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2008年6月19日 (木)

省庁間合意の興奮さめやらぬ‥‥

 俺が遅筆なのと、次々と新しい情報がウェブに上がるのとでちょっとした悲劇(というか行き違い)があったりする。すみませんね、俺も記事を上げたあとであの大臣会見録を読んだのですよ。で、これからブログに書こうとしている次第。
 最新情報──というか俺自身が見ているものについては、はてなブックマークを見てもらった方が早く情報を掴めます。俺が何か知ったときには必ずここに登録するようにしてるから。あとは『Copy & Copyright Diary』さんがまめにエントリーを上げてらして参考になるのと、同じ方のブックマークも捕捉が早いのでオススメ。とりあえず情報収集についてはそんな感じで。

※俺自身は上記に加え、はてなアンテナとGoogleアラートと『パテントサロン』とTwitter(主としてフォロー先の人たちってことになるが)を駆使して情報収集している。更には まめにググるってこともやるけどね。いつ仕事してんだ俺。

 この記事は以下のエントリーの続きであります──

http://himagine9.cocolog-nifty.com/watchdogs/2008/06/post_139e.html
「朝日記事には驚かされた。」
(エンドユーザーの見た著作権)

http://himagine9.cocolog-nifty.com/watchdogs/2008/06/post_b2af.html
「俺たちの“糠喜び”になるか、文化庁の“足枷”になるか」
(エンドユーザーの見た著作権)




 まずは冒頭で話題にした甘利経済産業大臣の会見から。

http://www.meti.go.jp/speeches/data_ed/ed080617j.html
「経済産業省 会見・スピーチ 大臣記者会見」

 ブルーレイディスクへの課金が「私的録音補償金」だとの言い間違い(だろう多分)があるのだがそれはさておく(実際は「録画」の方ね)。この会見での大臣発言ってのが、私的録音・録画問題に関してかなり突っ込んだ内容になっている。アンタそこまで聞いてないよ──ってほど。
 『Copy & Copyright Diary』さん(ここ経由で当該会見録が上がったのを知った)の記事でも発言がピックアップされていたのだが、こことダブるのを承知で引用しておきたい。

Q: ダビング10の問題ですが、これは著作権団体がHDDに対しても課金すべしという主張をしていたわけですけれども、著作権料の課金の範囲については、どういった形になるのでしょうか。

A: 暫定措置としてブルーレイに課金するということにしました。これは、既に確立されているはずですが、デジタル化しますとコンテンツの持ち主、つまり送るほうで、これは何回まで、それが幾らと全部設定ができるのです。アナログだとできないのですけれども、デジタルだとできるのですから、送り手の自由自在なのです。自由自在になる環境が整うまで、実際に行為としてダビングが行われ、それを利用する対象について、当面、いわば従来のDVD以外の部分を埋めたということでありまして、これはこれで適切な措置だと思います。

Q: おっしゃった暫定的な期間というのは、今回は明示されてないのですか。

A: 特にされていませんが、私が考えるに、デジタル化でコンテンツ送信をするほうの体制が技術的にはとれるのですから、それが整ったということで新たな体制をどうするかということに入れるのではないでしょうか。

 「送り手の自由自在なのです」前後のくだりは、私的録音録画小委員会での文化庁案における「権利者側の要請に基づき著作権保護技術が採用されているもの」(DRM)を先取りするかのような発言だ(文化庁案ではこれを前提に補償金を廃止するとしている)。また、JEITAが出した補償金問題への見解の中の「補償金制度とは、本来、私的複製が際限なく行われることで権利者に重大な経済的損失が生じる場合に、それを補償しようとするものである」「デジタル技術の進展に伴い、技術的にコンテンツの利用をコントロールすることが容易になっていく中で、補償金制度の必要性は反比例的に減少する」と通底するものを感じる。
 一見はトンデモ発言をしてるようなのだが、思想としては結構 打ち合わせ済みっぽい。大臣本人の考えなのか、官僚あるいはJEITAの“入れ知恵”なのか、そのあたりは判らないが。

Q: 先ほどの幹事さんの質問の中にも、著作権団体はHDDのほうをしっかり課金すべきではないかという意見が強いのですけれども、今回の経済産業省、文部科学省の合意によって、ダビング10の早期実施にめどがついたというふうにお考えでしょうか。

A: 環境整備には資するものと思います。よく考えていただければ、ハードそのものに、例えばハードディスクに何回入れようと取り出せないわけですから、取り出した対象に対して課金されれば、それは権利者の権利が移転するという理屈になりますけれども、中に入っているものに何回できたから何回分寄こせとか、あるいはこれによって複数の人たちが恩恵に浴するからといって、取り出せないものは一人でそこでしか見ることができないわけですから、取り出して物理的に分散できるものに対して課金されるという理屈はわかりますけれども、そうでないというのは理屈の上から理解が難しいでしょう。

