委員らと事務局との思惑がずれていく一方 ――基本問題小委員会#2
6月30日に、文化審議会著作権分科会の「基本問題小委員会」(以下、基本小委)の第2回会合が開かれた。文化庁のサイトには、当日配布された資料がアップされている(議事録の方が上がるのはもうしばらく後ですな)。
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/kihon/h21_06/gijiroku.html
「文化審議会著作権分科会基本問題小委員会
(平成21年第2回)議事録」
(文化庁)
基本小委の第1回会合が4月20日。第2回まで2ヶ月強の間が開いていたことになる。今後もこのペースで2ヶ月置きにやるのか、他の小委員会のように月1回のペースへ持っていくのかよく判らない。もし次回も2ヶ月後だとしたら、基本小委が今年度中議論に費やせる時間はかなり少なくなる。
時間が限られるとなると、実のある議論をするには事務局側で課題設定と議事進行をテキパキやらないといけない。しかし第2回の議題として事務局が用意したのは、第1回の委員のフリートークを要約したもの(資料1)と、それを抽出する形でヒアリングを行なう提案にまとめたもの(資料2)だった。特に会合で使われたのは実質的に後者、A4ペラでたった1枚だけだ。そこから一歩進めて何かを始めるのではない、A4ペラ1枚を了承するかしないかで1回の会合が費やされたのである。
文化審議会著作権分科会
基本問題小委員会(第2回)議事次第
日時 平成21年6月30日(火)
10:00~12:00
場所 虎ノ門パストラル 新館5階 「ローレル」
議事次第
1 開会
2 議事
(1)主な論点に関する議論の状況
(2)今後の議論の進め方について
(3)その他
3 閉会
配付資料一覧
資料1 前回の小委員会における主な意見の概要(PDF)
資料2 想定される論点と今後の議論の進め方(PDF)
(参考資料)
参考資料1 文化審議会著作権分科会基本問題小委員会 委員名簿
参考資料2-1 第3期知的財産戦略の基本方針
(2009年4月6日 知的財産戦略本部)(著作権関係部分抜粋)
参考資料2-2 知的財産推進計画2009(著作権関係部分抜粋)
参考資料2-3 「第3期知的財産戦略の基本方針」「知的財産推進計画2009」対照表
(著作権関係部分)
参考資料3 著作権法施行令等の一部改正について
参考資料4 法制問題小委員会における主な意見の概要
資料2「想定される論点と今後の議論の進め方」で事務局が示した今後の方向性として、ヒアリングを中心に進めながら「文化振興に関する施策の体系の中で、著作権制度が担っている意義、役割はどのようなものか」という広めの議題が設定された。この提案そのものを詰める意見は委員から出ず、結果的には原案通り了承された。
この提案で想定されているヒアリングの趣旨と対象者は必ずしも明らかではない。同資料の中で「まずは、関係分野の有識者や、著作物等に関連する事業を行っている事業者等からヒアリングを実施し、上記の点(引用者註:後述のヒアリング項目)について、事情を聴取してはどうか。(デジタル化、ネットワーク化の進展前後での変化があれば、それも含めて)」とある。対象も、「関係学問分野の有識者(著作権法学・文化政策学等)」「コンテンツ関係事業者、情報技術関連事業者」「文化関係団体、経済団体」とのこと。なお人選は主査・事務局に一任される。
これらの記述だけで何か判るだろうか? ヒアリング項目も以下のような内容だが、これとてかなり漠然としている。
1 文化振興施策で、著作権制度が担っている意義・役割
2 表現手段・流通手段の変化のもと、著作権制度の果たす役割に変容が生じているのか
(たとえばデジタル化・ネットワーク化の進展)
3 解決の得られていない課題を含め、今後の著作権関連施策でとるべき方向性
(他の文化関連施策・ビジネススキーム・技術的手段との関係も)
話し合うネタの大枠だけ決めておいて、あとはヒアリングをしながら流れを考えよう——といった仕切りに見える。
