその著作物の送り手に「不利益」を与えるとの(ユーザーからすれば一方的な)考えで、録音・録画機器や記録メディアへ課金して権利者への「補償」に充てられる。機器やメディアの価格に含まれるため実質の負担はユーザーがするのだが、補償金をまとめて権利者団体へ支払うのはメーカーという制度だ(そのため、この制度についてメーカーの発言力が大きくなる)。
 この補償金は主としてMD・CD-R/RW・DVDなどに課金されているが、2000年に指定されたDVD(-RW・+RW・-RAM)以降は、新しい機器への対応がされてこなかった。にわかにハードディスク内蔵の録音・録画機器への課金を権利者が叫びだした理由はそんなところにもある。

 そして、その課金対象にブルーレイディスクを追加しようというのが今回の文化庁の動きだ。なぜブルーレイに課金することになったのか、なぜ今回ブルーレイだけなのか――は後で説明するとして、課金対象を加えるときの手続について少し触れておきたい。
 著作権法の中では、補償金の課金対象は「政令」つまり内閣が出す命令(ここでは「著作権法施行令」)で指定するよう定められている。政令へは、指定機器の仕様を条文の形で書き込む。
 加えて、政令を改めるときには前もって30日間以上の意見公募手続が義務付けられている(行政手続法第39条)。ということで、今回の文化庁の政令案パブコメは2月3日から3月4日までに設定されている(これまで話題になってきた審議会報告に対する「任意の意見募集」よりも厳格な手続が決められている)。

 今回のパブコメの焦点は、政令案の文言の妥当性だ。規定ぶりに過不足が無いか、副作用が存在しないか、といった具合。政令案は『e-Gav』サイトに掲載され、「概要」と「新旧対照条文」が参照できる。


私的録音録画補償金の議論ってどうなってたっけ?

 ブルーレイ課金や政令案の話に入る前に、補償金見直しの話がどうなったのかをおさらいしておく。
 iPod課金の議論をきっかけに、2008年度まで文化審議会著作権分科会で制度の「根本見直し」が話し合われてきた。直近2年分の報告書が(PDF)この1月にまとめられたところだ。しかし周知のとおり、HDD内蔵型のiPodのようなオーディオプレーヤーや、ハードディスクレコーダーへの課金の是非には結論が出なかった。補償金を求める権利者側と、補償金廃止を主張するメーカー側とで対立が激化したのが直接の原因。この対立で、議論の場だった私的録音録画小委員会が運営できなくなるほどだった(もっとも個人的には、文化庁の議事運営がヘタを踏みまくっていたと考えている)。
 結果、補償金制度で変更される唯一の点が、いまパブコメにかけられているブルーレイへの課金となる。では、なぜブルーレイだけが例外となったのか。

 議論を複雑にしたのは、2011年に地上アナログ放送から地上デジタル放送へと完全移行する予定だったこと。アナログ放送ではコピー制限がかかっていない一方、デジタル放送では「コピーワンス」「ダビング10」といったコピー枚数制限がかけられているため、その録画に補償金をかけるのは如何かという議論になったのだ。文化庁でなく総務省の審議会で。
 従来から、機器メーカーの業界団体・JEITA(電子情報技術産業協会)はアナログ停波を機に私的録画補償金を廃止すべきと主張してきた。コピー制限がある以上、権利者のコントロールのもとで録画がされており、ユーザーの録画で「不利益」にはならないとの趣旨だ。一方、JASRAC(日本音楽著作権協会)を始めとする権利者側は録画される事実がある以上「補償」すべきだとする。
 2007年8月(総務省・情報通信審議会第4次中間答申)でダビング10の仕様が決められたが、「コンテンツを適切に保護し、その創造に関与したクリエーターが適正な対価を得られる環境を実現すること」とするダビング10開始の前提条件の解釈をめぐって権利者側とメーカー側とで対立、いったんは開始の見込みが立てられた2008年6月2日までに合意できず開始期日を延期するにまで至った。
 事態の打開のため、権利者団体を所管する文化庁と、メーカー団体を所管する経済産業省との間で「ダビング10の早期実現に向けた環境整備」を目的とした二省間合意がなされた。そして6月17日、経産大臣文科大臣のそれぞれの記者会見でブルーレイディスクへの「暫定的」な補償金課金が発表された。これを受けて、「適正な対価」イコール補償金だとする権利者側が、補償金の対象が追加される前に「ダビング10」を開始するという妥協を強いられた。