 注目すべき発言。「ハードディスクに何回入れようと取り出せないわけですから」云々の理屈というのはかなり踏み込んだものと言えるだろう。基本、補償金制度というのは私的複製=不利益として組立てられている。そこに“補償の必要がない態様の複製”という概念が導入されてきたのが ここ数年来の議論ということになるのだが、ハードディスク内蔵型機器からは複製が流出しない(建前上は)ことを前提にした“補償の必要性”という観点は問題提起として鋭いものがある。感覚的にはメーカーというよりもユーザーのものに近い。
 実は、テレビ放送からの録画についての補償を議論されていた時分に(当時想定されていたのはハードディスクではなく、ビデオテープのような外部物理メディアを必要とした録画)、補償必要とされていた根拠は「ライブラリー」化目的の録画であった。タイムシフトについては精査されていたとは言えないが一応視野には入れられており、“録画して取っておく人がたくさんいるもんね”ということでタイムシフト用途のものは実質無視された(もっとも外部メディアに記録する以上はアーカイヴ目的を推定されるのは致し方ないのではないかと俺個人としては思う)。
 ところがハードディスク内蔵型機器というのが出てきたために、このタイムシフト用途の録画が再びクローズアップされるようになってきた。その録画の本質というのが、まさしく大臣が上記発言で指摘された部分と言えるだろう(加えて、ハードディスクという比較的壊れやすく容量も限りあるものに記録するため、保存目的に記録するには心許ないという特徴もある)。

 大臣発言については、トラックバックをいただいた『下級役人のつぶやき』さんもツッコミを入れていらっしゃる。これはこれで一理あるな、とは思った。
 ただ上記の「取り出せない」場合の話については、たった1度しかコピーできない場合(ハードディスク)と家族の分をそれぞれコピーし得る場合(外部メディア)とで補償すべき度合いを調整して判断することはあり得るのではないか(もっとも家族の分のコピーをすることが補償するべきものなのかは別論)。少なくとも何枚もコピーを作る場合よりは“損失”は少ないと考えることはできる。

 ついでに軽くレスめいたものも書いておくと、まずタイムシフトによる「損失」について考える際に〈そもそもDVD化される放送番組が多いとは言えない(しかも放送時にあらかじめ判るものではない)〉〈仮にDVD化されても放送時と同じものとは限らない〉〈再放送がいつされるのか判るわけではない〉〈無料放送のビジネスモデルは視聴者がCMを見ることを期待して既に(スポンサーから)対価が支払われている〉等の観点も加味していただきたいところ。
 DRMを導入(DRMフリーも含む)したときの権利者の意思の推定や「契約法」上の話については私的録音録画小委の中間整理にあったはずなのでそちらも当たられたい(もう既にお読みでしたらすんません)。

 経産大臣がJEITA寄りとも見えるスタンスで発言しているのは、おそらく補償金問題への介入の経緯が影響しているのだろうと思われる。補償金問題では文化庁はとても中立的とは見えなかった。




■さて省庁間合意後の動きとしては──

 JEITAの声明が正式に上がった。

http://www.jeita.or.jp/japanese/detail.asp?pr_id=1367
「経済産業省と文部科学省による『ダビング10の早期実施に向けた環境整備』に係る
 JEITAの見解について」
(JEITA / Hot Issues)

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0806/18/news085.html
「JEITA、権利者からの質問状に直接回答拒否 『小委員会で議論』」
(ITmedia News)

 次にいつ私的録音録画小委員会が開かれるか不透明な時に、公開質問状を送られて回答しないというJEITAの姿勢には疑問を禁じ得ない。
 特に、例の文化庁案が「補償金廃止の道筋が見えない」とするJEITAの考えに俺も同感なだけに、こういう逃げ回るような対応には憤りを感じるところだ(もっともガチでやりあう気がなくて、手のひら返しの伏線ということも考えられる)。

 権利者団体側の動きとしては、さきの声明文がJASRACサイトにも上がった。内容はCPRAでのものと同じ。
 面白いのは日本映像ソフト協会が独自に声明を上げたところ。「私的録画問題に関する当協会の基本的考え方について」とのタイトル。

http://www.jva-net.or.jp/news/news_080617.pdf
「私的録画問題に関する当協会の基本的考え方について」
(日本映像ソフト協会・PDF)

 あと椎名和夫氏がTech-On!(日経エレクトロニクス)のインタビューに答えている。6月11日のものということで、経産省・文科省の暫定合意が明らかになる前だ。個人的には、椎名氏の口調を再現しようと苦心されてる様子がなかなか興味深い(氏については小寺信良・津田大介共著『CONTENT'S FUTURE』やITmediaでの椎名氏vs小寺氏の対談を参照されたし)。
 映像ソフト協会と椎名氏の言い分には突っ込みたいところが幾つかある。この文章を書いてるだけで時間切れになりそうなのでそれは改めてということで。

http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20080618/153434/
「『権利者から見ると文化庁案が最大限の妥協』
 ——CPRA 椎名和夫氏に聞くダビング10問題の真因」
(産業動向オブザーバ - Tech-On!)

 6月24日には権利者団体側の記者会見があるという話なのだが、何とかして潜り込みたいと思っているところ。ITmediaの記事だと「権利者側は何の説明も受けておらず、先週末に『合意しました』と報告を受けただけ」というコメントが出ていて、これがその通りなら省庁合意→JEITAへの公開書簡→合意発表→権利者の声明発表→JEITAの声明発表→デジコン→権利者記者会見という不自然なほどスムーズすぎる流れについての説明があるのか(はたまた記者からのツッコミが入るのか)楽しみなところではある。

 すみません。力尽きました。

Posted by 谷分 章優 著作権, 著作権行政, 音楽と著作権 | | コメント (13) | トラックバック (1)

2008年6月18日 (水)

俺たちの“糠喜び”になるか、文化庁の“足枷”になるか

http://himagine9.cocolog-nifty.com/watchdogs/2008/06/post_139e.html
「朝日記事には驚かされた。」
(エンドユーザーの見た著作権)