こういう一見悠長にも思える議題設定は、事務局(文化庁)の趣旨が「著作権の基本的問題を大所高所から議論する」という点にあることの反映なのだろうが、こうした議事進行に対して個別具体的な事案を議論させろという委員意見が相次いだ。個別具体的な事案、つまりフェアユースや私的録音録画補償金・保護期間延長などについてだ。
事務局と委員とで基本小委に臨む姿勢が大きく食い違っている様子は、報道で伝えられている部分からもよく窺える。
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20090630_298560.html
「不満噴出の『基本問題小委員会』、著作権見直しの行く末は」
(INTERNET Watch) 2009.6.30
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20090630/332951/
「複数委員から議論の迅速化を求める声,
著作権法の基本問題小委員会から」
(ITpro) 2009.6.30
基本小委の性格を考えるのに、法制問題小委員会や国際小委員会といった同列の委員会と比較するよりも、むしろ親会である著作権分科会に目を向けた方が理解しやすい。基本小委の委員はほとんどが著作権分科会の委員も兼務しているからだ。
もともと著作権分科会は、その下の小委員会で具体的議論をした結果報告を受けた後で、それに分科会委員がコメントしつつも報告書の内容自体は原案通り認める“承認機関”のようなものとして運営されてきた。したがって分科会委員の意見はなかなか小委員会での議論に反映されない不満などもおそらくあって、〈自分らに議論させろ、決定権をよこせ〉とばかりに意見が出たのを受け文化庁が基本小委を設置した次第である。
この、基本小委を設置したきっかけになった分科会委員の発言は、基本小委第1回の配付資料からも窺える。実際の委員発言は同会合の議事録(PDF)で参照できるのだが、ここではあえて基本小委で配布された事務局側の要約の方(第1回会合配布の参考資料4・PDF)を引く。この方が事務局の意図も垣間見えるだろうと思えるからだ。
(今後の文化審議会著作権分科会について)
○ 結論の出なかった問題について、そもそも論に帰る、別の枠組でやるとしたら、文化論のようなものを議論するべき。小委員会でいろいろ議論するのはいいが、その小委員会の議論の中に、場外で行われている議論を持ち込んで、それを分科会の方に上げてくるというのは、何か普通とは違う形式に感じた。親会としての分科会は、きちんとした見識を持って議論をしたいので、重要視していただきたい。
○ 全てに関して法改正を基に話が始まって、全体像を考えて、最後法改正に戻るというふうな、法律をどう変えていくかということを中心に、審議会や各小委員会での検討がなされているような感じがした。審議会でそもそも論、全体像を見るところから、その一部分として法改正がある。制度も考えられる。そのあたりの検討をこの審議会で行い、さらに専門的な部分を小委員会に委ねる。そういう議論の在り方自体を、もう少し考える時期に来ているのではないかという気がした。
この発言をした委員の意図からすれば、「そもそも論」や「文化論」というのは単に自身の主張を補強するものでしかなく、結局のところは自分たちが議論の当事者に加わりたいという要望だったように思える。しかし文化庁はむしろ「そもそも論」「文化論」といった部分に重点を置いている印象を受ける(私に言わせれば、権利者側かそうでないかでも「そもそも論」など異なるものだと考えるが。だからこそ権利者委員が多い分科会の中で「そもそも論」を論じることにさほど価値を感じない)。
委員、特に権利者側委員は目の前の「問題」を片付けたい。「そもそも論」を拒否した事務局が強引に妥協させようとしたあげくメーカーの強硬な反対を招き議論の場そのものが吹っ飛んだ私的録音録画補償金、弊害を懸念する識者の意見に何ら回答を出せなかった保護期間延長、そして“著作権の縛り”と法改正への腰の重さが原因で導入論が持ち上がったフェアユース——これらの議題を基本小委に引っぱってきて検討したいとの要望は、著作権分科会でも基本小委でも見られたものだ。その意味では、権利者側の発言は一貫している。
