「通信・放送の在り方に関する懇談会」#6は動画配信されてるぞ!(追記あり)
総務省の「通信・放送の在り方に関する懇談会」の話です。うちで採り上げない間に第5回と第6回が開催されていました。このうち第6回は放送関係者のヒアリング (NHK ・日本ケーブルテレビ連盟・スカパー・芸団協)でして、驚いたことに会合の模様が動画配信されているのですね。
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/tsushin_hosou/060313_2.html
「通信・放送の在り方に関する懇談会(第6回)会合映像配信」
(総務省)
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/tsushin_hosou/060313_3.html
「通信・放送の在り方に関する懇談会(第6回)配付資料」
(総務省)
http://www.soumu.go.jp/menu_01/kaiken/back_01/d-news/2006/0309.html
「竹中総務大臣記者会見の概要
通信・放送の在り方に関する懇談会(第5回)終了後」
(総務省)
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/tsushin_hosou/0600309_1.html
「通信・放送の在り方に関する懇談会(第5回)」
(総務省)
なお、第6回はいつもと違って議事録も公開されるそうです。この方式、文化審議会でもやってほしいなぁ(まぁヒアリングだからここまで公開されているのでしょうけど)。配付資料についても既に掲載されています。
第5回については、これまでの議論と新たな議論をまとめて扱ったようです。
実は私もまだ関係文書を読んでません。もし何かツッコみたいところが出てきたら、追記していきたいと思います(追記しないかもしれません)。
ちなみに本懇談会の報道の一例──
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20060313/232329/
「【速報】竹中懇の公開ヒアリング,NHK橋本会長らを招き始まる」
(日経BP: ITpro)
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20060313/232364/
「【続報】竹中懇ヒアリング,IPマルチキャストの解釈を巡って芸団協が反論」
(日経BP: ITpro)
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20060309/232185/
「NTTの在り方に関する新たな合意事項はナシ,第5回竹中懇談会」
(日経BP: ITpro)
■芸団協の言い分に耳を傾ける(首を傾ける?)
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/tsushin_hosou/pdf/060313_2_s6.pdf
「社団法人日本芸能実演家団体協議会:
通信・放送の在り方に関する懇談会20060313」
(総務省:通信・放送の在り方に関する懇談会(第6回)配付資料・ PDF)
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/tsushin_hosou/pdf/060313_2_s7.pdf
「クエスチョネア」
(総務省:通信・放送の在り方に関する懇談会(第6回)配付資料・ PDF)
本懇談会において芸団協(の著作隣接権センター CPRA) の椎名和夫氏が意見を述べたわけですが、主としてIPマルチキャスト放送を有線放送とみなすべきとの方針に対する反論であると総括できます。ただ、ことはIPマルチキャストの問題にとどまらず実演家の権利制限に関わるものですので、著作権周りに注目している私としては かなり気になる話題であることは確かです(今期の法制問題小委員会でも初っぱなに議論されるのがこれですし)。
芸団協として提出されたレジュメ「通信・放送の在り方に関する懇談会 20060313」 を吟味していきます。もっとも芸団協という組織そのものに対して言いたいことは別記事「芸団協(実演家著作権隣接権センター)って何やってんだろ?」で披露しましたので、ここではツッコミモードではなく穏やかにやりましょう(できるかな? →私)。
なお今回の懇談会での意見については、懇談会側からの「クエスチョネア」が先に渡され、それに対する回答も含めて聴取することとなっていました。この「クエスチョネア」(どうして「質問」とか日本語で表現しないんですかね)も独立した文書として公開されています が、芸団協についてはレジュメの中で質問文の引用がありますので特に読む必要も無いだろうと思われます。