 情報が出揃ったてきたということで、エントリーを改めて行きますです。
 上のやつの続き、ね。

 俺がこの話を知ったのは朝日の記事を(確か はてブ経由で)読んだのが最初だった筈。そのあと産経の記事を知って、日経の記事を知って‥‥という順番で書いていったのが上の記事。
 そのあとこの話がバンバン出てくるようになってきて(ちょうど経産大臣と文科大臣が会見で発表したあたりから‥‥の筈)、俺も追うのがウンザリしてくるほど。だから続きの今回は主要なやつしかピックアップしない。

 あと権利者団体がJEITAに出した公開質問書の件は後回しにします。すんませんです。




■報道

 どこからやるかね。
 まず経産大臣と文科大臣が会見したのを受けて報じた読売の記事。

http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20080617-OYT1T00440.htm
「著作補償金のブルーレイ課金、経産・文科省が合意」
(YOMIURI ONLINE(読売新聞))

 権利者側のコメントは日経の記事でも取っていたのだが、読売は「日本芸能実演家団体協議会の椎名和夫常任理事」ということで実名で掲載している。「権利者の意見は反映されておらず、勝手に決められたという印象を受ける。これではコピー制限緩和は受け入れられない」、とまぁ予想通りの内容。

http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20080617/153362/
「Blu-ray Discレコーダーを録画補償金の対象に,
 ダビング10問題の打開に向け経産省と文化庁が合意」
(産業動向オブザーバ - Tech-On!)

 日経エレクトロニクス(サイトは『Tech-On!』)の記事でも椎名氏のコメントが取られている。「今回の措置がデジタル放送に着目したものか明らかでなく,今後,補償金制度の枠組みがどうなるか明確でない。本来,Blu-ray Discレコーダーはとうの昔に録画補償金の対象になってしかるべき機器」──あと記事の地の文として「今回の決定がダビング10実施に直接つながる可能性を否定する見解」とされている。
 この記事ではさらにJEITA(広報)からもコメントを取っている。「関係省庁間の調整に感謝する。引き続きダビング10の早期実施に向け努力したい」。えらく憎らしく思えるのは俺だけか。
 あと、これが重要なのだが、文化庁の著作権課からもコメントが取ってある。「ダビング10実施のための環境作りの一環として現行法の枠内で行った。私的録音録画補償金制度の抜本的な改正については,(文化審議会傘下の)『私的録音録画小委員会(録録小委)』で引き続き議論する」とのこと。

 報道が最初に出た時にはハードディスク内蔵型への課金が見送られたとの方向性で報じられた。そのためネット界隈が色めき立ったのであるが、いくらなんでも文化庁がiPodへの補償金を諦めるところまで譲歩するとは考えにくかった。

 「ダビング10」と補償金の議論を切り離すために、まずブルーレイへの課金を決定して情報通信審議会がゴーサインを出す。HDD内蔵型については私的録音録画小委で検討を続ける──なんてシナリオもありそうだな。「現時点では見送る」との書きぶりではそう読むことも可能なようだ(「当面見送る」じゃないもんな‥‥)。

 ──なんてことを朝日の記事の段階で書いた俺なんだけど、この慎重姿勢で間違ってなかったみたい。結局、私的録音録画小委員会での話し合いは続き、あのクソみたいな文化庁案を叩き続けないとならないわけだ(まぁお下品な私)。




■権利者団体のカウンター

 「デジタル私的録画問題に関する権利者会議」──要するに補償金問題に首を突っ込んでいる著作権者・著作隣接権者の団体だが、今回の省庁間合意に対して声明を発表した。

http://www.cpra.jp/web/news/news_080617_3.html
「『ブルーレイディスクを現行補償金制度の対象と
  することについて』への声明文発表」
(CPRA 実演家著作隣接権センター)

http://www.cpra.jp/web/news/080617_3/bluelay.pdf
「ブルーレイディスクを現行補償金制度の対象とすることについて」
(デジタル私的録画問題に関する権利者会議28団体
 社団法人日本芸能実演家団体協議会加盟61団体(賛同団体))

 まったくの余談になるが、前のJEITAへの公開質問状がJASRACのサイトで、今回の声明文がCPRAサイトというのは何とかならんのだろうか。確かこの権利者会議は『Culture First』サイトも持ってた筈だが、この種のアピールは一箇所にまとめないと正直 見逃すおそれがある。まぁ俺が文句を付ける筋合いのものではないけれど‥‥せめて相互にリンクするとかそういうのはしてほしいよなぁ。

 さて。肝心の声明文の方なのであるが、恨み辛みが書かれていてなかなか面白い。主張の方向性としては、当然あの暫定合意を拒否することになるのは予想済みだ。いや俺から見てもあの暫定合意は無い。決定の場から権利者を外して一方的に決めたようなものだ。あの暫定合意で妥協したのは誰か。少なくとも、総務省でも経産省でもない。

 その一方で、首をひねりたくなる部分もある。

・ ブルーレイレイディスクの指定がデジタル放送に
  着目したものであるか明確でないこと。
・ 既に文化庁が提案している補償金制度の枠組みに関する
  今後の取り扱いが明確でないこと。
との2点から、どれだけの意味を持つものかについて現時点では判断ができません。

 かつ、両大臣は、情報通信審議会で議論されているダビング10の問題にも触れておられますが、以上を考えた場合、現行法でのブルーレイディスクの指定が「権利者への適正な対価の還元」に当たるかどうかについては、はなはだ疑問であり、今回の両大臣のコメントには、戸惑いと失望を感じざるを得ないというのが正直なところです。