奇妙なのは事務局の仕切りの方で、もともと彼らの思惑が委員らと衝突するのは当たり前なのだ。個別の議論をさせろという意見は第1回会合にもあって、その時には「ここは基本的な問題を大所高所から議論するところだから」と事務局がなだめる展開だった。その後で、何をやるのか明確にしろとも委員からツッコミを受けていた。
そして第2回の会合でも同じ展開。いや、混迷の度はますます深まってるのかもしれない。
ある委員(後に掲載する「概要」では発言者も書いてあるが)からは、知的財産推進計画2009が策定されたことを受け、この計画で今年度中に結論を得るとされる項目を基本小委でも「結論を出すべく議論すべき」との意見も出た。
しかし基本小委のような、権利者委員が大多数を占めるような場で何か決めようにも問題が多いのは明らかだ。他の利害関係者への配慮など期待できるわけがなく、そこでの結論をいざ実行しようとしたときに数々の抵抗が発生するのは避けられない。たとえば私的録音録画補償金ならばメーカーを交えた話し合いと合意がなければ制度自体が成り立たない。保護期間についても、保護利用小委で示された懸念を払拭できるようなロジックを用意しなければならない。そしてフェアユースは法制問題小委員会で議論される。これらの課題を基本小委で扱おうにも、「権利者」側のお手盛り報告書になることは目に見えている。
となると、基本小委で何が議論できるかは最初から限られている。大枠の話を「文化的見地から」「大所高所から」、しかも漠然と語るしかない(それですらあのメンツは偏ってるだろうと私は思う)。そんな小委員会を、文化庁はなぜわざわざ作ったのか。
——権利者側の“ガス抜き”の場として機能してきた著作権分科会と同じような内容の小委員会で報告書をまとめることによって、自分らの基本線(権利強化)を補強するのに使おうとしているのではないか。開かれる会合がどんなに少なくても、報告書は事務局が用意できる。むしろ会合が少ない方が、文化庁には都合がいい。
基本小委については、その設置目的にしても、議事の進行の具合についても良い印象は持てない。どう転んでも、誰も幸せになれない。
もっとも第1回会合からあまり代り映えしなかった委員意見の中で、第2回で目立ったのは三田委員と松田委員の発言だった。三田委員は議事進行を批判しながらテンポアップを求め、「日本版フェアユース」が求められる原因は議論の遅さにあると指摘した。また、Googleブック検索に関する米国での和解で生まれることとなった「版権レジストリ」を示し、これの「日本版」を作ってはどうかとアイディアを披露、小委員会の進行についても「各委員がビジョンを出して議論してはどうか」とも提案した。松田委員はフェアユースの議論の中で、導入が必要とされる具体的事例を挙げて検討すべきと発言した。
ただし、これらの意見が今後の小委員会の進行に反映されるかは疑問だ。
事務局の言うように「基本的問題を」「大所高所から」やるとしても委員の不満は解消されない。委員の言うように具体的議論をやっても、政策としての実現性に乏しい。となれば、結局はヒアリングでもやってお茶を濁すしかないのか。
もっとも同じヒアリングをやるのでも、これまで声を聴いてこれなかった人たちを呼べば少しは意義も発生するのかも知れない。そういう形でしか意義が見出せないとしたら、なんと虚しい委員会なんだろうと思わざるを得ないが。
議事概要(メモ)
※例によって記録と記憶から書き起こしているため、正確性は保証できません。
※報道された発言よりも簡略化されている箇所もあります。
※後藤雅実氏(NHK理事)から黒木隆男氏(NHK理事)へ委員が交代
事務局(関審議官)
国会に提出していた著作権法一部改正法案が、衆議院・参議院ともに全会一致で原案通り可決した。11日付の官報で公布されたところ。2年半ぶりの改正で、内容は現行法が全面改正されて以来の大改正となる。