 こうして、本来は文化庁の審議会で決定される筈のブルーレイの課金が、二省間合意というイレギュラーな形で決定されてしまった。しかも、この合意の後も地上デジタル放送と「補償金」の関係は曖昧なまま。しかも当の総務省の審議会でも「適正な対価」の中身に結論が出されていない。


文化庁の政令案と、JEITAのパブコメ

 今回の政令改定で追加指定されるのがブルーレイだけなのは以上のような理由による。
 では、実際に文化庁がパブコメにかけた政令案はどんな内容か。これまでの政令で補償金の課金対象を第1条2項で指定してきたところ、その第4号としてブルーレイを特定する技術仕様を追加している。従来のCDやDVDを規定したのと同様、記録するディスクの大きさや、ピックアップから記録面までの距離が数値で書き込まれる(ただしJEITAはここの書きぶりに注文をつけている)。以下のとおりだ。

光学的方法により、特定の標本化周波数でアナログデジタル変換が行われた影像又はいずれの標本化周波数によるものであるかを問わずアナログデジタル変換が行われた影像を、直径が百二十ミリメートルの光ディスク(レーザー光が照射される面から記録層までの距離が〇・一ミリメートルのものに限る。)であつて前号ロに該当するものに連続して固定する機能を有する機器

※引用者註:「前号ロ」とは、著作権法施行令第1条2項3号の「記録層の渦巻状の溝がうねつており、かつ、連続しているもの」を指す。

 今回の政令案で変更されるのはこの部分だけ。単純に新しい規格が書き加えられただけということ。いったん指定された機器は、たとえ生産されなくなっても指定解除されないのがこれまでの運用だっただけに、政令案が妥当なものかは慎重に見る必要がある。条文がきちんとブルーレイを特定できているのか、今回の追加指定の根拠となる二省間合意の内容を正確に反映されているのか——の2点に注目。
 ところがブルーレイの技術仕様や、二省間合意の詳しい内容など、判断するための情報をエンドユーザーが一人ひとり持つのは難しいところではある(技術仕様については、こんなページがあったりもするが)。そこを考えたのか、JEITAがその両方の情報を含んだパブコメを公開した。提出期限を大幅に先行する2月13日のことだ。
 おそらく、私も含めてだが、JEITAのパブコメを参照したユーザーの意見が文化庁へ提出されることになるだろう。JEITAの立ち回り方の巧さを感じてしまう。

 政令案を見る上で問題となる二省間合意の内容だが、JEITAのパブコメによれば、経済産業省と文部科学省の両方から情報公開を受けた結果は次のようなものらしい(下は私が要約している。全文はJEITAのパブコメを参照されたい)。

(1)両省は無料デジタル放送に関する補償金問題について短期間で関係者が合意できる状況でないと認識
(2)文科省はDRMの有無が支払い義務の発生要件になるか明らかでないと認識
(3)経産省はメーカーが地上デジタル放送の録画について補償金の対象とすべきでないと考えていると認識
(4)両省はブルーレイがアナログ放送も録画できることを踏まえて「暫定的な措置として」補償金を課金、政令施行後3年を目途に施行状況等を検討して適切に対応
(5)無料デジタル放送の録画については早期に合意が形成されるよう引き続き努力