 たとえば、ダビング10の開始を前提にブルーレイへ課金するという話をしているのだから、「ブルーレイレイディスクの指定がデジタル放送に着目したものであるか明確でない」というのはおかしい。しかも地上アナログの放送をわざわざブルーレイへ記録する人がどれだけいるのかを考えれば、「ためにする議論」ではないかと思わざるを得ない。
 「既に文化庁が提案している補償金制度の枠組みに関する今後の取り扱いが明確でない」というのは確かにそう。しかしそれは権利者側にむしろ有利なことなのではないか? ここでもし私的録音録画小委員会での議論とリンクされてハードディスク内蔵型には課金しないよ!──などという合意をされてしまっては却って困るではないか。これもまた、拒否をアピールするための論立てのように見えてしまう。

 また、これが致命的なんじゃないかと思ったりする部分が、「現行法でのブルーレイディスクの指定が『権利者への適正な対価の還元』に当たるかどうかについては、はなはだ疑問であり」とするところ。いやいや、現状において「権利者への適正な対価の還元」を行ない得るのは私的録音録画補償金の他には無いって言ってなかったけ、権利者の面々は!? ブルーレイディスクへの課金が「権利者への適正な対価の還元」に当たらない(「はなはだ疑問」)だとするのなら、ブルーレイには課金しなくても良いということなのか。

 いや。あの暫定合意に対して権利者側が言いたいことは解る(解ってるつもりになってるだけ。笑)。
 要するに、ハードディスク内蔵型が合意から外されているのが許せないのだ。ブルーレイへの課金だけでは足りないと言っているのだ。その程度では「権利者への適正な対価の還元」には当たらないのだと。
 ならば、何故そう言わない。どうもこの声明文では主張が遠回しに過ぎる。

 確かに政治決着という形で経産大臣・文科大臣をも巻き込んだものとなってしまった以上、そう簡単に腐すわけにもいくまい。声明冒頭の「省庁間の垣根を越えてこのような努力が行われたことについて、まず権利者として関係各位に心よりの謝意を表したいと考えています」という一文のなんと痛々しいことか。こう言うしかなかったのだ。
 声明の終盤ではきっちり締めてはいる。「権利者としてはこの合意を以って、ダビング10の実施期日の確定ができるものとは考えておりません」「この合意がダビング10の議論を前進させるものでもないと考えております」。これが本音だろう。

 俺自身は、今回の流れについてはかなり権利者に同情的である。いやハードディスク内蔵型に課金するってのは今でも反対だけどね! しかしこのような不透明なプロセスで“トップダウン”(実態は知るべくもないが)に結論が出されたこと、それにおいて極めて政治的な線の引き方をされていることなどを見ると、決して歓迎すべき事態ではない。
 たまたま今回は、ユーザーにとって“最悪の決着”はまぬがれている(権利者にとっては最悪だろうけどね)。しかしそれはたまたまであって、どこがどう転んでいたら「ハードディスク内蔵型も課金!」なんてことになっていたか判らない。それは決して論理的な議論の末の結果ではない、妥協的に線が引かれた上での話でしかないのだ。
 そうやって考えると、俺自身もこんな暫定合意を歓迎する気にはならない。




■今後はどうなるのか?

 ──俺にはまだ見えない。
 とにかく、ITmediaの記事によれば6月24日に権利者団体側で記者会見を開くそうだ(もし中の人がこれを読んでたら案内頂戴。絶対に行くから)。ちなみに6月23日には情報通信審議会の情報通信政策部会#30が、6月27日には情報通信審議会総会#19が予定されている。ということは、おそらく今週中にはデジコン検討委が開かれるだろう。ダビング10関連ではそうした流れのなかで権利者団体の記者会見がセッティングされていることになる。
 情報通信政策部会でほぼ先が見える状態になるのだろうし、これを受けた形で権利者の主張がアピールされるのだろうと思う。その内容がどうなるのか‥‥それはデジコンと部会の流れによるだろうから何も言えない。

 また、今月の下旬に文化審議会著作権分科会の私的録音録画小委員会が予定されている筈だが、いまだに開催案内が一般に出ておらず傍聴受付も始まっていない。前回もギリギリまで開催案内・傍聴案内が出ず、結局そのまま流れてしまったという経緯がある。それを考えると、傍聴受付にも一定期間必要なだけに案内が遅れているのは不吉に思えなくもない。

 俺自身は文化庁案には全力で反対する考えである。「補償金縮小の道筋が見えない」とするJEITAの主張を、この部分についてのみ支持する。俺もそう考えている。
 その一方で、今回 経産省という存在が露骨に入り込んできた(今までもその介入は示唆されてきたところではあるが──たとえば権利者団体の記者会見等々)ことで、権利者とメーカーとの間の対立がより激化するおそれを抱いている。
 “俺史観”からすれば、状況をここまで悪化させたのは文化庁以外の何者でもないと考えているのであるが(そのきっかけ──文化庁の「叩き台」については俺がまだブログを更新していた時期のことだけあって相当書き込んである筈だ)、いま出ている「20xx年」の補償金廃止やらDRM前提やらCD・無料デジタル放送への補償金存置やら、議論のネタとして出されている案すら悪い方向にしか作用していないと考えている。
 そのうえ議論になりようもない要素がさらに増えたとしたら?

