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2008年12月30日 (火)

1月1日はアレが解禁される

 2008年が終わろうとしている。来年の1月1日になると、横山大観をはじめとする1958年没のクリエイターの作品が著作権の保護期間を満了する。著作権の保護が切れた彼らの作品は、複製や配布をしたり、新たな創作の下敷きにしたりと、誰でも自由に利用できるようになる。どんなクリエイターでも文化に育まれ、作品を生み出すに至り、その作品が作者の死後50年の後に文化へ還される――こうした「文化のサイクル」が来年もまた一回りする。保護期間延長の議論の行方次第では、このサイクルが途切れてしまうところだった。

 実は同じ日に、著作権法の縛りから「自由」になるものがもう一つある。アジアからの「還流盤」CDの輸入だ。大多数の旧譜について、輸入が解禁されるのである。「文化のサイクル」のダイナミズムと比べれば、みみっちい話ではあるが。

 「還流盤」とは、アジア各国で売られている邦楽CDを日本国内へ「逆輸入」したものを指す。国内レコード会社がアジアで邦楽を売り込む際、現地の物価に合わせてCDを安く売るため、これを日本へ持ち込み差額で利益を得る輸入業者が現れた。国内盤がおおむね3000円前後のところ、還流盤は2000円前後で売られた。かつては、スーパーやディスカウントストアでもよく見かけたのである。著作権を侵害している海賊盤と異なり、還流盤はレコード会社自身がアジアで売った正規盤のため、この商売をやめさせる手段が無かった。

 還流盤を放置しては国内盤が売れなくなる、と危機感を持ったレコード業界は還流盤の輸入を禁止できるよう文化庁に要求した。この輸入禁止が実現すれば、アジアへの進出も積極的にすすめ、そこで得た利益は国内盤の価格を下げるなどして還元するとレコード業界は宣言した。その結果、2004年の著作権法改定で「商業用レコードの還流防止措置」が盛り込まれることとなる。その内容は、国内で初めて発売されてから4年間だけ、国内盤と価格差が大きく「日本国内販売禁止」と表示のあるCDならば、レコード会社が税関で輸入を差止められるといったものだ。著作権法での条文の内容はもう少し違ったものだが、文化庁のガイドラインによって以上のように運用されている。

 この運用のうち、「発売から4年間」の部分で特例が設けられた。還流防止措置が始まる前に発売されたCDについても、運用後4年は制度の対象となることとされたのである。たとえば、1998年にデビューした宇多田ヒカルのCDであっても、2005年から4年間は「還流盤」を税関で差止められることとなっていた。この特例が切れるのが2009年1月1日、つまり2004年以前に発売されたCDならば「還流盤」の輸入が解禁となるわけだ。

 還流防止措置で輸入が止められているCDは、税関のサイトでの検索の結果で知ることができる(日本レコード協会のサイトにもリストが掲載されているが、こちらは差止申立てが受理されたものだけではなく、申し立てる「予定」のものも含まれている)。12月29日の時点の税関サイトによれば、差止申立が受理されているのが424タイトルで、そのうち56タイトルが2004年までに発売されたものだ(シングル盤も含む)。アジアの市場に、これらのCDのうち何枚が残っているのかは判らない。しかし、4年前までに発売されたものかに気をつければ、かつてのような「還流盤」ビジネスがまた可能になるのは確かである。

 これまでは還流盤ビジネス空白の4年ということになるが、還流防止措置が運用されてきた中で何か変わっただろうか。レコード業界は、オーディオレコードの生産を数量金額とも前年比95%前後で“順調に”落としており、アジア進出についても、2005年に641タイトル、2006年に551タイトル、2007年に668タイトルと低調である(この数字は内閣府の『知的財産推進計画』から)。毎年1万タイトル強のCDが国内で発売されるとのことで、これに比較するとお寒いかぎりだ。実はこれまでの間に、税関での差止めの実績は2007年0件、2006年と2005年も1件ずつだったりもする。

 還流防止措置は無意味だったのではないか。むしろ、音楽ファンとレコード業界との溝を決定的なものにしてしまっただけだった。「レコード輸入権」という言葉に聞き覚えのある方もいるだろう‥‥著作権法に書き込まれた還流防止措置の規定は、邦楽CDをアジアから「還流」させるのを止めるだけでなく、洋楽CDの欧米からの輸入も止められる内容だった。そのため、輸入盤を止めることで消費者の選択肢が狭められるとして、音楽関係者や音楽ファンが当時の法改定に反対した。還流防止措置はそれを押し切って導入されたのである。

 あれ以来、私は、国内レコード会社が生産したCDを買わないよう努めるようになった。もともと「コピーコントロールCD」を忌避して買わなくなっていたところに、さらに感情的に避ける気持ちが強くなったのだ。内容を吟味して手を出した国内盤もあるにはあったが、選ぶ目はかつてよりも厳しくなっている。幸い、輸入盤の方は目に見えて洋盤の輸入が止まることは無かったようだが、それでも国内盤と比較して不自然な値段が付くことが目立つようになった。その場合には、発売直後で買うことにこだわらず、納得できる価格に落ち着くまで待つ。

 音楽離れしたという訳ではない。むしろ、自分の持っているCDを聴く機会はiPodなどで増えている。国内のレコード会社から心が離れていっただけの話だ。その一方で、私はある方面に大きく興味を惹かれるようになってしまった。「レコード輸入権」の前後で起こった大きな変化は、むしろこちらの方だったのかも知れない。

 おかげさまで、「レコード輸入権」で「著作権」を強く意識させられるようになり、その後も「iPod税」「ダウンロード違法化」「フェアユース」など、ことごとくレコード協会の意向とは反対の立場で発言をさせてもらっているのである。ありがたい話ですな。




■おまけ:これまで差止められていたが解禁される還流盤リスト

※カッコ内は発売日
 なお、リスト内に無い旧譜ももちろん還流防止措置の対象から外れる。

●GLAY 『White Road』 (2005.1.19)
●w-inds. 『w-inds. - 1st message -』 (2001.12.19)
●w-inds. 『w-inds. - THE SYSTEM OF ALIVE -』 (2002.12.18)
●w-inds. 『w-inds. - PRIME OF LIFE -』 (2003.12.17)
●w-inds. 『w-inds. - bestracks -』 (2004.7.14)
●中島美嘉 『火の鳥』 (2004.6.2)
●SOUL'd OUT 『To All Tha Dreamers』 (2005.2.2)
●The Gospellers 『G10』 (2004.11.17)
●CAGNET 『Love Generation (Original Soundtrack)』 (1997.11.7)
●押尾コータロー 『Be HAPPY』 (2004.6.23)
●小野リサ 『ESSENCIA』 (1997.11.19)
●ORIGINAL LOVE 『EARLY COMPLETE』 (2003.6.25)
●菅野よう子 『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX O.S.T.2』 (2004.5.26)
●五輪真弓 『MAYUMI CLASSICS』 (2002.2.20)
●上戸彩 『Re.』 (2004.12.8)
●V.A. 『FURTURE SHOCK MUSEUM』 (2004.3.17)
●L'Arc~en~Ciel 『The Best of L'Arc~en~Ciel 1994-1998』 (2003.3.19)
●L'Arc~en~Ciel 『The Best of L'Arc~en~Ciel 1998-2000』 (2003.3.19)
●L'Arc~en~Ciel 『The Best of L'Arc~en~Ciel c/w』 (2003.3.19)
●ASIAN KUNG-FU GENERATION 『ソルファ』 (2004.10.20)
●ROUND TABLE featuring Nino 『APRIL』 (2003.4.23)
●THE BACK HORN 『イキルサイノウ』 (2003.10.22)
●溝口肇 『tokyo tower o.s.t.』 (2004.12.22)
●タテタカコ 『大空(そら)』 (2004.7.22)
●鳥山雄司 with ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラ 『「世界遺産」組曲』 (2003.12.3)
●織田裕二 with Butch Walker 『Last Christmas / Wake Me Up GO! GO!』 (2004.11.3)
●KREVA 『新人クレバ』 (2004.11.3)
●藤木直人 『COLORMAN』 (2004.12.8)
●松任谷由実 『VIVA!6x7』 (2004.11.10)
●鷺巣詩郎 『CASSHERN ORIGINAL SOUNDTRACK [Complete Edition]』 (2004.10.20)
●SINSKE 『INFINITY』 (2003.8.20)
●小沼ようすけ 『Summer Madness』 (2002.11.20)
●THE GREAT JAZZ TRIO 『'S WONDERFUL』 (2004.12.1)
●川井郁子 『オーロラ』 (2004.2.21)
●藤田恵美 『camomile』 (2001.11.20)
●藤田恵美 『camomile blend』 (2003.10.1)
●宇多田ヒカル 『Automatic』 (1998.12.9)
●宇多田ヒカル 『Movin'on without you』 (1999.2.17)
●宇多田ヒカル 『First Love』 (1999.4.28)
●宇多田ヒカル 『Addicted to you』 (1999.11.10)
●宇多田ヒカル 『Wait & See ~リスク~』 (2000.4.19)
●宇多田ヒカル 『For You』 (2000.6.30)
●宇多田ヒカル 『Can You Keep A Secret?』 (2001.2.16)
●宇多田ヒカル 『FINAL DISTANCE』 (2001.7.25)
●宇多田ヒカル 『traveling』 (2001.11.28)
●宇多田ヒカル 『光』 (2002.3.20)
●宇多田ヒカル 『SAKURAドロップス』 (2002.5.9)
●宇多田ヒカル 『COLORS』 (2003.1.29)
●nobodyknows+ 『Do You Know?』 (2004.6.30)
●orange pekoe 『Poetic Ore; Invisible Beautiful Realism』 (2004.7.7)
●w-inds. 『夢の場所へ』 (2005.1.1)
●L'Arc~en~Ciel 『REAL』 (2000.8.30)
●SMAP 『世界に一つだけの花』 (2003.3.5)
●嵐 『Single Collection 1999-2001』 (2002.5.16)
●嵐 『5x5 THE BEST SELECTION OF 2002←2004』 (2004.11.10)
●The Don Friendman VIP Trio 『Timeless』 (2004.5.19)

Posted by 谷分 章優 音楽と著作権 | | コメント (0) | トラックバック (0)

ACTAの中身が気になるが、肝心の条文はいまだ明らかにならず‥‥

 タイトルでいきなり「ACTA」と書いてしまっているので、何のことかと思われた方がいるかもしれない。「模倣品・海賊版拡散防止条約」という新しい条約の構想のことで、「Anti-Counterfeiting Trade Agreement」の略である。2005年のG8グレンイーグルズ・サミットで当時の小泉首相が提唱し、今では日本・米国・EU・スイス・カナダ・韓国などが集まって「関係国会合」が開催されている。
 日本国内では、内閣府にある知的財産戦略本部が毎年発表する「知的財産推進計画」で、2005年版からこの構想が盛り込まれてきた。それを受けて、文化庁の文化審議会や、経産省の産業構造審議会などで経過が報告されるようにもなっている。
 ただ、そうした資料から条約構想の概要をしることはできても、肝心の条文の内容などが明らかになっていない。今年後半に入ってから関係国会合が頻繁に開かれており、経産省の発表によれば、条文案をもとに議論するところまで来ているということだ。
 ここでは、私が自分用のメモも兼ねて、これまで明らかになっている資料について書き留めてみる。

 まず最近に公開された情報としては、12月18日付で経産省が「12月関係国会合の概要」を発表している。それによれば、12月15日から17日にパリで会合が開かれ、日本・米国・EU(欧州委員会とメンバー国)・スイス・カナダ・韓国・メキシコ・シンガポール・豪州・ニュージーランド・モロッコが参加したという。
 この関係国会議では、今年6月に開かれた会合から条文案をもとに交渉を開始し、7月29日~31日(ワシントン)、10月8日~9日(東京)、そして今回のパリで4回目だという。ただしそれ以前にも、2007年10月に日米欧などから条約締結に向けた動きを加速する旨が発表されてから「非公式な協議を継続的に行なってきた」らしい。
 次回会合は2009年3月にモロッコで開催される予定。「可能な限り早期の妥結を目指す」としている。

http://www.mofa.go.jp/Mofaj/press/release/h20/8/1182255_914.html
「模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)構想 (7月関係国会合の概要)」
(外務省) 2008.8.1

http://www.meti.go.jp/press/20081009002/20081009002.html
「模倣品・海賊版拡散防止条約
 (Anti-Counterfeiting Trade Agreement, ACTA)構想
 (10月関係国会合の概要)」
(METI/経済産業省) 2008.10.9

http://www.meti.go.jp/topic/data/e81218j.html
「『模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)構想』
 12月関係国会合の概要について-注目情報」
(METI/経済産業省) 2008.12.17

http://www.meti.go.jp/press/20081218001/20081218001.html
「模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)構想(12月関係国会合の概要)」
(METI/経済産業省) 2008.12.18

 では、この「模倣品・海賊版拡散防止条約」構想というのはどういう内容なのか。大枠については、外務省・経産省・文化庁などから発表された資料から知ることができる。
 「模倣品」とは、特許権・商標権・意匠権などを侵害して作られたものを指す。作り手を偽って買わせるニセモノのことだ。そして、「海賊版」は著作権を侵害して作られたものを指す。最近は「物」に限らない、データとしての著作物のやりとりも問題視されてきている。
 こういった模倣品・海賊版が売買されることで発生する害悪の例として政府が挙げているのは、「企業が本来得るべき利益を損失させる」「創作者の開発と創作意欲を減退させる」「消費者の安全や健康を脅かす」「犯罪組織・テロ組織等の資金源にもなる」ということ。これらのうち、金にからむ部分は割とよく聞く理由だが、「消費者の安全や健康」というのは比較的最近聞くようになった謳い文句ではある。これはニセの薬や粗悪品が流通することによる影響を指したものらしい。
 模倣品も海賊版も一国の中で完結しているのなら、その国の法律で取り締まれば済むことだ。しかし模倣品・海賊版の場合は、ある国で製造されたものを他国へ輸出したり、数カ国の港を経由し積み替えることで製造国を判りづらくする実態がある。また、模倣品の本体と偽造ラベルとを別々の国で作り、それぞれを持ち込んだ国で最終的に組み合わせるなど、多くの国が複雑に関係する場合もある。そこで、国を超えて模倣品・海賊版対策の一定のルールを決めようというのが「模倣品・海賊版拡散防止条約」構想ということになる。
 この構想の中では、「国際協力の推進」「知的財産権の執行の強化」「法的規律の形成」が三本柱になっている。国際協力では、各国間での情報共有や途上国への制度整備協力をすることを想定する。執行強化では、知財関連法令の情報や手続きを公表するとともに、消費者の意識を「向上」させる取組みも行なう。そして法的規律では水際措置・刑事執行・民事執行についてのルールづくりをする。税関での差止・没収・破壊を確実にする方策や、模倣ラベルの刑罰強化、「非営利目的の著作権侵害への刑事罰の適用」、「権利者が十分な損害賠償を受けるための措置」が挙げられている。
 こうした大枠について述べた資料を示しておく。ネットに掲載されており、日本語でかかれた資料だ。まず文化庁でまとめたものは、2008年1月11日に開催された、文化審議会著作権分科会の国際小委員会での配付資料で読める(資料6「模倣品・海賊版拡散防止条約について」)。経産省によるまとめは、2008年4月24日付の産業構造審議会 通商政策部会(第7回)での配付資料だ。文化庁の方も経産省の方も、趣旨はほぼ同じ中身だが、文化庁の資料で「知的財産権全体としつつも、特に模倣品・海賊版問題の中心となっている商標権及び著作権侵害に焦点を置く」との一文があるのが興味深い。経産省の側も、開催情報を見るとこの12月9日に開催された第8回通商政策部会で追加報告があった模様だ。私はこの会合を傍聴できなかったので内容はまだ分からないが‥‥。
 この他、11月になって外務省がサイトにあげた国民向け広報がある。これなどは読んでいて分かりやすい。



http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/009/08011520/002.pdf

「模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA:Anti-Counterfeiting Trade Agreement)

 (仮称)構想について」

(文化庁:文化審議会著作権分科会

 国際小委員会2007年度第1回・配付資料・PDF)2008.1.11



http://www.meti.go.jp/committee/materials/downloadfiles/g80424d04j.pdf

「模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)について」

(経産省:産業構造審議会第7回通商政策部会・配付資料・PDF) 2008.4.24



http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/pr/wakaru/topics/vol16/index.html

「わかる!国際情勢 Vol.16 模倣品・海賊版を取り締まれ!

