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2007年6月 5日 (火)

知的財産推進計画2007 ──“既成事実化”する「アップル」のパブコメ(追記あり)

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keikaku2007.html
「知的財産推進計画2007の策定」
(首相官邸:知的財産戦略本部)

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/070531/iken1.pdf
「『知的財産推進計画2006』の見直しに関する意見募集の結果について -
 団体からの意見」
(首相官邸:知的財産戦略本部・ PDF)

 知的財産戦略本部が「知的財産推進計画2007」を決定し公表したのに伴って、これに先立ち実施された意見募集の結果が公表されました。知的財産戦略本部会合やその各専門調査会でこの募集結果が配布・参照された様子は(議事録・議事概要のいずれにも)無く、意見募集が今回の策定にどう反映されているのかは疑問でならなかったりしますが、とりあえず結果公表は為されたわけです。
 募集結果は3つのファイルに分けて掲載されています。ひとつは「結果概要」。はっきり言って、事務局のまとめは誠実とは言い難い中身。たとえば「模倣品・海賊版対策全般」では賛成意見しか掲載されていませんし(個人意見を見れば判るのですが、反対意見や慎重意見もかなり寄せられています)、「違法複製されたコンテンツの個人による複製」についても賛成意見4つに比して反対意見1つ。募集結果を適正に反映したものとは とても言えません。もっとも「アーカイブ化とその利用の促進」や「ゲームソフトの流通」のように、賛否両論が揃わなかったと思しき項目もあります。
 さて、残りふたつが「団体からの意見」と「個人からの意見」。つまり実際の提出意見の個票ですね。実際には提出者で名寄せしているようで、たとえば私の意見なぞも一カ所にまとまって掲載されていました(私の意見の書き方は独特なのですぐ判ると思います──「知的財産戦略本部 御中」から始めて、【意見ここから】【意見ここまで】で意見部分を挟み込んでいます)。

 このうち、今回の募集結果公表にあたり注目を集めた文書があります。「団体からの意見」です。



http://applesong.blog8.fc2.com/blog-entry-548.html

「アップルが『文化庁は著作権行政から手を引け』と主張」

(林檎の歌)



http://b.hatena.ne.jp/entry/http://applesong.blog8.fc2.com/blog-entry-548.html

「林檎の歌 アップルが『文化庁は著作権行政から手を引け』と主張」

(はてなブックマーク)

 冒頭にリンクした PDF の中に、ノンブル11ページから13ページに「アップルジャパン(株)」から提出されたとされる意見が掲載されています。内容はかなり過激なもので(私個人の感覚からすれば釣りに近いほど〈無駄に過激〉)、「私的録音録画補償金制度は即時撤廃すべきである」との結論から始まり、私的複製が権利者の不利益だとする言説を「科学的且つ客観的証拠は存在していない」と断じ、文化庁著作権課ならびに文化審議会著作権分科会(私的録音録画小委員会)を非難し、「アップル社を私的録音録画小委員会から閉め出し、欠席裁判で物事も決める閉鎖的な体質を持つ文化庁の隠蔽体質」を指摘、『林檎の歌』さんがタイトルに使われた「文化庁は著作権行政から手を引け」と同趣旨の文で締めくくっています。
 ただ‥‥私としては、この提出意見が本当にアップルから出されたものなのかというのが気になったりします。知的財産戦略本部が実施したパブリックコメントは郵送・ファクス送信に加え、ウェブページ上のメールフォームで送信されたものも平等に扱われているのです。団体名で送ったとしても、これを利用すれば団体名・提出者名を書けば足りますし、提出者名は実は空欄でも送信できます。

 で、一応の事実確認にと、アップルジャパンへ電話して聞いてみました。その際には首相官邸サイトと当該 URL を示して。
 最終的に回答を貰ったアップルジャパンの広報によると、現時点で、アップルジャパンから確かに送られたものかどうかは判りかねるとのこと。内部で確認をとってみないと誰が送信したのかも明らかでない、また(アップルジャパンでなく)アップル本社から送信されたどうかの可能性についても答えようがない(つまり現時点で判らない)という話でした。
 もっとも個人が問い合わせた結果ですから、どこまで真面目な回答かという疑問は当然に残ります(笑)。アップルに回答する義務がある訳でもありませんし。しかし今現実に、このパブリックコメントがインターネット上で注目されており、アップルの思惑とは関係なく(?)一人歩きしている状態であって、万一事実でなかった場合にはアップルが何らかのアクションを起こす必要があるのではないか──との私個人の見解は伝えておきました。あとはアップルがどう取るかでしょう。

 実際問題、情報が広がることについては、その情報が正確であることは必ずしも要しないのですね。本当にアップルジャパンが出したものなのかということは。当該意見が注目を集めているのは、 iTunes や iPod といったハードウェア・ソフトウェア・ネットサービスを提供するアップルの立場では出てきてもおかしくない意見だったということ、またユーザー側の“気分”を反映することを標榜する内容であったということ(もっともアップルが本当にユーザー側に立っている会社かどうかは別論)にあります。
 つまりアップルが(仮に当該意見を提出した事実が無かったとして)否定しない限りは、こうした意見を出した、ひいては こうした見解を持っているのだ(怒っているのだ)との“既成事実”が社会に定着していくということです。
 現に、その兆しがあります。

http://japan.cnet.com/news/tech/story/0,2000056025,20350151,00.htm
「アップル、文化庁を激しく非難--『私的録音録画補償金制度は即時撤廃すべき』」
(CNET Japan)