国会審議の状況としては、主に議論になったのが3点、内容的には広範なもの。1つ目は30条のいわゆる「違法ダウンロード」を私的複製の対象から外す。違法な著作物の流出の抑止が目的。インターネット利用を妨げるのではとの質問が多かった。2つ目は31条の2項、国立国会図書館の資料デジタル化について。Googleに関する質疑と、デジタル化資料の利用の可能性について質問があったところ。3つ目が37条の3項と37条の2、障碍者向けの権利制限。但し書きの解釈について、ボランティア団体の活動が阻害されないようとの要望があった。衆議院・参議院でそれぞれ附帯決議もされた。
著作権問題にはまださまざまな課題がある。各方面からの要望もある。この委員会で大所高所からの議論をたまわればと思う。
※知財推進計画2009と著作権法施行令改正(ブルーレイ課金)について事務局から説明。推進計画での著作権関連項目の読み上げに時間を割く。
※「想定される論点と今後の議論の進め方」について議論に入る前に、前回の基本問題小委員会での委員発言をまとめた資料を事務局が読み上げ。これもかなり時間をかける。
野村主査
自由に意見を。
宮川委員(弁護士)
(小委員会の)タイムテーブルを確認したい。
事務局
文化審議会では、委員の任期が1年。それを視野にスケジュールを組んでいくつもり。しかし1年で結論を出すということで必ずしも設定してはいない。
三田委員(作家、日本文藝家協会副理事長)
ざまざまな意見をいってじっくり議論するのも有意義だと考えるが、著作権に関する問題は様々な分野にわたる上、時間の流れが速い。著作権の議論のテンポが遅いことが問題になっているのではないか。「日本版フェアユース規定」という暴力的提案がなされるのも、著作権制度の改革が即時的に対応できないためでは。
議論のテンポを早め、必要なら改革を行っていく――ヒアリングを行なうにしても、ターゲットを絞ってなるべく具体的に議論を展開することが必要だ。議論のテンポを上げるよう努力しては如何か。今日の会合もすでにかなり時間が経っているが、やったことと言えば配付資料を読み上げただけ。1週間前に送付して委員が読んでくるようにすれば、始まってすぐに議論に入れる。関係者を呼ぶにしても、事前に資料を貰っておいて読んでくれば、いきなり質問から入ってテンポを速くできる。
利用者の意見をよく聴き、何を変えて欲しいのか察知した上で、問題点を検討し必要なら法改正を進める。目標を持った議論をすべきではないか。今のままでは1、2年がすぐ経ってしまう。結局、すべてフェアユースにしてしまって裁判所に委ねるようでは、著作権分科会の意義がなくなる。
松田委員(弁護士、中央大学法科大学院客員教授)
フェアユースの議論は具体的ビジネススキームに即座に対応するとの視点で提案されているが、フェアユースについて議論されているものを読んだり会議を傍聴したりしても、具体的にフェアユースを入れるべき問題がどれだけあるか、具体的事象をほとんど示せないできている。将来起こるかもしれないものをフェアユースに求めているというだけでは、委員会でも議論がしにくい。今あるいは近い将来、こういう問題が起こるからフェアユースが必要だという議論をしなければ。導入したい立場の人たちの意見を聴きたい。
※例示ができるならしてみろ、という趣旨に受け取れた。
事務局
今回は資料の送付が遅くなってしまい恐縮する。どういう進め方にするかまとめるのに時間がかかってしまった。
大林委員(日本芸能実演家団体協議会専務理事)
いろいろな問題があるが、どのまとめ方で議論するか。毎回テーマをしぼるのか。また知財推進計画で2009年度中に結論を得るとする項目と、ここの議論とをどう関わらせるのか。それぞれの立場で緊急課題は違うかもしれないが、その都度こちらで申入れて議論したいと言えば、取り上げてもらえるのか。そうしたところを整理してほしい。
事務局
知財計画との関係としては、スケジュールが政府で決定されており、我々もそれに向けて精一杯の努力をしたい。議論の進め方は、論点・課題によって委員会の雰囲気も変わってくるだろう。ここでの意見を見ながら適宜調整したい。
関審議官
