いつのまにかB-CAS廃止の話は吹っ飛んでいて、追加する新ルールを考えるという話になっている
22日に、総務省の「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会」第47回会合が開かれた。この会は「デジコン」の通称で知られ、地上デジタル放送のコピー制限「ダビング10」の仕様を長い年月かけて議論し、6月末の「第五次中間答申」のまとめをきっかけにようやく「ダビング10」開始の運びになったことで注目された。その後は、「技術検討ワーキンググループ」と「取引市場ワーキンググループ」での検討を並行しながら、その報告を受け議論を行なうという形で会合が開かれてきた。
今回の検討委員会は、2つのワーキンググループのうち「技術検討ワーキング〜」の報告のみを議題にした。このワーキングでは、地上デジタル放送の著作権保護を適正に運用するための強制力(エンフォースメント)をどう保つかの議論を続けている。技術的な録画制限を用いメーカーやユーザーへ「契約」で強制する手法と、法制度などでルール破りを禁止する手法の2つがある中、前者の技術・契約を使う手法を検討した結果が報告された。
ワーキング報告には「放送コンテンツ保護に係る技術・契約によるエンフォースメントの在り方(案)」というタイトルが付けられた。「利用者にとっての選択肢の拡大」を前提を掲げつつ、現行のB-CASカードを受信機へ差し込む方式からどう改良するかという提案が4通り示された。(1)カードを小型化すること(2)カードを販売時にあらかじめ受信機へ装着しておくこと(3)コンテンツ保護の機能をチップに集約する形をとること(4)コンテンツ保護ルールに基づいたソフトウェアを用いること——といった具合だ。
カードを使うという点では現行と変わらない(1)と(2)については、暗号を解除する「鍵」の管理者としてB-CAS社の存在を前提としている。現行ではB-CAS社がカードの所有者であってユーザーに貸与される形を取っていること、目的外使用の制限のことなど、ユーザー制度を理解してもらうのが必要なのも同様だ。ただし(2)では、ユーザーが受信機へカードを指す行為が不要になるため、カードの貸与などの情報を提供する機会を確保するのに「クリック契約」などの操作を改めて用意しなければならなくなるとの「課題」が指摘されている。
B-CASカードとは全く異なるアプローチである(3)と(4)でも、保護ルールを管理するライセンサーと、チップやソフトウェアを作る事業者とで「それぞれの役割や、役割に応じた責任」や「目的やスキームに応じた技術方式」などを改めて検討していく必要があると指摘している。
これらの(1)から(4)という“新方式”が提案されたことで、B-CASの廃止がいよいよかと思いそうになる。ところが、これらの方式は、実は現行のB-CASシステムと並行して導入されることを前提にして提案されている。「利用者にとっての選択肢の拡大」という前提が掲げられていたのも、B-CASのものと新しい方式のものと両方があることによる「選択肢の拡大」を示したものだという。案を説明した総務省コンテンツ振興課の小笠原課長によれば、すでにB-CASシステムでの受信機を買った人が多くいることでもあるし、新方式へ移行した途端に受信できなくなるというのでは「消費者保護の観点から」問題があると判断した結果のようだ。
B-CAS廃止論が強まっていた中で始まった検討だったのに、ワーキングの提案が4つ出てきたところでいつのまにかB-CAS廃止が吹っ飛んでしまった感じは否めない。もしB-CASと異なる方式が追加されるとなれば、別方式のものを並行して送信しなければならない、そのコストはどうなるのかと聞いている方としては不思議になってくるのだが‥‥。
しかも、(1)から(4)の方式を聞いて、ユーザー側委員が相次いで(4)のソフトウェア方式が良いのではないかと意見を述べたが、今回の報告はまだ「どれが良い」「どれにすべき」とは言える段階に無いと村井主査が釘を刺すものだった。主査によれば、まだそれぞれがどれだけのコストを要するかまで検討しきれてはいないという。確かに、コストに関する記述は資料に無かった。
放送局側の委員からは「B-CAS方式にこだわらない」とする発言が出て、もっとも理解を得るべき視聴者(国民)を重視する意向が示されはした。一方で、費用対効果などの問題もあって、今後議論を深めていく必要性を指摘する意見も相次いだ。まだまだ先は長い。