 昨年6月の二省間合意以降、上記の状況に変化はない。となれば、この二省間合意の範囲内で課金対象を決めないと、文化庁の筋は通るまい。すなわち、アナログ放送のブルーレイ録画には課金をするものの、無料デジタル放送については合意待ちということ。特に「政令施行後3年」(当時の合意の前提からすれば2011年6月、政令指定に要するパブコメ期間を見ても2011年7月と見るべきではないか?)の見直しが必要となる。
 もっともJEITAのパブコメには、政令指定されたブルーレイでも無料デジタル放送の録画には課金すべきでない(それが合意事項だ)としているが、さすがにそこまでは支持できない。二省間合意の中では、経産省もブルーレイに課金した結果デジタル放送も対象になってしまうことは「政令施行後3年」の間は容認しているように読めるからだ。まぁいわゆる官僚的な曖昧な作文なのだろうが。
 文化庁の著作権分科会では話がまとまらず、今回のブルーレイへの課金の根拠が二省間合意にしか無い以上、課金の範囲に合意内容を反映させろとのJEITAのパブコメの趣旨には肯けるところだ。

 JEITAは、上のような限定的な課金の明言を求めるとともに、ブルーレイの指定の仕方にも注文をつけている――「BDを特定する要素として、光ディスクの保護層の厚さ0.1ミリメートルに加え、レーザー波長405ナノメートル及びレンズ開口数0.85の要素を追加して規定することは必須要件である」。今の政令案に該当しながら、レーザー波長やレンズ開口数が異なる新規格が登場する可能性があるため、とJEITAはパブコメに書いている。
 課金対象となる規格をひとつひとつ文章で指定していくという制度運用を考えれば、ブルーレイの指定の文言をJEITAの言うとおりに規定しても不都合はないだろう。


そしてエンドユーザーはどうする?

 今も募集中のパブコメだが、我々エンドユーザーとしてはどう向き合うべきだろうか。

 まず、ブルーレイへの補償金課金の最終ステップに来ていることを意識すべきだろう。「ブルーレイへの課金反対」と断固たる意見を送るのもひとつの姿勢ではあると思うけれども、文科大臣と経産大臣まで担ぎ上げて「合意」した内容にもとづく課金だ、官僚の立場で今さら覆せるかという問題がある。だから意見する現実的な方向は、二省間合意を正確に反映した内容かどうかで押すことだろう。
 その意味では、JEITAが公表したパブコメの方向も妥当なものと感じる。主張自体はどうかなと思う部分もあるが、まぁ大臣の合意というのはそんなに軽い話なのか?」‥‥、いや、そんな筈はないのである。


一応、権利者の側の主張も

 リンクだけ示しておく。
 これまでの展開で同情すべき点があるにしても、やはりこの主張には乗れないのである。

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2009年1月26日 (月)

著作権分科会の前夜(メモ)

 著作権制度に関する2008年度の議論の締めくくりとして、26日の10時から著作権分科会が開かれる。「法制問題小委員会」「過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会」「私的録音録画小委員会」「国際小委員会」それぞれで検討されてきた結果の報告が出される予定だ。

http://www.bunka.go.jp/oshirase_kaigi/2009/chosaku_bunkakai_090126.html
「文化審議会著作権分科会(第27回)の開催について」
(文化庁)

 各小委員会の報告書案は、既に文化庁のサイトに掲載されている。実際の報告書で大筋に変更があることは考えられないが、いくつか細かな修正は入っているだろう。
 ともあれ、現時点で判っていることを軽くまとめておく。



http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/housei/h20_11/gijiroku.html

http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/housei/h20_11/pdf/shiryo_1.pdf

 法制問題小委員会では、「平成19年・20年度」ということで、2年分の検討結果が1冊の報告書にまとめられた。平成19年の「中間まとめ」と平成20年の「中間まとめ」がベースになっている。
 2年間で検討された課題は次のとおり。

・デジタルコンテンツ流通促進法制
・海賊版の拡大防止のための措置
・権利制限の見直し
・その他の課題

 「デジタルコンテンツ流通促進法制」について、「コンテンツの二次利用に関する課題として、権利者不明の場合の利用の円滑化」「インターネット等を活用した創作・利用に関する課題として、関連の権利制限規定の見直し」「権利者が安心してインターネットにコンテンツを提供するための環境整備としての海賊版の拡大防止策」を盛り込むよう提言しているが、流通促進法制を実施するということにまでは踏み込んでいない。