捕捉を。資料2「想定される論点と今後の議論の進め方」は前回の議論を踏まえたつもり。基本小委で議論してほしいのは、著作権制度の意義をもういちど確認されたいということ。三田委員から、社会の流れが非常に速くて著作権法をめぐる議論がついていけてるのかとの指摘があった。しかし著作権制度の意義・役割の再確認をした上で、昨今の変化の中で果たすべき役割を考え、ステップを踏んで議論していただきたい。
推進計画2009との関係については、基本的な考えとして政府で決定された事項であること、文化庁もそれを目標に検討しなければいけないということがある。文化庁は著作権法の担当省庁なので、どういった結論を出すにしてもしっかり議論した上でというのが必要。
河村委員(主婦連合会常任委員)
ヒアリングを行なうと書かれている。委員会の名簿を見ると、さまざまな立場・考えの違いがあるが、かなり多数の方の結論が一致しているテーマがあると感じている。フェアユースについて私はここで意見を言わないが、「暴力的な制度」という人、あるいは最先端なところで論じられる立場の人、きちんと意見の言える人を呼んでいただきたい。(法律家のような)中立な立場だけでやるのでは良くない。
※前半のは、権利者委員が多いことへの皮肉に受け取った。
主査
ヒアリング対象も(資料では)かなり抽象的だが、それについて意見があれば。(河村委員の意見は)それぞれ違った立場で明確に話をしてもらえる人を呼ぶようにとのことだが。
(なかなか意見が出ない)ではその意見を踏まえて、今後は資料2に方向で了解いただけたということでよろしいか。
※なかなか委員からの意見が出ず、実はここで終わりそうになった。
三田委員
具体的なことを申し上げたい。現行の著作権法やシステムについてたくさん不満が出ていると感じる。保護期間延長について2年間議論してきたが、利用者から延長されると困るとの意見が多数寄せられている。この問題の大部分は、行方不明になった人が多くて許諾の求めようがないといった意見だ。デジタルコンテンツ流通促進法制なるものも一時言われていたが、これも昔ドラマに出ていて今行方不明の人が多数にのぼるので解決してほしいということ。いずれも具体的に裁定制度を確立して、いなくなった人の分は供託金を積んで利用できるシステムを作れば解決する問題だ。
また、教材をネット配信するという問題があり、教育現場では35条で作られた教材を学校のサーバに蓄積することが行なわれている。これは35条に違反するのではないかと考える。コンピュータができると、35条の限定のままで運用するのが難しくなる。ならば補償金制度を確立して、生徒ひとり10円くらい払って35条(権利制限)を広げれば解決する。
解決のための現実的な方法はいくらでもある。それをのんびりしたペースで議論し続けた結果、日本版フェアユースを導入しろという議論が起こるのではないか。
具体的提案をして解決できるのでは、と考える必要がある。そして最後まで残る問題があるとしたら、それは著作権法の根幹に関わる問題なのでじっくり考え、著作権法を根本的に改革することも必要だろう。当面、利用者の要望に対して具体的検討をすることも並行してやれるのではないか。
宮川委員
著作権の世界は動きが速い。基本問題小委員会が「大所高所から」の議論を期待されているのは重々承知しているが、じっくり検討して結論がでないなんてことにならないよう、スピード感を持って議論したい。
私が仕事で知っているかぎりは、著作権法施行令のブルーレイ課金の件で、関係団体の通知の最後にあるような「関係者の意見の相違」はすでに顕在化していると思ってる。三田委員の言うフェアユースだけでなく、私的録音録画補償金の問題もスピード感を持ってできたらと思う。
いで委員(作詞家、日本音楽著作権協会理事)
前回にも言ったが、小委員会だからここで解決しなければならない、答えを出さなければならないことは早急にやるべきだ。推進計画で年度内に何らかの結論を出したいというのが9項目ある。年度内だとあと10ヶ月もない。資料を事前配布するなり関係者を呼んで意見を聴くなりするとしても、ペースを上げなければならないだろう。総論を言い合うだけでなくてもいいのでは。
