詳細の見えない「映画盗撮防止法案(仮称)」
http://news.braina.com/2007/0329/rule_20070329_001____.html
「上映中の映画、撮影禁止…海賊版防止へ自公が法案了承」
(知財情報局・読売新聞記事)
http://www.nishinippon.co.jp/entertainment/cinema/news/20070315/20070315_003.shtml
「映画盗撮防止へ 自民、今国会に法案提出 海賊版流通を阻止」
(映画の話題 / 映画情報 / 西日本新聞)
以前から話題になっていた法案についてなんですが(尤も、うちでは採り上げていなかった筈)、自民党と公明党が法案を「了承」したとのことです。映画館での「盗撮」──つまりスクリーンのビデオ撮影を禁止する法律を作るとのこと。
西日本新聞によれば「法案は議員立法で、自民党の『コンテンツ産業振興議員連盟』(会長・甘利明経済産業相)がまとめた」そうです。要するに映画業界が政治力を発揮して、コンテンツ族議員を動かしたというわけ。
あとは法案が国会に提出されて→採決という流れなんでしょうけど、この法案の詳細がいまだに明らかになってないというのは如何なものでしょうかね。
法案を作る中心になった自民党のサイトには掲載されていません。片棒担ぎの公明党サイトにもありません。まだ法案として提出されていないのか、衆議院・参議院のサイトにもありません。まさか成立してから法案がサイトに掲載されたりしないでしょうね(両議院のサイトって、法案や質問趣意書・答弁を掲載するのが結構遅れるものですから)。 まさか条文を初めて確認できるのが官報だったりして。
「民主主義」って何なんじゃって気がしますが。
新聞報道から垣間見える中身は、読売新聞によれば(上記リンクでは『知財情報局』に転載された読売記事を示してあります)「許可なく映画を撮影することに対し、罰則として、10年以下の懲役か1000万円以下の罰金を設けている」とのこと。
なるほど、映画撮影を禁じるわけですか。もう好き勝手に映画を撮影できない、つまり映画人に対する表現規制ですか。
──って、そんなワケないですね。たぶん〈権利者(映画製作者)の許諾を得ない映画館上映映画の撮影を規制する〉と書きたかったんでしょう。映画業界が求めていたのはその一点にあったわけで。
これまた読売記事によれば「国内で最初の上映から8か月経過すると適用されない」といいます。これで一応のバランスを取っているわけですかね。理論上は、古い映画だったら(研究や記録のために)撮影することが出来る、著作権法で許された私的複製である、ということ。いや映画館がそれを許すかは別問題ですけどね、施設の管理権限者として。
ともあれ DVD 発売前の映画という、最も譲れない知財の「盗撮」を規制するのであれば、公開後8ヶ月くらいが妥当な線のようにも思えます。
※余談ですけど、還流防止措置(いわゆる「レコード輸入権」)も8ヶ月程度だったら、あんなに大騒ぎにならなかったかも知れませんね。もちろん私がそれを容認するかは別問題ですけど。もっともあの時には、レコ協会長が口すべらして「永久に保護してほしいくらいだ」なんて抜かして‥‥。
■ちょっと真面目な話
件の映画「盗撮」禁止法ですが、これの実効性がどれだけあるのか疑問です。
現状として、映画館側は「盗撮」をやめさせる権限があるわけですよ。施設の管理権限があって、観客を入館させる代わりに撮影を禁止することも出来るわけですから(もっと念を入れるなら、観客との利用契約みたいな形であらかじめ撮影禁止を明示するとか)。それにもかかわらず、業界側の言い分によれば、「私的複製」を楯に止めさせられないという。私に言わせれば、映画館側の怠慢以外の何物でもないですよ。
仮に禁止法が成立したとして(するんでしょうけど)、実際の運用はどうするんでしょう。警備員とか立てて(今でも立ててるところはあるらしいです)、撮影してる人に「法律で禁止されています」と言って回るんでしょうか。しかし堂々と三脚立てて撮影してる人間だけじゃないでしょう? 本当に隠し撮りされてる場合はどうするんでしょうか。今日び、そんな方法はいくらでもあるでしょう。
実際の条文を見るまで気になる点がひとつ。
今回の「盗撮」は親告罪なのか非親告罪なのかということです。たとえば映画館側が「盗撮」現場を押さえたとして、その後 警察が動くまでにどのような手続きを経るのか。仮に非親告罪だったら著作権侵害とのバランスはどう考えるのか。
また、映画館側が確実に「盗撮」を押さえようと思ったら、スクリーン側から観客を「盗撮」する必要が出てくるんじゃないの? ──とも思えたりするんですよ。これ、わざわざ金を払って映画を見に行く観客からすれば不愉快この上ない。
法案の中身が見えてこないが故の、想像上のことでしかありません。でもあながち見当はずれの想像ではないように思えますが如何でしょう。
Posted by 谷分 章優 映画・映像, 知財戦略, 著作権 | Permalink
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