 海賊版については、ネットオークションなどで海賊版を売るとの告知を行う行為(譲渡告知行為)を禁止する方針と、海賊版被害について権利者の告発なく公訴できる「非親告罪化」を見送る方針が書かれている(平成19年度時点の結論から変更なし)。

 権利制限は、この2年間のメインの議題でもあった。しかし項目によって、ただちに権利制限に加えるべきとされるものと、慎重な検討を要す(つまり今後も議論を継続する)べきもので分かれた。
 障碍者に向けた、手話・字幕付きの映像や録音図書について、権利制限が認められる対象を緩める。たとえば視覚障碍者や聴覚障碍者に限っていた項目で「障害等により著作物の利用が困難な者」も含めたり、複製する人物や方式も従来より広げるなど。また、ネットオークションでの商品画像の掲載や、検索エンジンのサーバでの著作物の蓄積についても法改正することが妥当との結論を出している。なおこれらは2007年度に既に結論が出され、これまでの間、文化庁に放置されてきたとも言える。
 また、機器利用時の(機器内での著作物の)蓄積について「著作物等の視聴等に係る技術的過程において生じる」「付随的又は不可避的で」「視聴等に合目的的な蓄積物であって、‥‥合理的な範囲内の視聴等行為に供されるもの」といった条件を付けての立法措置を提案。通信過程での蓄積も「権利が及ばないこととする立法措置を講ずることが望ましい」とする。
 これらの法改正妥当とした項目の他、リバースエンジニアリング、研究開発上の著作物利用については議論を継続する旨でまとめられた。なお、薬事関係や図書館・学校教育などでも継続して議論する予定とされていた項目があったが、これらは実質的に議題に取り上げられず、今後の議論ということにされている。
 権利制限の課題については、報告書案が法制問題小委員会で了承されるさい、法改正すべきと結論された項目をより判りやすくすべきではないかとの委員意見が出されている。著作権分科会で提出される報告書では、そのあたりが修正されているものと考えられる(項目の入れ替えなどがあるか?)。

 違法複製物や違法配信物からの私的複製の30条除外(いわゆる「ダウンロード違法化」)については「その他の課題」の中で触れられるのみ。法制問題小委員会では、私的録音録画小委員会で(映像と音楽については)法改定妥当と結論付けたのをそのまま受け、プログラムの著作物についても30条除外するかが検討された。結果は法改定をただちに提言するものではないが、映像・音楽以外の著作物について検討を続ける旨でまとめられる。
 加えて、「ライセンシーの保護」「間接侵害」「法定損害賠償制度」も今後も検討を続けるとのこと。

 なお、知的財産戦略本部「デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会」での報告で注目される「日本版フェア・ユース規定の導入」については、法制問題小委員会の報告書において「その他の課題」として「順次検討を行うことが必要」と軽く触れられるのみ。

http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/hogo/07/haihu.html
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/hogo/07/pdf/shiryo_02.pdf

 保護利用小委は、「過去の著作物等の利用の円滑化方策」と「保護期間の在り方」の二本柱でまとめられる。保護期間の方については、各報道のとおり、延長要望派と慎重派との両論併記で「検討を続けることが適当である」とまとめざるを得なかった。
 利用円滑化については、権利者が不明の場合の著作物利用と、国立国会図書館が行うアーカイヴについては法的措置が妥当と結論。その一方で、多数権利者が関わる場合(少数の反対者による許諾拒否)、権利者の意思表示システム(自由利用マーク・クリエイティブコモンズなど)の法的バックアップ、二次利用・パロディ、非営利無償のアーカイブなどについては今後の検討とされた。
 


http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/rokuon/h20_5/gijiroku.html

http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/rokuon/h20_5/pdf/shiryo_01.pdf

