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2006年1月25日 (水)

洋楽盤差止めじゃないか──と話題になってるヤツですが。

 音楽レコードの還流防止措置(いわゆる「輸入権」問題)が正式運用されるようになって1年以上経過したわけですが、日本レコード協会で公表されている「輸入差止申立に係る対象レコードリスト」を見てみると「アレレ?」と思うようなものが散見されるようになりました。明らかに海外アーティストのCDが含まれるようになってきたのですね。
 ベルヌ条約の話はさておき、制度創設の趣旨としては邦楽アジア盤の「還流」を止めるということが強調されていた訳です。となると いわゆる洋楽盤がレコ協リストに入ってくることは、制度趣旨に反しているということが言えます。

 ここのところ話題になっていたのが Grady Tate の 『All Love』 でした。

http://mal.cocolog-nifty.com/antena/2006/01/smegrady_tate_fa84.html
「これは洋楽盤輸入差し止めか?:SME GRADY TATE『オール・ラヴ』」
(MAL Antenna)

http://blog.drecom.jp/ecolin_profile/archive/638
「輸入権行使の問題について、どなたかヘルプPlease!」
(ふっかつ!れしのお探しモノげっき)

http://park5.wakwak.com/~rung/mt/archives/000540.html
「輸入権の問題点まとめ助けて!」
(趣味の問題2)

 この「洋楽盤輸入差し止め」の問題はやや複雑ですので、一歩ずつ行きます。

 店頭で現物確認したところ、 Grady Tate 『All Love』 は国内原盤でした(洋楽なら付されている○にYのマークが無くて、国内原盤の○にLのマークの方が付されています)。今回の盤(レコ協リストに掲載されたやつ)も、前回発売された盤も両方 国内原盤の扱いです。
 ついでに調べましたが、 Lady Kim 『Everything Must Change』 ・ Clementine 『Made In France』 『30℃』 も国内原盤でした。 Clementine 『CLE』 がまだ確認できていません(どなたか店頭で見られた方いらっしゃいますか?)。




■外国原盤か国内原盤(私はあえて「邦楽盤」と呼びません)を見分ける方法

 御存知の方は多いかと思いますけど、日本で発売されているCDには、外国原盤と国内原盤を区別するマークが入っています。日本レコード協会が「オーディオCDの表示事項及び表示方法」 (RIS 204) という規格を定めていまして、少なくとも会員社は○にY (Yougaku =洋楽の意)か○にL (Local =国内の意)のマークを入れることとなっています。だいたいは発売年月日のそばに入れてあります。

http://www.riaj.or.jp/issue/ris/pdf/ris204.pdf
「オーディオCDの表示事項及び表示方法」
(日本レコード協会・ PDF)

 要は、レコ協リストに掲載されたCDの原盤が本当に国内の会社のものなのかは、現物を見れば判る仕組みになっています。でもまぁ、現物が店に置いてあるとは限らないし(私も調べるのに何軒かハシゴしましたから)、そもそも調べる時間があるかも判らない。とりあえずは、事実関係を調べるなら それが確実だという話です。

 さて。原盤のあるところを調べるのに、傍証を用いる方法があります。レコ協と JASRAC が協力して運営しているサイトに次のようなものがありまして、その録音に関する情報を得ることが出来ます。

http://www.minc.gr.jp/
「Music Forest|音楽情報サービスネットワーク」

 このサイト、検索窓は全角で入力しなければならないとか、きちんとした検索結果が得られにくいとか、問題が無きにしもあらずなのですが、ヒットした時に出てくる情報は結構面白かったりします。例えばメインアーティスト名「グラディテイト」で検索し、さらに「グラディ・テイト」の項目を見てみると 「All Love Grady Tate Sings」 の情報が出てきます。

http://www.minc.gr.jp/minc-bin/alb_lst3?
MARTISTCD=000000038091

「アルバム詳細情報:All Love Grady Tate Sings」
(Music Forest)

 発売日は 「2002.06.19」、 カタログ番号が 「VRCL-006002」。今回話題になっている盤ではなくて、その前に発売された方の盤ですね。
 ここで注目したいのは、 「ISRC」 です。同ページの解説によれば「国際規格として定められた「音源」のコードで、収録曲の原盤(音源)ごとに付与されます」とあります。本CDについては各曲に 「JPK000200041」 から 「JPK000200049」 までのコードが付されているようです。
 勘の良い方はピンと来てるのではないでしょうか。このコード、最初の2桁が国名コードになっているのです。もちろんアルファベット。 「JP」とは、録音を行なった者として登録したのが日本の会社であることを示しています。

