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2009年1月26日 (月)

レンタル業界の、自分たちの商売を「守る」ための働きかけについて

 CD/DVDレンタルの業界団体が出している機関紙の今月号に、興味深い記事が載っていた。映画がDVD化され、それがテレビで放送されるまでの期間の話だ。

 映画は製作に多額の費用をかけており、その製作費は劇場での入場料の他、DVD化やテレビ放送など、複数の商品化の機会をとらえて回収する仕組みになっている。劇場・DVD・テレビ放送など、観客との接点は「ウインドウ」という呼ばれ方をする。「ウインドウ」を複数用意できることは、製作する側にとっては、ひとつの作品から何度も利益を出す機会が得られるメリットがある。また、鑑賞機会に応じた対価(一般的には待てば安価になる)が設定されることから、観客側も時期や対価を基準に選択肢を得られることになる。

 DVDレンタルも、そんな「ウインドウ」のひとつだ。時期としてはDVD発売以後、300円から400円程度で映画1本を鑑賞できるという、コストパフォーマンスのかなり高い鑑賞機会を提供している。そんなレンタル業界が気にしているのは、そのDVD発売から地上波での放送までの期間だという。“タダ”で映画が見られる地上波放送が済んでしまえば、その映画をレンタルしてもらえる見込みが極端に減る。つまりレンタル業界の“稼ぎ時”がこの期間に限られるという考えだ。

 先に述べた機関紙の記事によれば、DVDなどのパッケージリリースから365日以内に地上波で放送された映画の数は、2002年に11作品、2003年に12作品、2004年に13作品と来ていたところ、2006年には22作品、2007年では28作品と急増傾向にあるのだという。ちなみに、356日というのがどこから来てるのかと言えば、レンタル業界から製作側へ求めているのが、DVD化から放送まで最低でも1年間あけてほしいということかららしい。こういう働きかけをしているとは知らなかった。

 DVD化から放送まで短期間になりそうな事例として、『三国志』を映画化した『レッドクリフ』の例が出されていた。この作品は2部構成で公開されていて、Part 1が今年3月11日にDVD発売され、Part 2が4月10日に劇場公開される予定だ。このPart 2の上映を成功させるため、製作にも関与しているエイベックスが構想したのが、上映直前にPart 1をテレビ放送するという手法だったという。

 続編映画をプロモーションするのに、前作をテレビ放送するという手法はこれまでにもよく取られてきた。また、シリーズでなくても、関連作をテレビ放送して上映を勢いづけるということもよくある。ただ『レッドクリフ』についてレンタル業界が神経をとがらせたのは、Part 2のプロモーションとはいえ、Part 1のDVD化から1か月を切る時期に放送されるということだった。CDVJとエイベックスとの間で話し合いの場を持ち、「出来る限り地上波放映を送らせ、せめて1ヶ月はパッケージリリースから期間を開けてほしい」「地上波放映の後、回転が激減することは明白なので、可能な限り仕入れについて柔軟に対応してほしい」といった要望を入れたと機関紙の同記事にはある。

 「本件については初めてのケースであり、データを採取した上で十分な検証を行うことが必要である」と同記事は締めくくられている。どうせ避けられないことなら、しっかり今後の参考にしようという点で冷静な判断かと思われる。そういえば、確か『デスノート』の時にも後編の封切り(2006年11月3日)直前に前編をテレビ放送(同年10月27日)した筈だったのだが、この時はCDVJでは問題視しなかったのだろうか。DVD発売(2007年3月14日)前の放送だったので別扱いなのかも知れない。

 ところでこうしたDVD化からテレビ放送の期間が短くなってきている問題にかぎらず、今後のレンタル業界にとって、流通の変化が重くのしかかることが予想されている。レンタル業界内部での競争を考えても、レンタルと販売の複合店の存在感が大きくなっていたり(しかしこういうのはだいたい大型店)、「ツタヤ ディスカス」や「ぽすれん」といった郵送ベースのサービスなどが登場している。もっと脅威的なのは、インターネット配信などのVideo On Demandという外部との競合だ(今回ネタにさせてもらった記事でも、「アクトビラ」が今後強力なライバルになるとの見通しが示されている)。

 ネット配信に少なからぬ期待をしている私から見れば、iTunes Storeでのビデオレンタルが日本で開始されていなかったり、レンタル業界がDVDと同じく扱っているCDについても、レンタルと競合できるほど安価なネット配信はまだ登場していない(もっともCDシングルのレンタル在庫数は、レコード協会の調査によれば、音楽配信が本格化する前から減り続けているとのこと)ことに大いに不満がある。その一方で、これらがレンタルと競合し始めたら、業界が生き残っていく術があるのだろうか。

 ユーザーへ安価に音楽を届ける“スキマ商売”として始まったレコードレンタルの時代から、この業界には“お世話になってきた”私ではあるけれども、音楽配信・レコード配信といった新しい流通の日本での発展に対して、もしレンタル業界が「パッケージ」にとどまることを望む“抵抗勢力”になってしまうとしたら、ちょっと困るなぁと思ったりする。

 DVD化から放送までの期間で調整するのだったら、私は期間がそう長くても気にならない。レンタル業界を救うために配信が不当に制限されるとかいうことでなければ、テレビ放送の例のような穏当なところで配信とレンタルの棲み分けを模索して欲しいと願うばかりだ。


※今回のネタ元
日本コンパクトディスク・ビデオレンタル商業組合『CDV JAPAN』
No. 298 (2009年1月号)
「THE SPECIAL 多メディア時代のウインドウの在り方を考える」

Posted by 谷分 章優 映画・映像 |

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