野村主査
この小委員会の設置のときから他の小委員会との関係が問題になるわけで。法制小委は具体的問題を扱い、ここでは基本的な問題をという位置づけ。基本問題の議論が具体的問題に繋がるのを期待している。
事務局(関審議官)
事務局としてもそう考えている。ここでは基本的な事項について議論いただきたい。個々具体的な課題で制度的対応が必要なら法制小委で検討する。民間の取組で解決するなら民間でということ。配付資料4として法制小委の委員意見を配布しているように、状況がどうなっているかはこの場でも紹介していく。
佐々木委員(国立科学博物館長)
具体的なケースについて解決を求めるのか、個々のケースを念頭におきつつ文化振興のために著作権制度の役割をさぐるのか。議論のやりかたが変わってくると思う。基本問題小委員会が設置された狙いは、ここのケースを念頭に置きながらも、ひろく文化の視点から議論してくのだと私は思っていた。
三田委員
法制問題小委員会との兼ね合いを考えすぎて、基本問題小委員会での問題提起が抽象すぎるのではないか。法制小委は差し迫った課題を検討するところ。基本小委は、具体的に法律をどう変えなければならないのか分からないが、検討しなければならないものを扱う。たとえば来年法制小委で話し合わないとならない課題とか。権利者からヒアリングすれば、どういうシステムにすべきか見えてくるだろう。法制小委で(将来)とりあげてもらえるテーマも見えてくる。
近未来に問題となるものを具体的に検討する姿勢がないと、あまりに抽象的になって「100年先の議論」になってしまう可能性がある。なるべく具体的な問題の設定が必要。
いで委員
基本小委では、問題提起はしてさしたる結論が出ないとしても、あとの議論を法制小委に任せるということか?
関審議官
そういうつもりではない。
野村主査
こちらはこちらで全体的なところからフェアユースを議論していただいて、法制問題小委員会の議論と融合して、分科会として具体的な方向の結論が出せれば良いのではないか。
里中委員(マンガ家)
「日本版フェアユース」の言葉になじめない。アメリカのフェアユースの概念を元にして、ちょっと変えるものを目指すから「日本版」だとしか感じられない。「フェアユース」の語から日本人が実際に受け止める感覚まで考えて使っているのか。英語のニュアンスを自国語のように受け止める人だけではない。
何もはっきりしないまま進んで行くおそれも感じている。なんとなく警戒心が生じるのはわざわざ米国の言葉に「日本版」をくっつけるため。何か他に日本語として捉えられる概念を付けて話し合ってはどうか。
松田委員
「フェアユース」という言葉はそういった問題も含んでいる。審議会の中でも「フェアユース」ではなく、「権利制限の一般的規定」という言葉を議論で使ってはどうかと言われる権利者の方もいる。アメリカの制度と日本との違いを「日本版」にしようという議論になってしまう。アメリカのフェアユースは、日本人が考えているほど酷いものではない。範囲も狭い。
日本ではもう少しゼロベースで考えて、何か規定がなきゃおかしいだろうという事例を洗い出していくべき。法制小委で出されている、委託研究の資料がある。フェアユースの資料としては一番まとまっているのではないかと思うが、日本で具体的に何か不都合が生じているという、議論の対象として上がった事案はそれほど出ていない。ビジネススキームを作るためのフェアユースでなくて、いまだかつて訴訟が起きていなくて誰が考えても適法、しかし形式的には違法というものだ。アメリカ的な「フェアユース」の言葉を先行させて議論しては結論を誤るのではないか。
大林委員
補償金制度は、一応ブルーレイが指定されてとりあえずのチョンチョン(幕)となった。しかし補償金制度は、なぜそれが作られたかを考えるところに来ている。そして支払っているのが消費者なのは何故か。根本のところを話すのが基本小委だろう。根本のところか具体のところか、話し合うべき内容はたぶんテーマによって変わるのではないか。
三田委員