 まず CNET の記事に採り上げられました(アップルに直接取材しているのかは記事内容から明らかではありませんが)。他のネットメディアも追随するものと思われます。またアップル関連の話題ですから、 Mac 系ニュースサイトからのリンクも多数張られることでしょう(余談ですけど、この話題を採り上げた例として先にリンクした『林檎の歌』さんって、むしろ Mac 系ブログだったりするんですよね)。これまで一部のネットユーザー(ブロガー)の中だけで注目されていたものが、いよいよ大きなうねりとなって広まっていくことになります。
 “既成事実化”していくパブリックコメントに対し、アップルは動きを見せるのか否か──

 もちろん、当該提出意見が本当にアップルから出されたものだったとしたら、この一人歩きを妨害する必要は無いでしょうね。広まれば広まるほど、多くのユーザーを味方に付けることに成功するでしょう、たった一度の意見提出でもって(それは時として広告よりも効果的)。
 しかし‥‥アップルが私的録音録画補償金をめぐる議論の中に(強引にでも)参戦してこない限り、事態の打開は難しいように思われます。何せ、相手があの文化庁著作権課ですから(パブコメ無視なんてお手のもの)。
 いずれにせよアップルの次の一手に注目されます。

※個人的には、意見提出したと大宣言してほしいんですがね。したらしたで多くの敵が(笑)。




■アップルはノーコメント(追記)

 アップルジャパンが出したとされる意見について、取材情報が少しずつ出てきています。

 まずトラックバックを戴きました『著作権云々編』さん。アップルと知的財産戦略推進事務局に電話で問い合わせされたとのこと(後者については私も聞こうと思ってたんで、手間が省けました。ありがとうございます)。

http://johnny3.blog3.fc2.com/blog-entry-230.html
「アップルと知的財産戦略推進事務局に電話した」
(著作権云々編)

 とりあえず、私が問い合わせた時から少しは進展したようで、事実関係を把握してからのノーコメントですね。この意見書に注目が集まることでアップルに不利益があるんなら否定するでしょうし、これはだいたい本物ということで差し支えないかも知れません。
 知財戦略推進事務局については、なんか頼りない答えだったはしますが、例の提出意見については一般論としてまぁまぁの信憑性はあるということなんでしょう。

 なお、アップルに対してはメディアからの取材も入っています。

http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2007/06/05/15946.html
アップルが文化庁批判「私的録音録画補償金制度は即時撤廃すべき」
(INTERNET Watch)



● アップルジャパンは「現段階ではコメントできない」

 なお、アップルジャパンのiPod課金に対する見解としては、2007年3月に開催された私的録音補償金に関するイベントで、同社法務担当者と名乗る人物が「日本法人だけでなくワールドワイドで補償金制度を支持していない」と発言したが、公式にコメントを発表したことはなかった。

 今回発表された文書では、iPod課金だけでなく、私的録音録画補償金制度を見直すべきという主張が書かれているが、文書が提出された経緯について同社に取材したところ「現段階ではコメントできない」という回答しか得られなかった。

 前の CNET の記事では、直接アップルに当たったのかは定かじゃなかったんですが、上記記事でとりあえずノーコメントだということは判りましたね(笑)。メディア取材に対してもこうだという。
 まぁ現時点ではこんなもんでしょ。

(追記: 2007.6.6)




■件の提出意見への共感と反論

 別ブログで件の意見を検討してみました。

http://himagine9.cocolog-nifty.com/kitaguni/2007/06/post_27a4.html
「Aのパブリックコメントを読む」
(試される。(ココログ mix))

 正直「惜しい!」という出来です、あの意見書。
 まぁ釣りとしては極上の内容だったんでしょうけどね(私も釣られましたし)。

(追記: 2007.6.6)




■意見が撤回されました

http://himagine9.cocolog-nifty.com/watchdogs/2007/08/post_bea8.html
「アップルジャパン名義の意見、撤回さる」
(エンドユーザーの見た著作権)

 アップルからは何のアピールも行なわれないまま、いつの間にか意見が撤回されていました。「提出者から意見撤回の申出があったので」との但し書きが気になるところではありますが、とりあえずアップル的には削除してくれという話なのは確かですね。
 件の意見書を採りあげた私のブログ記事は(記録という意味もあって)残しておきますが、アップル自身が自らのものだと認めることなく「撤回」されてしまったということだけは押さえておいて下さい。
 この件をダシにして述べた私の意見まで撤回する気は毛頭ありませんよ、勿論。

(追記: 2007.8.15)

Posted by 暇人#9 知財推進の弊害, 踊る文化庁, 音楽と著作権 |

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アップルが「文化庁は著作権行政から手を引け」と主張(林檎の歌 ) リンク先参照で 自分は暇人#9 と同じような考え方で ただ‥‥私としては、この提出意見が本当にアップルから出されたものなのかというのが気になった... 続きを読む

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