 どうやら、少なくとも最初に発売された 『All Love』 は国内原盤のようです。もし今回再発されたCDが同じ原盤を使用しているのであれば、同様に国内原盤だと言えそうです。
 もっとも海外のレコード会社がリミックスをしたりすれば この録音コードが変わってしまう(つまり外国コードでの登録になる?)のではないかという気もします。こればかりは現場の方にしか判らないでしょうが。ともかく部外者である いちユーザーが調査している段階では「傍証」としか表現のしようがありません。

 なお、レコ協によると 「ISRC」 は次のように解説されています。

http://isrcdb.jmd.ne.jp/
「RIAJ - ISRC」



「International Standard Recording Code」の略称で、日本語で「国際標準レコーディングコード」といいます。
レコーディング(オーディオレコーディング及び音楽ビデオレコーディング)の識別に利用される唯一の国際標準コードです。
ここで言う「レコーディング」とは「収録及び編集の作業によって得られた成果」をさし、バージョン違い(リミックス)やタイム違いをはじめとする「視聴覚的に識別できるもの」は全て異なるレコーディングとして扱われます。
1つのレコーディングは1つのISRCによって識別されます。異なる複数のレコーディングに同一のISRCを付けたり、単一のレコーディングに複数のISRCを付けたりすることはできません。また、一度付番したISRCを変更することはできません。

 しかしながら、先に書いたリミックスの話に加えて詳細は後述しますが、必ずしも ISRC が原盤所有国を示しているとは限りません。また 『Music Forest』 で「現在、RIAJから提供されている2003年までのアルバムに関する収録曲についてはこれが付与されています」との注意書きがあることから、決定的な情報を得るには心許ないところであります(単純に、新しいCDについては当該コードが入力されているか保証できないということなんでしょうけど。最近のアルバムでもコード情報が出てくるのがありますから)。やはり「傍証」ですかねぇ。

 ちなみに、他のアルバムも調べてみました。
 レディ・キム『エヴリシング・マスト・チェンジ』は 「JPK000400472」 から 「JPK000400482」。
 クレモンティーヌ『メイド・イン・フランス』は 「JPTO00500523」 から 「JPTO00500534」。
 クレモンティーヌ『30℃』は 「JPN200200881」 から 「JPN200200893」。
 クレモンティーヌ『クレ』は 「JPES00300641」 から 「JPES00300651」。

 今のところ、“疑惑”が指摘されたものについては国内原盤であるとの「傍証」があると思われます。




■ISRC を“偽装”することは可能か?

 ISRC を確認することで、“疑惑”盤の原盤国を知る「傍証」が得られる──というのが先の話でした。
 では、次に心配になるのは、その ISRC を操作して国内原盤であると“偽装”できるのではないかということです。洋楽を止めるために国内原盤に見せかける‥‥?

 ISRC に関する各種規格はレコ協のサイトに掲載されています。

http://www.riaj.or.jp/issue/ris/pdf/ris503.pdf
「日本レコード協会規格 RIS 503
 国際標準レコーディングコード (ISRC)」
(日本レコード協会・ PDF)

http://www.riaj.or.jp/issue/ris/index.html
「発行物」
(社団法人 日本レコード協会)

 このうち、 ISRC そのものの規格である RIS 503 での 「ISRC の基本原則」を引用してみます(当該 PDF のノンブル1頁から)。

3. IRSC の基本原則  IRSC の基本原則を、次に示す。
(1)すべてのレコーディングは、固有で一義的な ISRC を持たなければならない。
(2)登録者は、国内 IRSC 登録管理機関によって付与された登録者コードでのみ ISRC を付与することができる。
(3)新たに製作されたレコーディング及び変更が加えられたレコーディングのすべてに対して、常に新しい ISRC を割り当てなければならない。
(4)元の登録者が、そのレコーディングを発行したあとに、変更を加えないで譲渡したときは、同じ ISRC を用いなければならない。
(5)既存のレコーディングに割り当てられた ISRC の再使用は認められない。
(6)ISRC はレコーディングを識別するためのコードであり、そのものがレコーディングの権利者を示すものではない。
(7)ISRC はオーディオ又はオーディオビジュアルの媒体の分類・番号付けなどに使用してはならない。