デジコンで議論の対象となっているのは、「基幹放送」と呼ばれる無料の地上デジタル放送のみである。その「基幹放送」にスクランブルをかける必要性があるのか、という根本的な疑問が一貫して河村委員から示されてはきた。しかし、今回の報告では「技術・契約によるエンフォースメント」としている通り、それは全く前提に汲み入れられていない。先の(1)から(4)のいずれもが暗号化を想定されたものだ。法制度に頼らないという前提では、保護ルールを守らせるためにスクランブルをかけて、受信機を製造するメーカーにチェックを入れていく手法をとるしかないという考え方なのだろう。
となれば、スクランブルに違和感を持っているユーザーの場合は、「選択肢」をシビアに判断するしか無いのかも知れない。また地上デジタル放送に違和感を感じ、移行をためらう原因はスクランブルだけではない。ユーザー側委員から、景気悪化とともにデジタルテレビを用意できない家庭が増えていく懸念が表明されてもいた。せっかくワーキングで提案した「選択肢」でも、その中に適切なものが無ければ、ユーザーは地上デジタル放送を選択しない(見ない)という判断を下す可能性もある(逆に、何となく受け入れられる可能性も無いとは言わないが‥‥)。
小笠原課長が説明するようにB-CASシステムが残され、さらに新方式を加えるとしたら、コストがどうなるのか注目したいところだ。2011年のデジタル完全移行に向けてこの「新方式」が実施できるように、デジコンの議論は検討開始から1年ほどで結論を出すことを目指している。その期限にきっちり合わせて委員会としての結論は出してくるのだろうが、どうも今のうちから「改善が見込めない」という閉塞した感じが漂ってきてしまっているように私には思える(あくまでも私見)。
「技術検討ワーキング」でも(1)から(4)が検討の途中で、そして法制度を活用した手法はまだ未検討な段階での話ではある。しかしB-CASを存続させることを選択したことで、その運用に実効性を持たせるため、たとえば正規のB-CASカードを流用する無反応機器・フリーオにどう対処するかなどの論点で選択肢が限られてくるように思う。現に、椎名委員から「これらの案では、すでに多くの家庭に鍵が行き渡っているB-CASの問題が解決されるわけでなく、制度的エンフォースメントの導入を求める」発言があった。
「技術検討ワーキング」が法制度に頼るのには消極的だった印象が私にはあったが、今後の議論次第では雲行きが変わってくるのではないかと思えてきた。ユーザーにとって、結局制限を受ける方向へ行きがちになりそうで、あまり嬉しい話ではない。
Posted by 谷分 章優 映画・映像, 著作権, 著作権行政 | Permalink
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コメント
そもそも「B-CAS廃止の話」自体が元々どこにも存在していません。
B-CAS廃止という話は常日頃からデジタル放送に反対している立場である池田信夫氏の流したデマでしかなかったのです。
ASCIIの「B-CAS廃止」報道は誤報:、「B-CAS 見直し」を「B-CAS 廃止」と勘違い
http://www.marumo.ne.jp/db2008_a.htm#7
投稿: trat | 2008/12/24 19:12:47
ちと頭来たので書き込まさせて下さい。
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/12/24/21961.html
http://www.riaj.or.jp/release/2008/pr081224.html
http://www.riaj.or.jp/release/2008/pdf/081224.pdf
日本レコード協会によると無料サイトは違法サイトだそうです。
音楽を無料で手に入れる=違法ダウンロードと発表しております。
Internet Watchも情けないことに、無料と違法の区別が付いておりません。
> 調査では、常にすべての音楽を無料でダウンロードできる携帯電話向けサイトを「違法サイト」と定義
この記事を、正常な日本語で記載するならば、違法と書かれている部分は全て無料と記さなければならない筈です。
日本レコード協会が定義している『違法サイト』と、世間一般が『違法サイト』から受ける印象とが大きく異なる以上、問題があると考えます。
携帯電話のメーカーサイトで、着メロが無料でダウンロードできますが、これも違法サイトとなります。
バナー広告をクリックすることにより、無料で着メロをダウンロードできるサイトは全て違法サイトとなります。
なにより
『携帯向け音楽"違法"サイトの利用率は34.5%、日本レコード協会調査』と
『携帯向け音楽"無料"サイトの利用率は34.5%、日本レコード協会調査』とで
違いを感じませんか?
投稿: 十六夜達也 | 2008/12/25 22:07:16