 ~現状と模造品・海賊版拡散防止条約(ACTA)構想」

(外務省) 2008.11.26



http://www.meti.go.jp/committee/materials2/downloadfiles/g81209a04j.pdf

「模倣品・海賊版拡散防止条約 (ACTA)(仮称)構想について」

(経済産業省・産業構造審議会第8回通商政策部会資料・PDF) 2008.12.9

 ここまで資料をかき集めてみても、結局わかるのは「大枠」だけだ。最後に挙げた、産業構造審議会の12月9日付の資料が最も新しいが、この時点で開催されていた3回の関係国会合で「水際措置」「民事執行」「刑事執行」が取り上げられた旨が追加されているにとどまる。やはり条文レベルにまで具体化した情報が欲しい。

 大枠の時点でも気になるところはある。国内の「海賊版」問題に対処するため、文化庁の審議会で、違法複製や違法配信からの録音・録画を違法とするいわゆる「ダウンロード違法化」の方針が固められているところだが、これは現行法の枠組みでは権利者側の立証の困難さを前提としてゴーサインが出された側面がある。私的録音録画小委の報告書によれば――

仮に現実に民事訴訟を提起する場合においても、利用者が違法録音録画物・違法配信であることを知りながら録音録画を行ったことに関する立証責任は権利者側にあり、権利者は実務上は利用者に警告を行うなどの段階を経た上で法的措置を行うことになると考えられるため、利用者が著しく不安定な立場に置かれて保護に欠けることにはならないと考えられる。

とされる。しかし、条約によってこの立証が簡便化されることになれば、一般ユーザーにとっての脅威が強まることになるだろう(適法に入手した複製ですら、その適法性を示すのが難しい場合も少なくない)。
 現行法の中だからこそ一応のバランスが望めるところに、条約によって現行以上の保護水準が要求されることで、ユーザーにとって害になる法改定へと結びつくおそれが無いわけではない。特に海賊版の取り締まりに伴う、税関での持ち物検査や、インターネットでの発信情報のチェック、刑事手続きでの非親告罪化、民事手続きの簡便化などが課題として挙がるものと考えられる。無論これが実際に条約に入ってくるかどうかは判らないわけだが、日本政府の方針として現行法の範囲内でとどめるつもりだったらまだしも、実は2006年9月15日の時点で「模倣品・海賊版対策関係省庁連絡会議」が条約交渉に向けた方針を決定している。

http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/mohouhin/kettei/060915housin.pdf
「『模倣品・海賊版拡散防止条約(仮称)』構想の実現に向けた基本方針」



 効果的な制度を複数国で整備し、各国間の協力の拡充により執行活動の強化を図るという本条約構想の目的を踏まえ、条約内容の検討に際しては、新規の制度整備の可能性を排除せず、条約の実効性の確保、国内制度との調和、制度の合理性など、総合的な観点から行う。

 国内での政治情勢や審議会の空転などで、著作権法の次の改定がいつになるか見えない状況ではあるが、詳しい内容が明らかにされないままACTAの内容が固まってしまい、いつのまにか次の著作権法改定の中身も審議会・国民の頭越しに決まっていたなんてこともあり得る話ではある。
 それなのに、全然情報が出て来ない気味の悪さ。もう少し情報公開が無いものかと思わずにはいられない。

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2008年12月23日 (火)

いつのまにかB-CAS廃止の話は吹っ飛んでいて、追加する新ルールを考えるという話になっている

 22日に、総務省の「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会」第47回会合が開かれた。この会は「デジコン」の通称で知られ、地上デジタル放送のコピー制限「ダビング10」の仕様を長い年月かけて議論し、6月末の「第五次中間答申」のまとめをきっかけにようやく「ダビング10」開始の運びになったことで注目された。その後は、「技術検討ワーキンググループ」と「取引市場ワーキンググループ」での検討を並行しながら、その報告を受け議論を行なうという形で会合が開かれてきた。
 今回の検討委員会は、2つのワーキンググループのうち「技術検討ワーキング〜」の報告のみを議題にした。このワーキングでは、地上デジタル放送の著作権保護を適正に運用するための強制力(エンフォースメント)をどう保つかの議論を続けている。技術的な録画制限を用いメーカーやユーザーへ「契約」で強制する手法と、法制度などでルール破りを禁止する手法の2つがある中、前者の技術・契約を使う手法を検討した結果が報告された。

 ワーキング報告には「放送コンテンツ保護に係る技術・契約によるエンフォースメントの在り方(案)」というタイトルが付けられた。「利用者にとっての選択肢の拡大」を前提を掲げつつ、現行のB-CASカードを受信機へ差し込む方式からどう改良するかという提案が4通り示された。(1)カードを小型化すること(2)カードを販売時にあらかじめ受信機へ装着しておくこと(3)コンテンツ保護の機能をチップに集約する形をとること(4)コンテンツ保護ルールに基づいたソフトウェアを用いること——といった具合だ。
 カードを使うという点では現行と変わらない(1)と(2)については、暗号を解除する「鍵」の管理者としてB-CAS社の存在を前提としている。現行ではB-CAS社がカードの所有者であってユーザーに貸与される形を取っていること、目的外使用の制限のことなど、ユーザー制度を理解してもらうのが必要なのも同様だ。ただし(2)では、ユーザーが受信機へカードを指す行為が不要になるため、カードの貸与などの情報を提供する機会を確保するのに「クリック契約」などの操作を改めて用意しなければならなくなるとの「課題」が指摘されている。
 B-CASカードとは全く異なるアプローチである(3)と(4)でも、保護ルールを管理するライセンサーと、チップやソフトウェアを作る事業者とで「それぞれの役割や、役割に応じた責任」や「目的やスキームに応じた技術方式」などを改めて検討していく必要があると指摘している。

 これらの(1)から(4)という“新方式”が提案されたことで、B-CASの廃止がいよいよかと思いそうになる。ところが、これらの方式は、実は現行のB-CASシステムと並行して導入されることを前提にして提案されている。「利用者にとっての選択肢の拡大」という前提が掲げられていたのも、B-CASのものと新しい方式のものと両方があることによる「選択肢の拡大」を示したものだという。案を説明した総務省コンテンツ振興課の小笠原課長によれば、すでにB-CASシステムでの受信機を買った人が多くいることでもあるし、新方式へ移行した途端に受信できなくなるというのでは「消費者保護の観点から」問題があると判断した結果のようだ。
 B-CAS廃止論が強まっていた中で始まった検討だったのに、ワーキングの提案が4つ出てきたところでいつのまにかB-CAS廃止が吹っ飛んでしまった感じは否めない。もしB-CASと異なる方式が追加されるとなれば、別方式のものを並行して送信しなければならない、そのコストはどうなるのかと聞いている方としては不思議になってくるのだが‥‥。
 しかも、(1)から(4)の方式を聞いて、ユーザー側委員が相次いで(4)のソフトウェア方式が良いのではないかと意見を述べたが、今回の報告はまだ「どれが良い」「どれにすべき」とは言える段階に無いと村井主査が釘を刺すものだった。主査によれば、まだそれぞれがどれだけのコストを要するかまで検討しきれてはいないという。確かに、コストに関する記述は資料に無かった。
 放送局側の委員からは「B-CAS方式にこだわらない」とする発言が出て、もっとも理解を得るべき視聴者(国民)を重視する意向が示されはした。一方で、費用対効果などの問題もあって、今後議論を深めていく必要性を指摘する意見も相次いだ。まだまだ先は長い。

 デジコンで議論の対象となっているのは、「基幹放送」と呼ばれる無料の地上デジタル放送のみである。その「基幹放送」にスクランブルをかける必要性があるのか、という根本的な疑問が一貫して河村委員から示されてはきた。しかし、今回の報告では「技術・契約によるエンフォースメント」としている通り、それは全く前提に汲み入れられていない。先の(1)から(4)のいずれもが暗号化を想定されたものだ。法制度に頼らないという前提では、保護ルールを守らせるためにスクランブルをかけて、受信機を製造するメーカーにチェックを入れていく手法をとるしかないという考え方なのだろう。
 となれば、スクランブルに違和感を持っているユーザーの場合は、「選択肢」をシビアに判断するしか無いのかも知れない。また地上デジタル放送に違和感を感じ、移行をためらう原因はスクランブルだけではない。ユーザー側委員から、景気悪化とともにデジタルテレビを用意できない家庭が増えていく懸念が表明されてもいた。せっかくワーキングで提案した「選択肢」でも、その中に適切なものが無ければ、ユーザーは地上デジタル放送を選択しない(見ない)という判断を下す可能性もある(逆に、何となく受け入れられる可能性も無いとは言わないが‥‥)。
 小笠原課長が説明するようにB-CASシステムが残され、さらに新方式を加えるとしたら、コストがどうなるのか注目したいところだ。2011年のデジタル完全移行に向けてこの「新方式」が実施できるように、デジコンの議論は検討開始から1年ほどで結論を出すことを目指している。その期限にきっちり合わせて委員会としての結論は出してくるのだろうが、どうも今のうちから「改善が見込めない」という閉塞した感じが漂ってきてしまっているように私には思える(あくまでも私見)。

 「技術検討ワーキング」でも(1)から(4)が検討の途中で、そして法制度を活用した手法はまだ未検討な段階での話ではある。しかしB-CASを存続させることを選択したことで、その運用に実効性を持たせるため、たとえば正規のB-CASカードを流用する無反応機器・フリーオにどう対処するかなどの論点で選択肢が限られてくるように思う。現に、椎名委員から「これらの案では、すでに多くの家庭に鍵が行き渡っているB-CASの問題が解決されるわけでなく、制度的エンフォースメントの導入を求める」発言があった。
 「技術検討ワーキング」が法制度に頼るのには消極的だった印象が私にはあったが、今後の議論次第では雲行きが変わってくるのではないかと思えてきた。ユーザーにとって、結局制限を受ける方向へ行きがちになりそうで、あまり嬉しい話ではない。

Posted by 谷分 章優 映画・映像, 著作権, 著作権行政 | | コメント (2) | トラックバック (0)

2008年12月21日 (日)

遅々として議論が進まぬ国際会議、悠然としている国際小委員会、でも油断はできない

 12月19日に開かれた、文化審議会著作権分科会の国際小委員会(第2回会合)で「今後の検討課題」がまとめられた。このうち最優先して検討すべきと多くの委員が要望したのが、海賊版対策だった。とくにインターネット上での「個人の海賊行為」に言及する意見が相次いだ——。

 国際小委員会は、世界知的所有権機関(WIPO)などの国際会議や、他国との二国間協議、締結を目指している条約などの動向を見ながら、著作権に関して対外的な日本の方針を検討する会だ。私的録音録画補償金の見直しを任せられていた私的録音録画小委員会や、著作権法の法改正そのものを議論する法制問題小委員会と並び、文部科学省の諮問機関である文化審議会著作権分科会の下に設置されている。今年度の第1回が5月12日に開かれたきりで、12月の第2回までしばし間が取られていた。
 半年以上の間、国際小委員会で何もしていなかったわけではない。同小委員会に「国際検討ルール形成検討ワーキングチーム」が設けられ、「著作権をめぐる国際動向と今後の検討課題について」の検討が行なわれてきたのだ。今回の国際小委員会は、その検討結果が報告される場でもあった。

 ワーキングチームも同小委員会も動向を見ている国際会議というのは、年に1回開かれるWIPOの加盟国総会と、この総会のもとに設置された「著作権等常設委員会(SCCR)」「開発と知的財産に関する委員会」「遺伝資源、伝統的知識及びフォークロアに関する政府間委員会」などのことを指す。その中でも、議論の中心になるのはSCCR(今年は11月3〜7日に開催)の動向についてだ。
 SCCRでは、デジタル・ネットワーク化に対応した放送機関の保護水準を定める「放送新条約」が1998年から、映像に録画された実演(視聴覚実演)の保護水準を定める「AV条約」が2000年から議論されてきており、その動向についてはこれまでの国際小委員会の報告書にも記載されてきた。しかしいずれの条約構想も、欧米間で意見対立が起こり進捗していない。また比較的新しい議論として、発展途上国から「権利の制限と例外」について国際水準を決めるよう求めているが、先進国がそれに反対し、まず各国の権利制限について実態調査と研究をすべきだという話になっている。
 要するに、国際会議を舞台にした話し合いは全くまとまらない状態だ。そこで日本として今後どう対応していくか、何を働きかけていくかを考えるのに、国際小委員会で先のワーキングチームを作り「今後の検討課題」をまとめたわけだ。

 同ワーキングチームでまとめた検討課題は、「1.著作権保護に向けた国際的な取組」「2.エンフォースメント(法律遵守の強制力)の実効性確保に向けた取組」「3.開発と知財問題への対応」といった項目が立てられている。
 1では、「放送新条約」「AV条約」の議論の動向をふまえながら今後の対応を検討するとしている。2については、国をまたいだ著作権侵害でどこの国の法律・裁判所を用い法的判断を得るのかという準拠法・国際裁判管轄の研究を進めるという。また、各国が持つ海賊版対策の制度を情報収集し分析するのも必要だと指摘している。3は、発展途上国が主張する「パブリックドメインの確保や国際規範に関する柔軟性の確保」「フォークロア(ある共同体で代々作られてきた文化遺産としての創造物)の保護」について、前者は現在の保護水準(条約で許容される保護の制限)でも十分対応できると途上国に伝えていくこと、後者は(条約の形でなくても)各国で対応可能なガイドライン・モデル規定を作るよう提案している。
 このワーキングの報告ですでに「検討課題」がまとめられていたが、国際小委員会名義で決定する「今後の検討課題(案)」という資料も会合当日には用意されていた。ただし内容はワーキングチーム報告とほぼ同内容だ。ワーキングの報告は小委員会に対するもので、小委員会の親会である著作権分科会へは「今後の検討課題」を報告する形になる。

 国際小委員会では、検討課題の中身自体は原案どおり了承された。ただ、これらは課題として大きなものばかりなので、どれを優先させるか順位を決めてはどうかとの委員意見が相次いだ。具体的には、2の「エンフォースメントの実効性確保に向けた対応」を優先するよう求める声が多かった。
 口火を切ったのは、久保田裕委員(コンピュータソフトウェア著作権協会)だった。海外で権利侵害があった場合に、その権利の所在を政府が認証して権利行使をしやすくする必要性(そして制度の提案)を述べた。加えて、海外でのファイル交換ソフトの使用や中国での海賊版を挙げていた資料を指し、ファイル交換ソフトの使用が日本国内でも多いことや海賊版がヨーロッパでも多いことなど、現状を正しく把握する必要性も強調した。
 石井亮平委員(日本放送協会ライツ・アーカイブスセンター)は、放送機関保護(放送新条約)についての政府の働きかけを求め、海外での動画共有サイトで放送番組が違法にアップロードされている実態を強調しながら、「簡便な手続きで違法な動画が削除される」仕組みが望まれるとした。池田朋之委員(日本民間放送連盟)も同様に、「放送事業者の立場で言うと、放送条約の成立がないと海外での権利行使は難しい」として、違法な動画をどう削除させるかの調査を求めた。
 こうした権利者側委員からの要望が相次いだことを受けて、先に口火を切った久保田委員が「委員会でお願いするだけではなく、権利者がまず現場に踏み込んで実態調査をする、そして実費程度を国から貰ってというつもりでないと。(お願いするだけでは)変わらないんじゃないか」と、権利者側の受け身の姿勢を正すべきだと釘を刺す場面もあった。

 委員意見が重なった「エンフォースメント」の優先順位が高めに設定されることはおそらく間違いないだろう。優先度についての議論は次回にと道垣内主査の発言があったが、「エンフォースメント」だけを検討課題にすることはないにしても、委員の意向はある程度反映されるものと思われる。優先順位にまで触れるかはともかく、「今後の検討課題」を含めた国際小委員会の方針は、1月26日に予定されている著作権分科会で報告される。
 こうして今期の法制問題小委員会・私的録音録画小委員会・国際小委員会と、著作権分科会へ向けての報告が出揃った(なお「過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会」第7回会合は年明けの1月6日に開催予定)。いずれも著作権侵害対策の検討結果が盛り込まれるということになる。違法複製や違法配信からのコピーを違法化するという構想を盛り込んだ法制問題小委員会・私的録音録画小委員会と比較して、国際小委員会については、報告書の上ではまだこれから調査を始めるところという違いはある。たとえば、ファイル交換ソフトを利用した著作物のやりとりは国境を越えるものが多い。調査研究や、準拠法・国際裁判管轄の検討、そして関係国同士の情報共有の仕組みづくりなど、まだまだ取組みが始まったばかりだ。
 しかし気になるのは、国際小委員会での検討がこうゆっくりしているように見える裏で、日本・米国・EUなどの一部の国でWIPOより小規模の会議が持たれ、ルールづくりを進めている例もあるところだ。「模倣品・海賊版拡散防止条約」(ACTA)に関する話し合いがそれで、今年6月・7月10月12月概要)と相次いで関係国会合が開かれているとの発表が経産省や外務省からされている。国際小委員会で事務局(文化庁)から報告されたACTAの内容は今ひとつはっきりしないものだったのだが(ただし前期第1回には説明資料PDFが出されている)、日本の現行法より高い保護水準で海賊版対策が盛り込まれる可能性※があるだけに、国際小委員会に話が来る前に規制強化の方向性が決まっているなどということもあり得る。
 そう考えると国際小委員会の悠然さはそのまま真に受けられないかも知れない。


