著作権分科会の前夜(メモ)
著作権制度に関する2008年度の議論の締めくくりとして、26日の10時から著作権分科会が開かれる。「法制問題小委員会」「過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会」「私的録音録画小委員会」「国際小委員会」それぞれで検討されてきた結果の報告が出される予定だ。
http://www.bunka.go.jp/oshirase_kaigi/2009/chosaku_bunkakai_090126.html
「文化審議会著作権分科会(第27回)の開催について」
(文化庁)
各小委員会の報告書案は、既に文化庁のサイトに掲載されている。実際の報告書で大筋に変更があることは考えられないが、いくつか細かな修正は入っているだろう。
ともあれ、現時点で判っていることを軽くまとめておく。
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/housei/h20_11/gijiroku.html
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/housei/h20_11/pdf/shiryo_1.pdf
法制問題小委員会では、「平成19年・20年度」ということで、2年分の検討結果が1冊の報告書にまとめられた。平成19年の「中間まとめ」と平成20年の「中間まとめ」がベースになっている。
2年間で検討された課題は次のとおり。
・デジタルコンテンツ流通促進法制
・海賊版の拡大防止のための措置
・権利制限の見直し
・その他の課題
「デジタルコンテンツ流通促進法制」について、「コンテンツの二次利用に関する課題として、権利者不明の場合の利用の円滑化」「インターネット等を活用した創作・利用に関する課題として、関連の権利制限規定の見直し」「権利者が安心してインターネットにコンテンツを提供するための環境整備としての海賊版の拡大防止策」を盛り込むよう提言しているが、流通促進法制を実施するということにまでは踏み込んでいない。
海賊版については、ネットオークションなどで海賊版を売るとの告知を行う行為(譲渡告知行為)を禁止する方針と、海賊版被害について権利者の告発なく公訴できる「非親告罪化」を見送る方針が書かれている(平成19年度時点の結論から変更なし)。
権利制限は、この2年間のメインの議題でもあった。しかし項目によって、ただちに権利制限に加えるべきとされるものと、慎重な検討を要す(つまり今後も議論を継続する)べきもので分かれた。
障碍者に向けた、手話・字幕付きの映像や録音図書について、権利制限が認められる対象を緩める。たとえば視覚障碍者や聴覚障碍者に限っていた項目で「障害等により著作物の利用が困難な者」も含めたり、複製する人物や方式も従来より広げるなど。また、ネットオークションでの商品画像の掲載や、検索エンジンのサーバでの著作物の蓄積についても法改正することが妥当との結論を出している。なおこれらは2007年度に既に結論が出され、これまでの間、文化庁に放置されてきたとも言える。
また、機器利用時の(機器内での著作物の)蓄積について「著作物等の視聴等に係る技術的過程において生じる」「付随的又は不可避的で」「視聴等に合目的的な蓄積物であって、‥‥合理的な範囲内の視聴等行為に供されるもの」といった条件を付けての立法措置を提案。通信過程での蓄積も「権利が及ばないこととする立法措置を講ずることが望ましい」とする。
これらの法改正妥当とした項目の他、リバースエンジニアリング、研究開発上の著作物利用については議論を継続する旨でまとめられた。なお、薬事関係や図書館・学校教育などでも継続して議論する予定とされていた項目があったが、これらは実質的に議題に取り上げられず、今後の議論ということにされている。
権利制限の課題については、報告書案が法制問題小委員会で了承されるさい、法改正すべきと結論された項目をより判りやすくすべきではないかとの委員意見が出されている。著作権分科会で提出される報告書では、そのあたりが修正されているものと考えられる(項目の入れ替えなどがあるか?)。
違法複製物や違法配信物からの私的複製の30条除外(いわゆる「ダウンロード違法化」)については「その他の課題」の中で触れられるのみ。法制問題小委員会では、私的録音録画小委員会で(映像と音楽については)法改定妥当と結論付けたのをそのまま受け、プログラムの著作物についても30条除外するかが検討された。結果は法改定をただちに提言するものではないが、映像・音楽以外の著作物について検討を続ける旨でまとめられる。
加えて、「ライセンシーの保護」「間接侵害」「法定損害賠償制度」も今後も検討を続けるとのこと。
なお、知的財産戦略本部「デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会」での報告で注目される「日本版フェア・ユース規定の導入」については、法制問題小委員会の報告書において「その他の課題」として「順次検討を行うことが必要」と軽く触れられるのみ。
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/hogo/07/haihu.html
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/hogo/07/pdf/shiryo_02.pdf
保護利用小委は、「過去の著作物等の利用の円滑化方策」と「保護期間の在り方」の二本柱でまとめられる。保護期間の方については、各報道のとおり、延長要望派と慎重派との両論併記で「検討を続けることが適当である」とまとめざるを得なかった。
利用円滑化については、権利者が不明の場合の著作物利用と、国立国会図書館が行うアーカイヴについては法的措置が妥当と結論。その一方で、多数権利者が関わる場合(少数の反対者による許諾拒否)、権利者の意思表示システム(自由利用マーク・クリエイティブコモンズなど)の法的バックアップ、二次利用・パロディ、非営利無償のアーカイブなどについては今後の検討とされた。
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/rokuon/h20_5/gijiroku.html
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/rokuon/h20_5/pdf/shiryo_01.pdf
私的録音録画小委は、いわゆる「ダウンロード違法化」を実施するよう結論するのみで、私的録音録画補償金に関する合意は一切無かった。文化庁は、補償金にまつわる課題の整理が終わったかのように演出しているが、補償金廃止と補償金存続を同居させた「文化庁案」を掲げているかぎり、補償金問題が解決することはないだろう(私見)。
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/kokusai/h20_02/gijishidai.html
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/kokusai/h20_02/pdf/shiryo_03.pdf
国際小委員会では、世界知的所有権機関(WIPO)などの国際会議の動向をみつつ、日本が先行して何を検討・提案していけるかという「検討課題」がまとめられた。小委員会では「エンフォースメントの実効性確保に向けた取組」に強い関心のある委員が多い。模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)の交渉が進んでいることもあり、検討結果よりも、むしろ今後の状況が大きく動きそうで要注目の小委員会ではある。
Posted by 谷分 章優 著作権, 著作権保護期間延長問題, 著作権行政 | Permalink
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/42184/43858865
この記事へのトラックバック一覧です: 著作権分科会の前夜(メモ):



コメント