「コルシカ」――歴史に残るかわからないけど、記憶には残りましたね!
日本国内では今ひとつ「決定打」に欠ける電子書籍界隈なのであるが、この10月に入って急に登場したサービスが大きなセンセーションを巻き起こしてるよって話。
http://www.corseka.jp/
「Corseka」
http://www.enigmo.co.jp/press/news/index.php?detail=9
「オンライン雑誌販売/閲覧プラットフォーム『コルシカ(Corseka)』
10 月7 日(水)よりサービスを開始致しました。」
(株式会社エニグモ)
http://japan.cnet.com/venture/news/story/0,3800100086,20401284,00.htm
『雑誌販売サイト『コルシカ』開始--出版社からは『著作権の侵害』の声も」
(CNET Japan) 2009.10.7
その名はエニグモ社の「コルシカ」。サービス内容は後で詳述するけれども、ネット経由で雑誌の注文を受けて、そのスキャン画像を配信するというのが主なところ。
10月7日、「低迷する雑誌市場を盛り上げることに貢献したい」との甘い囁きとともに“電子雑誌”を売り出したのは良いが、その裏で出版業界が大騒ぎになっていたという。事前に話を聞いとらんがなという社が多く、すぐさま日本雑誌協会が動いた。雑誌のスキャン画像を配信するのは著作権の侵害だからきっちり出版社と話つけろやゴルァ、まず配信ヤメロ!ってな抗議である。これがサービス開始の2日後、10月9日。
http://www.shinbunka.co.jp/news2009/10/091008-04.htm
「雑協、エニグモ社に対しコルシカサービスの中止を要請」
(新文化) 2009.10.8
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20091008AT1D0805E08102009.html
「日本雑誌協会、エニグモにネット雑誌閲覧サービスの中止要請」
(日経ネット) 2009.10.8
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20091009k0000m040092000c.html
「日本雑誌協会:ネットの雑誌有料閲覧、サービス中止を要請」
(毎日jp) 2009.10.8
http://www.47news.jp/CN/200910/CN2009100801001107.html
「ネット閲覧の中止を要請 新サービスに雑誌協会」
(47 NEWS) 2009.10.9
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0910/09/news050.html
「『コルシカ』に雑誌協会が抗議 雑誌スキャン・ネット販売は『著作権侵害』」
(ITmedia) 2009.10.9
http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000056023,20401440,00.htm
「日本雑誌協会が雑誌閲覧ネットサービス『コルシカ』にサービス中止を要請」
(CNET Japan) 2009.10.10
で、雑協の抗議を受けたコルシカはあっさり引き下がる。雑協の会員が出している雑誌は売らない、そして今後のことは協議しよう、という話らしい。
http://www.enigmo.co.jp/press/news/index.php?detail=10
「日本雑誌協会からの『コルシカサービスについての要請と見解』への対応について」
(株式会社エニグモ)
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20091009_320745.html
「オンライン雑誌閲覧サイト『コルシカ』、一時サービス縮小へ
日本雑誌協会から中止要請『無許諾スキャンは違法』」
(INTERNET Watch) 2009.10.9
http://www.shinbunka.co.jp/news2009/10/091009-04.htm
「エニグモの雑誌オンラインサービス、一部雑誌を販売中止」
(INTERNET Watch) 2009.10.9
そして体育の日を含めた連休明け。いつのまにかコルシカは“終わって”いた。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0910/13/news126.html
「『コルシカ』全雑誌データの販売を停止」
(ITmedia) 2009.10.13
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20091014_321635.html
「オンライン雑誌閲覧サイト『コルシカ』がサービス休止」
(INTERNET Watch) 2009.10.14
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0910/14/news099.html
「『許諾を得た出版社もある』 『コルシカ』運営会社に聞く」
(ITmedia) 2009.10.14
どないせいっちゅうねん。(俺どこの人間だ)
■コルシカの中身
もう“終わって”しまったサービスの中身を分析する必要があるのか、という気もしないではないのだが‥‥とりあえずやりかけていたまとめなので、あえて続けてみる。
コルシカは、基本的には雑誌のネット通販サイト、とは言える。雑誌の注文を利用者より受け、コルシカは現物を購入し、利用規約により利用者の依頼を受けたものとみなして雑誌のスキャンデータを用意する。それを利用者に送るわけだ。なお、これらの作業の前後関係はおそらく上記の順番通りではない。あえて、コルシカが主張する形で説明を試みた。コルシカの意図に寄せた解釈をしてもなお、おかしい点が存在するのを私は指摘したい。
一連のスキャンデータ入手までに利用者が支払うのは、雑誌現物の定価。この現物は「配送料」を支払うことで、メール便(ヤマトメール便か郵便局のエクスパック)で送ってくれる。「配送料」は国内280~700円と実費程度のようだ。配送はデータの購入から1ヶ月の間に申し込む必要がある。
スキャンデータの方は暗号化されており、ウェブブラウザ上の専用ビューワでないと閲覧できない。雑誌データの保存期間は12ヶ月。雑誌の一部はクリップでき、それは36ヶ月保存できる。いずれにせよ期間に限りがある。
退会した(あるいは規約に反し除名された)場合、それ以後雑誌データは読めなくなる。
http://www.corseka.jp/guide/qa.html
「Q&A」
(Corseka)
http://www.corseka.jp/guide/act_display.html
「特定商取引法に関する表記」
(Corseka)
http://www.corseka.jp/company/tos.html
「利用規約」
(Corseka)
コルシカの概要は以上のような感じだ。
このサービスについて真っ先に思うのは、雑誌をスキャンして販売する以上、無許諾でやってたらアウトだろうということ。案の定、出版社から著作権に関して抗議を受け、サービスを「休止」せざるを得なかった。
それに加えてコルシカには、私は当初から違和感があった。たとえば、エニグモのプレスリリースやコルシカの利用者ガイドにあるような売り文句と、コルシカの仕様とがかけ離れている点。従来読み捨てられてきた雑誌の「保存」に電子雑誌のメリットを謳う割には、スキャンデータ閲覧できる期間が限定されている。雑誌は置き場所という物理的問題で長期間の保存が難しかったというのに、置き場所を取らない筈のデジタルデータ化で期間限定って何よ? しかもPCブラウザ上の専用ビューワでないと読めず、携帯デバイスでの閲覧に対応していない。雑誌現物なら持ち運べるのに、PCに“鎖”でつながれた電子書籍にどれだけの価値が?
