著作権法についてしっかり考えていますか?
とあるブログさんとの応酬・第2弾です。
http://blog.goo.ne.jp/copyright1971/e/81ac2516137d057eed29ee7ce40f26d6
「著作権の保護期間の延長」
(著作権法)
http://himagine9.cocolog-nifty.com/watchdogs/2006/11/post_7513.html
「もう少しは具体的に、そして「しっかり」考えてもらいたいものだ。」
(エンドユーザーの見た著作権)
http://blog.goo.ne.jp/copyright1971/e/065f6b5c217dcacf7da5c00279cccd1a
「著作権の保護期間の延長(その2)」
(著作権法)
http://blog.goo.ne.jp/copyright1971/e/2d04ce76028b291ba27d1a22cc6f9190
「著作権の保護期間の延長(その3)」
(著作権法)
上記リンク、上から順番に発端記事・私の批判・私への反応・津田大介さんのコメントへの反応──となっております。国民会議発起人に関する意見もあったので、国民会議世話人である津田さんが「その2」にコメントを寄せられたのですね。それに対しての反応(「反論」とは敢えて呼称しません)が「その3」ということです。まぁこれも噴飯ものなので私は批判対象としますが。
ところで。せっかく反応を返しているのに、肝心の私の記事へのリンクを載せないというのはどうなのでしょうね? 津田さんのコメントに対する弁解についても同様です。トラックバックやコメントを削除しないで残しているから悪質なものとも限りませんけど。
反論はしたい。でも指摘そのものまでは読者に読ませたくない、自分の意見の妥当性を判断されるような材料をわざわざ示したくない──という人もたまにいまして、そういう手合いがよく使う手法ではあります。もっとも筆者氏 (copyright1971 氏)がそこまでの意図を持っているのかは定かでありません(単に新たな記事を持って反応を返すのが彼のスタイルと見えなくもない)。
まぁこのことはあまり深くツッコむのはよしましょう。
基本的には上記「その2」への批判として本記事は展開させます──
【「国民会議」の構成について】
コメント欄で津田さんがストレートに指摘されていますね。
私が見ても筆者氏の主張はおかしいです。端的に言えば「的確」さに極めて欠ける。
著作権の保護期間延長を議論するということは、著作権法を前提に論ずるということです。著作権法は芸術という狭い範囲を対象とするものではなく、もっと広く文化を振興することが目的のものです。つまり著作権法上 同じ「著作者」である芸術家・文芸評論家・学者・ジャーナリストなどを区別する必然性など全く存在しません(著作権法入門の本などでよく引き合いに出されるのは、幼児が書いた絵でも「著作物」なのだということだったりしますよね)。
仮に、筆者氏が仰るような「保護期間の延長問題を議論するときには、多くの人たちが念頭に置くのは、『この作家、作曲家、画家の保護期間はいつ切れるんだ?』などと議論されるように、小説家であり、画家、作曲家といった立場の方である」ことが事実だったとしましょうか。それでも保護期間の延長は著作権法の規定を変えて実現しますから、筆者氏の称するところの「有識者」であっても保護期間は変わってしまうし、その弊害も直接喰らうこととなってしまいます(弊害を喰らうという意味では芸術家であっても同様ですが)。
私には、筆者氏の上記前提を共有する気は毛頭ありません。しかし いずれにしても、著作権法を元とした議論をする以上は、筆者氏の指す「アーティスト」とやらだけを特別扱いするのではなく、著作権法上の「著作者」を等しく捉えることが大前提となりましょう。その意味で、筆者氏は議論の根本を勘違いし かつ歪めて論じていると指摘せざるを得ません。
なお記事「著作権の保護期間の延長(その3)」において一応の謝罪は書かれているのですが、「その1」「その2」での表現および論旨は全く改められていません。こうした筆者氏の対応が責任ある態度なのかは疑問のあるところですね。
【未来の著作者を再生産できる環境】
私の意図としては「未来の著作者“が”再生産できる環境」だったりしますが、それはさておき。
「新たな創作には、どれほどの影響があるのでしょうか」と筆者氏は書かれていますが、創作への影響については既に私が指摘しているとおりです(これだけではないと思いますがね)。創作というものは過去の著作物から隔絶されたところで独立して為されるのではなく、先んじた文化の享受があった後に発生していくものです。映画が文学のロジックを消化して発展し、漫画が映画のロジックを消化して発展していったように。そしてそれは「インスパイア」というものから二次的著作物としての利用まで、強弱さまざまな繋がりが生じています。
筆者氏が「オリジナルの作品」に執着するさまは微笑ましいものですが まぁそれはさておきましょう(なお私は著作物が過去の創作物のモンタージュに過ぎないと考えています。「オリジナル」というものを真剣に突き詰めて考えれば、そこへ行き着かざるを得ないのですよ。多数の人が理解できるように創作する商用著作物であるなら尚更で、一定の創作作法の縛りを受けます)。創作者の成長が過去の文化を享受し模倣するという時期を経ている以上、この(創作者の)出発点となる文化空間をいかに豊かにするかを考えねば、著作権問題の根幹には迫れないでしょう。創作を振興するとか言いながら、既成著作物への実入りを増やすだけで、文化空間を枯渇させて未来の創作を追い込んでしまうことになるかも知れない(なお私は現行の著作物流通が充分なものとは全く考えていません。文化継承が全く考慮されていない世界と言ってもいいです)。
「オリジナルの作品を創作するという点では、私は大きな影響はあるのかどうか、よくわかりません」とも筆者氏は書かれていますね。しかしその後で「その影響は、創作活動全体から見れば『限定的なもの』ではないかと思っています」などと書く無神経さに驚きました。「よくわかりません」と書いてから、ひとつ文章を挟んだだけなのに何という結論!