※2006年9月15日に模倣品・海賊版対策関係省庁連絡会議がまとめた「基本方針」(PDF)の中に、「条約内容の検討に際しては、新規の制度整備の可能性を排除せず、条約の実効性の確保、国内制度との調和、制度の合理性など、総合的な観点から行う」との一文がある。

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2008年12月18日 (木)

メーカーが文化庁案を拒否できたのは文化庁のおかげです

 16日の私的録音録画小委員会(第5回)での、中山信弘主査の締めの言葉が印象に残るものだった。議事を進めて報告をまとめる役割を中山主査が担っていたわけだが、いわゆる「ダウンロード違法化」を実施する方向を維持しつつも、本題の私的録音録画補償金について方向性が打ち出せなかった。これを指しての発言だ。
 発言を以下に引用する。私の傍聴メモと記憶から再構成したものなので、正確なところは1か月後くらいに公表される議事録を待っていただきたい。

 この私的録音録画補償金の問題は、知財戦略本部から、制度の廃止も含めて根本的な検討をおこなうというミッションを頂戴していたわけですが、合意できずに主査として大きな責任を感じるところです。

 私事になりますけれども、去年、著作権法の体系書を出しまして、その本の最初のタイトルが「著作権法の憂鬱」ということでして、まさにその「憂鬱」が現実のものになってしまいました。補償金の問題は、著作権法の全体からすれば僅か(一部分)というものかも知れませんが、現在 著作権法が抱えているデジタル問題を象徴するものだろうと思っています。著作権法がデジタルにどう対応していくかという非常に大きな課題を与えられているのだと。

 ‥‥というわけで、申し訳ございませんというお詫びの言葉でこの会議を締めくくりたいと思います。

 知財法研究の第一人者で、ユーザー側からの信頼も厚い人格者の中山先生が詫びて閉会するという、傍聴していたこちらが申し訳ない気持ちになる場面だった。ただその一方で、私は、中山先生が「責任」を感じる必要はないだろうとも感じていた。私的録音録画補償金をめぐる議論というのは、権利者とメーカーとの思想の対立が大元にあり、その間をとりもつ人はいつもハズレくじを引かされる運命にあるからだ。
 今ある補償金制度が1993年に開始するまでの議論の経緯をみても、そうしたハズレの連続だったことがわかる。家庭内でユーザーが録音・録画することの「補償」を権利者(音楽の著作者・レコード会社・放送局・実演家など)が求め、当時の著作権審議会に「第5小委員会」が設置されたのが1977年のことだ。その「第5小委員会」で話がまとまらず、審議会の外に設けられた「著作権問題に関する懇談会」でも結論が出ず、また著作権審議会(第10小委員会)に議論が戻された。ハズレ、ハズレ、またハズレの連続である。最終的に補償金制度を作ることでまとまった第10小委員会ですら、1987年8月の第1回から1991年12月の報告書完成まで4年以上かかっている。
 なぜそうした議論の空転ばかりが続くのかを考えると、無理もない事情もあったりする。補償金の問題とは結局、金を払いたくないメーカーと、金を貰いたい権利者との攻防なのだ。ひとことで言えば、ユーザーの録音・録画行為をダシにして権利者がメーカーから“著作権料”を取ろうという話である(その“著作権料”を実質的に負担するのがユーザーだというのが何ともタチが悪い)。

 そうしたわけでメーカーと権利者との間で見解が交わらないことは判りきっていた私的録音録画小委員会だったが、実は、議論の中で一瞬だけ共通見解が見出せそうな場面はあった。ユーザーが私的録音・録画する場面を具体的に想像しようという話になった時だ。
 たとえば、ユーザーが自身で買ったCDからiPodなどへコピーする場合、補償が不要そうだというのは権利者側も認めざるを得なかった。また、他人が買ったものを借りてきてコピーすることについては、補償不要とまでユーザー側もメーカー側も強弁できなかった。インターネットで配信されているものについては、同小委員会で議論が始まる以前から補償金は「二重取り」に当たるのではないかと指摘されてきたとおり、iPodやPCへのユーザーのコピー行為を前提にして価格を決めているのだろうということになった。
 これら3つを素直に拾い上げて補償金制度に組み込めば議論がスムーズにまとまりそうなものだが、事務局として小委員会の議事を仕切っていた文化庁はそうしなかった。その後、いわゆる文化庁案ということで、事務局が次のようなまとめを試みた(以下の文章自体は私自身が要約したものである)。

 1.20xx年、私的録音・録画を著作権法30条から外し、補償金を廃止する

 2.「権利者の要請による」DRMがコンテンツすべてに
   かけられているのが廃止の条件

 3.仮にDRMフリーのものがあっても、
   それは「権利者の要請」によるものとみなせる

 4.当面、音楽CDと無料デジタル放送があるので補償金を残す

 5.iPodやHDDレコーダー・ブルーレイディスクは補償金対象に追加指定する

 6.適法に配信されたものは著作権法30条から外す
   (契約で複製が許諾されている)

 ※ 違法複製されたり違法配信されたものからの録音・録画は30条から外す
  (これは事務局案とは別に実施される予定らしい)

 これらひとまとめで「文化庁案」である。パッと見ただけでも、補償金を廃止するのか拡大するのか何が何やらといった具合だ。文化庁案の詳細は、既に公表されている小委員会議事録の中で参照できる(加えて、小委員会の報告書にも丸ごと転載される予定)が、それに目を通しても目眩がひどくなるだけである。論理が一貫していない。
 結果、メーカー側が「補償金廃止への道筋が見えない」として受け入れを拒否し、文化庁案は小委員会もろとも吹き飛んだ。30条をいじくりまわし、今ある補償金制度へ多少手を加えるだけで済まそうという文化庁の姿勢がこの結果を生んだのだ。例の案にしても、“将来的な廃止”はちらつかせただけで実現不可能、実際の補償金制度は課金対象を拡大するという二枚舌だったのだから、メーカーが拒否するのは当然だろう。

 「著作権法がデジタルにどう対応していくか」という大きな課題を意識していた中山先生の思いと裏腹に、小委員会での議論は窮屈なものに押し込まれていった感がある。あくまでも今ある補償金制度を前提として、30条のもとでの私的録音・録画を権利者の「不利益」と考え続けた。しかしユーザー側から疑義が突きつけられていたのはそうした前提自体だったわけで、小委員会がメーカー・権利者・ユーザーという三者の合意を目指していたのなら、もっと根本のところに戻っての説得は必須だったと私は思う。
 職業クリエイターが著作物を作って売り、新しい作品を求めるユーザーがなにがしかの対価を払って鑑賞する。クリエイターが食べていくためこの対価の流れを維持する必要があること自体は、誰もが理解するところではなかったか。その著作物を売る相手が「複製機器を所有するユーザー」なのだと織り込む必要があることも同様だ。
 そうしたときに、著作権法で保障されるべきクリエイターの「利益」の範囲はどれほどのものなのか。たとえば一人のユーザーから、同じ著作物で何度も対価を取ることまで保障されなければならないのか。ユーザーが家庭内でするコピーの中で、権利者に対価を払うべき範囲がどれくらいのものなのか。——そうした論点について、議論に参加していた者たちが自身の主張をあらいざらい出した上で、共通項を積み上げていく努力が必要だったのだ。
 観念的な議論でウロウロせずに、そこまでシンプルな話に戻れば、少なくとも権利者側とユーザー側とで納得できる落としどころが見えてきたのではないだろうか。議事録の中で、ユーザー側委員が発言したことを読み返してほしい。彼らは金を払うのがイヤだと言っていたわけではない、何故それを払うのかという点にこだわっていたのだ。

 最後に、底意地の悪いことを書いておこう。
 私があの小委員会で本当に見たかったのは、権利者とユーザーとでは納得できる落としどころがまとまり、メーカーが対応に苦慮する姿だった。ユーザーの代弁者然として「iPod課金」反対を言い続けてきたメーカーが、当のユーザーが補償金支払いを認めた時に何と言うか楽しみにしていたのだ。その落としどころに素直に乗ってきていたのかどうか。
 残念ながらそれは、メーカーがまとめ案を拒否する根拠を与え続けてきた文化庁の仕切によって実現はしなかったのだけれども。

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2008年12月17日 (水)

積み上がったものって何かあったんだろうか? 今後の議論で使えるものって何かあったんだろうか?

 12月16日、私的録音録画小委員会の第5回会合が開かれた。今回了承された報告書にも書かれていたのだが、「今期で終了」する同小委員会の最終回ということになる。権利者・メーカー・ユーザーの立場から委員が意見をまくしたてていた、小委員会のこれまでの様子とは対照的に、静かに淡々と終わった。わずか30分の会合だった。
 私的録音録画補償金の「根本見直し」をするのが目的だった筈が、結局その制度には手をつけられないまま幕を閉じる。また、注目されていた「iPod課金」の行方についても結論が出なかった。事務局は論点整理ができたと強調していたが、今後の議論でそれが役立つかは、今回現に失敗しただけに疑わしい(個人的には、そのまま議論を続けたら話がこじれるだけだと思う)。2006年以降、この小委員会で議論されて生み出されたものと言えば、例外・例外で虫食いだらけになった著作権法30条だけになりそうだ。

 私的録音録画小委員会がスタートした直接のきっかけは、iPodなどの新しいデジタル機器に「補償金」をかけるべきかという議論が、2005年の文化庁で起こったことだ。文化庁がiPodへの課金を文化審議会著作権分科会(法制問題小委員会)に諮問したところ、社会的な注目をあつめ、インターネットを中心に反対運動まで起こってしまった。文化庁としてはすぐにお墨付きをもらって課金しようと考えていたようだが、意外なことに法制問題小委員会でも賛否がまっぷたつに割れてしまい、結論が出せなかった。
 その上、補償金制度の「根本見直し」もすべきだという意見も出て、その方向で報告書もまとめられた(著作権分科会報告書PDF)。これを受けて設置されたのが私的録音録画小委員会だ。

 私的録音録画小委員会では2006年から議論が始められた。
 ユーザーがデジタル機器で録音・録画すると、それが家庭内であっても権利者の「経済的不利益」を発生する。だからその不利益の金銭的補償として機器や記録メディアに「補償金」を課金して権利者に還元する——というのが補償金制度の概要だが、この「根本見直し」を目的として設置された割には、こうした制度創設時の前提を踏襲して議論が進められた。実は、ユーザーの間にはこの前提そのものに疑義を持つ人が多いにもかかわらずだ(私もそうした一人である)。
 制度の「根本見直し」というよりは、むしろ権利者・メーカー・ユーザーといった関係者が一同に介することで、再度コンセンサスを構築していくことの方が重視されていたようではある。ただ、それにしても議論の前提の設定が性急に行なわれ、その後の議論のきしみを生んでいたように思えてならない。端的に言えば、メーカーやユーザー側の委員から示されていた疑問は置いてけぼりにされた。
 小委員会での議題を大きく分けると、「そもそも私的複製の範囲はどうあるべきか」「補償金制度を今後どうすべきか」「新しい機器への課金をどう考えるか」という内容だった。文化庁としては一定の方向でまとめようと、早い段階から議論を仕切っていた。これが先のメーカー・ユーザーの置いてけぼりに繋がってもいたわけだが、2007年10月12日付で出された「中間整理」(PDF)までは、文化庁の提示したまとめへの賛否両論を書き込むことでなんとか漕ぎ着けた。

 さて、今回了承された報告書を見ていく。この報告書の内容は、「中間整理」以後の小委員会の展開をまとめたものに過ぎない。しかし報告書を形にするのに苦労する事務局のさまを象徴しているようにも見えるし、文化庁案の提示の仕方や内容を丹念に負っていくと、それが受け入れられなかった理由も透けて見える気がする。興味深い中身ではある。
 下に目次を抜き出してみた。

はじめに
第1章 私的録音録画補償金制度の見直し
 第1節 私的録音録画補償金制度の見直しに関する事務局提案
 第2節 私的録音録画補償金制度の見直しに関する事務局提案に対する意見
第2章 著作権法第30条の範囲の見直し
 第1節 違法録音録画物、違法配信からの私的録音録画
 第2節 適法配信事業者から入手した著作物等の録音録画物からの私的録音録画
第3章 今後の進め方

 冒頭の「はじめに」から、私的録音録画小委員会での議論が総括されている。「著作権保護技術と補償の必要性の関係を巡る議論を中心に、関係者間の意見の隔たりが依然として大きいことが明らかとなり、これまでの議論においては補償金制度の見直しについて一定の方向性を得ることはできなかった」という。単に議論が進まなかったことを確認するだけなら、最初の数ページだけを読んだだけで用事が済むだろう。
 総括にあるような「関係者間の意見の隔たり」が大きいのは、議論する前から判りきっていたことだ。補償金を増額したい権利者と、補償金を払いたくないメーカーと、そして補償金の存在を知らないか、知っていても納得できる根拠が示されていないと考えるユーザーが「関係者」である。それらの意見の隔たりをどう埋めるのかが議事進行の見せどころだった筈。そしてその結果は‥‥。
 第1章の「私的録音録画補償金制度の見直し」こそが、本当は報告書のメインに据えられなければならない項目だった。しかしこの報告書ではそうならなかった。話の順番からすれば、第2章の「著作権法第30条の範囲の見直し」で前提を示して、その後で補償金の検討という流れの方が自然な筈だ。“成果”の演出とは言っても、第1章と第2章とを倒置させたのは苦しい。


■第1章第1節

 第1章をもう少し細かく見てみよう。第1章第1節は、ここをまるまんま使い、事務局がまとめようとしていた方向性(いわゆる文化庁案)が掲載されている。これまでの小委員会で小出しにされてきたものを一気に転載した形だ。報告書自体が公表されるのはまだ先になりそうなので、リンクを示しつつ文化庁案の流れを以下で紹介したい。
 ただし文化庁案を読む際に注意したいのは、この案では小委員会がまとまらなかったという事実と、事務局がこの方向でまとめようと議事を進めていた際に委員から出された指摘が、文化庁案からも報告書からもかなり抜け落ちていることだ。

 文化庁は、中間整理・パブリックコメント募集をへた前期第15回会合(2007年12月18日)に、「私的録音録画と補償の必要性に関する考え方の変遷」という資料を作成した(PDF。本報告書では第1章第1節2に転載)。「20xx年」の補償金廃止を謳ったものとして当時も話題になったが、これはあくまでも「著作権保護技術の発達・普及を前提に、私的録音に関しては、30条の適用除外とする」上でのものだ。
 この文化庁のまとめに対し、著作権保護技術(なおこれは著作権法の「技術的保護手段」よりも広い概念で、いわゆるDRMをイメージしてもらえると良い)の発達・普及を前提にすることに妥当性があるのかという委員の疑義が出されている。また「娯楽目的」という、鑑賞を目的とした私的録音・録画を30条から除外すること自体にも問題がある。ユーザーの批判をかわすためか、資料の中で「購入したパッケージのプレイスシフトについて権利制限(無許諾・無償)を認めることは要検討」との文言も入っているが、こちらは全くの空手形に終わっている。

 次に事務局が提示したのは前期第16回(2008年1月17日)会合での資料「著作権保護技術と補償金制度について」だ(本報告書では第1章第1節3に転載)。著作権保護技術が「著作権者の要請」によって施された場合には、そこからコピーしても補償金は必要ないだろうという前提を出した。その一方で、当面補償金で対応する必要のある分野として音楽CDと無料デジタル放送を指定してもいる。
 この文化庁案では、そもそも権利者がコピーフリーを選択した場合はどう解釈されるかという問題がある。事務局は「権利者の要請」である場合と、「権利者の要請」とみなせる場合などを(この回以降)たびたび解説するようになる。他にDRMのかかった媒体があるにもかかわらずCDをレコード会社が選択していること、デジタル放送のDRM(ダビング10)の策定の際にも権利者が関わっていることなどを考えると、音楽CDと無料デジタル放送だけ補償金を残す必要があるとの結論にも疑問のあるところだ(事務局が説明していたところの「権利者の要請」とみなす場面との違いを説明しきれていない)。
 補償金を廃止するとの方向性と、残すとの例外の作り方にすでに齟齬をきたしていて、メーカーが反対する火種はすでにこの時点から存在していたと考えられる。