その他にも、以下のような疑問点が私にはある。
- ビジネスモデルの組み立てについて
料金を見たところ、雑誌の価格・送料ともに実費のみを利用者から受け取る仕組みのよう。取次からの入荷と、ユーザーへの販売の差額のみを利益とするのか。それともサイト上に広告を載せるなどして収入を得る予定だったのか。いまひとつ分からない。 - 利用者が購入した雑誌について
利用者が雑誌データを購入した雑誌は、コルシカがその分の実物をすべて購入するという話は間違いないか。また、それらの現物のうち、配送が求められなかったものについてはどのように管理するのか。 - 売り切れへの対処について
雑誌データを販売する冊数は、実物が確保できた数だけということになるのか。利用者から注文を受ける時点で、実物が売り切れてしまうことが無いような何らかの措置は取られるのか。 - 雑誌スキャンの要領
雑誌のスキャンは、たとえば背表紙を断裁した上、1ページずつスキャンするのか。あるいは、手作業で広げながらスキャンするのか。
スキャンデータは、閲覧の都度サーバへアクセスさせるものと考えて良いのか。
また、スキャンデータは1つの雑誌につき1つのファイルで用意するのか。あるいは注文毎にスキャニングを行なうのか。 - 雑誌データを配信するタイミング
雑誌データの配信は、その分の実物がコルシカに届いてから実施されるのか。あるいは注文後ただちに配信できるよう準備しているのか(取次にあることを確認するのみで配信するなど)。 - 配送される雑誌
スキャニングされた雑誌の他に、配送用の雑誌を確保して利用者の申込みに対応するのか。スキャニングに要した雑誌は処分するだけか(とすれば、その1冊分の費用はどこから捻出するのか)。 - 利用者が購入したが配送されない雑誌について
利用者がスキャンデータを購入したが、配送の申込みが無かった場合には、その現物の雑誌はどう保管されるのか。一定期間(たとえば配送を受付ける期間)が過ぎたら廃棄されてしまうのか。廃棄のタイミング、廃棄の方法などは決められていたのか。また、廃棄までの当該雑誌の所有権はどう理解されるのか。 - 雑誌をスキャンして利用者に提供することを許諾していた出版社は
雑誌のスキャニングを許諾していた出版社はどれだけあるのか。それらの雑誌も含めてサービス中止にしてしまったのは何故か。また、許諾を得なかった雑誌について、あらかじめ許諾を求めなかった根拠はどういったものか。
――こんなところだ。報道によればコルシカは、利用者が買った雑誌をスキャンするだけの“私的複製代行業”だと主張しているらしい。まぁこの代行業自体、現行の著作権法で許され得るのかという問題はある(おそらく許されないだろう)。それを置くとしても、スキャンするのが「私的複製」だという主張と実態がどれだけ近いのかを知るための疑問点もあり、上記には入れてある。
で、一応コルシカに質問を投げてはみているのだが、投げた場所がよろしくないのか、まだ何の反応も無いです。無名ライターはつらいですね、ハハハ。まぁ、後で改めて問い合わせてみますよ。それでダメなら、もはやコルシカを擁護することは不可能ってことで。
別の観点から、“私的複製代行業”がフェアユース導入によって可能になるのではないかという形でコルシカを評価する考えもあり得る。しかし、そうしようにも利用者のメリットが少ないかなぁと私自身は思う。スキャナーを貸してくれる業者とかの方がよほどメリットあるというか。
法律論をぶつにも(もっとも素人の私に正確な法律論がぶてるはずもないが)、それだけの価値がコルシカにあるのか。すでにサービスを中止された今、疑問ではある。
ともあれ、事実関係はきっちり押さえたい気持ちはあるので、もしお話聞かせてもらえるとしたら、よろしくお願いします。 →コルシカの中の方
Posted by 谷分 章優 著作権 | Permalink | コメント (0) | トラックバック (0)