※あの記事、最初はここの冒頭用として構想していたのですが、ネタとして長くなりそうだった(しかも CPRA サイトの記事にツッコミを入れたくもなった)ことから別記事として独立させました。
【ノンブル1ページ】
「実演家著作隣接権センター CPRA の事業概要」とあります。これ、 CPRA のサイトにも同様のページが用意されていますが、本レジュメだけでも結構わかりやすく書かれています。
【ノンブル2ページ】
「放送と通信の融合について」。
「放送番組の二次利用については、集中管理の体制を構築することで対応」とありますが、この集中管理は音楽配信についても有効であろうと思われます。このあたり、如何お考えなんでしょうかね? (もちろん本聴取で触れなければならないものでもないですけど。)
ネットで実演を配信する技術はもう何年も前から存在するわけで、流通の阻害を起こさないためには許諾システムの整備が必要。となれば、芸団協はきちんと「対応」してきたのかという指摘は当然なされるべきでしょう。公衆送信権(許諾権)が付与されているという事実に甘んじた芸団協側の怠慢と評されても仕方ないところかと。
その意味では、「実演家の『権利』が流通を阻害しているとの短絡的な議論には大きな疑問がある」という反論の短絡性を自覚すべきでしょう。 CPRA が自身のサイトで指摘しているとおり、「送信可能化権が実演家に付与されて 10年 近くがたつが、 CPRA においてはまだこの送信可能化権を処理したビジネススキームが確立されていない」のですから。
芸団協 (CPRA) を代表して意見を述べた椎名氏は、放送のネット配信におけるビジネスモデルが確立していない旨を発言していました。しかし、それでは既にビジネスモデルの確立している音楽配信について許諾システムを構築する努力をしていたのかという疑問が出てきます。それがなければビジネスモデルの確立が直接原因ではないと考えられますから。
レジュメの中で、有線放送にかかる実演家の権利制限(放送についての同制限という含みもおそらく持たせているのでしょう)について不当であるかのように書かれています。
しかしながら実演家に対する著作隣接権が、著作物を伝えるということに対するインセンティブを生じさせるために付与していること、つまりは著作物の流通を止めるために付与されているのではない(むしろ正当な報酬を得ることを裏づけるための“切り札”)ということに留意しなければなりませんね。
【ノンブル3ページ】
「有線放送に係る実演家の権利制限について」として、この問題につき注目すべき点が書かれています。
──「有線放送 (CATV) で地上波を同時再送信する場合については、区域内の限定的な難視聴対策の範囲であって実演家の権利を害さないとの判断から、以下の権利制限が定められている」。なお「以下の権利制限」はレジュメを参照してください。
いま実現しようということで話題になっている地上デジタル放送のIP同時再送信については、まさしく「難視聴対策」なのですね。また地方局の放送地域との兼ね合いから、再送信コンテンツと視聴可能地域との対応をどう設定するのかという問題が持ち上がっています。ここでもし地方局の区分と同様の区域でしか見られないように(技術的に実現)するのであれば、「区域内の限定的な難視聴対策の範囲」であることは明らかです。
また、仮に在京キー局の番組が地方でも見られる場合(また逆の場合)に、同時再送信は「実演家の権利を害」するのか否か。いえいえ実演家の権利は「ワンチャンス主義」として放送においても制限されているのですから、放送用に製作された番組を有線放送において同時再送信しても権利制限の実態に何ら影響を与えません(別の言い方をすれば、有線放送での同時再送信についてそう限定的にとらえる必然性がありません)。
芸団協としては「IPマルチキャスト放送は、区域内の限定的な難視聴対策とは云えず、よって『有線放送』と定義されるのであれば、同時に上記の権利制限の見直しを行う必要がある」としていますが、その理由がありません。IPマルチキャスト放送と言っても想定されているのはおそらく同時再送信のみでしょうし (VOD については別論とせざるを得ないでしょう)、これを「有線放送」としたところで実演家の利益について従来の有線放送と変わるものではありません。むしろ従来の公衆送信権での禁止権部分についての正当性に疑問が生じるところです。法律がそうなってるから──以外の理由がどこにあるのか、と。(法律以外に根拠が無いのなら、法律を変えれば済む話です。)
「地上デジタル放送の通信伝送路による再送信サービス」の前提条件という情報通信審議会の見解をレジュメでは引用されていすが、この「視聴方法に関する選択肢を拡大することにより、視聴者の受信環境の一層の充実を図る観点から、地上波中継局による伝送を『補完』するための措置」はIPマルチキャストによる再送信を否定するものではありません(そうは読めませんね、少なくともこの表現は)。インターネット+パソコンで地上デジタル放送を見れるようにするのは「視聴方法に関する選択肢を拡大」することに他なりませんし、地上波中継局による伝送を「補完」しているのですから(まぁ視聴環境としては家庭内の受信機器の「補完」に関わる部分ですがね)。