 今後 私的録音録画小委でも継続して議論は続けられるらしいが、はたしてそれは経産省の影響から離れたところで行なえるだろうか? あるいはJEITAが暫定合意を前面に押し出して膠着状態を引き起こしたりしないのか。
 よっぽど「ちゃぶ台」をひっくり返した方がすんなり議論できるんじゃないの?と思わなくもない。




■ここで決定版

 俺が文章書いてる間にこんな記事が出てたよ。

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0806/17/news117.html
「Blu-rayに補償金の『なぜ』 『ダビング10』『iPod課金』はどうなる」
(ITmedia News)

 一体型だから著作権法を改正しないとならないってのは文化庁が勝手に持ってきた解釈で、最初の法制小委での議論で委員の側から指摘されたものではないんだよねぇ。どちらかと言うと、iPodへの課金を見送るための方便という風にも見えた。その気になれば政令指定だけで課金は可能だと思うよ(むしろ著作権法施行令の中でどう文章を書いて規定するかの方が問題)。
 たとえば音楽を録音するのに使われているからといって政令指定しなければならないわけではない(iPodがこれまで指定されてこなかったように)。つまり理論上は、一体型でも機器だけに課金して記録媒体に課金しないことも可能ではないのかという(あるいは逆)。
 この話は文化庁の自縄自縛といった感じがしてならない。

 記事の中で権利者側にコメントを取ってあるのと、今後のスケジュールをまとめてある丁寧さに拍手。読む価値あります。
 でも一番いいのは、権利者のうちの誰かがブログか何かやって頻繁に生の声をネットに載せることだと思うけどね!(以前は「著作権課長がブログやれ!」って言ってたけど、そっちはもうどうでもいいや。)

Posted by 谷分 章優 著作権, 著作権行政, 音楽と著作権 | | コメント (0) | トラックバック (1)

2008年6月17日 (火)

朝日記事には驚かされた。

 裏事情に通じてるわけではない俺にとっては判断に困るんだが。

http://www.asahi.com/digital/av/TKY200806160327.html
「ブルーレイにも著作権料を課金へ 文科省と経産省が合意
  - デジタル機器 - デジタル」
(asahi.com(朝日新聞社))

 正直言って、この種の“新聞辞令”には辟易してしまうところもある。しかしよく情報を掴んだもんだなぁ(さすがプロの記者だ)と感心すると同時に、この内容が本当なのかと疑いの目で見てしまうのも事実。
 実は驚愕の内容よ、これ。さらりと書かれているけれども。

 「文部科学省と経済産業省は16日、テレビ番組を録画するブルーレイ録画機とブルーレイディスクに、著作権料の一種である補償金を課すことで大筋合意した。ハードディスク駆動装置(HDD)への課金は現時点では見送る。17日にも発表される」とあるけれども、ここだけでも目を剥きたくなる。ブルーレイの機器とメディアに課金されるのは解る。文化庁案でもその線だった。
 問題はここ。「ハードディスク駆動装置(HDD)への課金は現時点では見送る」? 本当なのかこれ。権利者にとってはここが本丸だろう。そこを妥協する形で文化庁が合意に至るなんてことはあり得るのか。ましてどういう理屈で?
 そして「17日にも発表される」と。今日はずっとPCの前にいないとダメか。

 「最近の録画機やiPodなどの携帯音楽プレーヤーの多くはHDD内蔵型。‥‥事態打開のため、著作権団体を所管する文科省と、メーカー側のまとめ役の経産省は水面下で協議を重ね、ブルーレイ課金で折り合った。‥‥デジタル放送を所管する総務省の情報通信審議会は、こうした情勢をにらみつつ、ダビング10の解禁を検討する」。
 「ダビング10」と補償金の議論を切り離すために、まずブルーレイへの課金を決定して情報通信審議会がゴーサインを出す。HDD内蔵型については私的録音録画小委で検討を続ける──なんてシナリオもありそうだな。「現時点では見送る」との書きぶりではそう読むことも可能なようだ(「当面見送る」じゃないもんな‥‥)。

 いずれにせよ、続報ないし正式発表が無いことには判断できん。
 権利者団体の質問状に対するツッコミを用意してる間にこんなことになって、俺も戸惑ってるよ。とりあえずは速報的に記事を上げた。続報があれば追記する形をとりたい。




■産経でも記事が載った

http://sankei.jp.msn.com/economy/business/080617/biz0806171054003-n1.htm
「ブルーレイに著作権者への補償金 文科省と経産省が合意」
(MSN産経ニュース)

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0806/17/news050.html
「Blu-rayに録画補償金 文科省と経産省が「暫定的」合意 iPod課金は見送り」
(ITmedia News)
※産経の記事と同内容

 閣議決定のあとで、文科大臣が会見で明らかにしたらしい。
 産経でも「iPodなどハードディスク内蔵型の機器への課金は見送った」としているな。ただ気になるのは、「渡海文科相によると、今回の合意は8月に行われる北京オリンピックに向けた暫定的なものだとしている」という点。
 言ってみれば「ダビング10」を人質に取られた権利者側(このニュアンスを楽しんでください)が「暫定的」にとはいえ妥協を強いられた図。ここで益々意固地になったりしないのかと心配になる。JEITAの“籠城戦”が奏功したのか否か。

 大臣会見の内容をもう少し知りたいね。
 これがどうなっていくのか今後も見守りたい。
 ──私的録音録画小委までは日数が結構あった筈なんだよなぁ。

 ところで省令を改定するのにパブコメに付さないのかな?