筆者氏のお好きな「オリジナル作品」だけを考えるなら、まだしも「限定的」という方便も成立するかも知れません(私は認めませんがね)。しかしこれまた筆者氏の言葉を借りますが「創作活動全体」を母集団としたときに、先行作品を下敷きにした創作が「限定的なもの」となろう筈がありません。日本で商業的に創作されるもののうち、翻訳・翻案ものやリメイクものがどれだけ存在してると思ってるのですか。
むしろ「創作活動全体」から見れば保護期間延長の影響(すなわち「著作権に触れるような形で創作活動をされる方」の創作を阻害する事態)が増えこそすれ、「限定的なもの」にとどまることは絶対になり得ません。
※既成著作物の権利者が許諾を出さないために行なえない創作、既成著作物の権利者の難癖で“著作権侵害”を喧伝されてしまった創作、既成著作物と似ないよう過剰に“配慮”されたために当初の構想とは異なる表現を回避せざるを得なかった創作など、著作権保護期間延長によって阻害される創作の形は多く想定されます。国民会議記者会見での別役実氏の発言を引き合いに出すまでもなく、これらは現状ですら実際の創作現場で起こっていることです。
【国際協調について】
「米国・EU諸国などが70年としている状況を冷静に考えたとき、どのような行動を取ることが『国際協調』かをよく考える必要がある」と筆者氏は書かれていますが、根拠は全く示されていません。もし「著作者の気持ち」にしか根拠がないとしたら、国民会議発起人の「気持ち」をどう評価するか筆者氏は明らかにする必要があります(「その3」において謝罪したのですから、国民会議の発起人らも著作権法上の著作者であり、彼らの意見もまた「著作者の気持ち」であると筆者氏は認めているということでしょう。となれば もはや「著作者の気持ち」などという根拠は使えませんね)。
また、保護期間延長に伴って欧米でもアーカイヴ事業や著作物死蔵問題で致命的デメリットが表出している事実、また日本でも保護期間延長のデメリットが多数指摘されている事実を「冷静に」考えたとき、どのような行動を取るべきかよく考える必要があります。
いずれにせよ、「その2」における当該段落は何も書いていないのに等しい。
まぁ、私の批判に対して反論したいのならば、まずは指摘した「問題点のすべて」に答えようと努力してください。「とりあえず気がついた点」ですら この程度の反応しか返せないのがアレですけれど‥‥。
また「延長のデメリットの解消策がセットで取られることがぜひとも必要であると思って」いるのなら、「賛成」などと軽はずみに発言しないでいただきたいですね。せめて「条件付き賛成」とでも書かれては如何? なお現状ではデメリットの解消策が存在しないのであって、このままでは延長することには「反対」という解釈でよろしいですか。
■copyright1971 氏への7つの質問
私が書いた批判から、その核心を抜き出してみました。 copyright1971 氏の考えをお聞かせ願います。もちろん「しっかり」考えた上で理由も添えて、ね。
【1】保護期間を延長すべき根拠とは何か?
特に、そのメリットは何でしょうか。欧米並みにして何が変わるでしょうか。
【2】保護期間を延長したメリットはデメリットを上回るか?
デメリットについては既に指摘した通りです。これを無視されませんよう。
【3】著作者の「気持ち」を満たすのが目的か?
もしそうなら国民会議側の「気持ち」をどう評価しますか。
もちろん著作権法上の話であって、 copyright1971 さんの仰る狭い話ではありません。
【4】保護期間が死後50年でなぜ不足か?
【5】創作は、過去の著作物と無関係に発生すると思うか?
優れた著作物を多く消化することで より良い創作が望めるとは思いませんか。
流通(パブリックドメインのものも含む)が少なくなることで、創作者が触れる著作物を減らし 創作のインスピレーションを減じることには なりはしませんか。
【6】創作は「オリジナル」のものが全てと考えてはいないか?
全体を考えれば、過去の著作物に依拠するものが多い(評論や論文・ジャーナリズムも含む)。
【7】copyright1971 氏自身が延長の経済的メリットを否定していますが?
「死後50年を経過しそうな者の作品の利用はいったいどれだけあるかと考えると、著作物全体の利用からすれば極わずかでしょう」との文章がありましたが、これでは延長の経済的メリットが存在しないと言っているのに等しい。これをあなたは撤回しますか? それとも維持しますか。
Posted by 谷分 章優 著作権保護期間延長問題 | Permalink
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