芸団協が当該レジュメの主張を続けるには、相当な理論武装をする必要があります。
※個人的には、「著作権・著作隣接権は人権ではない。ルールである」とか言ってやりたくなりますね(笑)。
【ノンブル4ページ】
ここに「クエスチョネア」への回答が示されています。
IPマルチキャスト放送を「有線放送」とすることには“待った”をかけ、「集中管理体制の確立で全面的に協力したい」としています。ただその主張が、現実的な期間でもってシステム構築され得るのかという観点から評価されるのは逃れられません。
もっとも、芸団協が そもそも論として「『有線放送』に係る実演家の権利制限の見直しが不可欠となる」と主張していることの方が私は気になります。現在でも彼らは再送信からも報酬を受け取っているわけで(これは法に定められた権利ではなく契約上のものなのですが、裁判によって支払いを強制できるところまで既成事実化してしまいました)。こんな中で当該権利制限が撤廃されたとしても、実演家に実質的に追加付与されるのは許諾権(つまり禁止できる権利)だけです。したがって何故これが必要なのかという疑問が出てくるわけです。現行のシステムで何かうまく行っていないことでもあるのか、もしあるならその事実をもって主張すべきではないでしょうか。
現実として、二次利用やIPマルチキャスト放送において行使されている形となってしまっている許諾権について、それが付与されている必要性はどこにあるのか疑問視されるところまで来ています。芸団協としては“実演家の当然の権利”として許諾権が貰えて当たり前みたいな気でいるのでしょうが、自らの怠慢によってその説得力が薄れていることこそ重視すべきでしょう。
そのような実態の中で「活用がすすまない原因を『著作権』とみるのは大きな誤り」と主張してみても、その理由を説明できないうちは説得力を持ち得ません。「マルチユースを前提とする契約システムへとシフトしてゆくべき」というのは正論だと思いますけどね(あと、 CPRA から著作権法改正要望として提出している契約にかかる規定の追加についても、芸団協の主張にしては珍しく正論だと思ったりします、私)。契約システムの不備が流通阻害要因になりかねないという問題意識があるのに、なぜ解消しようとしないのかも疑問ですよね。
芸団協はいったい何をやってるのでしょうか? 私はあえて「怠慢」と厳しく表現させてもらってますが、別角度で考えれば「実演家」というのはエンドユーザーが最も親近感を覚える存在なのですよ。実演家を応援するためにコンテンツを購入しているのだと言ってもいい。その実演家の窮状を聞くたびに、なぜ誰も声を挙げようとしないのか、なぜ団結力を見せようとしないのか──と歯がゆい思いをさせられているのです。芸団協に対する私の感情は、そうした屈折にも一因があります。
だから、「実演家が直接コントロールできる部分ではなく、コンテンツホルダーの奮起に期待」などと他人事のように、甘ったれたことを言ってるのを見ると腹が立って仕方ないのですよ! あなたたちは表現者ではないのか、その表現が妨害されて何も思わないのか。それとも何か、流通阻害は実演家の望むところか?
いや著作権の構成としては確かに「直接コントロールできる部分ではな」いのです。例えば音楽配信の場合にはレコード製作者が配信しないと決めればそこで止まってしまいますし、放送番組の場合には放送局や著作権者が止めればアウトです。しかし、流通を促すよう発言はできます。それをきちんとやってきてるのか(もちろん許諾システムの構築作業という裏づけも必要でしょうが)。私は音楽の方ばかりに接しているのでどうしてもそちらへ発想が飛びますが、意に沿わない 「CCCD」 化だったり、意に反するネット未配信だったり、今回の電安法であったり、どうして芸団協は動かないのか(もしくは動きを伝えないのか)。
著作権・著作隣接権が宿命的に持つ利用萎縮効果とともに、流通阻害要因の排除を試みない権利者の動向を見れば、「活用がすすまない原因を『著作権』とみる」ことの妥当性の方がむしろ芸団協の動きによって裏づけられているようにしか見えません。
【ノンブル5ページ】
「懇談会に要望すること」。
主張はいつもの通りです。“文化のために権利よこせ”。
したがって私の反応としても いつもの通りにやらざるを得ません。コンテンツ流通を振興することで「コンテンツが滅び」る理由(メカニズム)について根拠が示されない。むしろコンテンツ流通が阻害されることで「文化」が痩せ細り「コンテンツが滅び」かねないということに対する想像力がゼロ。「『文化』に対する配慮がますます希薄になっている」との指摘はそのままお返ししたい、といった感じです。