■荒れる予感

 日経でも記事が出ていたらしい。

http://www.nikkei.co.jp/news/main/20080617AT1G1700M17062008.html
「ブルーレイも著作権の課金対象に 文科・経産が折衷案」
(NIKKEI NET(日経ネット))

 これも大臣の会見を受けてのもの。
 権利者側のコメントを取ってあるところに注目。「権利者団体の一部は『問題解決にはならない』(実演家著作隣接権センター)と今回の案も拒否する姿勢を示しており、先行きは不透明だ」。おそらく椎名和夫氏のコメントだろうな‥‥。

 いや、俺、この省庁間合意については まんまでは受け取ってない。権利者がかなりコケにされてるように感じるからね。裏で“密約”でも無いかぎり、権利者側は呑めないだろう‥‥こんな不透明なやりかたで決められるのでは。

Posted by 谷分 章優 著作権, 著作権行政, 音楽と著作権 | | コメント (0) | トラックバック (1)

ユーザー不在の応酬、どっちもどっち、手前に都合の良いところばかりの主張

 正直な話、JEITAと権利者側の双方に思ったりはする。ましてここにユーザーが入ってきたりすると益々入り乱れるというか。いや俺が掻き乱してるのか(笑)。

 久々(半年以上の御無沙汰!)の更新で、完全に文体を変えて書く羽目に陥っておりますが、このまま行きますよ。

 ──今回のネタ。

http://www.jasrac.or.jp/release/08/06_3.html
「JEITA(電子情報技術産業協会)に公開質問状を再度送付」
(JASRAC)

http://www.jasrac.or.jp/release/08/pdf/06_01.pdf
「2008年6月16日付公開質問状」(PDF)

 6月16日付で権利者側からJEITAヘ送られたという公開質問状について、俺が感じたことを正直に書いていこう。つまりツッコミを入れていく。

 まずは軽くジャブから。
 冒頭で「2007年11月9日付で貴協会宛に公開質問状をお送りしましたが、いまだにご回答を頂戴しておりません」とある。これに疑問を感じた。仮にJEITAからの回答が無かったとしてだ、この半年間、権利者側としては何も督促してこなかったのか、と。何をやってたんだろう‥‥記者会見とか記者会見とか記者会見とか?
 その一方で、直近の記者会見(5月29日にあった──たまたま俺がそれに行ってただけなんだけど)で配布された資料にはこんな箇所があったんだな。

2007年
 11月9日 権利者87団体からJEITA会長宛に公開質問状を送付(記者会見第2弾)
 11月28日 文化庁 平成19年第14回私的録音録画小委員会 開催。
       JEITA委員より関連する発言なし。
 12月7日 JEITA担当者がニュース・サイトのインタビューに
      答えて、公開質問状には回答する気がないことを言明。
 12月12日 権利者87団体は、JEITA会長より公開質問状に関する書簡を受領。

 一応、当該資料の画像も上げておく(画像1画像2)。
 確かに資料の中で「回答書を受け取った」とは書いていない。しかし「公開質問状に関する書簡を受領」したとはある。記者会見の中でも、そうしたJEITA会長の対応について謝意を表明する場面があった‥‥権利者側がね。
 となると、今ここに至って「いまだにご回答を頂戴しておりません」というのはフェアなやりかたなのだろうか。この半年間 回答を求めてきていたのか(ダビング10をめぐるJEITAの見解を問うことは続けてきていたけれど)、それは「書簡」で一応の対応が済んだものとみなされて仕方なかったりはしないのだろうか。
 あるいは、JEITAの会長が替わったから改めて見解を問うとか? それなら「いまだにご回答を頂戴しておりません」だなんて嫌味を書く必要は無いよね。

 ──久々のエントリーはこんな感じで以下、続きます。




■また「誤解」か

 公開質問状の1ページ目から。

 そうした中で貴協会は、これまでの長年に亘る文化審議会私的録音録画小委員会における議論の経緯を無視するような見解を2008年5月30日付で公表されました。このことについ て、私どもは大きな驚きとともに非常に強い憤りを感じております。貴協会の見解は、著作権法の趣旨を曲解した独善的な意見であり、国民に誤解を与えるものと言わざるを得ません。

 まず5月30日のJEITA見解にいたる流れを見ると、昨年12月18日の私的録音録画小委#15で「20xx年」の補償金廃止(ただしDRM前提)が打ち出され、それに沿った文化庁案今年1月17日の私的録音録画小委#16に提示された。補償金廃止を目の前にチラつかされた手前、ここまではJEITA側もおとなしくしていた印象がある。しかし5月8日の私的録音録画小委#2文化庁案の解説と「具体的制度設計」案が出てきたことから様子が一変、JEITAが「補償金廃止への道筋が見えない」として態度を硬化させた(この背景には私的録音録画小委のJEITA委員が交代したことも関係するとの話もある‥‥確かに強い反対意見を述べたのは新しく加わった委員のよう)。
 JEITA内部でもいろいろ事情があるらしいけど、いずれにせよ5月に入ってからJEITAが態度を硬化させる理由になるものは存在する。5月8日の文化庁案ってのが酷い内容で、「これまでの長年に亘る‥‥議論の経緯を無視する」なんてことを権利者側は書いているが、この長年の議論で無視され続けてきたユーザー(委員発言ですら!)の声やメーカー側の提示した疑問点に正面から取り組まず、さも議論を積み重ねてきたかのように述べるのは一方的に過ぎる。そりゃ権利者にとっては有利な文化庁案なんだから、呑みやすいだろうさ(権利者の意図しだいで補償金制度を延命させられる内容)。
 結果的に、汎用機器・記録媒体への課金や支払義務者の変更など、権利者の要望が通らなかった部分もあるのだが これらは“相手にされなかっただけ”と見ることもできる。もともと要望が通る可能性の少なかった部分だ(文化庁の側で前例を重んじるような態度があるのなら尚更)。