 前期の審議経過報告をまとめた第17回(1月23日)、「エルマーク」の報告と海外での補償金制度の調査報告があった今期第1回(4月3日)を経て、今期第2回(5月8日)に文化庁がいよいよ制度設計案を出してきた(本報告書では第1章第1節4)。この日には、これまでの文化庁案に解説を加えた資料も合わせて用意されている(こちらは本報告書に掲載されていない)。
 制度案を要約すると、先の会合で「補償金で対応する必要性がある」とした音楽CDと無料デジタル放送の存在を根拠とし、当面補償金を現状維持する。PCなどの汎用機などへ課金しないのはそのまま、支払い義務者もそのまま。ただし唯一、iPodなどのハードディスク内蔵型(フラッシュメモリ内蔵型も含む)機器とブルーレイには補償金をかけることにするという方向だった。
 ここまでの文化庁案は“将来的な補償金廃止”をちらつかせて話をまとめようとしてきたため、この回でようやくメーカーが文化庁案に疑問を示すこととなった。メーカーの疑問への文化庁の対応は次回に持ち越され、以後の混乱へと続いていく。ともあれ報告書の中での、文化庁案の内容紹介はここまでだ。


■第1章第2節

 第1章第2節では、第1節で転載された文化庁案に対する委員の意見がまとめられている。といっても小委員会全体としてのまとめではなく、「権利者」「メーカー」「消費者」「学識経験者」それぞれの立場ごとにまとめたものだ。こうした書き方をせざるを得ないほど、7月30日の今期第3回会合では委員の間に亀裂が走った。
 それまでに出されていた文化庁案に対し「補償金廃止への道筋が見えない」としてメーカーが疑問をぶつけ(これは前の回)、事務局が文書で説明するとしたのがこの日の配付資料「回答」だ。ところがその内容は、これまでの事務局案に書かれていたものを繰り返していたにすぎなかった。
 それを受けてメーカーはついに文化庁案の拒否をはっきりと宣言した。それまでダビング10をめぐって総務省の審議会でも確執のあった権利者側も反発し、中山主査いわく「パンドラの箱を開けたよう」な事態へと陥った。つまり小委員会自体が回らなくなってしまった。結果、第1章で報告されるべき検討結果も出ずに小委員会の最終回を迎えてしまったのだ。


■第2章第1節

 ここまでの第1章の議論の前提として本来は扱われる筈だったのが第2章だ。著作権法第30条のいわゆる「私的複製」の範囲を明らかにする目的で、ここから「除外すべき」とする内容を小委員会では検討してきた。そして、中間整理の時点ですでに「第30条の適用を除外することが適当であるとする意見が大勢であった」とまとめられてしまった「ダウンロード違法化」問題というのがこれだ。
 第2章第1節では「違法録音録画物、違法配信からの私的録音録画」について書かれている。しかし内容は中間整理とほぼ同じもので、「違法録音録画物、違法配信からの私的録音録画については、その実態から通常の流通を妨げているものと考えられ、ベルヌ条約等のスリーステップテストの趣旨、先進諸国の法改正や判例の動向等を勘案すれば、中間整理で示された条件を前提として、第30条の適用を除外する方向で対応することが必要であるとの意見が大勢であった」としている。この第30条からの除外をするにあたっては、「利用者保護」をするとのことだったが、その内容についても中間整理から進展は無い。

ア 政府、権利者による法改正内容等の周知徹底
イ 権利者による、許諾された正規コンテンツを扱うサイト等に関する情報の提供、警告・執行方法の手順に関する周知、相談窓口の設置など
ウ 権利者による「識別マーク」の推進

なお、イの措置に関連して、意見募集では利用者が法的に不安定な立場におかれるのではないかとの疑念が多く寄せられたが、仮に現実に民事訴訟を提起する場合においても、利用者が違法録音録画物・違法配信であることを知りながら録音録画を行ったことに関する立証責任は権利者側にあり、権利者は実務上は利用者に警告を行うなどの段階を経た上で法的措置を行うことになると考えられるため、利用者が著しく不安定な立場に置かれて保護に欠けることになることはないと考えられる。

 この点については、立法化の検討時にはよく留意して消費者保護を図るべきとの意見があった。

 これまでの私的録音録画補償金に関するユーザーの認知度を考えると、アやイにどれだけの期待が持てるだろうか。むしろ“違法着うた”に対するコンテンツホルダー側の行動や、「Culture First」のような補償金要求運動の方が広告効果が高かったように思うが、それはとどのつまりダウンロードユーザーを権利者側が訴えるところまで行かないと無意味ということでもある。
 ウなどは、国内のレコード会社が国内の音楽配信事業者に音源を提供した時にのみ表示されるもので、それ以外の適法配信には表示が期待できない。これが「ダウンロード違法化」の「利用者保護」に数えられてしまうところに、この法改定(現時点では予定)のおかしさがある。議論の中で、海外の配信についてはとうとうノータッチのまま議論が終了してしまった。
 「利用者が違法録音録画物・違法配信であることを知りながら録音録画を行ったことに関する立証責任は権利者側にあり、権利者は実務上は利用者に警告を行うなどの段階を経た上で法的措置を行うことになると考えられる」との説明も何の慰めにもならない。このハードルで権利者が提訴できないとすれば法改定は無意味であるし、逆に訴訟の乱発や証拠保全命令などが組み合わされればユーザーにとって脅威となる(ユーザーが適法性を証明できないコピーなどいくらでもある)。私は社会状況としてどちらにも行き得ると考えるし、どちらに行っても適正な状態ではないと考えている。誰も得をしない。

 このいわゆる「ダウンロード違法化」の問題については、ダウンロードがダメでストリーミングはOK、という奇妙な論点も存在していた。キャッシュが複製と判断されかねないのではとの指摘もあった。しかしこれに対して報告書は、「平成18年1月の著作権分科会報告書においても対処の方向性が記されており、今期の文化審議会著作権分科会においても、改めてその方向性に沿う制度的対応について検討されているところである」としている。この「制度的対応」がいつになるのかまだ判らないではあるが‥‥。
 また、私的録音録画小委員会がこうも安易に30条縮小を決めたことで心配されるのが、録音(音楽)録画(映像)分野以外の私的複製でも同様の法改定が行なわれ得ることだ。しかし、これについて報告書では、法制問題小委員会での議論に委ねる旨の書かれ方をしている。現段階での法制問題小委員会でも、録音・録画以外の分野での30条縮小には慎重ではある。


■第2章第2節

 第2章第1節が「違法」なものからのコピーについての検討だった。次の第2節では、「適法」なものからのコピーの話になる。「適法配信事業者から入手した著作物等の録音録画物からの私的録音録画」というタイトルだ。
 ここでは「第30条の適用を除外するとする中間整理の考え方を否定する意見はなかった」としながら、「補償金制度のあり方に関わる関係者の合意を前提に、補償金制度の縮小と他の方法による解決への移行、すなわち契約モデルへの移行という流れの中で捉えられるべきものであり、私的録音録画の将来像や補償金制度の見直しに関する合意がないまま本件のみを先行するのは問題があるとの意見があった」とまとめている。
 違法ソースからのコピーの話とは対象的に、こちらは慎重な書きぶりになっている。「適法配信」の方はしばらく法改定されることはないと見てよさそうだ。逆に言えば、補償金の課金対象にiPodやPCなどが視野に入ってくる時に、「二重課金」の火種が再び‥‥ということになるわけだが。


■第3章

 ここまで見てきた報告書の第1章・第2章は、その内容となる基礎がこれまで既に公表されてきたものにあった。事務局が作成してきた資料や、中間整理や、委員の発言(過去の会合の議事録も公開されている)の引き写しだ。それを受けて、初めてオリジナルの中身で書かれるのが第3章の「今後の進め方」だということになる。しかし第3章は1ページしか無い。もはや私的録音録画小委員会には「今後」が無いということを分かりやすすぎるくらいに示している格好だ。
 事務局提案に関しては、「事務局が関係者の互譲の精神を尊重しつつ提案したものであり、検討の過程で事務局提案に賛成する意見があったとしても、それは最終的に関係者が合意するということを前提とした意見であると考えられるので、関係者の合意が得られなかった以上、今後の議論については、中間整理の段階に戻って進めざるを得ないと考える」とまとめた。ただし議論の成果として「新たな解決策を模索するための論点がある程度整理された」という書き方もしている。私的録音録画補償金の議論を追い続けてきた私としては、どうも疑問に感じるところばかりではあるが。
 私的録音録画小委員会そのものについては、「小委員会としての議論は今期で終了することが適当であると考える」としている。文化審議会著作権分科会の中での検討課題から私的録音録画補償金が外れることは無いだろうし、(どの小委員会が受け持つのかは別として)今後も著作権分科会としての議論は続けられるようである。それとは並行する形で、「同分科会の枠組みを離れて、例えば権利者、メーカー、消費者などの関係者が忌憚のない意見交換ができる場を文化庁が設けるなど、関係者の合意形成を目指すことも必要と考える」との構想が報告書にある。オープンなものになるのか、非公開になるのかも含めて、事務局の説明によれば「未定」とのこと。

 以上が、最後の私的録音録画小委員会で了承された報告書だ。この報告書を小委員会にかけるにあたり、事務局は前もって各委員と文言の調整を済ませていたという(これが審議会の普通の進行なのだろうけれど)。そのためか委員からの発言はほとんどなく会合が終了した。
 ただひとり、発言を求めたのがJEITAの長谷川委員だった。その内容は、今後の議論についてだ。「新しい議論の場を設けるということだが、消費者全体にかかわりのある問題でもあるし、オープンな場で議論したいと思っているのでよろしくお願いしたい。契約と技術の組み合わせでできるのではないかという論点を含めて議論できればと思う」。
 その「新しい議論の場」が、ユーザーの目や手が届く場所に作られるのかはまだ明らかにされていない。かつて文化庁案に「権利者、製造業者、消費者、学識経験者等で構成され、文化庁の要請に基づき、透明性及び迅速性が確保された決定プロセスにより検討を行う」評価機関とやらが盛り込まれていたことを思うと、皮肉ものだとつくづく思う。今の文化庁に、その評価機関並みの「透明性」を確保した「新しい議論の場」を作るつもりがあるのかどうか‥‥。

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2008年12月14日 (日)

1本の映画の修復のために、大多数の著作権切れ映画をあきらめろと?

 黒澤明監督が1998年に亡くなって10年になる。黒澤作品で有名なのは『七人の侍』『用心棒』『影武者』など東宝で製作されたものが多いが、大映で1950年に製作された『羅生門』も、公開翌年のベネチア映画祭でグランプリ(金獅子賞)を獲得し国際的評価を得るきっかけとなった作品として代表作に数えられている。
 その『羅生門』が、角川文化振興財団と米・映画芸術アカデミーとの大プロジェクトのすえ、「デジタル復元」を施されたという。『羅生門』のオリジナルのネガは可燃性フィルムだったため破棄されたとのことで、現存していない。そこで残された映写用ポジフィルムをもとに、長い年月のため付いてしまった傷やゴミの除去から、ポジフィルムに歪んで定着した像の修正まで、オリジナルのネガをイメージして復元する作業が行なわれた。
 こうした作業は、文化遺産を後世へ伝えるという点では意義深いものだ。映画フィルムは年月を経ることで劣化し、写っている像が薄くなったりフィルムそのものが収縮・変質したりする。そうなる前にデジタル化などの保存措置をとらないと、フィルムの劣化と一緒にそこに記録された映画そのものも失われてしまうことになる。しかしその一方で、映画というのは観客に見せて興行的収入を得る側面もある。それを見込んで投資されるものだ。今回の『羅生門』の「デジタル修復」も、すでに劇場にかけられたりブルーレイディスクでの発売が決定していたりする。

 『羅生門』の「デジタル復元」にまつわる報道は以前からあったようだが、復元の完了を伝える最近の報道で気になるものがあったので、ここで取り上げてみることにした。というのも、著作権との絡みが示唆されていたからだ。
 毎日新聞の記事(2008年12月13日付・夕刊)によれば、この復元プロジェクトの旗振り役は角川グループの角川歴彦会長だという。このこと自体は、プロジェクトに「角川文化振興財団」が関わっていること、大映映画の著作権は現在角川映画が所有していることから、意外な話でもない。この記事で目を引いたのは、米国での上映会を訪れた角川氏が発言したという内容の方だ。
 いわく、「3次利用のネットで、海賊版をなくし、わずかなお金でも回収する仕組みを作りたい。国のサポートや著作権延長などの例外的な措置も必要だ」。同記事によれば、復元には約6000万円の費用がかかっているという。確かにそれを回収する仕組は必要だろうし、いくら劇場上映やブルーレイ発売といっても、回収は簡単でないだろう。角川氏がかつてから必要性を説いてきたような、ネットでの「3次利用」に望みを託すのもわかる。しかし、そのサポートで求めるのが「著作権延長」なのか?

 この文脈で「著作権延長」を求めることの妥当性を考える前に、まずは映画をめぐる「著作権」ありようを振り返ろう。これが少々ややこしいのだ。
 著作権法での基本的な設定では、著作物を作ったときに著作権を得るのは制作した本人(著作者)だ。制作のための資金を出した者が著作権を得られる仕組みではない(ただし契約で、資金を出した者へ著作権を譲渡することはできる)。しかし映画の場合は、制作した者ではなく、資金を出した映画製作者へいきなり権利が発生することになっている。この特例のような仕組みは、映画製作者が「自らの発意と責任において」映画の製作を行なっており、巨額の投資を著作権収入によって回収する必要があるからという趣旨で説明されることが多い。
 また、その著作権の保護期間についても、一般には著作者の「死後50年」までとされているところを、映画の場合は「公開後70年」と定められている。映画製作者の多くは企業で、「死後」の計算ができないからだ。ちなみに、映画製作者に著作権が発生するとした現行の著作権法が作られた(1970年)直後は「公開後50年」とされていた。そうだったのが2004年に、映画業界の強い要望を受けて20年延長された。
 『羅生門』は1950年の製作ということで、この延長の対象とは考えられていなかった。著作権が延長されたのは1954年以降の製作映画だった。ここだけで考えられれば、『羅生門」は公開後50年を経過した2001年には著作権が切れてしまっているかに思われる。しかし、著作権法には他の規定があって、『羅生門』の著作権が切れていないということになってしまったのだ。

 『羅生門』の著作権が切れたのか切れていないのか。そこを直接争った裁判がある。黒澤監督の安価なDVDをめぐっての裁判(この裁判のことをまとめた、信頼するブログにリンクしておく)がそれだ。報道で見て覚えていらっしゃる方も多いのではないだろうか。著作権切れした映画を収録した廉価DVDが書店やスーパーなどで売られるようになってかなり経つが、その中に黒澤作品(ただし1953年以前のもの)もいくつか含まれており、その黒澤作品を売った業者を相手取って東宝・松竹・角川映画がそれぞれ訴えたものだ。
 この裁判で注目されたのが、旧著作権法の規定では、映画の著作者の死後38年まで著作権が存続するという点だった。加えて、現行法にも、旧法の規定どおりに保護期間を計算した方が長い場合には、その旧法の計算に従うよう書かれている。問題になった黒澤映画は旧著作権法のもとで作られたから、1998年に亡くなった黒澤監督が「著作者」なら、「公開50年後」よりも後の2036年(死後38年)まで著作権が存続するということになるのだ。

 このように、裁判で黒澤映画の“延命”が確定してしまい、我々ユーザーにとっては安価に黒澤作品を楽しむ機会が奪われた格好になってしまった。『羅生門』を例に価格を考えると、デジタル復元される前のDVDは3990円で販売されていた。いわゆる廉価DVDは1000円程度だ。収録された映像の質に違いがあるとは言え、約60年も前の映画に今の人が払うべき対価がいくらか考えたときに、ユーザーが選択する幅をこうして失ったことは大きいように思う。ちなみに復元版はブルーレイディスクで鑑賞できるようになるが、実際の販売店でそこから値引きされるとしても、4935円というのは1本の映画としては結構な値段だ。
 もっとも『羅生門』については、高い高いとは必ずしも言えない特殊な場面もあり、『KADOKAWA 世界名作シネマ全集』という映画DVD付きの書籍シリーズが発売されていて、そのうちの1冊で当の『羅生門』(もちろん復元前の映像だが)と東宝の『生きる』をセットにした、黒澤作品特集の号があった。それぞれのDVDを購入するよりもかなり安価で黒澤作品が入手できるという、評価できる企画ではあった。
 とは言え、そうした角川グループの努力を評価した上でも、著作権の保護期間延長の要望を妥当と考えることはできない。『羅生門』のようなわずかな作品の修復や販売のために、他の作品をも巻き込んで保護期間を延長することが、ユーザーの利便を失うこととのバランスが取れたものとは考えられないからだ。