 う〜ん‥‥ 「ISRC を“偽装”することは可能か」なんて見方をしてたら、アレもコレも怪しく見えますねぇ。例えばリミックスをした場合には新たなコードが付与される点とか、譲渡してもコードが保たれるとか、御丁寧に「そのものがレコーディングの権利者を示すものではない」とか書いてあるし。
 さらに気になる記述が「国名コード」の項目にありました(当該 PDF のノンブル2頁より)。

5.1. 国名コード  国名コードは、 ISRC が付与された時点での登録者の本社が所在する国を識別する。但し、数カ国で業務を行うグループ企業に所属する場合には、国内業務組織が所在する国で登録することができる。

 どうですか、これ? おそらくはメジャー系のレコード会社だと本社が外国にあるから、国内のレコード会社で録音した時にそこが登録できるようにする規定だと思うのですけど、使いかた次第で“偽装”を可能にするようにも思えませんか?




■“偽装”は理論的に可能かも知れないけど、問題はそこにあるのではない

 ISRC を“偽装”できるかなんて、実務を御存知の方が読まれたら笑い飛ばされるかも知れませんね。何というか、陰謀説みたいなもので。仮に海外の録音を日本盤に“偽装”するにしても、こちらの国で登録だの何だのと実務をこなさないとならない訳ですから、たかが輸入盤を止めるためだけに そこまで手間暇かけるメリットがあるのか否か。
 そこまで洋楽輸入盤を止めたいのなら、ストレートに権利行使するのと違いますかねぇ? 単にダンピングしたアジア盤に「日本国内頒布禁止」表示をしてやれば要件は満たす訳ですから。海外の権利者なら文化庁ガイドラインには従う必要が無いわけで。

 ここまで長々と書いてきたのは、事実関係をとりあえず押さえておきたいという思いからです。その是非はともかくとして、今のところレコ協リストにあるアルバムは国内原盤のものだけ(らしい)。還流防止措置の問題点を指摘するにしても、そこは押さえておく必要があると思います。
 また、国内原盤“偽装”にしても今現実に起こっているわけではありません(というか、起こっていても判りようがない)。ここを根拠に糾弾しようにも決め手に欠ける。問題ありと見えるのに、具体的に指摘することができない‥‥?

 もちろん洋楽盤自体がリストに登場しないか監視し続けることは必要です。ただ それ以前に、原盤国が日本なのかどうかを気にするのではなく、還流防止措置が当初の立法趣旨に適う形で運用されているのかという視点で評価(良い意味でも悪い意味でも)すべきでしょう。
 すなわち、彼らは何を守るために還流防止措置を求めた(ことになっている)のかということです。

 ──これは項を改めて考えます。
 予告代わりにリンクを。

http://ohbentoh.blog16.fc2.com/blog-entry-41.html
「邦楽と洋楽の境目」
(著作権マニア)

 今回の記事に関しては、私は『著作権マニア』さんの主旨に賛成することは出来ません。

Posted by 谷分 章優 音楽と著作権 |

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» 輸入権行使の問題について2 トラックバック Where is a limit?
趣味の問題2さん経由輸入権の問題点まとめ助けて!のコメント欄が既に20以上越えて凄い事になっていますが、自分の方はちと関連するリンク集を作ってみようと思います 関連リンクMAL Antennaさん経由これは洋楽盤輸入差止めか?:SME GRADY TATE「オール・ラヴ」 ふっか..... 続きを読む

受信: 2006/01/27 22:30:39

» 輸入CD・レコードが買えなくなる??…その39 トラックバック 雑貨屋の広報掲示室
 お約束通り、昨日に引き続いて(「その38」参照)社団法人日本レコード協会が作成している輸入差止申立に係る対象レコードリストに見る輸入権の問題を取り上げてみたいのですが....  昨日も取り上げた通り、1月28日現在で「申立予定」「受理済」を含めた全作品数は2...... 続きを読む

受信: 2006/01/29 12:29:45

» 輸入権の問題点まとめ助けていただきました トラックバック 趣味の問題2
まず、わたくしのひどく他力本願な呼びかけに迅速且つ丁寧に応じてくださった皆様に厚く御礼を申し上げたいと存じます。 …… 続きを読む

受信: 2006/01/30 5:58:34

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