 公開質問状の中で「貴協会の見解は、著作権法の趣旨を曲解した独善的な意見であり、国民に誤解を与えるもの」と権利者はJEITAを非難しているが、はたしてそれは正しい認識か。
 たとえば権利者側の見解は「著作権法の趣旨を曲解」してはいないか、「独善的な意見」を主張してはいないか。いやそもそも国民はJEITAの見解に「誤解」させられているのか? 権利者の公開質問状の中を見ていくと、どうも怪しくなってくる。
 そもそも。俺は「誤解」との言葉が軽々しく使われている時点で眉にツバ付けて聞く体勢をとる。これは官僚とか権利者団体とかがよく使う言葉だからだ。それも、ある事柄に疑問が呈された時に必ずと言ってもいいほど出てくる。




■ユーザーのことを考えちゃいない

 公開質問状の前置きとして、質問文(これ自体は昨年11月9日にJEITAへ送られたもの)の前に権利者側の見解が書かれている。この内容をひとことで言えば、権利者は〈いかにして私的複製のすべてから補償金を取ろう〉としているかの“論理付け”に腐心している。その後のページにも、そうした姿勢がありありと出てきている。
 著作権法30条の立法趣旨として加戸・逐条講義を引きながら「閉鎖的な範囲内の零細な利用を認めること」を説明するのは良いけれど、「個人の零細な利用も、国民の総体としてみれば、相当の量及び質となる実態があったことから、1991年12月、著作権審議会第10小委員会は補償金制度を導入することを決定しました」と簡単に繋いでしまっている。いや立法時の考え方を示す事実としては確かにそれで正しいのだけど、この「国民の総体としてみれば」云々がその後の補償金をめぐる議論をこじらせる結果になってしまってるのだから、JEITAを批判する根拠にはなるまい? そもそもJEITAはそれがおかしい、って言ってるのだ。

 「総体としてみれば」などというロジックが許されるのなら、何だって言える。下手をすると補償が必要とされる私的録音・録画に使わない機器・記録媒体にまで課金することを正当化できかねない(さすがに現行制度はそこまで露骨な真似をしてはいないけれど、一応は)。
 また、こうした禍根を残すロジックを捻り出した第10小委員会での議論ってのは、タイムシフトやプレイスシフトについての補償との関係性を議論するのを避けてしまった上でのものだった。時間のある方は第10小委員会の報告書を読んでみることをオススメする。どれだけ脆弱なロジックの上で現行の補償金制度が成立してしまっているのか判る。
 タイムシフト・プレイスシフトについて言えば、「国民の総体」を考えたってゼロに延々と数字を掛けるようなものでゼロだろう。ようやくタイムシフト・プレイスシフトを考えようとしていた私的録音録画小委員会ですら、これを「ゼロ」と言わないように苦労してたのだけれども(リンク先は中間整理の当該部分)。
 しかしこうした態度こそ、今の補償金制度が国民に理解されない一因ではないのかと俺は考えている。ユーザーの感覚との乖離が激しすぎるだろと。

 しかも公開質問状では──

 さらに、昨今の私的録音録画の実態は、コピー技術の高度化、記録媒体の大容量化により、補償金制度導入時の状況から比べれば、はるかに拡大していることに疑問の余地はありません。

 とまで言い切ってしまっている。権利者側の主張(ポジショントーク)だからこれもアリだろうけれども。

 タイムシフト・プレイスシフトのことが少しでも頭に残っているなら、こうした主張には抵抗感が生じるところだろう。普通は。コピー技術が高度化しようが、記録媒体が大容量化しようが、タイムシフト・プレイスシフトの権利者への影響としては全く関係ない(余談だけど、記録媒体が大容量化しても、コピーが無圧縮で行なわれるようになるだけでコピーされる著作物の数が激増するわけじゃないのではないかと思ったりする。たとえば音楽では現状MP3とかAACが多く使われてるだろうけど、既に無圧縮とかロスレスで聞いてる人もいるんじゃないのかという‥‥まして一人の人間が楽しめる著作物の数なんてのはたかが知れていて、大容量の記録媒体を持っていても全部が埋まるという話にはなかなかならなくなると考えられる)。
 ここで権利者とJEITA(あるいはユーザー)との議論が噛み合わない最大の理由って、互いが自分に都合の良いところしか言わないところにあると思う。前者はたとえば他人から借りたものとかレンタルとか、そういうものからのコピーを前提にして「経済的損失」を説明する。一方JEITAやユーザーってのはタイムシフト・プレイスシフトを前面に出して経済的損失が無いことを説明する(俺も、ここまでの文章を見てもらうと判るとおり こちら側の人間)。しかし私的録音・録画の実態というのはそれらのどちらかではなくて、両方存在するものだったりする。
 俺としては、双方の言い分というのが(互いの前提においては)ある程度の妥当性をもっていると考えていて、そこを切り分けることで議論を決着させる余地があるんじゃないのとずっと考えてきていた。だれも相手にしないがね(笑)。

 要は、権利者が「タイムシフト・プレイスシフトに使われる蓋然性が高いのなら補償金を返しますよ」と言えば済むことじゃないの、と。もちろんそれだけで納得性が得られるとは思わないけど(たとえば分配についての情報公開とかも必要)、かなりマシになるんじゃないか。