「IT産業振興の阻害要因をすべて『既得権』として排除の対象と見るような方向へと向かうのであれば問題」ともしていますが、二重の意味で間違っています。まず国が考えているのは「IT産業振興」ではなく むしろコンテンツ産業振興であるということ。つまるところ実演家が介在する場面を増やしていこうというのが第一義なのです。
またコンテンツ流通阻害要因として指摘されているのは著作権・著作隣接権の付与を含むコンテンツ業界への優遇措置(レコード業界を例にとると再販制・還流防止措置などがありますね)であり、それが「既得権」ではないとする根拠がありません。実演家の許諾権に話を絞れば、彼ら自身がコンテンツ阻害要因を排除する努力をしないかぎり、その権利の行使が現実に発生させる流通阻害をもって それを「既得権」と呼ばれることは避けられません。現にコンテンツ流通が止まっており、その際に許諾権の行使が“見えて”しまっているのですから。
なぜ許諾権を付与する必要があるのか。
あるいは、許諾権を付与してもコンテンツ流通に過大な影響を与えずに済むにはどうすればいいのか。
コンテンツの流通というものは即ち情報の流通であり、他人の知る権利や表現の自由とも大きく関わってくるものです。著作権者・著作隣接権者と言えども、これらの権利や自由を無制限に押さえることはできません(だからこそ調整機能としての権利制限規定が存在するのです)。となれば、流通阻害の課題に正面から取組まない限り、芸団協の言い分に納得できる人は増えないかと思われます。自分の権利が抑えつけられて黙っていられないのは実演家だけでないのですから。
コンテンツ業界を国が見限るという選択肢もあるにはあります。
自滅しているレコード業界を放置するとか。コンテンツ流通の阻害要因を放置すればどこまで市場が落ち込むのかを見る格好の反面教師となることでしょう。
もっともコンテンツ流通を拡大させて、市場規模も拡大させて、ガンガン金儲けしたい(=税収を増やしたい)と考える向きには看過できないかと思われますが。
【まとめ】
いつもとは違う角度でまとめます。
許諾システムの整備にいつまでもモタモタしているようでは、許諾権の存在が「阻害要因」と呼ばれても仕方ありません。事実、それによって流通できていないのですから。許諾権があることで、明確な禁止の意思表示がなかったとしても利用を萎縮させる性質がある。このことは著作権・著作隣接権を扱う者なら強く意識すべきことです。
許諾システムを構築するとすれば、権利制限をしなくても充分にコンテンツを流通させられるシステムである必要があります(それも出来るだけ早く)。それこそ JASRAC 並みのシステムを構築しなければなりません(許諾システムとしての JASRAC は、運用の問題こそ少なくありませんが、その存在自体の意義は図り知れません。これが正常に機能している限りにおいて、言ってみれば実質的な許諾権制限と化しています。コレ誉めてるんですよ)。構築の暁には、芸団協が主張している放送・有線放送への権利制限撤廃を実現させる大きな武器となるかも知れません。
実演家の許諾権以外に流通阻害要因があれば、それを取り除くための努力も求められます。端的に言えば、音楽配信におけるレコード会社の許諾権行使がそれに当たりますね(本懇談会の話題からは外れますけど)。それだけではないかも知れません。いずれにせよ「実演家が直接コントロールできる部分ではなく」などと尻尾を巻くのでは芸団協が誰のための団体なのか判らなくなります。阻害要因の撤廃が実現できなかったとしても、少なくとも主張を明らかにしておくべきでしょう。
芸団協がどれだけのことをやっているのか、きちんと情報発信をすべきです。許諾の資金を要するような広報とまで行かなくても、実演家の地位向上のために言うべき事を必要十分なだけ発信する必要があります。それも自分たちに仕事をもたらしている業界に対して、です(これを実演家団体がやらないで誰がやるんですか)。 「CCCD」 化の強要や音楽配信の拒否、廃盤などの問題で流通阻害に遭っている実演家がどれだけいるのか。心していただきたい。
そこまでやって初めて、少なくとも実演家の公衆送信権(許諾権)については「阻害要因」でないと評価されるのです。
ただ、やっぱり、私としては既掲の言葉に行き着いてしまうのです。あれほど絶好の説明機会があったにもかかわらず、ものに出来なかったという体たらくを見ていて。
──芸団協って何やってんだろ?
(追記:2006.3.20)
Posted by 暇人#9 映像愛好家の危機 | Permalink
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受信: 2006/03/17 15:26:24



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