 そもそもの話、『羅生門』の修復は、著作権が存続していなければ施されなかったのだろうか。もしそうだったとしたら、そうした修復を今後も他の作品に施すために、それらの著作権も延長していくべきなのか。
 シンプルに考えたい。過去の作品に付加価値を付けるため、少なくない投資をしてリマスターや修復を施す。その結果、多少は高い商品として市場に再投入される。そこまではまだ理解できるのだ。その結果に価値をユーザーがいれば買うだろうし、価値を感じなければ買わないだろう。
 しかし問題は、そうしたリマスターや修復というのは強要されなければならないものか、だ。リマスターや修復は、単なる保存とは違う位置づけで考えられている。だからリマスター・修復を口実にして保護期間の延長が求められたりするわけだ。それらが引き替えにされてしまうことで、廉価でその作品が提供される機会を失ってしまったり、著作権切れすることで多く生まれるだろう次なる作品への利用を奪うことをどう考えるべきか。『羅生門』だったり、『ローマの休日』『東京物語』『二十四の瞳』といった修復を受けられた超有名作ならばまだしも、他の大多数の作品は映画会社の倉庫に眠り続けている。DVD化されていなかったり、もう廃盤になってしまっているものだってある。
 個人的には、『羅生門』の修復は歓迎するし、それなりの対価も払いたいとは思う。しかし、こうした試みのために私自身が必要以上の負担を強いられるのはどうかと思うし、まして著作権制度のように社会全体を巻き込んで負担を強いるのは如何かと思う。『羅生門』だって、残念ながらこの社会の全員が修復に意義を見出せるものとは言えないだろうし‥‥。

 短い新聞記事の僅かな記述に私が食いついただけだから、実際の角川氏の発言が違うものだったらそれに超したことはないのだが‥‥。ともあれ、この種の修復作業というのは、ビジネスで採算が取れる範囲内か、あるいは文化事業と割り切ってやってもらいたいと切に願う。

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2008年12月10日 (水)

青少年向けフィルタリングの現状は ――内閣府の検討会でプレゼンテーション

 今年6月に議員立法で成立した「青少年ネット規制法」。未成年者がインターネットで「違法」または「有害」な情報に触れないよう、携帯電話キャリアやPCメーカーなどにフィルタリングソフトの利用環境を整えるよう義務付けた法律だ。正式名称は「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」で、官庁では「環境整備法」という略称で呼ばれている。しかしネットユーザーには「青少年ネット規制法」の方が通りが良いだろう。
 法案の内容が漏れ伝わって来た当初は、国が「有害」情報の定義を決めたりフィルタリングソフト導入を義務付けたり、「親の代わりに国が決める」ような規制色の濃いものだった。しかし最終的には、「民間の取組を後押しする」という国の関与が若干後退したもので落ち着いた。もっとも法律の第8条では「インターネット青少年有害情報対策・環境整備推進会議」を内閣府に設置すること、第12条ではその推進会議で「基本計画」をまとめるよう定めている。ネット利用に関する教育・啓発活動の推進や、その種の民間団体の取組へ支援する国の方針をまとめ、間接的にでも手綱を締めていくということだ。

 12月8日に、内閣府が主催する「青少年インターネット環境の整備等に関する検討会」第2回の会合が開かれた。「推進会議」で「基本計画」をまとめる前段階として、計画の素案を作るのを目的とした検討会だ。検討会は、通信関係の団体やメーカー団体・PTAの代表ら、関係事業者と有識者から構成されており、また内閣府が省庁全体をまとめて施策を話し合うということで、警察庁・法務省・総務省・文部科学省・経済産業省からも課長級の担当者がオブザーバーとして参加している。
 ここまで横断的で大がかりに見える検討会だが、これまで話し合ってきた内容はというと、10月20日に開かれた第1回と今回とで委員からのプレゼンテーションを中心に議事が進められてきた。まずは現状の把握からという趣旨だろう。「教育及び啓発活動」「フィルタリングの性能向上、利用の普及、民間団体等の支援」といった具合に回でテーマを分けてプレゼンを実施したが、実際には教育・啓発とフィルタリングの普及とでは重なるところが大きいため、内容もかなりリンクしていたようだ。
 検討会の第2回会合でプレゼンテーションを行なったのは、電気通信事業者協会、電子情報技術産業協会(JEITA)、フィルタリング協議会、インターネット協会、モバイル審査・運用監視機構(EMA)、インターネットコンテンツ審査監視機構(I-ROI)の6団体だ。ちなみに、これらの団体は扱っている活動の範囲が重なるというだけでなく、実際に提携して行なう活動も少なくない。

 プレゼンの中から私の興味を惹いた部分をピックアップすると、まず電気通信事業者協会からは携帯電話・PHS会社が提供するフィルタリングの普及状況が報告された。今年9月末時点でフィルタリングサービスの利用者が約455万人、同年3月から約112万人増で、昨年9月からの1年間で見ると約2.2倍の増加だという。環境整備法がきっかけになって事業者側の取組が強化されたためだろう。ただし、規制法の成立の前後での「急増」を成果であるかのように述べるのもどうかと思われる点も(個人的には)あり、むしろこれからの数字がどう推移していくかの方が重要だと思われる。

 携帯電話向けの「健全サイト」を審査・認定しているEMA(モバイル審査・運用監視機構)からは、その審査・認定制度の説明がされた。これまでのところ審査・認定の申請が36件、そのうち認定済みなのが8件、審査中のものも27件あるという。ただしこのEMA認定制度は携帯電話向けのコミュニティサイトに限定しているので、今後は他の携帯電話向けサイトでも「サイト表現運用管理体制認定制度」を用意して、運営者自身がレイティングを行なったり、ゾーンニングを運用できるような仕組づくりに取り組んでいく姿勢を示した。この「セルフレイティング」と、EMAを含む第三者機関による「第三者レイティング」を併用することで、フィルタリングソフトが内容を判断できる基準を増やし、フィルタリングの実効性を高めていくということだ。

 I-ROI(インターネットコンテンツ審査監視機構)も、ネットで流れるコンテンツの審査・認定をするということではEMA似た趣旨の第三者機関だ。しかし携帯電話向けのコミュニティサイトを中心に扱っているEMAとは対照的に、I-ROIの方は「インターネット全般のコンテンツを対象」としており、また最初のうちは「表現型コンテンツ」の方を取り扱うことにしているという。「参加型コンテンツ」(EMAで言うコミュニティサイト)については、後で審査・認定対象を広げる際に入れるとのことだ。
 I-ROIは、発足自体は今年5月末だという。そう聞くと新しい団体に見えるが、もともとはデジタルメディア協会(AMD)の「コンテンツアドバイスマーク(仮称)推進協議会」が前身になっている。その意味では、この種の問題に取り組んできたキャリアは長い。とは言え、7月にシンポジウムを開催して、以後 12月10日に「倫理規程」「表現型コンテンツの健全性認定基準」が公開される運びだという。私個人としては、当初言われていたよりも進捗が遅いような気がする。
 ところで、I-ROIが準備しているレイティングの中身だが、4段階で全年齢・12歳以上・15歳以上・18歳以上だという。閲覧制限の基準となるカテゴリーも「麻薬等」「成人向け情報」「差別表現」など9つ用意されている。これらをI-ROIの「健全性評価基準」として定めておき、これに基づいた「健全」性認定を受けたい人は、まずI-ROIのセルフレイティング研修(第1回は来年2月下旬に予定)に参加して自身でレイティングを行なう。その後 I-ROIは文書審査と目視での審査を行なって、レイティングの表示をさせた上での運用の監視も行なう。レイティングを付ける時、運用を見て認定を決める時、認定後の運用を見る時、と段階を踏んでいって「健全」性を担保するようだ。
 I-ROIのプレゼンで目についたのは、こうした取組の先にあるものとして、「Webコンプライアンス」というキーワードを掲げたことだ。「コンテンツの提供者は、規則遵守に限らず、社会通念、倫理、道徳などの概念を含めたWebコンプライアンスを重視し、情報発信に際してそうした意識を持つことが大切」としている。単純にレイティングのルールを決めて守るだけでなく、社会的な規範として広げていくとの志を感じるところではある。個人的には、まだまだ先は長く、異なる考えを持つ他者とのたくさんの衝突を経なければならないのだろうとは思うが。

 プレゼンテーションではその他、総務省調査でフィルタリングの認知率が85.8%、フィルタリングの必要性を認める回答が94.3%だったにもかかわらず、小学生でのフィルタリング使用率が31.2%だった点を上げ、JEITAが「(親の)危機意識が不足している」と指摘する場面もあった。しかしこれなどは、ずいぶんと踏み込んだ表現だと私自身は思った(その一方で、小学生に携帯電話を持たせることの是非という問題もあるのか、とは思うところだが)。
 JEITAは、この親の意識というものを示した後で、「機器、サービス提供者の対応だけでなく、保護者を含めた社会全体での対応が必要」だとしている。JEITAは「フィルタリング普及啓発キャンペーン」を実施する一方、今後は録画機器やセットトップボックスなどの、近年ネット接続が可能になってくる家電についてもフィルタリングに対応させていく見通しを語っていた。

 プレゼンテーションによって現状を踏まえた上で、検討会では次回からいよいよ「基本計画」素案の策定に入る。事務局によれば、10月17日から11月16日までパブリックコメントにかけられていた規制法施行令が、12月5日に原案通り閣議決定されたという(ちなみに同日付で、パブリックコメントの結果も内閣府・総務省らのサイトで公表されている)。来年4月1日の規制法施行まで着々と準備が進められているわけだ。
 国の姿勢としては、基本的には民間の取組を後押しするにとどめ、あまり出過ぎないように気を遣っている感はある。しかし、「民間の取組」自体に行き過ぎが無いか、たとえばフィルタリングで弾く情報が必要な範囲を超えて広がりすぎていないか、未成年者のために用意したフィルタリングが大人にも強要される場面が生じないかなど、国はそうした行き過ぎも含めて「後押し」してしまうのではないかとの心配も若干ある。フィルタリングやレイティングの試みが始まったばかりということもあり、今後の動向を注視する必要があるだろう。

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“お馴染み”JASRACのシンポ、話題は「ネット法」と「日本版フェアユース」

 12月9日、JASRAC(日本音楽著作権協会)がシンポジウム『コンテンツの流通促進に本当に必要なものは何か』を開催した。このタイトルは、前のシンポジウム(3月25日)でのパネルディスカッションで動画共有サイトを取り上げた際に、放送番組がネット配信されない現状を制度で変えようという、いわゆる「デジタルコンテンツの流通促進」の議論に話が及んだことを受けたものだ。
 シンポジウムは二部構成になっていた。第1部は、12月1日からスタートした番組ネット配信サービス『NHKオンデマンド』について、日本放送協会 放送総局特別主幹の関本好則氏の講演があった。NHKオンデマンドでは、番組の放送直後に期間限定で配信し、放送時に「見逃し」た人のニーズに応える「見逃し番組サービス」と、過去のNHK番組をユーザーの好きな時間に視聴できる「特選ライブラリーサービス」が用意されている。これまでの日本の放送局では珍しい、大がかりなネット配信サービスとして、ビジネスモデルがどう確立されるか注目されているところだ。ここでの結果が、今後の「流通促進」の議論の行方を左右するかもしれない。
 第2部は中央大学法科大学院教授・弁護士の安念潤司氏がコーディネーターをつとめ、株式会社ドワンゴ 代表取締役会長の川上量生氏、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授の岸博幸氏、株式会社ホリプロ 代表取締役兼社長 CEOの堀義貴氏、立教大学社会学部 メディア社会学科准教授の砂川浩慶氏、日本音楽著作権協会常務理事の菅原瑞夫氏らがパネリストとして登壇した。実は、パネリストの顔ぶれは前回と同じだ。
 このシンポジウムは、ニコニコ動画でも配信された。パネルディスカッションでの話では堀氏がニコニコ動画での配信を提案したという。パネルディスカッションの最初の自己紹介の際、川上氏が話している時だけ背景にニコニコ生放送のコメントが映写された。「はやく本題に入れ」「あのー」などとツッコミが入る光景が繰り広げられた。シンポジウムの雰囲気とは馴染まないという判断か、ほんの僅かな間だけの映写だったが。

 スタートから1週間ちょっとしか経っていないNHKオンデマンドの報告がされた第1部は非常に興味深い内容だった。関本氏は7日までの速報値として、会員登録8,000人、番組の単品購入が72,000回、PCからのアクセスだけなら20万人にのぼったとの数字を挙げた。NHKはオンデマンドサービスを有料で提供し、そこから運営費・職員の給料まですべてまかなわないとならないという。現在、用意されている過去の番組が1,266本。これを毎月200本ずつ増やしていき、常時3,000本を見られるように権利処理を進める。
 ネットで配信するためには出演者や使用楽曲の権利者などに許諾を得なければならないわけで、この権利処理をどう進められてきたのか気になるところだ。しかし関本氏は、NHKオンデマンドではプロの出演者らは「団体交渉でほぼ合意できた」と述べた。団体に入っていない人とは個別に交渉しなければならないが、最近では新たに番組を作る時に「見逃し視聴」の分も込みで交渉するため、プロ相手の場合にはさほど障害になっていないようだ。ただし、映画会社や新聞社・雑誌社などが提供してくれた「調達映像」については一部交渉が難航しているという。自社で配信をするつもりの会社が増えているので、競合を避けて断るところがあるそうだ。ニュース映像ならばその部分だけ画像を外すなどすることができるが、ドラマなどの番組ではそういうわけもいかず、交渉し続けるか諦めるかするしかないという。
 むしろ苦労するのは、アマチュア一般の出演者だとのことだ。たとえばドキュメンタリー制作で微妙な内容を扱った場合に、「番組を見てから(配信の許諾について)返事する」と言われる場合があるという。一般の人は交渉の窓口になるような団体が無いから、すべて個々人を相手にして交渉しなければならない。過去の番組については特に、年間に日本で300万人が移動する中で、出演者を捜し出し交渉する。交渉しても、昔のことが掘り返されることを嫌がる人もいるという。
 関本氏の話で興味深かったのは、海外ではBBCの立場が強く、ネットの配信について権利処理していない映像素材は、BBCが国際交流も国際共同制作もしたがらない状況にあるという話だ。2006年にBBCとNHKが『プラネットアース』を制作した際、BBCから、ネット配信の許諾を処理していないためにNHKの素材を使うわけにいかないと言われたという。関本氏は、ネット配信に関する権利もつけておかないと「世界で売れない」と述べた。

 第2部のパネルディスカッションは、前回のシンポジウムでの「共通了解」をコーディネーター・安念氏がおさらいするところから始まった。「死蔵されているテレビ番組がネットで流せるようになればコンテンツ業界はバラ色というのは幻想である」「ユーザーが求めているのは、ネット環境に適した新たなコンテンツである(既存コンテンツを流しただけでは喜んでもらえない)」「ネットでコンテンツが流れないのをテレビ局や著作権制度のせいにするとか、悪者探しをしても全く生産的ではない」「最大の問題はビジネスモデルがまだ確立されていないことにある」。
 そこでビジネスモデルの話をしたい、という仕切でディスカッションが始まった。川上氏は、コンテンツが物に載せられて売られていたパッケージコンテンツが限界に来ていることを指摘した。コンテンツがデータとして売り買いされるようになった以上、違法に入手されたものも適法に入手されたものも変わらなくなっており、むしろDRMがかけられた分、適法に入手したユーザーがバカを見るようになってしまっている。しかしコンテンツを、サーバーでの使用権を売る形にすることで、今後のコンテンツビジネスが見えると持論を展開した。「パッケージが売れないゲームで、唯一ユーザーが払ってるのはMMORPGのようなサーバー型コンテンツだ」という。
 ただ、この「サーバー型コンテンツ」構想についてはあまり議論が深められず、パネルディスカッションの流れは「ネット法」と「日本版フェアユース」に向いてしまった。「コンテンツの流通促進というのが民間の一部や政府機関まで騒いでしまっている。冷静に考えると、流通の促進が本当に国益なのか」と岸氏が疑問を呈した。「金融危機の中で、英米はITなどで成長産業を作ろうと、経済をどう変えるか動き出している。日本はどこを伸ばそうとしているのかが判らない」(岸氏)。
 砂川氏も、「流通促進」という言葉の違和感を述べた。「本来は制作促進を言うべきではないか。制作がなければ流通もない」(砂川氏)。コーディネーターの安念氏も、この砂川氏の発言に前後して、「なぜコンテンツだけ流通促進と言われなければならないのか。流通促進を言われる産業というのはあまりないし、権利処理が大変なのは他でも同じだ。所有権や賃借権の制度が悪いという人はいない」と発言した。
 「日本版フェアユース」についても、菅原氏が「フェアユースは不明瞭。最終的にはとことん訴訟にまで、と考えているのだろうか。社会的な混乱を招くのでは」と指摘。堀氏も「日本版というのがミソ。もとは検索エンジンのサムネールから始まったと思うが、いつのまにかコンテンツでやろうという話になっている」との認識を述べた。
 岸氏も「日本版フェアユース」を「最低最悪」と切って捨てた。しかしその一方で、「一般規定は必要かもしれない」と前置きしてもいた。砂川氏も「目的別のフェアユースをお願いしたい。新聞の縮刷の放送版ができないか。番組ごとのアーカイブではなく、コマーシャルも含めて録画する」と発言した。現行法では、個人としてアーカイブするのは適法だが、大学としてアーカイブすれば違法になってしまう。もしこのアーカイブが可能なら、何十年も経ったのちに大きな資料的価値を持ちえるだろうという。