(いつもの調子でGoogleブックス問題の説明。)米国著作権法のフェアユース規定を読むと、著作者に迷惑がかかるかどうか検討しろと書いてある程度。迷惑をかけるな、とすら書いていない。検索エンジンが合法になるという過程も、タダでホームページを見せてるから迷惑かけないでしょうと、ずるずると来てしまった。日本ではそういう規定がないため、制限規定を広げるために時間をかけることになって、産業の成長を「阻害」するという。しかしこれは目的を決めた一般規定を作ればいいのであって、あらゆるものを包含するものである必要はない。
米国作家協会の事務局長が来日して説明を受けた。これまで我々(日本文藝家協会)は違法複製を糾弾するすることしか考えていなかった。向こうでは作家たちが中心となって版権レジストリを作り、作家たちが管理するんだとして和解に至った。このレジストリはGoogleからの補償金を基金にして作るもの。
我々には、ハーバード大学所蔵の日本語書籍がコピーされた損害がある。そうしたことに対応するには、日本版版権レジストリを作る以外にないだろう。国会図書館でも(デジタル化資料の)データベースが作られているが、今後どう利用していくかが問題となっている。管理組織を作る必要がある。
日本版レジストリを作るとなると、誰が基金を作るんだということになるが、それも検討しなければいけない。ネット関係でも許諾を得るのが難しいと言われる。あらゆる著作権を網羅する管理組織を作ることで多くの問題が解決するのではないか。保護期間を延長するのでも、包括的な管理組織で大部分は解決する。そういったビジョンをここで検討するのも良いのではないかと思う。ビジョンなしに漠然と考えるのでは時間がかかるだけだ。
委員がそれぞれビジョンを提出して検討しては如何か。
中村委員(慶應大学教授)
我々がやらなければいけないことに優先順位をつけないと。フェアユースは、デジタル化やネットの広がりで不具合が起こっているもの。補償金は、権利者の利益の再分配をどうするかということ。メルクマールを実例・実態ベースで考えるべき。制度を変更する実需の強さを定量データで見る。制度変更を加えることで実態がどう動くのか、保護期間延長にしろフェアユースにしろ、制度を変えろという側が立証してやるべきなのではないか。
松田委員
三田委員の、各委員がスキームを提案するという話に賛成だ。そのまま委員が言いっぱなしになってしまうのは勿体ない。たとえば流通促進と正当な対価の分配をどう考えるかといったときに、こういう制度だったらいいという意見を出してもらう。NHKアーカイブはそれを解決した一例だと私は思う。そういったスキームを出していくことが、実は基本的な問題を見ることにもなるのではないか。
野村主査
それは想定される論点の「著作権制度の果たす役割に変容が生じているのか」「どのような方向性をとるべきか」に含まれるのでは? 具体的な論点の検討を排除してはいない。ただ法制小委と同じ議論をしては、基本小委の存在理由がなくなってしまう。
事務局(山下課長)
どういう段階で、またどういう手順で各委員からビジョンを提出してもらうかは、主査と相談する。そのときに具体例を織り込んでもらうのでもいい。
野村主査
今後の進め方としては、資料2のとおりで。関係者からの意見を聴くことも、事務局との間で準備を進める。
大林委員から前回要望のあった、委員欠席時のオブザーバー参加について
事務局
著作権分科会では、委員以外の出席を認めていない。ただ本小委員会では分科会委員を中心に引き受けていただいており、多忙等の事情で出席できないことも多い。やむを得ない事情があり主査の判断で適当と認めた場合、欠席委員の指名するオブザーバの出席を認めて発言できることとしては如何か。ただし定足数としてカウントはせず、議決権も持たない。
※オブザーバ出席については異議なく了承された。
※次回日程は調整中とのこと。
Posted by 谷分 章優 著作権行政 | Permalink
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