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2008年12月 2日 (火)

ICPFの第5回セミナーの議事要旨が公表されました。

 前にうちでもネタにさせてもらいました情報通信政策フォーラム(ICPF)のセミナーですが、第5回での城所岩生 成蹊大学教授の講演の要旨が公開されました。いつもながら詳細に記録されていますので、ぜひご一読を。あとCNETでも記事になっていましたね

 この講演は、内閣府の内閣府の知的財産戦略本部で検討されていた「日本版フェアユース」に関連して、そのモデルとなる米国のフェアユースがどう運用されているのか実例を交えて紹介した内容でした。城所先生の論旨は積極導入論に位置づけられます。
 11月17日の当日は知財本部の「デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会」の報告案に関するパブリックコメントが締め切られた日で、その後 11月27日に同専門調査会の第10回会合でその結果をふまえ報告がまとめられています。毎回資料掲載が早かった知財本部には珍しく、その会合の配付資料がまだネットに上がっていませんが、基本的にはフェアユース規定導入の必要性を示した方向性のままでいます。

 ところで、改めて講演要旨の公式版を読み返しますと、自分が書いたまとめがかなり端折ったものなのが明らかですね。ちょっと補足的に書いておきたいなとも思ってたので、この機会にメモ代わりに残しておくことにしました。

 フェアユースをどう捉えようかというのは、実は私自身が試行錯誤しているところがあります。米国では判例で固まっているという「間接侵害」、さらに「寄与侵害」と「代位侵害」に分類されるそうですが、これについてはまとめで触れませんでした。フェアユースを述べるのに、私には使いづらく感じたんですね。実のところ、サービス事業者が裁判でフェアユースを主張する場合、ユーザーの直接侵害をフェアユースで否定し、その結果 事業者の間接侵害が否定されるという流れを狙います。その意味ではフェアユースと深い関係のある話なのですが‥‥。
 日本では「間接侵害」の代わりに「カラオケ法理」が裁判例で強い影響力を持っており、「日本版フェアユース」導入後でもこの影響が残るのではと心配されています。録画ネットやMYUTAなどが葬られた原因が、著作権侵害をしていたのがユーザーではなく事業者の方だと解釈する「カラオケ法理」の適用だということで、営利目的との解釈のもと「フェアユース」に不利に判断され、同様のサービスが救われないことが懸念されるわけです。

 知財本部の専門調査会の報告の中で、「日本版フェアユース」の具体的な形までは決まっていません。今の第30条以下の個別規定を残して、そこに当てはまらないものについて「フェアユース」かどうか判断すること、その判断については基準を条文に書くこと――との大まかな方針のみが盛り込まれています。原理原則として権利制限の冒頭に打ち出される米国版の大きなフェアユースと比較して、“小さなフェアユース”というイメージです。
 まだ具体的規定がはっきりしないだけに、実際の運用がどうなるのか想像しづらいところではあります。しかしICPFでの城所先生の講演や質疑応答で最も気になったのは、今想定されている“小さなフェアユース”だとその対象が複製権に限られてしまいかねないとの話でした。
 「カラオケ法理」によってサービス側が侵害者と判断され、しかも公衆送信権を侵害したということで“小さなフェアユース”からもこぼれてしまう可能性が心配されます。規定の仕方次第で、MYUTAのようなサービスが「フェアユース」で救われないとしたら、そのような規定をわざわざ選択したという無意味な結末にもなりかねません。規定を巧くして救うか、立法趣旨を汲むことで解釈で救うか、そういう選択肢はあるのかも知れませんが‥‥。
 もともと裁判で白黒つける趣旨ですから、「フェアユース」でそうしたベンチャーが救われる保証は必ずしもありません。とは言え、知財本部が「日本版フェアユース」の導入を進める理由とその思いを守り続けていって欲しいと思っています。

 今後の、文化庁での具体的規定に関する議論が重要になってきます。
 どこまで米国のフェアユース規定を真似できるか、その攻防になるのかも知れません。

Posted by 谷分 章優 知財戦略, 著作権, 著作権行政 |

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