「Culture First」連合の主張が相変わらずなのは、JEITAの議論に乗せられたくないってことなのか
権利者団体91団体からなる「Culture First」連合が、文化庁の募集するパブリックコメントへの意見を2月24日付で公表した。ブルーレイディスクへ私的録画補償金を課金する政令(著作権法施行令)の改定に対し、文化庁が示した条文案に賛成する内容だ。ただし「意見を発表しました」とアナウンスされているため、すでに文化庁へ提出されたのかは判らない。
このパブコメには、メーカー団体のJEITA(電子情報技術産業協会)も既に意見を提出、2月13日付でその全文が公表されてもいる。JEITAの意見は、ブルーレイへの課金が決まったのは文部科学省と経済産業省の「二省間合意」が根拠で、両省で合意した範囲にかぎって課金を定めるべきとの内容。具体的には、二省間合意の文面を引用しながら、地上デジタル放送の録画には補償金を課金すべきでないことと、ブルーレイへの課金がアナログ停波(2011年)までの期限付きの措置だと明記すべきことを主張している(加えて、ブルーレイを指定する条文に要件の追加を求めているが、ここでは特に触れない)。なお、文化庁の政令案にはそうした限定はなく、単純にブルーレイを課金対象へ加える趣旨のようだ。
おそらくJEITAの意見が公表されたことを意識して、Culture First連合もパブコメの締切り前に意見を公表したのだろう。権利者側としては文化庁案がそのまま通れば望み通りなのを、そこに加えてJEITAを名指しし批判する意見をまとめているのだから。反論の内容は、ブルーレイへの補償金課金は当然、地上波放送がアナログでもデジタルでも同様に課金すべき、JEITAの主張は間違っている——というもの。
このCulture First連合の主張で、「現行の補償金制度においては、ブルーレイディスクが、補償金の対象となることは明らかです」の一文が目立つ。彼らのこれまでの主張(公式サイトにも記者会見の模様として掲載されている)を踏まえれば当然出てくるものだ。彼らの考えは、「家庭内でテレビ番組を録画する行為自体が、権利者の得るべき利益を損ねている」とするところから始まっている。現行の補償金制度もそうした考えに基づく。
ところがこの補償金制度の考え方に、「タイムシフト」目的の録画や、DRMのかかっている痴以上デジタル放送からの録画に「補償」が必要なのかという疑問がユーザーからぶつけられるようになった。今後の補償金制度ではそこまで含めて設計すべきだとの論は、補償金をめぐる2005年以後のメーカーの主張を後押しすることとなり、権利者側との対立の末に文化審議会著作権分科会での制度「見直し」をストップさせてしまっている。
こうした論の対立がある中では、論者の立場によってはブルーレイが補償金の対象となるのが「明らか」とは言えないだろう。加えて、JEITAが公表した二省間合意によれば、「文部科学省は、著作権法30条2項が著作権保護技術の有無が支払い義務の発生要件になるかどうかについて明示的に規定していないと認識している」という。これまでの制度の考え方に立つ権利者側と、二省間合意を持ち出すJEITAとでは、前提が違う以上「この点で既にJEITAの意見は正しくありません」との権利者側の指摘は正しくない。
JEITAが「二省間合意」にこだわる理由は、著作権分科会(私的録音録画小委員会)では補償金の議論が進まず、ブルーレイ課金が決まったのが二省間合意でそうまとまったためとの点にある。確かに、著作権分科会では課金対象にブルーレイを追加する旨を報告書にまとめておらず、わずかに二省間合意を紹介する箇所で追加が決まったものとしているのみだ。
JEITAに対するCulture First連合の意見は、二省間合意そのものの解釈を示さずに、6月17日の経済産業大臣の会見内容を引いて「一旦延期した地上波デジタル放送の新たなコピールールである『ダビング10の早期実施に向けた関係整備の一助となることを期待』してなされたもの」と解説する。こう自らの解釈を示すだけで、「JEITAの意見はこの点でも、読む者に誤った認識を与え、混乱を招くものです」と結論することに説得力はあるだろうか。
大臣の会見とJEITAの主張とで矛盾する点があれば面白いが、実のところJEITAが示した二省間合意は大臣会見と矛盾していない。それどころか、Culture First意見書が引用している会見録の別の箇所で、経産大臣は
暫定措置としてブルーレイに課金するということにしました。これは、既に確立されているはずですが、デジタル化しますとコンテンツの持ち主、つまり送るほうで、これは何回まで、それが幾らと全部設定ができるのです。アナログだとできないのですけれども、デジタルだとできるのですから、送り手の自由自在なのです。自由自在になる環境が整うまで、実際に行為としてダビングが行われ、それを利用する対象について、当面、いわば従来のDVD以外の部分を埋めたということでありまして、これはこれで適切な措置だと思います。
——とまで発言している。むしろJEITAの解釈を裏付けるようにも読める。権利者側からすれば、持ち出すには諸刃の剣とも言える会見内容ではないだろうか。
権利者側が「私的録画=不利益だから補償金」との原則論で押すしかないのは理解できるし、私はやや同情もしている。二省間合意のような形で、文部科学省による半ば裏切りのような解釈が残されているのだから。文化庁のもとで制度「見直し」が全く動かなくなってしまった今、二省間合意をもとにしたブルーレイ課金との前提で議論せざるを得ず、 JEITAの“ゴネ得”が正当化される状況だ。
とは言え、今回のCulture First連合の意見はJEITAへの反論として十分なものだったか。もしJEITAの主張を正面から覆すのなら、二省間合意を自分で取り寄せるなどして、自分に有利な解釈を作り上げるべきだったのではないか。
たとえば、JEITAが公表した二省間合意には、「両省は、この政令の施行後3年を目途として、この政令の施行状況等について検討を加え、その結果に基づいて適切な対応を行う」の文がある。その一方で、この「見直し」はブルーレイ課金の廃止を決めたものではない。また、ブルーレイへ課金している間に“デジタルチューナーだけを搭載した録画機には課金しない”との扱いは合意に明記されていない。「3年後の見直し」を盛り込みさえすれば、デジタルチューナーのみの録画機へ課金しても合意内容に反しない——との解釈も可能だ。
権利者が自分たちの主張を「明らか」だとして、それを“根拠”にJEITAの意見を「間違い」と強弁するより、真正面から反論をすることも可能だろうにとは思うのだが‥‥二省間合意が前提という“相手の土俵”に乗りたくないって話なのかしら。
JEITAの主張にもほころびがあるだけに勿体ない。
※参考
これまで『Culture First』サイトに掲載された記者会見の模様。
http://www.culturefirst.jp/news/2009/02/9.html
http://www.culturefirst.jp/news/2008/08/_8.html
http://www.culturefirst.jp/news/2008/07/culture_first_2.html
http://www.culturefirst.jp/news/2008/06/post.html
http://www.culturefirst.jp/news/2008/04/jeita_1.html
Posted by 谷分 章優 映画・映像, 著作権行政 | Permalink | コメント (0) | トラックバック (0)