 私的録音録画小委は、いわゆる「ダウンロード違法化」を実施するよう結論するのみで、私的録音録画補償金に関する合意は一切無かった。文化庁は、補償金にまつわる課題の整理が終わったかのように演出しているが、補償金廃止と補償金存続を同居させた「文化庁案」を掲げているかぎり、補償金問題が解決することはないだろう(私見)。

http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/kokusai/h20_02/gijishidai.html
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/kokusai/h20_02/pdf/shiryo_03.pdf

 国際小委員会では、世界知的所有権機関(WIPO)などの国際会議の動向をみつつ、日本が先行して何を検討・提案していけるかという「検討課題」がまとめられた。小委員会では「エンフォースメントの実効性確保に向けた取組」に強い関心のある委員が多い。模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)の交渉が進んでいることもあり、検討結果よりも、むしろ今後の状況が大きく動きそうで要注目の小委員会ではある。

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レンタル業界の、自分たちの商売を「守る」ための働きかけについて

 CD/DVDレンタルの業界団体が出している機関紙の今月号に、興味深い記事が載っていた。映画がDVD化され、それがテレビで放送されるまでの期間の話だ。

 映画は製作に多額の費用をかけており、その製作費は劇場での入場料の他、DVD化やテレビ放送など、複数の商品化の機会をとらえて回収する仕組みになっている。劇場・DVD・テレビ放送など、観客との接点は「ウインドウ」という呼ばれ方をする。「ウインドウ」を複数用意できることは、製作する側にとっては、ひとつの作品から何度も利益を出す機会が得られるメリットがある。また、鑑賞機会に応じた対価(一般的には待てば安価になる)が設定されることから、観客側も時期や対価を基準に選択肢を得られることになる。

 DVDレンタルも、そんな「ウインドウ」のひとつだ。時期としてはDVD発売以後、300円から400円程度で映画1本を鑑賞できるという、コストパフォーマンスのかなり高い鑑賞機会を提供している。そんなレンタル業界が気にしているのは、そのDVD発売から地上波での放送までの期間だという。“タダ”で映画が見られる地上波放送が済んでしまえば、その映画をレンタルしてもらえる見込みが極端に減る。つまりレンタル業界の“稼ぎ時”がこの期間に限られるという考えだ。

 先に述べた機関紙の記事によれば、DVDなどのパッケージリリースから365日以内に地上波で放送された映画の数は、2002年に11作品、2003年に12作品、2004年に13作品と来ていたところ、2006年には22作品、2007年では28作品と急増傾向にあるのだという。ちなみに、356日というのがどこから来てるのかと言えば、レンタル業界から製作側へ求めているのが、DVD化から放送まで最低でも1年間あけてほしいということかららしい。こういう働きかけをしているとは知らなかった。

 DVD化から放送まで短期間になりそうな事例として、『三国志』を映画化した『レッドクリフ』の例が出されていた。この作品は2部構成で公開されていて、Part 1が今年3月11日にDVD発売され、Part 2が4月10日に劇場公開される予定だ。このPart 2の上映を成功させるため、製作にも関与しているエイベックスが構想したのが、上映直前にPart 1をテレビ放送するという手法だったという。

 続編映画をプロモーションするのに、前作をテレビ放送するという手法はこれまでにもよく取られてきた。また、シリーズでなくても、関連作をテレビ放送して上映を勢いづけるということもよくある。ただ『レッドクリフ』についてレンタル業界が神経をとがらせたのは、Part 2のプロモーションとはいえ、Part 1のDVD化から1か月を切る時期に放送されるということだった。CDVJとエイベックスとの間で話し合いの場を持ち、「出来る限り地上波放映を送らせ、せめて1ヶ月はパッケージリリースから期間を開けてほしい」「地上波放映の後、回転が激減することは明白なので、可能な限り仕入れについて柔軟に対応してほしい」といった要望を入れたと機関紙の同記事にはある。

 「本件については初めてのケースであり、データを採取した上で十分な検証を行うことが必要である」と同記事は締めくくられている。どうせ避けられないことなら、しっかり今後の参考にしようという点で冷静な判断かと思われる。そういえば、確か『デスノート』の時にも後編の封切り(2006年11月3日)直前に前編をテレビ放送(同年10月27日)した筈だったのだが、この時はCDVJでは問題視しなかったのだろうか。DVD発売(2007年3月14日)前の放送だったので別扱いなのかも知れない。