 さて。ここまでまとめてきた今回のシンポジウムの中で、いろいろと自分の考えを言いたいところがあるのだが、私が最も強い違和感を覚えたところだけここでは指摘しておく。それは、「ネット法」の構想が国の政策だとの前提で話されていたことだ。しかも「日本版フェアユース」がコンテンツ流通促進の議論の延長で批判されている。
 「ネット法」の構想は、元は民間団体から提案されたものだ。今年3月に、デジタル・コンテンツ法有識者フォーラムが打ち出して以来、大きな論議を巻き起こした。コンテンツをネットで流通させるかどうか決める権利を映画会社・レコード会社・放送局にひとまとめにして、出演者や作曲者ら個々の権利者は権利行使をできなくするという内容だ。そのため、権利者サイドから強い反発を受けたものだ。
 この構想は確かに自民党でのコンテンツ関連部会で取り上げられたり、内閣の知的財産戦略本部(デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会)でヒアリング対象にされたりしたが、現時点では、国の政策としてやると決まったものではない。専門調査会が先日まとめた報告(報告案PDF)でも、ヒアリングで発言されただけの提案としての扱いである。
 実は政府の側でも、コンテンツ流通促進の話は消極的な面すらある。堀氏もパネルディスカッションで発言していたが、議論の前提で部分で放送番組に限っているのだ。これなどは私から見ても不満のあるところだ。その不満の理由は私と堀氏では全く異なるところだろうと思うが‥‥。

 「日本版フェアユース」についても、パネルディスカッションでの批判が当たっているようには思われない。「ネット法」の構想は、確かに、上記“権利制限”的な「ネット権」と「フェアユース」の導入が二本柱になっている。しかし「フェアユース」の議論というのは、もともと権利侵害とまでは言えない範囲の利用について、現行法の規定では違法と判断されかねないために著作権を及ばないようにするという趣旨である。多少は流通に関する部分があるとしても、本質的には流通促進云々の話ではない。
 パネルディスカッションでは、「フェアユース」の導入を「ベンチャーがビジネスを続けていけるようにするため」との理由で説明されていることがことさらに批判されていたが、その一方で「一般権利制限規定」の必要性への言及もあった。検索エンジンのサムネイル(ただし実際に権利制限が必要なのはサムネイルについてだけではなく、サーバへの著作物のコピーそのものもだ)を適法化するために個別に規定を用意するようなことでは、社会の変化に対応しきれない。そうした点はパネルディスカッションでも言及されていた。となれば、もはや「日本版フェアユース」に対する批判は単に“理由が気にくわない”と言ってるように見えてしまう。
 私の目から見て、先の専門調査会報告案でまだ「日本版フェアユース」の姿が、現行の30条以下の規定を残すということ以外には見えてきていないのが気になるところではある。むしろ、権利制限できる範囲を狭められかねないのではと不安になっているくらいだ。そうした自分の感覚は置いておくにせよ、「公正な使用ならば著作権の侵害とはならない」という、範囲がしっかり決められるわけではない(しかもその特徴こそが導入の理由である)規定について「不明確」だと批判してみたり、訴訟によって適法かどうか判断するという趣旨なのに「訴訟でシロクロつけるのでは社会が混乱する」と批判することが当たってるのかは疑問だ。
 どうも、「日本版フェアユース」を批判しようにも、攻めあぐねている印象を拭えなかった。

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2008年12月 8日 (月)

次回の私的録音録画小委で報告書が了承される予定、しかし‥‥

 12月16日に、最後の「私的録音録画小委員会」が開かれる。私的録音録画補償金の「見直し」と、その課金対象にiPodを加えるかどうかを検討するため文化庁が設置した会だったが、とうとう見直しにも課金対象にも結論を出せずに終わる見込みだ。今後の制度案を事務局が示していたが、このいわゆる「文化庁案」をメーカーが拒否したことで、前回(10月20日の第4回)の会合において一定の方向性でまとめるのを小委員会は断念した。そしてこれまでの議論を、文化庁案に賛成する意見も反対する意見も併記する形で事務局がまとめ、最後の1回で報告書案を了承するというスケジュールが決められた。

 今年度の小委員会を振り返ると、4月からの会合は次の回を入れてもたった5回。例年は月に1~2回のペースで開かれており、この少なさは異常だ。なぜここまで議論が進められなかったのかというと、文化庁による議論の仕切にメーカーが乗ってこなかったことに原因がある。
 2007年度までの話に少し戻るが、「私的複製」となる録音・録画の範囲を検討し(なお、ここで出された方向性にも問題がある)、続いて さまざまな私的録音・録画の場面を想定しながら「補償」の必要性を小委員会では議論してきた。自分で買ったCDの音楽を録音したり、テレビ番組を録画したり、そういった行為それぞれについて権利者の“経済的不利益”があるかを検討したわけだ。この結果は「中間整理」(PDF)という形でまとめられ、それを受けて文化庁が2007年12月に今後の補償金制度案をまとめた。
 この文化庁案でまとめようと議事が進行されたのが今年度の小委員会ということになる。その内容は、「20xx年」の補償金廃止を打ち出した一方、CDからの録音と無料放送からの録画とでは補償の必要性が残るとして、iPodなどの新しい録音・録画機器にも補償金の課金をするというものだ。しかし、補償金を廃止する「未来」が本当に来るのか、そもそもiPodへの課金が必要とする説明が妥当か、といった観点からメーカー側が文化庁案の詳細を問いただした。文化庁からもメーカーを納得させる回答を用意できず、最終的にはメーカーが文化庁案を拒否するという事態に至った(7月10日の第3回)。

 議論をまとめることが至上命題の審議会でその見込みが立たないとなれば、もはや会合を開くのは難しい。開いたとしても紛糾するだけである。今期の私的録音録画小委員会はそれが決定的になったため、会合が少なくなってしまったのだ。しかし会期の終わりが迫ってくれば、報告書をまとめないとならない。そこで先の「中間整理」を基礎にして、文化庁案と、それをめぐる意見をまとめたものを付け加えて報告書を作るとする「骨子案」が前回 事務局から出された。
 骨子案は大まかに3部に分かれ、「私的録音録画補償金制度の見直し」「著作権法第30条の範囲の見直し」「今後の進め方」との章が用意される。補償金制度については、前述のとおり、文化庁案の内容とそれに対する意見が書かれる。
 一定の方向性でまとまらなかった補償金制度の章とは対照的に、今回の報告書のメインになってしまったのが「30条の範囲の見直し」だ。「中間整理」に記載されパブリックコメントでの猛反対にあった、いわゆる「ダウンロード違法化」を含む部分である。パブリックコメント後、小委員会では方向性を変えることなく「おおむね了解を得られた」ものとまとめられた。骨子案では、「違法録音録画物、違法配信からの私的録音録画」と「適法配信事業者から入手した著作物等の録音録画物からの私的録音録画」について、著作権法第30条で適法とされる「私的複製」の範囲から除外することを提言する項目がある。複製をともなう著作物の鑑賞法が激増している現在、ユーザーが家庭内でする録音・録画について、権利者と訴訟で争う可能性が生じるわけだ。
 実際の文言については「骨子案」から窺うことはことはできず、次回の報告書案を見るしかないが、第4回会合で報告書に対するパブリックコメント募集を改めて行なわないとの事務局の発言があることから、新たな要素は少なく「中間整理」とそう遠くない論旨でまとめられると考えられる。

 メーカーが文化庁案を拒否し、中間整理を引き写す形で事務局が報告書案を作成するという混乱した状態なわけだが、そもそもの私的録音録画小委員会が設けられた目的から考えても、「こんな筈ではなかった」という感じだろう。今後の補償金制度に関するコンセンサスを、当事者である権利者・メーカー・ユーザーらの間で作り上げていくというのが本来の趣旨だったのだから。当事者が納得ずくで補償金制度の行く末を決められるのならベストだったが、結果として起こったのは、権利者とメーカーとの決裂と、権利者とユーザーとの間に新たな溝を生みかねない法改定の構想だった。ここでの議論はいったい何だったのかと、私個人としても思わざるを得ない。
 小委員会が本来の目的を果たせなかったのは、地上デジタル放送のコピー制御を緩和する「ダビング10」の開始が権利者・メーカー間の対立のあおりを食って延期されていた時に、小委員会の頭越しに文科省と経産省とがブルーレイディスク課金で合意してしまったことにも象徴的に表れている。なお、このブルーレイについては文化庁が課金の方向で準備を進めているようだ。
 今後、補償金をめぐる議論はどう行なわれていくだろうか。仮に小委員会を続けるとしても、文化庁案を掲載した報告書(案)を前提にしてすぐ議論を始めるのは難しいだろう。次回が今期最後の会合となるのは間違いないが、私的録音録画小委員会としての最後の会合となる可能性もある。

 目的を果たせなかった小委員会が失ったものは大きい。ユーザーをいかにして納得させ補償金を支払わせるかという“仕掛け”を整える絶好の機会だったにもかかわらず、ユーザーから疑義を突きつけられていた「私的録音・録画すると権利者に不利益が生じる」という“前提”を逆に維持することにこだわってしまい、ユーザーの納得を得る機会を潰してしまった。課金をどういう形で行なっても、補償金が続くかぎりそれを負担するのはユーザーだ。ユーザーが補償金を忌避するようになれば、制度は回らなくなる。
 私的録音録画補償金は、その古くさい前提を権利者とメーカーが共有し、双方が妥協できる範囲――アナログの機器やメディアには課金しなかったり、課金額を定額でなく定率で決定したりするといった範囲で、金のやりとりをすることにしたものだ。実は当初からユーザーの納得性など考えられてこなかった。それゆえに認知率が低く、iPodへ課金が拡大する際の反対の声へとつながった。
 ユーザーにとっての根源的な疑問である「なぜ補償が必要なのか」については、この誰もが複製をあたりまえにできる時代を前提とした回答が真剣に議論されていない。補償の必要が無い複製の範囲が私的録音録画小委員会でも見えてきていたにもかかわらず、そこにいかにして補償金をかけるかという理屈をひねりだすことに文化庁案は腐心してしまったのだ。たとえば何千枚もCDを持っているユーザーが使うiPodに補償金をかけようとするセンスが私には信じられない。自分が所有するCDからのコピーに補償金をかけるまでもないことは小委員会の中でもコンセンサスがある(無いか少ないかとの違いはあるが)。単純に、そこには補償金をかけない(補償金返還の対象にする)、と結論すれば済むことだった。

 ここまで来たのだから、私的録音録画小委員会と私的録音録画補償金の行く末を見届けたいと、私個人としては考えている。しかし今後の展開に希望など全く持てはしない。権利者とユーザーとの間の争いで疲弊するコンテンツビジネスに、納得性が無く誰も払いたがらない補償金と、実効性が無く誰も守らない“著作権ルール”が残るだけではないか。
 そうした惨状を見届けつつ、わずかずつでも回復させていくことを考えたい。

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2008年12月 6日 (土)

放送番組をネットで流すには ——コンテンツ学会がプロジェクトチームを始動

 12月5日に、コンテンツ学会が「ネット利用調整制度に関する民間審議会」を発足させて、最初の会合を開いた。コンテンツ学会は、映画やテレビなどの特定のジャンルに限定しない「コンテンツ」全般を扱う、産・官・学を包括する議論の場を目指した学会だ。その中に設けられた「民間審議会」で話し合われるのは、テレビ放送される番組をどうすればインターネットにも流せるようになるのか、そして放送から配信へスムーズに進める業界慣行が出来上がるのを促す制度をどう用意するかということだ。早稲田大学大学院客員准教授の境真良氏が世話役となり、MIAU共同代表の小寺信良氏、KDDI総研コンテンツ・メディアグループリーダーの花岡宏明氏、ヤフーメディア事業部シニアビデオプロデューサの山根陽一氏ら8人が委員として参加している(審議会メンバーリスト)。

 テレビ番組がなかなかネットに流れない(ただし全く無いわけでもないが)ことは、これまでにも民間で多く指摘されてきたことで、行政の側でも内閣府の知的財産戦略本部や文化庁・総務省の審議会などで検討の課題に挙がった。そこでの議論の前提は、テレビ番組がたくさん製作されていながら、ネットで配信されているのは一部にすぎないとの認識で一致している。皮肉なことに、番組の製作者から正規に配信している番組コンテンツよりも、YouTubeなどの「異常な利用」がニーズを捉えてしまって、集客力を持ってしまうありさまだ。
 何故このようなことになってしまっているのか、という疑問には様々な説明がされている。ユーザーの側からは、テレビ局がコンテンツを出したがらない、あるいは権利者が著作権・著作隣接権を行使することで配信されないという指摘がある。また、権利者の側からは、ネット配信のビジネスモデルが出来上がっていなくて今出しても商売にならない、あるいはユーザーがタダで見られる状態があるのに正規に配信しても金を払って貰えない、といった意見が出ている。こうした様々な見方があるため、考えられる対処策というのも複数あり、たとえば文化庁では現在行方のわからない権利者について権利処理を簡便にする方策を提案したり、総務省ではネット配信を前提とした番組作りの実験を行なっていたりする。12月1日からNHKオンデマンドも始まっているが、ネット配信の動向にどういった影響をもたらすか判るのはまだ先の話だろう。

 ここまで見てきた議論の流れの中に、コンテンツ学会での今回の「民間審議会」も位置づけられる。しかし、直接的な発足のきっかけとしては、「ネット法」構想の存在も大きい。「ネット法」とは、デジタル・コンテンツ法有識者フォーラムが2008年3月に発表した立法案のことで、映画・音楽・テレビ番組などをネットで流しやすくするために、関係する権利者(ライター・出演者・作詞作曲家など)の権利を「ネット権」という一つの権利にまとめ、それぞれ映画会社・レコード会社・放送局に管理させるという仕組みだ(他にもフェアユースの導入も大きな柱なのだが、ここでは省略する)。この「ネット権」者が、配信することを求めるネット事業者に対して「許諾」するかどうか決定できる。この「ネット法」構想は注目を集めるとともに大きな議論を呼び、政治の世界では自民党のコンテンツ関連部会や、行政では知的財産戦略本部や総務省の審議会でも取り上げられた。
 そうした影響力を持った「ネット法」構想だが、疑問点も数多く指摘されている。権利を映画会社などに集中させるため、個別の権利を「切り下げ」られる実演家から反対があることは予想通りとしても、その権利を得られる映画会社・レコード会社・放送局からも反対されている。これまで、あるいはこれからのビジネス上のしがらみを考慮していない制度案ということは言えるかも知れない。また、ユーザーの側から見ても、「ネット権者」がネット配信を止めてしまえば、結局は今と同じではないかという疑問がある。コンテンツ学会の「民間審議会」は、その危惧にメスを入れるところから始められた。