■補償金が私的複製の自由を保障し、著作権保護技術が私的複製を制限してこなかったかのような大嘘

 たぶん今回の公開質問状でユーザーからの反発が強いのは2ページの「著作権保護技術」のくだりなんじゃないかと思う。明らかにユーザーの経験に反した内容だからだ。このあたりでは何度も酷い目に遭ってきたからね、俺たち。

 ちなみに「著作権保護技術」というのは、私的録音録画小委員会(つまり補償金問題を議論している場)においては「何らかの方法により複製が実質的に制限される技術」と定義されている。いわゆる「DRM」と同義だと考えて良いのかな、電子透かしを「著作権保護技術」に入れる(「複製が実質的に制限される」)と考えるのが妥当なのかとか考えてしまうけれど。
 一方で、著作権法では「技術的保護手段」というのが定められていて、これを(意図的に)回避して行なう複製は私的複製とはならないということになっている。しかし「技術的保護手段」というのは著作権法第二条二十号に規定された(比較的狭い)範囲についてしか言えない。



技術的保護手段 電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によつて認識することができない方法(次号において「電磁的方法」という。)により、第十七条第一項に規定する著作者人格権若しくは著作権又は第八十九条第一項に規定する実演家人格権若しくは同条第六項に規定する著作隣接権(以下この号において「著作権等」という。)を侵害する行為の防止又は抑止(著作権等を侵害する行為の結果に著しい障害を生じさせることによる当該行為の抑止をいう。第三十条第一項第二号において同じ。)をする手段(著作権等を有する者の意思に基づくことなく用いられているものを除く。)であつて、著作物、実演、レコード、放送又は有線放送(次号において「著作物等」という。)の利用(著作者又は実演家の同意を得ないで行つたとしたならば著作者人格権又は実演家人格権の侵害となるべき行為を含む。)に際しこれに用いられる機器が特定の反応をする信号を著作物、実演、レコード又は放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像とともに記録媒体に記録し、又は送信する方式によるものをいう。

 ──解りにくいっすね!
 これは当時のコピーコントロール技術、たとえばビデオテープにおけるマクロビジョンなどが念頭に置かれて規定されたものらしい。上記の規定のポイントは「電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によつて認識することができない方法」であること、著作者人格権・著作権・著作隣接権を「侵害する行為の防止又は抑止‥‥をする手段」であること、「機器が特定の反応をする信号を‥‥音若しくは映像とともに記録媒体に記録し、又は送信する方式によるもの」であること。これらを満たさなければ「技術的保護手段」とは著作権法上 認識されないため、意外とこれに相当しない著作権保護技術は存在する(有名なところではDVDビデオのCSSとか)。
 具体的には、2005年での法制問題小委員会での議論を見るといい(文化審議会著作権分科会法制問題小委員会審議の経過)。たとえば「現行著作権法では,著作物の複製を技術的に防ぐ手段(コピーコントロール)は,『技術的保護手段』として保護の対象としているが,暗号化等により著作物の視聴等を制限する手段(アクセスコントロール)は,視聴行為そのものが著作権法における権利の対象ではないため,『技術的保護手段』の対象外であると解されている」。私的録音録画小委員会での議論も同様の前提に基づいて行なわれている。
 補償金問題での「著作権保護技術」の話は、著作権法上の「技術的保護手段」よりは広い概念と捉えられていることに注意が必要だ。つまるところ、「技術的保護手段」を回避した家庭内複製は30条の外なのだけど、「著作権保護技術」の場合は私的複製になる場面もあるわけだ。

 さて、長い前置きだったが本題に戻る。
 公開質問状では「著作権保護技術」を「ユーザーの複製行為が私的録音録画の範囲を超えないよう、ふたをかぶせるだけ」としている。しかし これは明らかに事実と違う。「コピーコントロールCD」やコピーワンスなどの例を出すまでもなく、私的複製を妨害する形でしばしば「著作権保護技術」が導入されてきたからだ。
 しかも忘れてはいけないのが、この「著作権保護技術」の導入が私的録音録画補償金制度のもとで行なわれてきたという事実。つまるところ私的録音録画補償金は「ユーザーの私的録音録画の自由を維持」することには全く役立っていなかったのだ(権利者側はそうした信義にもとることをやり続けてきた)。

 CDと無料放送については、権利者の側からも反論が出せそうではある。たとえばCDの場合は実質コピーフリーだし、パソコンには補償金が掛かってないじゃないか。無料放送にしても、「コピーワンス」は放送局とメーカーが勝手に決めただけで権利者が頼んだわけではない。
 ──しかし、CDのコピーについては権利者自身が「違法コピー」と喧伝したこと(これ自体30条をないがしろにしてはいないか)、そして実際に「コピーコントロールCD」を導入してそれを妨害しようとしたことが反論の説得力を弱めることになるだろう。おとなしく、「せめてCDをコピーする時は音楽用CD-Rを使ってね(にこにこ)」とか言ってれば多少は理解してもらえたかも知れないってのに(しかも多少の補償金は入ってくる)。 無料放送についても、ユーザーの側に立った意見を言ってくれていたわけでもなく、堂々と補償金を受け取っていたわけだから今さら「自分たちの意思じゃない」と言ってもねぇというところがある。

 ともあれ、権利者側が公開質問状の1ページから2ページで主張してる内容が「客観的事実」なのか否かについては甚だ疑問があるとしか言いようがない。

(つづきます)

Posted by 谷分 章優 著作権, 著作権行政, 音楽と著作権 | | コメント (0) | トラックバック (0)