 ところでこうしたDVD化からテレビ放送の期間が短くなってきている問題にかぎらず、今後のレンタル業界にとって、流通の変化が重くのしかかることが予想されている。レンタル業界内部での競争を考えても、レンタルと販売の複合店の存在感が大きくなっていたり(しかしこういうのはだいたい大型店)、「ツタヤ ディスカス」や「ぽすれん」といった郵送ベースのサービスなどが登場している。もっと脅威的なのは、インターネット配信などのVideo On Demandという外部との競合だ(今回ネタにさせてもらった記事でも、「アクトビラ」が今後強力なライバルになるとの見通しが示されている)。

 ネット配信に少なからぬ期待をしている私から見れば、iTunes Storeでのビデオレンタルが日本で開始されていなかったり、レンタル業界がDVDと同じく扱っているCDについても、レンタルと競合できるほど安価なネット配信はまだ登場していない(もっともCDシングルのレンタル在庫数は、レコード協会の調査によれば、音楽配信が本格化する前から減り続けているとのこと)ことに大いに不満がある。その一方で、これらがレンタルと競合し始めたら、業界が生き残っていく術があるのだろうか。

 ユーザーへ安価に音楽を届ける“スキマ商売”として始まったレコードレンタルの時代から、この業界には“お世話になってきた”私ではあるけれども、音楽配信・レコード配信といった新しい流通の日本での発展に対して、もしレンタル業界が「パッケージ」にとどまることを望む“抵抗勢力”になってしまうとしたら、ちょっと困るなぁと思ったりする。

 DVD化から放送までの期間で調整するのだったら、私は期間がそう長くても気にならない。レンタル業界を救うために配信が不当に制限されるとかいうことでなければ、テレビ放送の例のような穏当なところで配信とレンタルの棲み分けを模索して欲しいと願うばかりだ。


※今回のネタ元
日本コンパクトディスク・ビデオレンタル商業組合『CDV JAPAN』
No. 298 (2009年1月号)
「THE SPECIAL 多メディア時代のウインドウの在り方を考える」

Posted by 谷分 章優 映画・映像 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年1月23日 (金)

権利者の「努力」をどう評価するかで、「流通促進法制」の評価も変わる

 21日に、総務省の情報通信審議会 情報通信政策部会「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会」(通称・デジコン委員会)第48回会合が開かれた。

 デジコン委員会では、地上デジタル放送の著作権保護ルールをどう強制するかの検討を「技術検討ワーキング」で行っている。また、インターネットでのコンテンツ流通の効果と課題を実際の番組制作からさぐる試みを「市場取引ワーキング」で行っている。本委員会の下に2つのワーキンググループを設け、専門的で小回りのきいた議論をするという趣旨だ。本委員会では、そのワーキングでの検討経過を受けて議論を深める。ちなみに前の2回は、「技術検討ワーキング」の報告をもとに、B-CAS関連で議題が設定されていた。

 今回の議題は、もう一方の「市場取引ワーキング」に関するものだ。デジタル・コンテンツ利用促進協議会が1月9日に公表した、コンテンツの権利関係を整理する特別法を設けて流通促進をはかる「会長・副会長試案」(PDF)について、ヒアリングが行なわれた。また、同協議会とは対照的な立場をとる「ネットワーク流通と著作権制度協議会」で検討中の「流通促進方策」についてもヒアリングがあり、いわゆる「流通促進」の考え方に対する権利者側委員の疑義が相次いだ。

 特に、利用促進協議会の「会長・副会長試案」は、デジタル・コンテンツ法有識者フォーラムが提案した「ネット法」構想が叩き台になっているため、反発する声が目立った。

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Posted by 谷分 章優 映画・映像, 知財戦略, 著作権, 音楽と著作権 | | コメント (0) | トラックバック (0)