 「民間審議会」第1回の話し合いはどういう内容だったのか。まず、議論の出発点は事務局作成の資料(リンク先参照)で提示された。まず、YouTubeやファイル共有などでコンテンツが流れてしまっている「異常」な状況は(あえて「違法」とは呼ばなかったという)、ネットでの利用機会をユーザーに与えないコンテンツ産業にも原因があるのではないかということ。そして、その問題はテレビ番組で多く発生していて、著作権などの処理が「ワンチャンス」で行なわれていないのが原因ではないかということ。そうした問題点を解消するのに、「テレビ番組コンテンツに関する諸権利を、個別の交渉無しに一本化するルールの創設」を叩き台として提示した。これだけを見ると、「ネット法」との共通点が目立つが、むしろ「ネット法」との違いを意識して案が作られている。
 「民間審議会」が提案している新ルール「ネット利用調整法」(ただし現段階では叩き台)と先の「ネット法」との大きな違いは、その制度が想定している運用期間にある。「ネット法」が今後のネット利用にずっと適用されることを考えているのに対し、「調整法」の方は、ネット利用の形が業界にできあがるまでの「暫定法」だということだ(ネット配信の業界慣行が出来上がればすみやかに廃止されるとする)。
 また、「ネット法」では権利者が利用させないという選択もできたことに対して、「調整法」では一定期間で区切ったオークションを実施することを考えている。オークションによって配信事業者をどんどん決めていく仕組みだ。配信相手を決める権利はテレビ局に持たせるが、配信相手が決まらないとオークションが繰り返させられる。これにより、半ば強制的にネット配信への流れが作られる。
 「ネット法」では明らかでなかった収益分配の仕方についても、「調整法」では経団連ルールを暫定的に使うこととされている(その後定期的に改訂するともされている)。

 会合の中で、放送番組をネット配信する許諾契約を促す「調整法」の基本的方向性そのものを変えるべきとの意見は出なかった。むしろ、この案が対象とする範囲の確認や提案など、制度の明確化に関する意見が目立った。
 花岡委員の質問にで、「調整法」があくまでもテレビ放送を対象としたもので、「ネット法」とは違い映画やレコードを含めたものではないと確認された。映画はすでに権利が集中されていること、レコードでも配信が進んでいることを理由としている(境世話役)。また、小寺委員から、放送で収益が上がっていないBSや、既存番組の再放送が多いCSについては議論から切り離し、地上波放送のみを対象にしてはどうかとの提案があった。「異常利用」で、地上波放送の番組が多くを占めているのも理由だ。
 また、オークションにかけられる番組を1本単位にするのかシリーズ単位にするのかという指摘も小寺委員からあった。事務局案では1本1本をオークションにかけるという想定だったが、「NHKに多い単発ものなら、オークションも可能だろう。しかし多くの民放番組はシリーズもので、セット売買することに意味がある」(小寺委員)という。放送番組をひとまとめに議論するのではなく、そうした細かい違いまで踏み込む必要性があるとした。
 オークションで入札できる事業者については、テレビ局自身やその子会社を参加対象とせず、「ベンチャーも想定していて、企業規模・年数・実績などで基準を設けて切ることはできない」(境世話役)としている。その一方で、談合の可能性や、大規模なネット企業だけが落札してしまう危惧も委員から指摘された。
 ネット配信でどうビジネスにしていくかという点も課題だ。ネットで配信すれば単価は安いが全体としては儲けになるという形でどう持っていくか。それにはパソコン以外のデバイスでの利用も視野に入れながら、「支払いは電話料金・携帯料金・ケーブル料金に上乗せする形になるだろう」(境世話役)、「映像についてはサブスクリプションの方が目がある」(小寺委員)といったイメージが出された。しかし現状としてネット配信ですぐに利益をあげる難しさが共通の認識としてあり、日清の『Freedom』をネット配信した際のDVD売上げへの効果を例に、「ネットに出して視聴率が上がるということを言うしかない」との見方も山根委員からあった。

 今回の会合で出た指摘を反映し、「調整案」の資料を事務局でバージョンアップし次回に提示するという。
 「民間審議会」は、次回が1月21日に予定されている。今回を含めて4回の会合が予定されていて、2月中の提言とりまとめを目指して集中的に議論を進める。第2回・第3回では、メディア関係・コンテンツ関係・キャラクター(または実演家)関係・代理店などからゲストを呼び、議論に参加してもらうことを考えているという。次回以降も、傍聴者を入れての公開の場で議論が進められる。

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2008年12月 3日 (水)

ビートルズのiTunes Store進出はまだかいな

 定期的に出てくるニュースだったりはするんですが、iTunes Storeでまだ音楽が配信されていない“最後の大物”、ビートルズの話です。ポール・マッカートニーが、ビートルズ楽曲の配信がまだまだ先になりそうだとの見解を話したということで、こういうのに一喜一憂させられるファン心理には我ながら泣けてきます。
 ポール御大の発言にしても、私はこれまでいろいろ裏切られてきたわけで、iTSへの進出もそうですし、前には映画『Let It Be』のDVD化なんて話もあったんですよ(確かリミックスアルバム『Let It Be... Naked』が発売された当時だったような)。いまだに実現していないのが悲しい。もう御大の言うことは話半分ってことに。
 ビートルズ関連のリリースを管理する英アップルと、iTSを運営する米アップルとが商標権を巡る訴訟を経て、和解に至った2007年にもiTSへの提供を噂されたことがありました。タイミングとしてはこの時だったら最高だと思うんですけどね、噂で終わりました。

 ビートルズの曲がまだ配信されない、いつになるんだ、とここで書いていても、熱心なファンでなければ今更感が強いのではないでしょうか。私にしても、自分が病的なのは自覚してますし。ただ、ビートルズのレコードについては、CD化以降に公式リリースが絶たれたものがかなり多くて、そろそろそのあたりを整理する感じで正規CD化して貰えないかなと願っているのです。
 しかも今のCDが発売されてから20年もの月日が流れていて、そろそろリマスターし直したCDが欲しいとファンから言われ続けていたりもします(その逆に、現行CDの音質で十分という話もありますが)。
 私が「整理」を求める理由というのが、ビートルズのアルバムの大半がモノラル版とステレオ版の両方が発売されていたことにあります。ステレオもモノラルも別個にミックスを施していたため、音源に微妙な差異を生じてもいます。特に『The Beatles』(ホワイトアルバム)や『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』あたりは、両版を比較するとほとんど別物みたいな曲があったりもします。しかしCD化されたアルバムはどれも、モノラルかステレオか片方しか収録されませんでした。収録されなかった方を聞くためには中古レコードを漁るか、海賊版に手を出すかするしかなかったのです。
 そうした、モノラル・ステレオの差異を欲するマニア層に向けて、まるで間隙を縫うように出されたのが『The Capitol Albums』シリーズでした(Vol.1が2004年発売、Vol.2が2006年発売)。内容は米国編集盤を収録したもので、一般に発売されている英国オリジナル盤の曲目とは異なっていましたが、ビートルズ初期の楽曲のステレオ版とモノラル版の両方を収録し、しかも最新リマスターを施したという内容で、現行CDで満足できないファン層に強くアピールするものでした。同じ頃、英アップルもリマスターCDを準備してるみたいなニュースが出てたように思うのですが、私がこれを書いている時点でソースを掘り返すにまでは至りませんでした。あの時、本当にリマスター盤が出ればまたマニアたちの物欲を刺激したのでしょうが、残念ながら現行のカタログは当時と変わっていません。

 ここでちょっと違う話をします。ビートルズの楽曲に関する権利について、楽曲の作詞・作曲に関する著作権と、レコード音源に関する著作隣接権、そしてビートルズらの演奏に関する著作隣接権が存在します。著作権については、日本では死後50年までの保護が原則なので切れるのは当分先の話です(亡くなったのが最も早かったジョン・レノンでも2031年元旦に切れる)。ところが著作隣接権の方は発表後50年で切れますから、保護期間が日本で延長されないかぎり、ビートルズのアルバムの著作隣接権が2014年元旦から順次切れていくことになります。
 レコードの権利が切れるとどうなるかというと、著作権の方の使用料さえ払えば、誰もが権利切れしたアルバムを販売できるようになります。これまでEMIやアップルが得られていた利益はおそらく目減りするでしょうから、切れる直前に総決算的なリリースを打っていくのではないかと思われます(イメージ的には、2004年に著作権が切れた『ローマの休日』が2003年にリマスターされたような感じ)。
 EUでは著作隣接権を延長しかねない流れがあるので、それがどうなるのかにもよりますが‥‥。最悪、著作隣接権が切れる年が近づくまで、ずるずると旧マスターのまま売られ続けたりして。

 ビートルズの曲が配信されるまでしばらくかかりそう、リマスターの方もヘタをすると権利切れまで引っ張るかも知れない。そうなるとファンとしては気長に待つしかないわけですが、ビートルズ関連で待たれている公式リリースというのは、ライヴ音源でもかなりあります。その多くは放送用に録音されたものですが、現在でも殆どがCD化されていません。特に、かつて『Live At The Hollywood Bowl』のように公式にLPで発売されたにもかかわらず、未CD化というものまであります。
 あまり大声で言える話ではありませんが、それらの多くは海賊版で入手できます。しかし正規版としてそうした音源を流通させないかぎり、海賊版の業者にネタだけを与え続けて、本来利益を得るべき人へは何の還元も無いという事態が続くわけです。ファンからすれば、不本意な状態だと言わざるを得ません。

 iTSへの進出が話題になっているうちに、一気に攻めてもらえないものかなぁと思います。
 だいぶ前にリマスターされた『Help!』のDVDをまだ買ってない私がこういうこと言うのも何なんですけれども。ごめんなさいね。

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YouTube事業説明会に潜り込んできました。

 12月1日発売のマガジンハウスの『Brutus』誌(12月15日号)で、「世界初」と銘打ったYouTubeの特集が組まれています。関連トピックを集めた前半と、オススメ動画を集めた後半、それに茂木健一郎・山形浩生・津田大介・ドミニク チェンの四氏のインタビューを織り込んだ内容です。
 その特集号の発売に先立つタイミングで、11月25日には大手町の経団連ホールにおいて「YouTube日本版 08-09年事業説明会」が開かれました。ネットでもかなりの数の報道が上がっていましたね。主として、ユーザーの投稿が著作権を侵害していないかチェックする「コンテンツIDシステム」と、提携企業の現時点での成果、そしてYouTubeの今後の収益に関する課題をとりあげたものでした。

http://it.nikkei.co.jp/internet/news/index.aspx?n=MMITbe002025112008
「『YouTubeは攻めの段階に』 グーグルのコンテンツ担当副社長、広告事業を強化」
(IT-PLUS) 2008.11.25

http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20081125/319888/ 「『著作権問題が解決し、YouTubeは守りから攻めにシフト』
 ――米グーグルのユン副社長」
(ITpro / 日経WinPC)

http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/11/25/21640.html
「『YouTubeは著作権対策から収益化の段階へ』Google副社長」
(INTERNET Watch) 2008.11.25

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0811/25/news115.html
「『著作権は守りから攻めにシフト』──違法動画も収益化目指すYouTube」
(ITmedia News) 2008.11.25

 この日の事業説明会に潜り込んできた私の目から、面白いと思ったことについてメモ代わりに書き留めておきます。

 説明会では、YouTubeの用意した新しい試みが幾つか紹介されていまして、その中でおそらく1番の重要度なのが「コンテンツIDシステム」だと感じました。著作権対策としてYouTubeが開発したもので、提携した「コンテンツパートナー」からサンプル映像を提供してもらってデータベース化し、ユーザーが動画を投稿した時に比較する仕組みです。
 そこでマッチすれば著作権侵害の疑いありということで、権利者である提携パートナーに連絡が行きます。その後の処置は、(1)動画が公開される前に視聴不能とする「ブロック」、(2)動画をブロックしない代わりにアクセス解析情報を詳細に取得できる「トラック」、(3)動画に広告などを表示して広告収入を受け取れる「マネタイズ」――から提携パートナーが選ぶことになります。ちなみに動画は20秒もあれば照合可能だとか。
 実はこの「コンテンツIDシステム」は、既に海外ニュースや先行するイベントなどで既に発表されています(リンク1リンク2リンク3)。その時は“コンテンツホルダーの90%は違法動画をそのままにして広告収入を取る選択をしている”といった報じられ方をしていました。しかし私個人としては、この「90%」がどう計算されたものか、よく判らなかったのですね。
 そのあたりが今回の事業説明会でようやく理解できたのですが、まず母集団が、サンプルを提供したコンテンツパートナーの映像に限られていたようです。それも、壇上に立ったGoogle コンテンツ担当副社長のデービッド・ユン氏によれば、このシステムを使っているパートナーの数は「300」とのこと。ちなみにYouTubeが世界中で提携している「コンテンツパートナー」は3000以上という話でして、かなり狭い範囲でしかこのIDシステムが使われていないように思われます。そしてその中で「90%のマッチングについて、パートナーはマネタイズを選択している」との説明でしたから、YouTubeに理解のある提携社が僅かでも利益になる方策を多く選択しているという結果でしょう。
 まだ現時点では参考程度に捉えるのが良さそうです。

 YouTubeの他の試みはちょっと置いておきまして、説明会に参加したゲストについても書いておきます。ここでのハイライトのひとつは、JASRACの参加まで取り付けていたということです。YouTubeがコンテンツホルダーと歩み寄っていることをアピールするのに絶好のゲストでしょうし、また今年10月にようやく包括許諾契約にこぎ着けたことを考えても、JASRAC常務理事の菅原瑞夫氏が登壇したことは感慨深い光景ではありました。
 菅原氏のスピーチはJASRACの考え方を述べたものでしたが、面白かったのは「『動画投稿(共有)サイト』に対して違法利用の対策を求めるだけでなく、『動画投稿(共有)サイト』を新たなメディアとして存在を肯定し許諾の途を開く」としていた点でした。「存在を肯定し」とは随分と踏み込んだ言い方です。リップサービスにしても、こうした発言を繰り返していけばJASRACのイメージが変わるかも知れないと思いました。
 ただ、菅原氏は甘い言葉だけでは終わらせませんでした。「後ろにあるもやもやした部分は忘れてはいけない」。YouTubeの取組が十分なものではないと匂わせたのでしょう。

 YouTubeが当然のごとく呼ぶであろう重要ゲスト――日本企業でYouTubeとの連携を活発に行なっていることで有名なのは角川グループでしょう。スピーチは角川デジックス社長の福田正氏が、パネルディスカッションでは角川グループ会長の角川歴彦氏が登壇しました。
 提携後に角川グループが最初に手がけたのが「MAD動画」などの「公認」でした。自社コンテンツを勝手にアップロードしたり、他の映像や音楽と組み合わせたりした動画(こちらが「MAD動画」)を、一定の判断基準で「公認」しYouTubeに残すという試みでした。広告効果を期待したもので、福田氏のスピーチによれば、10月末の時点で「公認」動画の再生数は自社掲載の動画の62倍に上るといい、11月時点ならば「100倍を超えているかもしれない」とのことでした。
 また、角川グループが開設したYouTube上の公式チャンネルが12あります。先の「公認」動画と関連するアニメ・チャンネルから、角川エンタメチャンネル、ウォーカー・チャンネルなど、グループで抱えているメディアとの連携が図られています。その例として、タカラトミーから発売された「フラワーロック2.0」のキャンペーンが紹介されました。
 フラワーロックは、音楽を流した部屋に置くとその音楽に合わせて踊る花のおもちゃで、20年前に発売されたのを今年リニューアル再発売したものです。そのプロモーション活動に角川グループが自社の雑誌やYouTubeのチャンネルを活用しました。10月30日には昔の映像が9本(再生総数20,435)しかなかったのが、11月11日に新版のプロモーションを開始、11月14日にはYouTubeが用意した動画内広告「InVideo」にも掲載しました。するとこの日の関連動画の再生数が88,466回、前日から57,000回増えました。動画数の方は、スピーチ当日で101本とのことです。
 福田氏のスピーチは、相当の手応えを感じているといった趣旨で話が進みました。

 ゲストはこの他に、エイベックス・マーケティングの前田治昌氏、パナソニックの和田浩史氏らが登壇しました。その中でも角川グループの発表データに顕著だったのですが、 提携の成果は今のところ動画再生数を基準に測られています。そこで、大量の閲覧をいかにYouTubeの収益へ繋げ、コンテンツホルダーに還元するかが今後の課題ということになります。
 そこを意識したYouTube(とGoogle)が用意したのが、パートナー関係を結んだ企業の動画のそれぞれについて誰がいつどう見ているのかを詳細に記録したアクセス解析「YouTubeインサイト」、動画の中に広告を掲載しパートナーの別サイトへ誘導を図る「InVideo」、動画ページにパートナーの関連通販サイトへリンクを用意する「Click To Buy」です。先の「コンテンツIDシステム」でパートナーに「トラック」や「マネタイズ」の選択肢を実現するのも、こうしたサービスを並行して提供したからこそということになります。
 しかし今回の事業説明会は、金額ベースでの効果は発表されていないという、「マネタイズ」が途上だと判る内容でした。来年にはこの効果がどのように発表されるのか。コンテンツを合法に提供することに関しては、大きな前進を見せているYouTubeですが、それを活かすも殺すもこれからの話なのかも知れません。

 YouTubeが商業的に回り出したら、これまで派手さが無いながらも続けられてきた個人ユーザーの動画投稿はどういう扱いになるのか。商業コンテンツと個人動画とが両輪になっていくのか、それとも素人が入り込む余地が少なくなってしまうのか‥‥少し不安に思うところが無いわけでもありません。
 ただ、そういうことを漠然と気にしつつも、YouTubeでの私の最近のお気に入りは、公式チャンネルを開設したばかりのモンティ・パイソンだったりするんですけど。ついつい目が行ってしまうのが商業コンテンツ。おそらく、私がYouTubeを捉える角度というのは、そういう商業寄りだったりするのではないかと思われますね。

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2008年12月 2日 (火)

ICPFの第5回セミナーの議事要旨が公表されました。

 前にうちでもネタにさせてもらいました情報通信政策フォーラム(ICPF)のセミナーですが、第5回での城所岩生 成蹊大学教授の講演の要旨が公開されました。いつもながら詳細に記録されていますので、ぜひご一読を。あとCNETでも記事になっていましたね

 この講演は、内閣府の内閣府の知的財産戦略本部で検討されていた「日本版フェアユース」に関連して、そのモデルとなる米国のフェアユースがどう運用されているのか実例を交えて紹介した内容でした。城所先生の論旨は積極導入論に位置づけられます。
 11月17日の当日は知財本部の「デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会」の報告案に関するパブリックコメントが締め切られた日で、その後 11月27日に同専門調査会の第10回会合でその結果をふまえ報告がまとめられています。毎回資料掲載が早かった知財本部には珍しく、その会合の配付資料がまだネットに上がっていませんが、基本的にはフェアユース規定導入の必要性を示した方向性のままでいます。

 ところで、改めて講演要旨の公式版を読み返しますと、自分が書いたまとめがかなり端折ったものなのが明らかですね。ちょっと補足的に書いておきたいなとも思ってたので、この機会にメモ代わりに残しておくことにしました。

 フェアユースをどう捉えようかというのは、実は私自身が試行錯誤しているところがあります。米国では判例で固まっているという「間接侵害」、さらに「寄与侵害」と「代位侵害」に分類されるそうですが、これについてはまとめで触れませんでした。フェアユースを述べるのに、私には使いづらく感じたんですね。実のところ、サービス事業者が裁判でフェアユースを主張する場合、ユーザーの直接侵害をフェアユースで否定し、その結果 事業者の間接侵害が否定されるという流れを狙います。その意味ではフェアユースと深い関係のある話なのですが‥‥。
 日本では「間接侵害」の代わりに「カラオケ法理」が裁判例で強い影響力を持っており、「日本版フェアユース」導入後でもこの影響が残るのではと心配されています。録画ネットやMYUTAなどが葬られた原因が、著作権侵害をしていたのがユーザーではなく事業者の方だと解釈する「カラオケ法理」の適用だということで、営利目的との解釈のもと「フェアユース」に不利に判断され、同様のサービスが救われないことが懸念されるわけです。

 知財本部の専門調査会の報告の中で、「日本版フェアユース」の具体的な形までは決まっていません。今の第30条以下の個別規定を残して、そこに当てはまらないものについて「フェアユース」かどうか判断すること、その判断については基準を条文に書くこと――との大まかな方針のみが盛り込まれています。原理原則として権利制限の冒頭に打ち出される米国版の大きなフェアユースと比較して、“小さなフェアユース”というイメージです。
 まだ具体的規定がはっきりしないだけに、実際の運用がどうなるのか想像しづらいところではあります。しかしICPFでの城所先生の講演や質疑応答で最も気になったのは、今想定されている“小さなフェアユース”だとその対象が複製権に限られてしまいかねないとの話でした。
 「カラオケ法理」によってサービス側が侵害者と判断され、しかも公衆送信権を侵害したということで“小さなフェアユース”からもこぼれてしまう可能性が心配されます。規定の仕方次第で、MYUTAのようなサービスが「フェアユース」で救われないとしたら、そのような規定をわざわざ選択したという無意味な結末にもなりかねません。規定を巧くして救うか、立法趣旨を汲むことで解釈で救うか、そういう選択肢はあるのかも知れませんが‥‥。
 もともと裁判で白黒つける趣旨ですから、「フェアユース」でそうしたベンチャーが救われる保証は必ずしもありません。とは言え、知財本部が「日本版フェアユース」の導入を進める理由とその思いを守り続けていって欲しいと思っています。

 今後の、文化庁での具体的規定に関する議論が重要になってきます。
 どこまで米国のフェアユース規定を真似できるか、その攻防になるのかも知れません。

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先週のニュースピックアップ(11/24-30)

 先週1週間のニュースからピックアップしたリンク集です。

【パブリックコメント】

●12月17日締切り、総務省の「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」最終取りまとめ(案)に対する意見募集。

http://www.soumu.go.jp/s-news/2008/081127_7.html
「『インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会』
 最終取りまとめ(案)に対する意見募集」
(総務省) 2008.11.27

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=145207418&OBJCD=&GROUP=
「『インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会』
 最終取りまとめ(案)に対する意見募集」
(e-Gov.:意見募集中案件詳細) 2008.11.28




【審議会等開催予定】

●12月5日:コンテンツ学会の「ネット利用調整制度に関する民間審議会」#1
http://www.contents-gakkai.org/?p=72

※参考
http://www.sakaimasayoshi.com/net_rule/index.html




【著作権関連】

●11月17日の第5回ICPFセミナーの議事要旨が掲載。城所岩生先生の講演。

http://www.icpf.jp/archives/2008-11-19-1014.html
「第5回セミナーの議事要旨です」
(情報通信政策フォーラム(ICPF)) 2008.11.19

※参考
http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000056023,20383828,00.htm
「なぜフェアユースが日本に必要か--成蹊大の城所教授が熱弁」
(CNET Japan) 2008.11.18


●11月25日に開かれたYouTubeの事業説明会の模様を報じた記事。

http://it.nikkei.co.jp/internet/news/index.aspx?n=MMITbe002025112008
「『YouTubeは攻めの段階に』 グーグルのコンテンツ担当副社長、広告事業を強化」
(IT-PLUS) 2008.11.25

http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20081125/319888/
「『著作権問題が解決し、YouTubeは守りから攻めにシフト』
 ――米グーグルのユン副社長」
(ITpro / 日経WinPC)

http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/11/25/21640.html
「『YouTubeは著作権対策から収益化の段階へ』Google副社長」
(INTERNET Watch) 2008.11.25

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0811/25/news115.html
「『著作権は守りから攻めにシフト』──違法動画も収益化目指すYouTube」
(ITmedia News) 2008.11.25

※その他報道
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20081125/youtube.htm
http://bb.watch.impress.co.jp/cda/news/23987.html
http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000056023,20384185,00.htm


●ビートルズの曲がiTunes Storeで配信されるようになるのはしばらく先になりそうだという報道。ポール・マッカートニーの発言を受けてのもの。

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0811/25/news050.html
「ビートルズのiTunes Store進出は『行き詰まり』」
(ITmedia News / ロイター) 2008.11.25


●読売旅行が著作権者の許諾なしに写真をパンフレットへ掲載していた事件で、警視庁が著作権法違反容疑で家宅捜索。

http://www.asahi.com/national/update/1126/TKY200811260177.html
「読売旅行を家宅捜索 パンフレット写真無断掲載の疑い」
(asahi.com) 2008.11.26

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20081126k0000e040082000c.html
「著作権法違反容疑:写真の無断使用で『読売旅行』を捜索」
(毎日jp) 2008.11.26

※その他報道
http://sankei.jp.msn.com/region/kanto/tokyo/081126/tky0811261330006-n1.htm
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2008112602000238.html
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20081126AT1G2601P26112008.html
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2008112600469
http://www.47news.jp/CN/200811/CN2008112601000392.html


●劇団四季のミュージカルを録音し、ネットオークションで販売していた東京都の男が逮捕される。

http://www.asahi.com/national/update/1126/TKY200811260143.html
「劇団四季の公演録音、ネット販売 容疑の男逮捕」
(asahi.com) 2008.11.26

※その他報道
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/081126/crm0811261219012-n1.htm
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2008112600387


●ファイル交換ソフト・Share使ってテレビドラマを無断配信していた千葉県の男が逮捕される。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/081127/crm0811271206017-n1.htm
「フジやTBSの51ドラマも ネット無断配信事件」
(MSN産経ニュース) 2008.11.27

http://sankei.jp.msn.com/region/kanto/tokyo/081127/tky0811271208011-n1.htm
「フジやTBSドラマ128本もネット配信 2ちゃんで予告」
(MSN産経ニュース) 2008.11.27

http://www.asahi.com/national/update/1127/TKY200811270140.html
「ネットにテレビドラマ違法流出 容疑の男を逮捕」
(asahi.com) 2008.11.27

※その他報道
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/081127/crm0811270114003-n1.htm
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20081127AT1G2700U27112008.html
http://www.jiji.com/jc/zc?k=200811/2008112700423


●ビジネス・ソフトウェア・アライアンス(BSA)の会員企業の申し立てにより、東京地裁が11月20日に東京都のソフト開発・販売会社へ証拠保全手続き。著作権侵害の疑い。

http://www.bsa.or.jp/press/release/2008/1126.html
「東京地裁、東京都所在のソフトウェア開発・販売会社に証拠保全を実施」
(BSA) 2008.11.26


●小学館の『日本大百科全書』が、Yahoo!百科事典としてネットで無料提供されることに。

http://it.nikkei.co.jp/internet/news/index.aspx?n=MMITbd000027112008
「ヤフー、無料の百科事典サービスを開始 13万項目を収録」
(IT-PLUS) 2008.11.27

http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/11/27/21673.html
「Yahoo!百科事典」公開、小学館の百科事典データを無料で閲覧
(INTERNET Watch) 2008.11.27

http://www.itmedia.co.jp/bizid/articles/0811/27/news092.html
「小学館『日本大百科全書』を無料で検索――Yahoo!百科事典」
(ITmedia Biz.ID) 2008.11.27


●オンラインピアノのサービスを提供、引いた音を記録・再生も可能な『ePiano』が、JASRACとの包括契約を結ぶ。これで、ユーザーがJASRACの管理楽曲を弾いて記録しても著作権上の問題が生じなくなる。

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0811/27/news043.html
「ロケスタ『ePiano』、JASRAC管理曲の演奏・投稿が可能に」
(ITmedia News) 2008.11.27

※参考
http://d.hatena.ne.jp/satoru_net/20080901/1220253796
「eピアノの事でJASRACに連絡した@レポ#1」
(satoru.netの自由帳) 2008.9.1

http://d.hatena.ne.jp/heatwave_p2p/20080903/1220409642
「ePiano.jpがJASRACにいくら支払うことになりそうなのかを考えてみる」
(P2Pとかその辺のお話@はてな) 2008.9.3


●11月22日に、秋葉原で海賊版ソフトを路上販売していた中国人2人が現行犯逮捕。

http://www2.accsjp.or.jp/news/news081128.html
「秋葉原の路上海賊版販売、中国人2人を現行犯逮捕」
(ACCS/著作権侵害事件) 2008.11.28

http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/081128/crm0811281328015-n1.htm
「アキバで海賊版DVD所持、中国人の男女逮捕」
(MSN産経ニュース) 2008.11.28

※その他報道
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0811/28/news120.html
http://news.braina.com/2008/1128/enter_20081128_004____.html
http://japan.internet.com/busnews/20081128/2.html
http://www.security-next.com/009449.html


●芸団協CPRAが、有線放送の放送同時再送信に関して報酬請求権を得たことに伴い、日本ケーブルテレビ連盟とレコードの二次使用料で合意。CRPAは有線放送事業者への説明会を11月26日に実施した。

http://www.cpra.jp/web/news/081128/index.html
「ケーブルテレビ事業者に、二次使用料のブリーフィング実施」
(CPRA) 2008.11.28

※参考
http://www.cric.or.jp/qa/hajime/hajime4.html#5
「地上波放送のデジタル化に伴って、放送の同時再送信にかかわる
 実演家・レコード製作者の著作隣接権が見直されたと聞きましたが、
 どのようになったのでしょうか?」
(著作権情報センター)


●大阪工業大学専任講師の関堂幸輔氏による、クリエイティブ・コモンズに関する論文。CCLでの公開。

http://www.sekidou.com/articles/CClisenceSig.shtml
「クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの意義 ―契約法の観点から―」
(関堂幸輔 (www.sekidou.com)) 2008.11.30

※参考
http://m4.sekidou.com/2008/11/29.shtml
「2008年 11月 29日」
(M4 (メディア批評日記))




【ネット規制関連】

●ファイル交換ソフトLimeWireで児童ポルノ動画を配布していた北海道の男が逮捕される。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/081125/crm0811251814041-n1.htm
ライムワイヤー使い児童ポルノ公開 初の逮捕 - MSN産経ニュース

http://www.47news.jp/CN/200811/CN2008112501000624.html
児童ポルノ公開容疑で男を逮捕 ライムワイヤーでは全国初 - 47NEWS(よんななニュース)

※その他報道
http://www.jiji.com/jc/zc?k=200811/2008112500903
http://journal.mycom.co.jp/news/2008/11/26/023/
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20081125-OYT1T00661.htm
http://mainichi.jp/area/nagano/news/20081126ddlk20040154000c.html
http://sankei.jp.msn.com/region/chubu/nagano/081126/ngn0811260252003-n1.htm

※参考
http://mainichi.jp/area/okayama/news/20081127ddlk33040702000c.html
「児童ポルノ法違反:サイバーパトロールモニター、情報受け初の摘発  /岡山」
(毎日jp) 2008.11.27


●総務省の「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」第9回会合が11月26日に開催。

http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/11/26/21654.html
総務省の検討会、「『安心ネットづくり』促進プログラム」最終案
(INTERNET Watch) 2008.11.26

http://sankei.jp.msn.com/economy/business/081126/biz0811260124000-n1.htm
「関係者連携で自主憲章を ネット違法・有害情報対策最終案 総務省検討会」
(MSN産経ニュース) 2008.11.26

http://www.47news.jp/CN/200811/CN2008112601000545.html
「ネット有害情報、自主規制強化を 総務省研究会が報告書案」
(47NEWS) 2008.11.26


●『Internet Week 2008』で11月27日に行なわれたセッション「xSPのための青少年ネット規制法対策」の模様を報じた記事。青少年ネット規制法が主題に。

http://internet.watch.impress.co.jp/cda/event/2008/11/28/21693.html
「青少年ネット規制法では『iPhone想定してなかった』と総務省の人」
(INTERNET Watch) 2008.11.28




【GSV関連】

●日弁連が11月21日に開催した、Googleストリートビューに関する集会の模様。

http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/11/25/21624.html
「日弁連が『ストリートビュー』のプライバシー問題で緊急集会」
(INTERNET Watch) 2008.11.25

http://www.nichibenren.or.jp/ja/event/081121_3.html
「Google社ストリートビューに関する緊急集会」
(日弁連)




【審議会議事録等公開状況】

●8/20 法制問題小委員会#7 議事録および配付資料
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/housei/h20_07/gijiroku.html

※過去議事録
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/housei/index.html


●9/26 違法・有害情報検討会#8 議事要旨(PDF)
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/internet_illegal/pdf/080926_3.pdf

※過去議事要旨等
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/internet_illegal/


●10/16 電気通信サービス利用者懇談会#6 議事概要(PDF)
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/riyoshacon/pdf/081128_2_sa1.pdf

※過去議事要旨等
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/riyoshacon/index.html


●10/20 私的録音録画小委員会#4 議事録および配付資料
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/rokuon/h20_4/gijishidai.html

※過去議事録
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/rokuon/index.html


●10/29 デジタル・ネット専門調査会#9 議事録
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/digital/dai9/9gijiroku.html

※過去議事録等
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/digital/index.html


●11/25 通信・放送の総合的法体系検討委#10 配付資料
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/houtai/081125_1.html

※過去議事録等
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/houtai.html


●11/26 違法・有害情報検討会#9 配付資料
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/internet_illegal/081126_2.html

※過去議事要旨等
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/internet_illegal/index.html


●11/28 電気通信サービス利用者懇談会#7 配付資料
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/riyoshacon/081128_2.html

※過去議事要旨等
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/riyoshacon/index.html

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